政治と信頼2(ルール違反・実力行使)

直ぐ見える単純利害レベルでは・・アメリカが日中対立に関わって軍事支出が増える・人命損がはっきりしている割に、目に見えるメリットが少ないのでこれを対中密約で譲る可能性を否定出来ません。
日米安保がアメリカのサボタージュにより実効性がないとなれば、アメリカの世界的信用下落その他複雑・間接的影響は大きいものの、複雑系に弱いトランプ政権のレベルからすれば、サボタージュのレベルを外見上分り難くして誤摩化す程度の裏取引がありそうです。
結局はアメリカ国内の鉄鋼業界救済・進出済みの自動車業界等救済のために、日本を売る・・アジア安保を(裏で)放棄することになる可能性があります。
その上、中国(との裏約束を言わないで)も45%の関税その他の要求を中国が飲んだのだから、日本も相応の高関税または輸出制限をのんでくれと言う要求に使って来るでしょう。
これを防ぐために安倍総理はトランプ氏の懐に飛び込んだのですが、彼はいくら約束してもその場の目先損得で動く・・これを行動原理にしていますから実は信用出来ません。
長年掛けて成立して来たWTOの約束を簡単に踏みにじることも厭わないと言い、アメリカ自ら推進して来たTPPを何の根拠もなく反古にすることを何と思わない人物です。
WTO違反を問題にしないと言う意味は、その前に実力行使してしまった方が勝ち・訴えられてもそのときのことだ・・アメリカは強いんだぞ!と言うことでしょう。
反日暴動時の中国によるレアアース禁輸も同じ論理・・日本がWTO違反と訴えても結果が出るまで数年以上かかる・・その間日本が持ちこたえられなければ、屈服するしかない・・訴え取り下げを強要出来るだろう」と言う読みによる実力行使でした。
戦国時代に小さな城が何故あるかと言うと簡単に占領されると応援部隊もどうにもならない・・互角に戦えないまでも、少なくと応援部隊が来るまで持ちこたえられる程度の防衛力が必要とされていたからです。
戦国時代の物語では、応援部隊が間に合うと双方大軍同士のにらみ合いでちょっとした小競り合い程度で一定期間経過で双方退陣する流れですが、応援軍が到着前に城が落ちてしまうと、応援軍はなす術がなくそのまま帰ってしまうパターンです。
双方が主力軍の激突を辞さない覚悟のときには川中島の合戦や長篠の合戦みたいになりますし、イラクのクエート侵攻のように勝負がついた後でも米軍がこれを奪い返しました。
そこまでやる気がないと、ロシアのクリミヤ併合のように、既成事実を作ってしまった方が勝ちです。
このように、日米同盟と言っても米軍到着まで日本が一定期間自力で持ちこたえるのが原則です。
WTO違反で訴えるにしても裁定が出るまでの間、自力抗戦能力がないと絵に描いた餅になります。
フィリッピンは折角国際司法裁判所の判決で勝っても、勝訴の効果を主張出来ないほど弱いことが明らかになりました。
たとえば、レアース禁輸時の時間軸・帰趨を書いておきます。
.中国レアアース禁輸に関するhttp://www.h-yagi.jp/00/post_231183.htmlの記事からです。
「WTO(World Trade Organization:世界貿易機構)紛争解決制度は3月26日、中国がレアアース(希土類)の輸出に課している関税や割当量制限を「不当」と認める裁定を下しました。
日本や米国,EU(European Union:欧州連合)は平成24年6月に中国へ共同提訴。日米欧勝訴の正当な裁定が下されましたが、中国は裁定を受入れるか、控訴するか中国商務部は裁定内容を評価中。フィナンシャル・タイムズ紙は「今回の判決で片付きそうにない」と評しています。」
「スマートフォンやHV(ハイブリッド)車に欠かせないレアアースは、中国が世界をほぼ独占状態の生産量で日本は中国からの輸入に約9割も依存。平成22年9月に尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に中国は,対日経済制裁ともとられる一方的なレアアースの禁輸措置をとりました。」
「中国のレアアース禁輸措置を受け、米国やオーストラリア、太平洋の海底など鉱床開発が進められ生産は広がり価格も下落。さらに、日本では先進技術でレアアースに頼らない技術も開発するなど、中国は自らの行為で立場を弱めた結果となりました。」
上記記事は2014年4月1日の記事ですが、平成22年の禁輸措置=2010年のことですからWTO裁定まで約4年かかっており、しかもWTOは2審制ですから、控訴して最終決着までには更に数年かかかってしまいます。
(最近最終決定が出たように記憶していますが、最早ニュース価値が低いからかネットですぐに見つかりません)
