事業仕分け(増税4)

事業仕分けをしても「これだけは残したい」と言うならば、・・残したい事業コストが仮に100億円あって、税収が90億円しかないとすれば、その差額経費をどうするかの議論です。
たとえば衛星「ハヤブサ、の快挙によって、その事業を残そうとするのは誰も反対出来ないと思いますが、だからと言ってそのお金がどこから出るかの議論は別問題で避けて通ることは出来ません。
ハヤブサの事業を残すなら別の分他の事業を削減するか、ハヤブサに関する費用分だけ増税するかの議論しかない筈です。
差額10億円の増税に国民が応じないならば、結局10億円分支出をカットするしかないのが理の当然です。
国になるとお金がないのにだだっ子のようにあれもしたいこれもしたいと言っては借金でやろうとしているのが、不思議・・無責任過ぎると思います。
11月22日の日経新聞夕刊第1面には、アメリカで赤字削減のための1兆2000億ドル規模の増税に関する与野党の協議が決裂したと報じられています。
アメリカでは、不足分の増税が出来ない場合、不足分に達するまで国防費と裁量的経費について2013年から年に同額ずつの歳出を削減する法律(トリガー条項)があるそうです。
与野党がそろって「あれしろこれしろ」と要求するばかりでその費用負担に反対している場合・・衆愚政治に堕しているときに自動的に歳出が削減されて行く安全弁を備えているのはさすがです。
増税・拠出はイヤだが、事業仕分けしてもあれも必要これも必要というのですが、ここで必要という言葉の意味は「税負担するに足りる必要性」があるかどうかです。
その「コスト負担・・税を払うまでの必要がない」と言うなら、「その事業は存続する必要がない」というのと同じではないでしょうか?
「これ欲しいですか?」という質問の意味は、そこに正札がついていれば、その値段でも欲しいか?という意味ですし、半値なら欲しいがその値段では要らないという人もいるでしょう。
このように物事はコスト次第で欲しい・・必要性が変わるものですから、事業仕分けもそのコストをどうやって誰が負担するかも明らかにしながら議論しないと意味のないものになってしまいます。
時間の配分だって同じで私の事務所には、あちこちからためになる講義や勉強会のお知らせや書籍の宣伝が次々と飛び込んできますが、コチラの時間も有限ですから、ためになるからと言って手当り次第に受講したり本を読む暇はありません。
世の中には必要な知識や物・事業は無限にあるのですが、コストとの兼ね合いでみんな取捨選択しているものですが、国の事業になるとコスト負担をどうするかを考えないでも必要かどうかを立派な人たちが?議論しているのですから摩訶不思議ではないでしょうか。
収入・税収が一定の場合、不断に不要資産の圧縮努力による経費節減と固定経費増の均衡を図るべきですし、これが破れて赤字化している場合、納税額を増やすか享受するサービスの低下を受け入れるかの二者択一しかないのは理の当然であって、借金でこの穴埋めをするのは、増税するまでの一定期間の緊急事態に限るべきで、恒常的に借金に頼る考え方は邪道です。
(アメリカの場合、上記の通り2013年度までの約1年半の猶予があるようですが、この法律・トリガー条項が昔からあれば双子の赤字累積が生じなかった筈ですから、多分最近で来たのでしょう)

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