希望の党の構成員(排除発言と公認条件の乖離)

小池旋風支持母体は本来民進党的政治思考と相容れない集まりですから、小池氏が支持基盤を民進党に頼り看板娘になるのでは当初支持者の支持を維持できるわけではありません。
(風を読むのに長けた彼女は風向き急変に焦ったのか?)予定外に早い段階で政権の方向性は都知事選に出たときと大枠が変わらない・井戸を掘った人を大事にするという・意見表明を迫られたことが小池氏の大誤算になります。
表向き「左翼排除」発言して見えを切っても、内部組織では逆に元々の支持者切り捨てが進んでいたことが以下紹介する都議離党事件での離党に至った経緯報告でしられます。
小池氏の憲法改正に対するスタンスは・・報道によれば公約になったと思いますが、9条だけはなくもっといろんな分野の改正をすべきだというもので、いかにも安倍政権よりも憲法改正に積極的かのようなイメージを打ち出したのは、「民進党に乗っ取られるわけでない」「事実上乗っ取られても公約に入れておいたらこれだけは守れます」という言い訳っぽく見える・・と保守票を意識せざるを得なくなった様子が見え見えでした。
希望の党の公約詳細検索すると以下に出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2017/commitment/20171007-OYT8T50000.html

8 憲法改正
自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方を議論します。地方自治の「分権」の考え方を憲法に明記し、「課税自主権」、「財政自主権」についても規定すること。憲法全体の見直しを、与野党の協議によって進めていきます。

公約は長いので憲法改正部分だけ引用しておきますが、「自衛隊の存在を含め・ありかたを議論します」というだけでメデイアのイメージ報道とは違い、9条の改正を認める方向の意見かどうかすらはっきりさせていませんし、地方分権をセットにした改正しか認めない公約のように見えます。
排除の論理表明で一躍有名になった公認条件の最終版を紹介します。
これを読んでみると現行の安保法制賛成の誓約書を取るかのようなメデイアの「排除発言」報道とかなり違っています・・以下の通り

「憲法に則り適切運用を前提に普段の見直しを行い現実的な安全保障政策を支持する」

というだけですから、当選後の議員の多数意見で現行法は憲法違反だと主張する余地を残していて「非武装平和論こそが現実的だ」という民進党の主張をそのまま受け入れる余地を残しています。
要は保守系支持者をつなぎとめるための表向きの「排除」報道内容とは大違いだった・・二枚舌と言うか民進党向けには「ゆるゆる」の条件だったことになりますが、記者会見では質問に応じる形で大見得を切るしかないところまで追い詰められてしまった様子です。
前原氏など幹部間との内部協議ではどうにでもなるような文書になっていた・これでOKして民進党は全員合流を満場一致で決めていたのですが、本来の支持層の疑念を晴らすためにそこまではっきり目出会いに報道してもらわざるを得なくなってしまったのです。
小池氏にメデイア向けに大見得を切られてしまった結果、反安保姿勢を曖昧なままで合流予定だった民進党の断固左翼系は(選挙民に希望に合流しても従来姿勢はかわらないと説明できなくなってしまい)メデイア対策上進退に困ってしまって・実態に遅れて大騒動になったように見えます。
希望の党の公認条件は以下の通りで表向きの排除論理の表明とは大幅に違うユルユルの条件です。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171003/k00/00m/010/128000c

希望の公認条件、安保関連法「適切に運用」に
1 希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。
2 現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。
3 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)を徹底し、国民が納める税の恩恵が全ての国民に行き渡る仕組みを強化すること。
4 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。
5 国民に負担を求める前に国会議員が身を切る改革を断行する必要があること及びいわゆる景気弾力条項の趣旨を踏まえて、2019年10月の消費税10%への引き上げを凍結すること。
6 外国人に対する地方参政権の付与に反対すること。
7 政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。
8 希望の党の公約を順守すること。
9 希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。
10 選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わないこと。