南沙諸島を巡る領土紛争を有利に進めるためのフィリッピンに対する中国のバナナ輸入規制等の嫌がらせでは、フィリッピンは簡単に屈服しました。
折角国際司法裁判所で完勝したのに、ちょうど政権交代があって就任したばかりのドウテルテ大統領はこの効力を主張しない・・屈服を選ぶしかなかった印象です。
レアアース問題が実際に解決したのは、WTOの裁定によるのではなく輸入の9割も中国生産に頼っていた日本が新技術開発に成功したことによって、中国の方が禁輸を続けられなくなったことによります。
国際関係は戦国時代がちょっと良くなった程度・・正義が貫徹する社会はありません。
日本は充分な在庫があり素早く技術革新出来たので、逆に中国が在庫増加に困って勝負がつきましたが・・。
ついでに同サイトの[2013.9.30」の記事もお浚いをかねて引用しておきましょう。
中国当局:尖閣領土問題でレアアースの日本輸出を制限

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日中関係の悪化は平成22年、尖閣諸島での中国漁船衝突事件から始まり、当時弱腰だった民主政権は海上保安船へ衝突させた中国人船長らを逮捕するもののあっけなく釈放。領土問題が勃発し中国当局は、ほぼ独占輸出品であるレアアース(希土類)の対日輸出を制限しました。
日本企業は、代替国からの輸入や技術の力で代替品、リサイクル技術の向上で中国産レアアースのニーズを急減させました。結果、昨年の中国のレアアース生産量は、ピーク時の平成18年の16万トンから半減。日本への輸出量は平成22年からわずか2年で4分の1に減少しました。日本の技術革新が中国の外交カードを打ち消し、中国当局にとっては大きな誤算となりました。日中関係の冷え込みが続くなか、中国を代表する金融グループや通信企業のトップら11人が9月25日、首相官邸を訪れ菅官房長官を表敬訪問。中国のトップらは、「日中の企業同士での交流を深め、日中関係を良くしたい」と述べ、民間交流の重要性を強調しました。
チャイナリスクを痛感!技術革新こそが日本の外交力
昨年(この記事は23年9月です)の尖閣諸島国有化では、相変わらず中国当局の嫌がらせは続くものの外交カードは切ってきません。外交カードを安易に用いたことで日本企業にチャイナリスクの恐ろしさ知らしめ、その対抗策に技術革新が日本の外交力であることを気づかせました。」

日中関係悪化の影響:貿易は1割減、中国への投資は3割減
JETRO(日本貿易振興機構)によると、今年上半期(1月~8月)の日中貿易は、前年同期比10.8%減の約14兆5,290億円。4年ぶりの減少を記録しました。中国向け直接投資も同31.1%減の約4,900億円まで落ち込みました。中国経済の需給バランスは日本企業の影響だけでも痛手となったはずです。」

政治と信頼1(意思表示の責任)

不確実性とは何か?要は相手が何をするか分らない・・下の者は何をすれば良いか分らない不安・信用出来ないと言うことです。
昔から政治には周辺者の支持が必須ですが、その支持は約束を守る信頼の上に成り立っているモノで、これ形式化・・「見える化」したの中国古代の韓非子・法家の思想であり、西欧近代の法の支配です。
現在で言えばマニュアル化でしょう。
法とは、国家・為政者の支配・命令の意思表示ですが、仮に一方的に制定されたものであっても、この命令に従った者に相応の恩賞を与えたり、処罰出来ない(罪刑法定主義)など君主自身の行動も縛られる・・国民との約束です。
国家が個別国民と個々に約束出来ないので、公布と言う形式で国民全部が拘束される約束・対世効があるのが「法」であり、個別意思表示でも相手方に対して法律効果が出る・・守らねばならないのでこれを法学用語で「法律行為」と言います。
民法
第五章 法律行為
    第一節 総則
(公序良俗)
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
(任意規定と異なる意思表示)
第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
(任意規定と異なる慣習)
第九十二条  法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。」
「法」とは国民が守るべきモノと言う意味であり、個人の意思表示に法律効果があると言うことは、意思表示したことは守るべき義務・責任が生じると言うことです。
