高齢化と社会保険の赤字8

平均寿命アップ→高齢化には、乳幼児や青少年・中年の生存率等が上ったことを多く含んでいることと、この生存率アップのために高額医療費が使われている可能性が高いと推測されます。
高齢化と医療費増加に関係があることは事実でしょうが、因果関係が逆ではないか?
高額医療に糸目を付けずに支出していることが高齢化に結びついている可能性・・高齢化による医療費増加よりも、高額医療の増加が高齢化を促進している方が高いように思えます。
高齢者が多く医療費を使うようになったことが、保険赤字の原因のようなイメージ宣伝は、実態とあっていない疑問があります。
たまたま数日前に日経新聞論壇だったかで経済学者のこの1ヶ月間ほどに出版された書籍の寸評みたいなものを読んでいると、どの学者か忘れましたが、社会保障費増加問題については医療費高額化進行の面を検討する必要性を主張している論説があると紹介されていました。(我が意を得たりと言うところです)
こうした疑問に答える意味でも、各人別・・これに直ぐには対応出来ないならば当面死亡年齢別医療費の詳細を公表すべきです。
高額医療費に関しては、月額一定額以上を還付する制度になっていることから、3割の自己負担が事実上なくなる制度になっているので、その分を保険料アップで補充しない限り保険制度はどうにもなりません。
この穴埋め負担・・保険掛け金増額に協力出来ないと言う国民意思ならば、これは別の福祉政策の結果として別途税負担コスト計算すべきかどうかの吟味が必要です。
そのための増税にも反対と言うならば、高額医療を無償にするとか1〜2万円しか負担しない決定に国民が反対していることになります。
3割負担を根拠にして保険料率を決めているはずなのに、高額医療に関して逆に月額6万円前後を限度にしてそれ以上は天井知らずの高額医療を認めているのは、保険制度の根幹に反しているように思えます。
保険と言うのは掛け金と関連で「この限度までしか保険が利きません」と言うものであるべきですし、多くの保険はそう言う仕組みです。
交通事故の物損保険額や火災保険や盗難保険,入院給付金等々身近な例で知られているように、保障金額が500万〜1000万〜2000万円か無制限かの保障限度額によって月額保険料が違うのが原則です。
社会保険も経済原理から言えば、第1種保険では月額50万円までは保障〜第2種の場合100万円までなど多段階の保険制度・・納付保険料との関連で保障内容を決めて行くべきです。
そうすると人の命がお金の有る無しで等級的に決まるのか?と言う根底からの疑問が起きてきます。
命の値段ではなく保険のかけられる人が、自分の能力に応じて掛けられる限度の掛け金を掛ければ良いとも言えますが・・。
生命の問題は保険制度のあり方で割り切れないのも現実です。
この結果、障害児が成人すると障害年金をもらえますし、生活保護その他の社会保障として保険料免除制度などがあります。
今の保険は限度額を決めていないどころか、逆に高額医療の方が(一定額以上は無償になるので結果的に)負担率が低くなるのが不思議です・これは保険ではなく、社会保障の分野です。
民間ならば経済原理に従わない限り倒産してしまうのですが、公的制度と言うことで経済原理を歪めれば、その歪めた分掛け金による運営が赤字になるのは理の当然です。
高齢化に関わらず誰でも人生の最後がありますが、最後の療養期間が昔に比べてどのくらい延びて、そのためにどのくらい保険財政を圧迫しているかも重要です。
例えば私の最後の医療費が数百万円になっても、これまでだけでも約50年も払って来た・・今後なお10年位払うとすると、納付した保険料以上に使わないように思いますが・・。
まして高齢化が伸びると抵抗力が低くなるので最後の病気をすると手術に耐えられないから・・高額医療の世話になるヒマもなく、直ぐに終わりと言う事態の確率の方が高いでしょう。
私の母は100歳の祝いの翌年なくなりましたが、これと言った治療行為をしませんでした。

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