都民ファーストの実態1(組織不備・人材不足?)

小池旋風の支持基盤は、もともとメデイア連合の推す鳥越氏に対する反発・・反メデイア連合であって、メデイアの推す民進党支持母体・護憲勢力とはまるで逆方向の運動体でした。
小池旋風の原動力はなんであったかを11月1日に書きましたが、この期待を裏切ると支持・小池旋風のエネルギーを失うのは当然です。
小池フィーバーの原動力を維持するにはこの原動力・支持母体の拡大発展・・これを全国規模に発展させる努力が必須だったのですが、都議選圧勝後せっかくの支持母体の冷遇・逆に動き始めました。
民進党との全面合流→民進党に乗っ取られる不信感が高まってからの極左?排除論表明では遅すぎたし、しかも都議選後わずか2ヶ月で都知事選時小池支持の中核を果たした保守系地方政治家の内部排除が進んでいる実態が漏れ始めました。
今回の総選挙は突然の解散なので選挙準備期間が短かすぎるとしきりにメデイアが報道し、「解散の大義がない」と批判していました。
逆に短期決戦の場合、新党の政策吟味も何もせずにメデイアの圧倒的「よいしょ」報道で「選挙の風」フィーバーを作り出せば(選挙がおわってから「あれは民進党の生き残り策だった」となっても選挙結果は変わりません)その勢いで選挙の方向を決めてしまえる有利さがありました。
短期に小池フィーバーを起こすメデイア+小池氏の思惑・・戦略から今回の騒動が始まったのですが、すでに第一次ラウンドの都知事選〜第二ラウンドの都議選を経ている点でメデイの起こしたフィーバーの結果に対する検証期間があったことが大きな誤算だったと思われます。
都政の運営を始めると小池都知事当選前よりも小池氏独断の密室決定が増えてしまい党内議論さえ許されない状態・・以前よりもひど過ぎないかという批判が起き始めた・・都民ファースト創設メンバーの不満が出たことです。
この種の不満はその都議の元々の支持組織内で公然と言われていたでしょうから、メデイアが報じなくとも徐々に都民浮動層に広がります。
このような不満が蓄積しチョロチョロと漏れ始めている時に民進党全面合流決定が出ました。
合流という名の全面合併ですから、都議会で起きていることの全国版になることは容易に想像がつきます。
今回の総選挙ではメデイアと小池氏の仕掛けたトリックが露骨すぎたので、いかに選挙運動期間が短期間とは言え、多くの国民はすぐに虚構性に気がついてしまいました。
アイドル歌手を売りこむようなメデイアの作り上げる虚像にそのままホイホイと乗る国民がどれだけいるのかと見ていましたが、結果は周知の通りでした。
メデイア宣伝に簡単に乗らない日本国民レベルの高さに感心していますが・・逆から言えばメデイア界の宣伝次第でどうにでもできる時代が終わった印象です。
このシリーズでは小池氏の国政進出に横たわる問題の深さが、「排除の論理」を強調するだけではごまかし切れなくなったことを書いてきました。
小池氏の主張のデタラメさ(流行語さえ器用に使えばいい態度?)の一つである「都民ファースト」に戻りますと、他国の内政にまで手出し、口出ししているアメリカと違い都知事がこれまで他県の県政に介入して都民の税金を使ったこともありません。
どこの知事でも地元のために頑張って来た(・・その方策としてここは国に協力した方が良いか盾ついた方がいいか特定の県と共闘した方が良いかの塩梅はありますが)のですから、都民ファーストと強調する意味が不明・・・結果的に地元のためになろうとなるまいと・是是非ではなく「何でも国や関係他府県の政策に反対する」という政治スタンスぐらいしかイメージできません。
近隣の迷惑を考えずに真っ先に地元利益の主張をするのは、一見勇ましいもののストレートな主張の仕方は日本的政治のイロハからすれば拙劣なやり方ですが、この程度の政治家がふさわしい都民レベルであればそれも民主主義でしょう。
しかし、日本全体をどうするかという国政選挙に出る以上は、都民ファーストの主張は都民以外の国民からすれば、不愉快な標語でしょう。
都民ファーストの対語は端的にいえば「よそがどうなろうとよその面倒まで見たくない」という事ですが、これを唱える政治家が、国全般に目配りする国政担当者になりたいと旗揚げするのは矛盾しています。
都政ファーストで相応の実績を上げてから今度は地方政治の経験を生かして国政の立場で・というならばまだ分かりますが、まだ「リセット」するという掛け声で大混乱を起こした結果があっただけで、いまだに築地の移転時期さえ決まっていない状態です。
都民ファーストの主張は、従来以上に国の政策にノーを言うイメージですが、都知事になったばかりの人間が国家全体の運営者になる名乗りをあげるとその関係はどうなるのか?弁護士で言えば双方代理をするような関係で、全国に目配りしなければならない国政代表と相容れない立場です。
小池氏は、この1年の都政で築地移転問題でいかにも過去の決定過程・・石原元都知事に問題があったかのような思わせぶりな大騒ぎをしたものの結果的に高齢者イジメをしただけに終わり、オリンピックも似たような疑惑らしいもので大騒ぎしていましたが、結果的に何をどうしたいのか不明のまま元の計画通りにやることになった印象で、結果的に移転時期が遅れただけのように見えます。
都政を透明化すると言って立候補したのに都知事就任後は、個人的ブレーンとの密室決定を強行する独善的姿勢・公的決定システムをないがしろ・空洞化する不透明な言動が目立ちます。
これを強行するために7月の選挙で圧倒的議席を得た都議会与党が黙って賛成するだけという無茶な議会運営のイメージが伝わってきます
国政に関しても内部留保に課税するなど掲げる公約は全て素人目に見ても無茶過ぎるというか、素人目にも詰めの甘いその場しのぎ的公約が多すぎました。
いわば実現可能性のない無茶クチャな公約を宣伝した民主党が政権獲得後どうにもならなくなった民主党政権の焼き直しです。
民主党政権より酷いのは、政党を作ったと言いながら党内の組織・役職もはっきりせず、政党説立準備を進めてきた若狭氏をコケにして、小池氏一存で「私が代表になる」というと即時にその通りに決まってしまう・・機関決定なくいきなり小池氏が意見を発表するとそれがそのまま党の公式意見になるなどのイメージが広がりました。
無茶な党運営をしているのは・・組織立ち上げ直後で組織運営経験もなく人材も揃わないし、実務が間に合わないこともわかりますが、会社を作ったばかりで設計部門も下請けも作業員も揃っていませんが、やる気だけありますから私に任せてビルを建てさせてくださいと言ってくる建設会社のようでは国民は困ります。
古来から「勇将の下に弱卒ナシ」と言いますが、勇将一人で大軍と戦えません。
野球でもサッカーでも監督一人で戦えるのではなく、第一線で働く選手その他の人材・・組織でなり立つものです。
政治の場合にも多くの協力者がそれぞれの立ち場で一体感を持って根回しして物事が動いて行くのであって、党首1人の虚像をマスメデイアが作りあげても意味がありません。
そこがアイドルや銀幕のスターの場合、虚像さえ売り込めばいいのとの違いです。