企業が消費者の意見を聞かずに一方的に示す(民主的手続がなくとも)約款やレストランのメニューであっても予め示した取引条件・意思表示に企業自身が不特定多数の顧客に対する効果が出る・・縛られるのは「法」と個別「意思表示」の中間的場面です。
一方的命令・・通告であっても実効性を持たせるには、命令・ルール通りにしたことが褒められ、処罰されない・・しょっ中変えない・安定性・信用が重要です。
店舗も定休日や執務時をその都度変えると、せっかく行ってもお休みだったら困るので、客は安心てその店に行けません。
約束は守るが自分に不都合になると朝令暮改では、いつ変えられるか心配で国民や相手は安心出来ません。
議会制民主主義とは君主が勝手に国民に命令・約束出来ない・・側近に諮問していたのを民選の議会で作るようになった内部手続の問題であって、これを経ていない時代でも公布したり命令した途端に国民や官僚に対する約束になる点は同じです。
政治が機能するには、国民が法(政府の約束)に従っていれば大丈夫・政府を信用出来ることが大前提です。
「綸言汗の如し」言われて来た所以です。
これを世界規模に及ぼすと国際合意の重みです。
世界の覇者が法・・過去の国際合意を好き勝手に変更するのでは、民(世界の弱小国)は何を信じてよいか分りません。
アメリカは近年国力の衰えが見えるとは言え、今なお世界最大の強国ですし、アメリカの大統領は世界最高の権力者です。
この最高権力者がアメリカ主導で決めて来た過去の国際合意を自国都合で一方的に変更すると宣言しているのですから、今後アメリカ主導の国際合意をしても彼の気持ち次第で一寸先が見えないとなると、国際合意の価値が減少します。
トランプ氏は、「過去の合意をちゃぶ台返しするが、自分がした合意は守る」と言うのでしょうが、彼の任期は最長でも8年しかありません。
国際合意は長期間の行動指針ですから、大統領が変わる都度変更になるのでは、安心して長期的関係を築けません。
合意だから変更要請を断れば良いかと言うとそうは行かない現実があります。
アメリカの圧倒的影響力があって、高関税や輸入禁止、日米安保ももっと費用負担しないと撤収すると言われれば、日本は拒み切る力を持っていません。
戦前日本がアメリカの不当な要求に次々と屈服・受入れて来たのに対して最後にハルノートを突きつけられて遂に妥協の限界が来て日米戦争になりました。
戦後も自由貿易と言いながら繊維交渉、電気交渉、鉄鋼・半導体・プラザ合意などなどその他全て無理な要求全部受入れて来た歴史です。
日本は無茶な要求されれば、大方飲まざるを得ない弱い関係・・変更交渉に入れば思うままに変更出来る日米の力格差があります。
合意の変更を求めると言うのは一見公平そうですが、力関係に格差がある場合、強い方が言い出すのは一方的変更になり勝ちです。
これを横で見ている韓国がアメリカのように、日韓条約や過去の合意をスキなように反古に出来ると思うようになったように見えます。
韓国の主張や動きを見ると、オブラートで包んでいるアメリカやユダヤ系の本音をそのまま言って来る便利な存在です。
世界中が(3月11日に書いたように中国はかなりの抵抗力がありますが・)一強のアメリカから過去の合意変更を強要されると日本同様に拒み切れない関係ですから、過去の合意を変更したい・アメリカが高関税を掛けると言われるとみんな困ります。
関税を一方的に上げれば報復合戦になるとメデイアは言いますが、日本はとても報復する力を持っていません。
企業で言えば社長が変わる都度、弱い下請けに対して前社長時代の合意を下請けの不利な方向へ変更してくれと言って良いのかと言うことです。
世界最高権力者がこんなことを言い出せば、折角時間をかけて合意してもいつ変更してくれと言って来るか分らない・・権力者への信頼が失われます。
言わば事実上の強制ですから一方的に約束を破るのと結果が変わりません。
政治・権力は支配下の信頼によって成り立っているのですから、横紙破りの一方的なことを宣言すると一見権力誇示で強そうですが、アメリカ自らの世界支配構造をぶちこわす方向へ働くことになります。
国益・・王権維持のために王様は無茶しないのが鉄則です・・勇ましく荒っぽいことを主張すると一見強そうに見えますが、ヤクザがすごむのと同じでそのときの被害者一人に対しては強権を振るえますが、多くの人が眉をひそめる・・結果的に多くの信頼を失う結果になります。
アメリカにとっても長期的には損することですから、アメリカのメデイアは、国益を守るために政権の足を引っ張る方向よりは、政権を軟着陸させる方向へ協力すべきでしょう。
日本にとってもっとも危険な想定・・南シナ海や尖閣諸島問題放任政策への転換は単純レベル・アメリカンファーストの応用編でいえば、トランプ政権にとってあり得る選択肢です。

