隔離と人格崩壊?

中国の場合、感染の有無を問わず一定地域内住民を包括的に隔離しました。
まだウイルス感染していない人まで逃げられなくなるものの、誰が感染者か特定するのに1ヶ月もかかっているとその間に症状が出ていないが感染した人(自覚症状なし)が域外に逃げて域外に感染を広げてしまうリスクの方が大きいとの理由で十把一絡げで武漢市とその周辺地域に閉じ込めたものですが、閉じ込められたものはどんどん感染するのを放置するしかない・・被害が伴いますが、中国はこれを決断したものです。
こんな大規模な強行策を取れたのは民主主義国家でない強みでもあったでしょう。
人質事件での救出作業と銃撃戦開始問題でも同じですし、大型ビル火災の場合隔壁による煙遮断(逃げ遅れた人がいるかいないか煙モウモウのビル内を捜索している暇がないのも同じでしょう。
日本政府は横浜港に寄港した豪華クルーズ船ダイヤモンドプリンセスの防疫対策で乗客を船内にとどめて感染有無の検査を先行し検査しない乗客乗務員の上陸を認めなかった上で、その検査終了時までは船内を自由に行動せずに自室にとどまるよう要請したのは、民主主義国家におけるできる限度の処置であり武漢のやり方の縮小版・・このセオリーによるもので合理的だったと思われます。
これに対して検査進行中にも感染拡大が続いたことに対するメデイアを通じた批判が主流でしたが、多数感染者が現実に船内にいるのに検査もしないで国内上陸を認めて野放しにする方が、政府として無責任な方法だったというべきでしょう。
どこかで書いた記憶ですが、日本では感染認定しない限り強制力のない「要請」が基本ですので入国を認めてしまうと、2週間待機してくださいとお願いしても外国人の場合2週間待機要請に応じてくれないと野放しになってしまうリスクがありました。
日本人でも沖縄の人が外国から帰国時に待機要請を拒否して自分で自宅に帰ってしまったことが大々的に報道されていましたが、メデイアが非難するだけで終わりました。
埼玉で自粛要請を振り切って、格闘技の大会を強行して大騒ぎになり、最近では緊急事態宣言解除を待ちきれないパチンコ店の強行開店がありました。
外航船であったことからコロナ検査の結果、陽性確認者は入国手続きと同時に横浜の指定病院への強制隔離にベルトコンベアー式に移送し、陽性が出ない人も潜伏期間を経過して再度陰性が確認できるまで入国手続きに応じない技法は苦肉の策とはいえ、上策だったと思います。
自国籍の船から客が上陸するのとは意味が違います。
外航船の場合国際法上旗国主義ですので、この場合は英国籍=英国主権下にあり、英国が船内秩序維持・生命財産保護の責任を負うべきものでしたが、それを日本が頼まれて一種の遭難救助するような関係でした。
野党の国会での政府批判も同じですが、メデイアも政府批判する場合最悪後講釈でも代替策を同時提示すべきです。
精神障害認定に戻ります。
正式な強制入院は措置入院か、医療観察法によるものしかないのですが、重装備の手続きが必要では実務が間に合わないので、精神保健福祉法による入院患者の大多数は20条の本人または(平成25年に保護者同意制度が廃止されるまでは保護者同意)による医療保護入院です。
法律上同意を原則とする制度を取っていますが、医療目的とは言え現在も隔離=監禁中心の医療では、およそこれを好む生き物はいないし、まして人間はなおさらですから、現実には多くの場合本人が嫌々ながら仕方なしの同意によっていることが多いものです。
元は暴れる患者制圧要員が必須施設だったのが、無気力化する薬品発明によりその要員不要になったことが儲かる商売?になったことが宇都宮病院事件の社会的背景だったような解説がありましたので同記事を一部再引用すると以下の通りです。

 「・・クロルプロマジンなどの処方箋医薬品で、患者の興奮状態を抑制することができるようになると、少ない病院職員で多数の患者の管理が可能となり・・・」

要するにブタ小屋やブロイラー施設のように、うなぎの寝床みたいに大量収容しておとなしくさせる薬中心で、身体機能が衰えている病人とは違うのに終日ベッドに事実上拘束する・管理中心隔離システムです。
多くの人が見るチャンスのある病院や老人ホームがを例にすれば、大部屋の場合プライバシーがないばかりか、まだ元気で体はピンピンしている人でも施設入院中することがないので事実上ベッドで横になっている時間が増えるのが普通です。
牢獄の場合、夜間は房に戻りますが、昼間は敷地内の工場での刑務作業従事が原則ですし、作業も労働基準法の基準以下に出来ないはずですので、みんなで一緒の休憩時間もあれば、運動場での運動もあります。
ヘクタール単位の広大な刑務所敷地内で仕事その他の変化があっても年単位で過ごすのは辛いものです。
精神病の隔離棟の場合、仮に個室でも一日中どころか無期限にその病棟・・多くは各階ごとに施錠されているところで、歩くのは部屋から出て医療従事者の詰所付近のちょっとした空間でくつろぐ?程度でいつ出られるとも期限不明の収容が待っているのです。
これでは牢獄以上の過酷環境でしょう。
これが精神安定剤?みたいな薬でぼーっとさせられて室内にベッドしかなければ(小さな椅子があっても?)大多数が終日うつらうつらの状態になります。
最近では老人ホーム等では病棟内に談話室みたいな公共?空間を設けていますが、入居者にとってはもホール空間にわざわざ出かけてもすることもないので、何か催し物をしないと滅多にホールに出て行かないようです。
個人経験ですが、リゾートホテルに滞在していて散歩に出る予定がない日に退屈しのぎにホテルロビーに行って土産物を見たり新聞を読んだりして時間つぶしをすることがありますが、せいぜい数十分滞在するのがやっとで部屋に引き上げます。
自宅の場合、庭に出て掃除したり台所で何かしたりすることはいくらでもありますが、
ホテルでは、自分でお茶を入れる程度しかすることがありません。
広々したリゾートホテルでもそんな具合ですから、今回の新型コロナ騒ぎで潜伏期間とされる2週間をめどにクルーズ船に閉じ込められたストレスが報道されていますが、精神病と宣告されて豪華客船と程遠い殺伐な?病棟に期間不明の拘束を受ける辛さは想像を絶する苦痛でしょう。
30年ほど前に息子のシンナー中毒で困っている人がいて、中毒がひどくて倒れた(肝臓障害かな?)か何かで緊急入院はできるが、少し治ると出てきてまたシンナーに溺れる・・その後再入院はきついらしく息子が嫌がって行きたがらないし、やっと入院させても一定期間しか入院させておけないらしくすぐ出てくるので、入退院の繰り返しでどうにもならないという相談?現状説明があったことがあります。

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