希望の党の構成員(排除発言と公認条件の乖離)

小池旋風支持母体は本来民進党的政治思考と相容れない集まりですから、小池氏が支持基盤を民進党に頼り看板娘になるのでは当初支持者の支持を維持できるわけではありません。
(風を読むのに長けた彼女は風向き急変に焦ったのか?)予定外に早い段階で政権の方向性は都知事選に出たときと大枠が変わらない・井戸を掘った人を大事にするという・意見表明を迫られたことが小池氏の大誤算になります。
表向き「左翼排除」発言して見えを切っても、内部組織では逆に元々の支持者切り捨てが進んでいたことが以下紹介する都議離党事件での離党に至った経緯報告でしられます。
小池氏の憲法改正に対するスタンスは・・報道によれば公約になったと思いますが、9条だけはなくもっといろんな分野の改正をすべきだというもので、いかにも安倍政権よりも憲法改正に積極的かのようなイメージを打ち出したのは、「民進党に乗っ取られるわけでない」「事実上乗っ取られても公約に入れておいたらこれだけは守れます」という言い訳っぽく見える・・と保守票を意識せざるを得なくなった様子が見え見えでした。
希望の党の公約詳細検索すると以下に出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2017/commitment/20171007-OYT8T50000.html

8 憲法改正
自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方を議論します。地方自治の「分権」の考え方を憲法に明記し、「課税自主権」、「財政自主権」についても規定すること。憲法全体の見直しを、与野党の協議によって進めていきます。

公約は長いので憲法改正部分だけ引用しておきますが、「自衛隊の存在を含め・ありかたを議論します」というだけでメデイアのイメージ報道とは違い、9条の改正を認める方向の意見かどうかすらはっきりさせていませんし、地方分権をセットにした改正しか認めない公約のように見えます。
排除の論理表明で一躍有名になった公認条件の最終版を紹介します。
これを読んでみると現行の安保法制賛成の誓約書を取るかのようなメデイアの「排除発言」報道とかなり違っています・・以下の通り