民主主義の基礎10(産業構造の変化1)

金持ちも無茶に我欲を張る・・金持ちを自慢するのが恥ずかしいと思う社会・・日本で知られている有名高額所得者は、孫正義氏や日産のカルロスゴーン氏など外人系中心に留まります。
日本では成功者がトランプ氏のように王宮のような住まいに住む・・安倍総理との会談場所としてこんな豪華な映像が流れるコト自体恥ずかしいと思うのが普通です。
「メザシの土光と」言われたように財界の大物も,自宅ではメザシを食べていると言う神話?が本当かどうかは別として流布される社会です。
伊勢神宮も建物が豪華だから尊崇されているのではありません・・堅実に働く中間層が社会の宝として大事にされる社会です。
中間層が尊敬される社会になったのは、地に着いた仕事を自分でしている武士の勃興以来の堅実な武士が尊敬されるようになったことと関係があるしょう。
この下地があって,「驕る平家は久しからず」と言う格言?が人口に膾炙されているのです。
武士の台頭が始まってからの約1000年近くもの間、武士層は質素倹約に努めて自己鍛錬に努めて庶民の鑑・尊敬の対象となっていました。
幕末騒乱の原因でも普通は政争に勝った方が前政権を悪く言うものですが,徳川幕府支配層が腐敗していたと言う話を一切聞きません。
武士の時代が続いて「地位のあるものは経済慾を持っては行けない」と言う日本独特の?モラルが強固に形成されて来たように思われます。
こうした堅実な中間層が多い結果、いまだ中間層が厚くて質素倹約・自己鍛錬になれている下地能力が・・中国の低賃金競争にもいろんな工夫をすることによって,堪え切れている面があります。
欧米の中間層は,日本の武士のように自己鍛錬によって中間層になっていたのではなく,本来は庶民層の能力・・新興国庶民と能力差がないのにタマタマ産業革命に成功した先行者利益で世界中を支配して植民地支配体制を作り上げて搾取による巨万の不労収入を得て来ました。
この利権分配・・本来10万しか働く能力のない人が3〜40万の収入を得られるような嵩上げをして来たこと・これが本来庶民層まで中間層的収入を得て来られた構造です。
アメリカの場合には,広大な領地と巨大資源によって,これを活かすために大量生産方式を工夫発明したことによって,世界経済モデルを提示して世界支配権を手に入れました。
資源力や植民地支配等による旨味・不当利益によっていた分、欧米労働者の地位は脆弱で、この利得構造がなくなると一挙に本来の能力相応の地位に戻るしかありません。
アメリカの粗放・大量生産方式はクルマのベルトコンベアー・・フォード方式が有名ですが,農業・牧畜も皆粗放・大量生産方式モデルで世界を席巻したのです。
確かに良いものを手作業で作る・・味のある工芸品は良いのですが,少ししか作れないので,限定頒布しか出来ません・・。
良い物だけですと多くの人がその恩恵を受けられませんが、出来映えが伝統工芸品の6がけでもそこそこ使い物になるならば、100人しか買えなかった商品が100万人でも200万人でも需要のある限り工業的に安く作れる(例えば本皮でなくとも人工皮革・化学染料でもある程度綺麗な色柄など)となれば,世界の生活水準を底上げした歴史的意義が大きかったことは確かです。
味が粗雑でも,米麦トウモロコシその他各種食糧を大量に作る粗放農業生産品も食うに困る貧しいときには有り難いものです。
大量生産方式は,作業者の熟練度が低くて良いことから低レベル労働者も高額収入を得られるメリットがありました。
この方式の弱点はドンドン合理化して行けば行くほど,先進国に限定されない・・新興国・・どころか今では,バングラデシュあるいは最貧国でさえも同じものが作れる時代に入ったことです。
先行者利益を元手に高額賃金を払って来た先進国工場は軒並みやって行けなくなります・・工場を維持するには極端に言えば、バングラデシュの人と自国民労働者を入れ替えるくらいしないとやって行けません。
100%移民に入れ替えてもこれまでの不当利得?を利用して?先進国は贅沢なインフラを作ってしまっているので、この維持経費負担で負けてしまいます。
これがいまアメリカでインフラ維持に困るようになった原因です。
1〜2割または半分を低賃金移民に入れ替えても100%低賃金労働者の新興国の工場と競争出来ません。
仮に半分入れ替えて半分の失業者を出している場合、生活保護受給に転落しているか、移民にまけないように低賃金でも仕方ないと思って移民同様の低賃金で就職している元々の国民は、何のために移民と共同生活しなければならないか?と言う不満になります。
企業としては,自国内に移民をいれるより海外展開してバングラデシュの工場で現地人百%雇う方が気楽です。
欧米諸国の元々の住民・ピープルが移民を嫌がる以上は、自国では普及品製造から撤退して特殊品を作る工夫するしかない時代ですから、民度で差を付けるしかありません。
アメリカはピープルのレベルアップに関心がなく「低賃金競争には低賃金で」と言う政策で長年移民導入に頼って来た結果、今更の政策変更は不可能マテャ遅過ぎたとすれば,トランプ氏のし移民に頼らない政策は普及品の製造コストをいまよりもっと上げることに成り、結果的に米国製造業は益々衰退してしまいます。
結果的に・・大量失業が待っているでしょうから、これを貫徹するには排外意識を煽って対外強硬政策・・例えば3〜40%の法外な輸入課徴金を掛けるんど、腕力に任せた政策しかありません。
米国への輸出国は困りますが,それ以上に米国自身国内物価上昇で庶民が困る=生活水準が3〜40%下がる結果になります。
実は・・庶民だけではなく各種産業も原材料全て諸外国より3〜40%高いものを買わされることになると,全体的に米国だけが世界水準に比べて割高な製品になり米国製品を買うクニがなくなります。
世界から孤立して自給自足社会になって行くしかないでしょう・その内世界の進歩変化から置いてけぼりを食い・・今の北朝鮮やアフリカのようになって行くしかありません。
実際にはそこまで行く前に海外との格差に不満を抱く国民の支持を失うか、先手を打って排外意識を煽る方向・・豊かな国に戦争を仕掛けて略奪するなどの山賊国家に変質するしかないでしょう。
ロシアも中国も経済がうまく行かない国民の不満をそらすために、今はその方向に向かっています。
アメリかも,日本などと仲良くしていると喧嘩出来ないので難癖つけて喧嘩に持ち込んで戦利品をぶんどる方向へ行く方が「得だし溜飲が下がる」と言う変な方向・・中国、ロシアなどの仲間入りを目指しているのがトランプ選出だったことになり兼ねません。
プーチンや中国は19世紀型・・周辺弱小国を問答無用で踏みつぶすナチス的国益主張ですし,ドウテルテも自己中心的主張であり、トランプ氏の場合現在版の経済面での傍若無人の自己主張→行く行くは武力に訴える展開になる可能性が高いと言う点で共通性があって、気が合う印象です。
無茶苦茶言わないとどうして良いか分らない不満と言う点では共通です。
話を戻しますと上記のとおり,欧米の中間層は植民地支配の利権構造によって豊かな生活をしていた・・元々相応の能力があって中間層になったものではないことから,特殊品製造に移行する能力がないことから,新興国から追い上げられると能力に応じて地位低下して行くしかありません。

民主主義の基礎9(信頼関係7)

中高所得層に対する低賃金下の圧力は世界のトレンドであって、日本でも昨日書いたとおり中高所得層への圧迫が酷くなるばかりです。
この惨状進行に対して,民の生活に責任のある政府は放置出来ません。
日本政府は支配者のためにあるガバメントではなく、民のための政府ですから,党派性に馴染まない社会です・・労働組合がなくとも江戸時代から備荒米を備えたり各藩政府は庶民生活を守るのに熱心でした。
千年近く支配層を形成して来た武士層の出自は、元々地下人・農業を基礎とする庶民であって,政権担当するようになっても多くの下級武士は半農半兵で幕末までやって来ました。
正確には,関東へ領地替えになった徳川家の家臣団は先祖代々の農地から切り離されました・・領地のある旗本もほとんど自領に言ったことがなく村から時々報告に来る状態でしたし,領地のないご家人は農業から切り離された「切り米」等で生活するサラリーマンになっていました。
その他戦国時代からの大名家では,家臣団と言っても戦国時代に入る前から,耕して来た一定領地があってこその騎馬武者(小豪族)が地域中小豪族〜大名家臣団に取り込まれて来た歴史ですから,大小の違いがあっても,地位相応の支配地=農地があってお城から帰ると支配地ないの農作業を指揮したり,自分自身もある程度先頭に立ってやるなどいわゆる半農半士の状態でした。
最近までの地方公務員には旧家の息子が多く,村役場から帰ると農作業に従事していたのはその名残です。
このように約千年間支配階層を形成していたとは言え,幕臣・譜代大名家以外の武士の多くは自営農民・・中堅層と繋がっていましたので・・足腰も強かったし,昭和の3・15事件、2・26事件での青年将校の蹶起は,「彼ら自身農村部の窮迫を実感していたからである」と習って育ちました。
明治維新・・壬申戸籍では,「士」身分呼称が残っていましたその後の士分の呼称がなくなると,庶民は武家の生き方に少しでも近づくことを理想として七五三の行事その他各種行事も武家のしきたりを自分の家でも出来るようになることが夢としてやって来ました。
戦後もみんな「士」になることが夢でしたし,運転手→運転士、看護婦→看護士、保育士その他いろんな専門職がみんな「士」に昇格して来た歴史を書いたことがあります。
トラック運転手も「士」になることによって,仕事に誇りを持つようになって心構えも少しは変わって来たと言うことでしょう。
このように日本人は明治維新で形式的に見れば庶民も名字帯刀の苗字を持つようになり元々の武士も刀を棄てましたが、意識では「士」の志を持つようにみんな底上げされて来たのです。
この結果、みんなが武士の志を持つように教育され,政治に参加する資格を持つようになったので、(アメリカのピープルのように対象として大事にしますと言うだけではなく当事者として)江戸時代までに形式上(能力さえあれば取り立てられたので事実上身分の流動性がありました)参加していなかった士分未満の庶民も加わるようになったことになります。
選挙権があるかどうか以前に,支配層に入れる裾野が広がったのが明治維新です。
このように政府内への庶民階層の血が入る仕組みで,政権担当者が庶民の心を重視する仕組み・・受容力のない人は出世出来ない仕組みですから,出世したエリートは社会の実情を知らないと言う批判は欧米価値観の受け売りでしかありません。
声なき声を感知する受容能力がない人はどんなに鋭い意見を吐いていた大学秀才でも採用段階で県で多くはふるい落とされ,うまく就職出来ても内部昇進して行けないので自分の能力が政党に評価されないと言う不満で在野に出て行き,一匹狼になるしかない宿命です。
野党文化人とは明治新政府から弾かれて在野で活躍した野党の始祖?を見てもこう言う傾向の人材が多い印象です。
共産党が顕著ですが、その他の野党で東大卒・・弁護士・医師その他ふあっとした民意を汲む能力を要する組織内で地位を得たことがない・・学歴的優秀者が幅を利かす組織で名を表した人が多い特徴を持つ所以です。
野党系の特徴は自分達は進んでいるから,庶民を指導して行くべきと言う基礎思考が強固な点です。
本来庶民に一番近い筈の労組や野党・・在野の方が観念的になっていて、庶民感覚に疎い傾向があるのが我がクニです。
野党・労働組合や人権団体が本来の働き・・庶民の気持ちの代弁をしない分・・政府が率先して人件費の引き上げ運動をここ3〜4年執心しているのは、この原点の違いに由来します。
野党や労組が本来中間層の転落を心配し,その防止政策を提案すべきなのに、党派的主張主張・・憲法違反などの空理空論にエネルギーを費やして具体的生活に根ざした議論に弱い・・本来の働きをしていない・・民のために意を尽くすべき「政治家」の仕事をしていないからです。
繰り返しになりますが,九州弁連大会の結果紹介によりますと,防犯カメラで犯罪抑止を目指すよりは,犯罪のない社会を作る方が重要だからプライバシー権侵害の理由で反対すると言うのですが,どうやって犯罪ゼロ社会を実現出来るかの提案がありません。
同じく非武装平和論も,戦争のない社会を作ることが重要なのは分りますが,現実にロシアによるクリミヤ半島占領・併合の事実・・その他世界では,あちこちで実力行使が絶えることがありません。
彼らが親近感を抱いていると思われる中国自身が,日本の領海侵犯等の実力行使に出ている状態で,どうすれば中国の理不尽な行動をやめさせられるかの提案もありません。
国防強化よりは,仲良くすることが先決だと言っても実際にはどうにもならない現実に付いてはだんまりのままです。
犯罪のない社会にするのが先決だと言いながら,中国人犯罪集団の跋扈に怯えているのがここ数十年の日本社会です。
野党や文化人が空理空論で満足するのではなく,国民生活を具体的にどうやってより良くして行くかのテーマに付いては語るところがありません。
生活保護基準を緩和しろとか,各種手当創設やアップや支給基準緩和に奔走するなどの決まりきった主義主張をしている程度の印象しかありません。
アメリカの選挙で書いて来ましたが、国民は保護基準を緩和したり支給額のアップをしてくれるよりか,自分の働きで生活したいのですから,社会保障アップよりは働ける環境整備の提案の方が前向きです。
日本の野党ももっと良いことを提案をしているかも知れませんが,報道では全く出て来ません。
日本では代弁政党がなくとも・・選挙の票数だけでは分らない民意を重視・・ソンタクする社会ですから、あらゆる組織で衆議をソンタク出来ないような人は世話役や責任のある政治家になれません。
