民主主義と利害調整力不全2

米国では自己主張が強すぎて人種間、地域間、産業間、個々の人間あるいは資本家と労働者、新移民と古参移民、貧富格差、LGBTその他あらゆる分野で各種各層ごとに妥協できない社会になっている印象を受けます。
自己主張が繰り広げられるようになると、それが討論を経て止揚統合していくのではなく不満は不満のまま終わる状態になって行きます。
価値観相克の場合、討論しても解決にならないので、多数派が押し切るしかないことが多いので、価値観相克のママとなり、却って無力感が高まり過激な行動に走る傾向が出てきます。
個々人や組織は激しいデモ行動・・これに呼応する政治家は特定主張の代弁者として妥協しないことが取り柄・・極端主張をして政界に躍り出る→政界で話し合いによる価値統合が不可能化してきたのが現状ではないでしょうか?
ヘゲモニーを握るのが目的で立候補しているのではなくフラストレーション発散目的ですので、政党にもなるかならないかの少数勢力・・一人でも2人でも自分らの代表を国会に送り込めれば満足というパターンの場合、それを法に仕上げる目標は遠すぎるので、その支持を受けた代表は政界での孤立を物ともせずに華々しく主張を繰り替えしてればよいのであって、政治家としての利害調整妥協の技術を学ぶ必要がありません。
米国のトランプ氏や英国のジョンソン首相の強硬なEU離脱論が、影響力が大きいので目立ちますが、元々ドイツで緑の党に始まり、米国では茶会党など、先鋭な主張で特定主張に特化する政治家が勢力を伸ばし始めたのは偶然ではありません。
わが国の歴史で見れば、旧社会党がサンフランシスコ講和条約反対の中ソ側に偏った政策・・当時の国際情勢で実現不可能な全面講和論にこだわり結果的に日本独立反対論で一貫して、その帳尻合わせ的に非武装中立論という空想的主張に固執して徐々に日本社会の支持を失っていく過程で、孤立化していくにつれていよいよ頑固一徹になることで岩盤支持層の維持に特化して言ったようです。
結果的に妥協できないので「何でも反対の社会党」という蔑称が一般化するようになり、ついに多くの政治家が去り、離合集散を経て民主党政権の誕生になったのものです。
60年安保当時はまだエリートの影響力が強かったので政治のわからない左翼系学者や大手メデイアの影響力のまま、これまた未熟な若者大動員に成功しただけで多くの国民の支持があったものではありません。
社会実質から浮き上がっていた安保騒動を頂点として以来急激に支持率を落とすようになり、なんでも反対→国会運営妨害が主目的になってきたのが旧社会党で、消費税前身の税反対の機運に乗って当時の土井党首の「ダメなものはダメ!」式の断固たる態度がもてはやされたように、「妥協しない」ことが特徴でした。
安保騒動も消費税反対も日g路の社会党の主張に共感していたからでなく、たまたま他のテーマのブームに乗っただけ・・実力以上のブーム景気だったのでそのブームが去ると逆に弱い体質が拡大露呈します。
死亡直前、いきなり元気になる病人のような現象です。
旧社会党から逃げ出した政治家中心に結成した民主党が、これまた政権交代を1回は見て見たいというブームに乗って、政権獲得したものの、能力以上のブームだったのですぐに能力不足を露呈した結果、政権獲得前よりずっと存在感を低下させてしまいました。
スポーツでも何でも実力で上がっていれば、連続優勝できないからといって、前年優勝者が大差で大負けするとは考えにくいものです。
箱根駅伝のように選手が毎年25%づつ入れ替わるシステムでも、優勝校が翌年シード落ちするようなことはないでしょう。
国民数%の支持があるかどうか程度の偏った主張にこだわる場合には、国家社会をどうしたいという前向き・建設的意見皆無で、国民のフラストレーションを煽るだけですので、こういうスタイルが日常化する社会・・ただ不満をぶちまけ騒動を起こす集団が蠢くようになると国家社会が混乱する一方です。
ただ何かのきっかけがあると不満を表すのに、日頃から活動している不満集団のデモに便乗する人が増えるということでしょうか?
米国ミネソタ州の黒人被害事件で全国規模で盛り上がったデモ騒ぎは、各種不満層が黒人差別反対という大義に便乗した側面が大きいように見えます。
旧社会党系が総選挙ごとに支持を失いこの10年程では約2%の得票で生き残っている状態ですが、これは現在中韓係の代弁集団に特化しているように色づけられている関係で、その他の不満集団の受け皿として存在意義を保ち、右では在特会のような嫌韓特化集団、その他個別不満集団が誕生しています。
・・・NHK反対というだけで、その他主義主張は白紙状態で先の衆議院選で当選した政党があります。
右翼系・・日韓断交を主張する政党も一点突破でその他政治に関しての具体主張不要ですので、それぞれ一定の得票を見込めれば良いという主張です。
山本太郎と〇〇とかという政党・・今は「令和新鮮組」というようですが、何かまとまった主張集団というより「不満な人集まれ」式で一定の支持を得ている印象です。
念のためにウイキペデイアで公約等を見て見ましたが、具体的にどうするのか不明ですが、特定弱者救済というより狭間にある多種多様な弱者全般に焦点を当てて、救済を訴えている・救済のばらまき?型でしょうか?
全部実行する資金はどうなるという視点がはっきりしません。
この結果各種多様な弱者層からの、票が集まるしかけのようです。
特定主張で極端な訴えする場合、その他無数にある国内利害調整が必要ですが、その点をはっきりさせないまま実現だけ断定的に公約するので分かり良いのが売りです。
国政全般のことはわからないが、奨学金免除してくれる、最低賃金を引き上げてくれるならこの人に投票しようか?ということになりそうです。

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