「憲法に則り適切運用を前提に普段の見直しを行い現実的な安全保障政策を支持する」

というだけですから、当選後の議員の多数意見で現行法は憲法違反だと主張する余地を残していて「非武装平和論こそが現実的だ」という民進党の主張をそのまま受け入れる余地を残しています。
要は保守系支持者をつなぎとめるための表向きの「排除」報道内容とは大違いだった・・二枚舌と言うか民進党向けには「ゆるゆる」の条件だったことになりますが、記者会見では質問に応じる形で大見得を切るしかないところまで追い詰められてしまった様子です。
前原氏など幹部間との内部協議ではどうにでもなるような文書になっていた・これでOKして民進党は全員合流を満場一致で決めていたのですが、本来の支持層の疑念を晴らすためにそこまではっきり目出会いに報道してもらわざるを得なくなってしまったのです。
小池氏にメデイア向けに大見得を切られてしまった結果、反安保姿勢を曖昧なままで合流予定だった民進党の断固左翼系は(選挙民に希望に合流しても従来姿勢はかわらないと説明できなくなってしまい)メデイア対策上進退に困ってしまって・実態に遅れて大騒動になったように見えます。
希望の党の公認条件は以下の通りで表向きの排除論理の表明とは大幅に違うユルユルの条件です。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171003/k00/00m/010/128000c

希望の公認条件、安保関連法「適切に運用」に
1 希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。
2 現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。
3 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)を徹底し、国民が納める税の恩恵が全ての国民に行き渡る仕組みを強化すること。
4 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。
5 国民に負担を求める前に国会議員が身を切る改革を断行する必要があること及びいわゆる景気弾力条項の趣旨を踏まえて、2019年10月の消費税10%への引き上げを凍結すること。
6 外国人に対する地方参政権の付与に反対すること。
7 政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。
8 希望の党の公約を順守すること。
9 希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。
10 選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わないこと。

「4 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。」の意味は9条だけではなくもっと幅広い改正を求めるという報道でしたから、自民党が飲めないその他の改正と一緒でなければ賛成できない「部分改正反対・大幅改正を求める」と勇ましいことを言っていれば、結局改正が不可能になることを前提に「これでいく」という民進党幹部(としては、「あれもこれも一緒に改正しないならば反対」というならば結果的に反対ですから)との裏での合意があって、この表明になったと思われます。
もちろん以上は私がこの発表をした時に受けた個人的推測でしかありませんが、国民の多くも民進党(ゆくゆくは事務局スタッフも資金も)を丸ごと抱き込んだ上での公約発表の欺瞞性を感じていたのでないでしょうか?
「排除の論理」をメデイアで大々的に打ち出され正面から安保法制賛成が条件と踏み絵を迫られると安保法反対論の中核をになっていたグループは、(支持者には「合流してしまえばどうにでもなる」という説明ができても)選挙運動としては表向きだけでもそこまで主張を引っ込めると自己の政治生命に関わります。
政治の世界で一方の旗頭になるには、内実は別として相応の大義が必須でこれを捨てると大方の場合おしまいです。
そこで希望の党への公認申請を諦めたグループを中心にして新党結成へ動きが広がってしまいました。
これは小池氏と協議した民進党窓口のグループとしては読み筋どおりだったでしょう。
前原氏は「想定内である」と言っていましたが、強がりではなくその通りだったでしょう・・もともと左右が相容れないまま同じ党にいたのですから、この機会に切り捨てたいのは当然です。
メデイアはしきりに
「憲法改正を旗印にしたから失速した」
「排除表明で失速した」
と言いますが、排除表明で合流で合流できなくなった議員は民進党公認候補のなかで半分もいません。
当時の民進党支持率は6〜7%しかないのですから、この三分の1が逃げてもその代わり中道の浮動層が大挙はいれば、その方が多いはずです。
政治信条はどうでもいい・・数さえ揃えばいいというスタンス・・小池氏の本音を肝心の都知事選以来の小池氏支持層が見てしまったので、目くらまし的な安保法制賛成の踏み絵の宣伝など信用しなくなりました。
そこで、左翼支持のメデイアが排除宣言に失望したので、「希望の党に希望がある」というムード宣伝をしてやらなくなった・だから失速したのだ」
「メディアがネットに負けたのではない」
「メデイアを敵に回すと怖いぞ!」
と言わんかのような裏宣伝もあるようですが、実態はその逆でしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC