構造変化と格差18(部品高度化6)

マスコミ人やアジアの意見はここ数年で世界順位何十番までの大企業が入れ替わっていて日本企業は激減しているので、もう日本は駄目だという意見が多いのですが、今後は小さな部品で勝負の時代ですから、大型の世界企業・大量雇用企業の多さで競う感覚は時代遅れです。
彼らの意識・価値基準の尺度が古すぎるのです。
知識人というのは過去の決まった意見・価値観を修得しているだけの人が多いので、現実を自分の目で見て構想する力がないからでしょう。
今回の円高を主導した儲け企業・・各種分野の世界シェアートップクラスの部品業界にとっては当然の円相場ですから、円が上がることには痛痒を感じません。
この種事業で儲けている企業の会社説明では、当社は円建て取引なので円高は関係がないとなっていますが、仕入れ先は円が1〜2割上がろうがそこの部品しか買えない強みがあるようです。
(もっとも長期的にはあまりにも割高だとかなり技術力が劣っても、半値〜10分の1の値段を提示する韓国等の企業に競り負けるので安閑とは出来ませんので、この点は後に書きます)
為替相場が貿易収支の結果で決まるとすれば、(その結果溜まった儲けを海外投資するので所得収支や移転収支も影響してきますが、その基本は貿易収支黒字があってのことです)その決まり方は突出して儲けている産業の競争力だけで決まるのではなく、利益率2〜3%から5〜6%のようにちょっとしか儲けていない企業や、すでにマイナスになって輸入している分野(原油や鉄鉱石など資源系・食料系は元から輸入です)を総平均して、国の貿易収支が黒字になった度合いで決まるものですから、突出している企業にとっては、平均値で上がった分には(円の切り上がった分の何割かは値下げしても)、なお十分な利益が出る仕組みです。
円が1割上がると苦しいのは数%から1割程度の利益率・・すれすれで輸出している企業です。
合格ラインを40点から50〜60点に引き上げても80〜90点取っている受験生には関係がないのと同じです。
円相場は国の(輸出企業の平均ではなく輸入分を総合した)平均能力で決まって来るとすれば、円高でやって行けないと騒ぐ企業は、日本の輸出企業の中で平均的能力以下(最下位付近・スレスレ)であることの自白です。
これまでの稼ぎ頭であった自動車業界も、今回の円高で国内に踏みとどまれなくなってしまう懸念があると報道されますが、その報道が正しければ、自動車の輸出利益率は他の輸出業界よりも低いことになります。
今回の円高が、もしも貿易黒字の蓄積の結果であるとすれば、自動車業界の儲けによる寄与分が少なく、他業種(いろんな部品系やソフトなどで)の儲け・・黒字の蓄積によって生じていたことになります。
ちょうど電機系輸出が伸びて繊維系が振り落とされて行ったときの繊維・・自動車が伸びて電機系が振り落とされて行ったときのような役回りになっていることになるでしょう。
とすれば、自動車が輸出産業として駄目になっても、元々輸出で大して儲けていなかったとすれば、貿易収支上のダメージが少ないことになります。
ただし利益率が数%しかなくとも数量が巨額ですので、これがそっくりなくなると金額的には大変なダメージになります。

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