11月16日以来書いて来ましたが、欧米の場合「統治の主体」としてのガバメントですから思いっきり自己主張・リーダーシップを強調して喝采を浴びるのが目的ですが,日本の「政(マツリごと)」とは、声なき声を聞き取る・神懸かり・民意忖度能力が近代化されたものであって、政治家はすべからく民意が奈辺にあるかをじっくり聞き取る能力が求められています。
自己主張して自己満足していても、国民はそう言う人を選びません。
リーダシップを重視社会・・庶民ピープルがリーダーに従って行動し,集会では歓声を上げる社会・・欧米価値観をそのまま尊敬しているマスコミ・文化人は、日本にはリーダーが生まれないと嘆きますが、日本は元々民意を汲み取る能力・調整型政治家が求められているのですから,無い物ねだりと言うか,数千年遅れの欧米の真似を要求する方がおかしいと言うのが年来の意見です。
政治(まつりごと)はリーダーシップを競い,自己主張するためにある西欧のガバメント能力とは違います。

民主主義の基礎8(信頼関係6)

アメリカ民主党・共和党の政策は、(日本民進党や社民党も似ていますが)移民を受入れて低賃金に頼って国際競争力を維持し、結果的に企業が人件費負担をしないで低賃金層を増やし社会保障を手厚くして行く社会を目指して行く・・誰が喜び、どの階層が損するかと言う単純な図式です。
マスコミは「既成政治家に対する不信感」であると解説していましたが、既成政治家と言う誤摩化しではなく「for the people」と言いながら「民衆」の立場を代弁する政党がそもそもなかったことを問題にすべきです。
そもそもアメリカ式民主主義制度では、日本のように総意で政治をするのではなく多数意見に従う「統治・支配」ですから、2大政党制では、少数派・少数民族を代弁する政党は大政党になることは出来ません。
韓国財閥で問題になっている循環投資同様で・・6対4がその選挙区で10になってしまう日本の小選挙区制・アメリカ大統領選挙の総取り方式で分るように、大政党内部で個別利害を積み上げて行くプロセスで、少数意見はゼロ査定になって消えてしまう仕組みです。
全国民の2%の人が国内資産の半分を占めて良いか?と言う2択ならば選挙で勝てない筈なのに、資金力のある勢力がいろんなテーマに影響力を及ぼして結果的に2%の階層が全分野の決定権を握る社会になっていることに対するアメリカ国民の不満です。
この是正作用を担っているのが裁判所(イギリスで発達した衡平法・エクイテー裁判所の思想)の役割になっていますが、違憲判断や行政に対する是正判断は余程でないと出ない(原則として立法権や行政行為の裁量権を尊重します)ので、中高所得者の負担を徐々に切り上げて行く政策自体は訴訟テーマになりません。
(神懸かり・憑依で決めたり、クジで決めることの合理性について数日前に書いたように、得票数と言う数字で決めて行くのは一見合理的なようでいて実は民意の擬制でしかないのですから、数量的計算によるのではなく日本社会のように「総意」を汲み取る訓練・その能力に長けた人材を育ててその人の決定には異を唱えないルール・・社会体制になる必要・・そこに到達するには今後数千年以上かかるのかも知れません。
アメリカ指導層の出身母体・・現状に戻りますと、トランプ氏自身大資本家・経営者ですし、ヒラリー氏はウオール街から巨額献金を受けていることで知られています。
本当の「民衆」の不満・怒りを王宮のような豪華な邸宅・「トランプタワー」を有する「不動産王」が代弁しているのではギャグみたいな社会です。
資本家の意向を代弁するマスコミや政党が支配するアメリカで、たとえば、移民・非正規労働者が増えて保険加入者がドンドン減って行くと、(機械工具の修理費?)医療費を誰が負担するか?となります。
これが(素人的想像で飛躍がありますが・・)オバマケアや職業訓練施設が必要となった原因でしょう。
日本の保険制度で言えば、大手企業の健保組合からの協会健保(中小企業加入)や国保(無職者中心)への負担金が何年おきに連続的に引き上げられています。
非正規雇用・保険未加入者を増やすと企業負担は減りますが、その分サラリーマンの保険負担を増やす・・中高額所得層の実質税増額です。
この結果大手企業従業員・・多くは800万前後から数千万前後)の保険料負担が数年おきに引き上げられている仕組み・・原因です。
健保組合連合会の本日現在の主張によれば以下のとおりです。
https://www.kenporen.com/public-relations/onepoint/pdf/onepoint-11.pdf
健保組合は、皆さんと事業主が納める健康保険料を財源に運営されています。
『拠出金』による現役世代の負担増
拠出金が増えたことで 全健保組合の健康保険料の平均額が上昇!
