平成24年1月元旦

あけましておめでとう御座います。
年賀状よりこのコラムの方が、皆様に早くお目にかかる時代です。
私は朝寝坊タイプですので、元旦=初日の出を拝むのは苦手です。
子供達が小さい頃に年末年始に掛けて船に乗って旅行に出かけることが多くありました。
船室はホテル同様に造られていて、お風呂もあるし、大きな窓がついているので太平洋側の部屋の場合、水平線上に昇る日の出を見られそうだと毎回期待して寝るのですが、朝になるとやはり眠たいので(太陽は明日も昇るし)明日でも良いかとなって、窓の障子を開けないままになることが普通で、御陰で未だに一回も日の出を拝んでいません。
早起きの方々は、文字どおり晴れやかな元旦をお迎えのことと存じます。
昨年は日本にとって大変な1年でしたし、実際に被害に遭われている方や、身近に被害を感じていらっしゃる方も多かったことでしょう。
しかし、災害発生から既に9ヶ月近くも経過したので、今年は復興に向けた期待の年の始まりです。
言い古されたことですが、復興は元に戻すだけではなく新たに興すことです。
大晦日に書きましたが、「災い転じて福となす」今風に言えば失敗は成功の元とも言いますが、転じて福となし、失敗を教訓に次の成功を導くにはそれなりの努力・・一定の基礎水準・能力が必要です。
我が国の技術水準は高く、多くの先端産業は他国の技術や製品導入によるのではなく、自前技術が多いので、昨年の大災害に遭ってみて新たに必要となった新技術・災害時のサプライチェーン維持の工夫についても、やる気になれば自前で直ぐに対応出来る範囲内と思われます。
災害がなければ必要性に気づかなかった新たな分野の草分けになれるのですから、被害を受けた方々には実験台になって戴いたようで申し訳ないですが、新興国から追い上げを受けて絶えざる最先端技術の開発に追われる日本が、期せずして新たな課題を与えられたような幸運な年だったことになるでしょう。
「災いを転じて福となす」か否かは、災いを受けた国民のレベル・心意気にかかっています。
今年は我が国の復興・昇龍元年にする心意気で1年を始めましょう。
過去に公害に関しても多くの被害者が出ましたが、これに正面から向き合って来た結果、我が国の環境・クリーン技術を世界に冠たるものに成長させられたのです。
公害が出るから、「工場は存在自体が悪である」と決めつけて遠ざけるのではなく、都市の近くに工場が立地する前提で公害を少なくして行く技術の開発に励み、我が国は世界初の健康な生活と工場・作業現場が共存して行ける社会を作り上げてきました。
(荒々しかった建設現場でさえも目隠し、遮蔽具が綺麗に優しくなり、騒音も減りました)
原発やその他生活利便に拘る最新技術はそれなりに副作用(新薬同様に危険)がありますが、危険があるだけでこれを嫌忌するのではなく、最新技術の危険性を如何に管理するかの研究や技術革新の努力こそ必要です。
今年はせっかく天から与えられたテーマから逃げずに立ち向かって行きたいものではありませんか。
危険だからもっと遠くへ持って行く、あるいはやめてしまうような発想では進歩がありません。
せっかく与えられた飛躍するチャンスを失って亡国の道を歩むことになります。
以下公害克服の歴史を簡単に振り返り、昨年の大災害を如何に克服して行くかの覚悟を考えて行きたいと思います。
高度成長期以降公害が社会問題になるまでは工場・生産・作業現場がある限り空気や水の汚れ・臭気・騒音は当然であり、このために工場地帯と住宅街は離れて造るものとするのが世界の主流・常識でした。
高度成長期以降、都内下町(荒川流域)にあった多くの工場が追い出され、その跡地が公園や住宅団地になって行きました。
イギリスのスモッグは有名でしたし、それが先進工業国の象徴みたいに思われ、明治の遣欧使節団以来多くの人々は、モクモクと黒煙を上げる煙突群を見るとその力強さに感動していたのです。
蒸気機関車の吹き上げる黒煙・蒸気あるいはシュッポシュッポと言う力強い音に今でも感動する人がいるので、ときどきSLを走らせたりしていますが、強いものは(粗暴で)危険でもある時代が長かったので、その意識・遺伝子が強く残っている人たちでしょう。
明治になって柔道が生まれ、「柔よく剛を制す」ことが知られるようになりましたが、それまでは強い=粗暴=危険と同義だったのです。
名馬は気が荒いのが普通と思われていました。
これからは、利用価値の高い・・強力な設備も人類に優しくなってもらう・・優しく飼い馴らす必要があります。
・・デイープインパクトは優しそうでした・・。
現在では男の強さは、芯が強くその結果優しいことであって、粗野・粗暴はもしかして芯の弱さの裏返しによるのではないかとすら思われる時代です。
北朝鮮がいつもあんなに力んでいなければならないのは、世界一弱いことの裏返しで可哀想な感じです。

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