この5年間で1人当たり年額5万円以上負担が増えています!」
累進性強化やこの種社会保障政策は7〜800万〜数千万の中高収入層への増税・保険負担増・手取り収入減になる仕組みです。
それ以上の高額所得者は3000万(2003年時点のコラムの引用ですので今はどの限度・・5000万になっているか知りません・・孫正義氏などにとって4000万でも5000万でも同じでしょう)で打ち止めになる累進制の影響を受けません。
これがアメリカの1%の人が全米所得の2割を占める原理です。
米国民主党の政策は、移民・難民層の比重が高いフードスタンプ受給額アップ?の受益者と天文学的巨額収入層からの天文学的巨額献金者の両端の支持によって成り立っていて、巨額献金出来ない中高収入白人層が一番割を食う社会だったコトが分ります。
格差拡大反対は非正規雇用層・・フードスタンプを既に受給している層は支給条件緩和や金額アップのバラマキで満足させることが出来るでしょうが、転落の危機に怯えている・・低賃金化の標的・・フードスタンプ受給予備軍にされている中高所得層から出ている主張だったことになります。
11月18日頃の新聞には、介護費用負担について一定額以上の年金受給者の(現役時代年収7〜800万前後以上?)の人の自己負担率を上げる方針が出ています。
今朝の日経新聞第一面には高所得高齢者への医療費負担増がトップ記事で出ています。
高校授業料補助金その他何かあると・・(7〜800〜1000万)前後のどこで切るかの議論するのが普通になっています。
そうしたテーマでは800か900で補助金をもらえるか医療負担が上がるかの関心(目先の損得・自分が助かるか?)に誘導されていますが、ソモソモ中高所得者ばかり増税や各種負担が上がる仕組みでよいかの基本議論がありません。
要は中高所得層を代弁する政党が我が国にもないからです。
旧社会党は(労働組合が)中間層の代弁者として意味があったのですが、中高所得層の代弁をするよりは、中ソ有利になるような偏った政治偏向?主張ばかりした結果消滅してしまったことに関係があります。
今の民進党も同じで、中高所得者の立場を守るよりは、すでに転落した階層保護策・・生活保護受給レベルアップ・高校授業料補助や児童手当増額+高額所得者除外などを主張する政党になっています。
社会保障赤字問題が起きて来たときに、当初高額所得者を受給資格からの除外論(医療や介護の自己負担アップや、児童手当や高校無償化や消費税負担軽減策の除外論など)だけでしたが、この数年では中高額所得者の保険料や、利用時の自己負担率アップによって,年金や保険収入増を目指すようになって来ました。
中高所得層は税金や保険料を高く払っているのに、イザ、サービスを受ける受給段階では自己負担がより高くなるのでは挟み撃ちに合う関係です。
レストランの客が、あなたはお金持ちだからと言われて定価の2倍払わされ、食べる段になると定価しか払わない人よりまずい(ワンランク下の)料理しか出て来ないような変な関係が起きています。
韓国での大統領退陣要求のデモ報道を見ると、「◯◯」日本の労働組合の旗がひらめいている不思議・・戦後折角発達した労働組合が、肝腎の労働者の生活擁護を放り投げて尖鋭?な政治団体になってしまったことが、中高所得層の立場を弱くしてしまった原因です。
労働者の生活擁護のために地に着いた運動をしないで、中ソのための「政治運動ばかりする変な方向へ行ってしまった」と国民認定?を受けてしまったように見えます。
これが自社2大政党と言われていた社会党が消滅してしまった原因ですが、社会党政治家であった議員の多くが民主党に移籍しそのときに、旧社会党と断絶するために一見マトモな意見を言っていた人が多かったので国民は期待して政権を委ねました。
一旦政権を任されてみると社会党依頼の観念的体質が全く変わっていなかった・馬脚を現したと言えます。
社会党そのものではないにしても、地道に運動すべき労組もその前から国民支持を失い、結果的に労働者を守るべき組織がなくなってしまったようにみえます。

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