「4 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。」の意味は9条だけではなくもっと幅広い改正を求めるという報道でしたから、自民党が飲めないその他の改正と一緒でなければ賛成できない「部分改正反対・大幅改正を求める」と勇ましいことを言っていれば、結局改正が不可能になることを前提に「これでいく」という民進党幹部(としては、「あれもこれも一緒に改正しないならば反対」というならば結果的に反対ですから)との裏での合意があって、この表明になったと思われます。
もちろん以上は私がこの発表をした時に受けた個人的推測でしかありませんが、国民の多くも民進党(ゆくゆくは事務局スタッフも資金も)を丸ごと抱き込んだ上での公約発表の欺瞞性を感じていたのでないでしょうか?
「排除の論理」をメデイアで大々的に打ち出され正面から安保法制賛成が条件と踏み絵を迫られると安保法反対論の中核をになっていたグループは、(支持者には「合流してしまえばどうにでもなる」という説明ができても)選挙運動としては表向きだけでもそこまで主張を引っ込めると自己の政治生命に関わります。
政治の世界で一方の旗頭になるには、内実は別として相応の大義が必須でこれを捨てると大方の場合おしまいです。
そこで希望の党への公認申請を諦めたグループを中心にして新党結成へ動きが広がってしまいました。
これは小池氏と協議した民進党窓口のグループとしては読み筋どおりだったでしょう。
前原氏は「想定内である」と言っていましたが、強がりではなくその通りだったでしょう・・もともと左右が相容れないまま同じ党にいたのですから、この機会に切り捨てたいのは当然です。
メデイアはしきりに
「憲法改正を旗印にしたから失速した」
「排除表明で失速した」
と言いますが、排除表明で合流で合流できなくなった議員は民進党公認候補のなかで半分もいません。
当時の民進党支持率は6〜7%しかないのですから、この三分の1が逃げてもその代わり中道の浮動層が大挙はいれば、その方が多いはずです。
政治信条はどうでもいい・・数さえ揃えばいいというスタンス・・小池氏の本音を肝心の都知事選以来の小池氏支持層が見てしまったので、目くらまし的な安保法制賛成の踏み絵の宣伝など信用しなくなりました。
そこで、左翼支持のメデイアが排除宣言に失望したので、「希望の党に希望がある」というムード宣伝をしてやらなくなった・だから失速したのだ」
「メディアがネットに負けたのではない」
「メデイアを敵に回すと怖いぞ!」
と言わんかのような裏宣伝もあるようですが、実態はその逆でしょう。

アメリカンファーストと都民ファーストの違い

以上見てきたように内政重視・・正攻法の政治をするには政治家に利害調整能力が必要であるほか国民の方も妥協できる能力・よほど民度が高くないと難しいことが分かります。
日本は奈良〜平安〜江戸時代を通じて外敵を求めずに内部完結政治をして国民も満足してモラルを高め独自文化を発展させてきましたが、このような真似をできる国はそれほど多くありません。
アメリカは世界最強のイギリスを退けた独立戦争直後から今の中国のようにアメリカの強引な行動が目立つようになり(うまく行かないとモンロー宣言でアメリカ大陸に引きこもる)事実上どこの国も文句言えない状態が続きました。
第二次世界戦後西側諸国では名実ともに一強になり、さらにソ連崩壊で世界の一強になりましたので第一次イラク戦争を初め国外でやりたい放題でしたが、IT~AI技術の発展に象徴されるように大規模設備不要の少数者の威力・・ネット発信力を無視できなくなってきました。
日本で言えば、マスメデイアの情報独占が崩れ個々人のネット発信力が強まりましたが、これが物理的側面に出たのがテロの威力増大です。
サイバーテロが象徴的ですが、正規軍の強大さだけでは対抗できなくなりました。
言論世界でもマスメデイアさえ押さえれば、好きなように世論誘導できる社会ではなく個々人のツイッターその他ネット発信威力を無視できません。
世界政治が軍事力や資金力だけを背景に自己主張を押し通せるような単純なものではなくなってきました。
国際政治も内政並みの複雑さになると、内政経験の蓄積がないまま・複雑な利害調整不要な単純社会であるからこそ図体が大きくなれているという面もあります・・超大国になったアメリカ〜ロシア〜中国など領域の大きさに頼る大国政治家には手に負えなくなってきました。
地形を見ても複雑な地形では大きな国になりにくいし、大平原地帯等では利害が単純ですから広大な領域支配が可能です。
中国が数千年単位の大国経営の経験があると思う人が多いでしょうが、日本のように自然に出来上がった集落が近隣集落と意見のすり合わせ・利害調整を経て大きくなったのではありません。
中国大陸の政治支配の内実は点々とした飛び地に出先砦を作り上げた飛び地経営・都市国家連合形態ですから、砦と砦の間の広大な空間に住む原住民の攻撃を防ぐための城壁に守られた都市国家・点と点を支配して来たにすぎません。
これが現在の「都市戸籍」と「農村戸籍」二分の源流と見れば歴史を無視できないことが分かるでしょう。
日本の城下町は地元住民の出入りが自由な仕組みですが、中国の場合には都市そのものが都市外の地元住民を敵視して大規模な城壁で囲まれているし、原住民の襲撃を防ぐために鶏鳴狗盗の故事で知られるように夜間は厳重に閉じられて兵が守るのが原則です。
近代〜現在においても、華僑が人口の大多数を占めるシンガポールでうまくいっているし香港、深セン特区や上海租界などの「点」としての都市を治める政治をしている限りうまくいく社会です。
アメリカの自治体のあり方を紹介している途中ですが、アメリカの場合も広大な空間の広がりの周囲に旗を立てて支配空間を決めただけで、内容がスカスカの状態・・飛び地支配で始まっています。
広域テーマが増えてきて共同して対処するための自治体間協議が全くまとまらない状態についても、Oct 15, 2017「アメリカの自治体4(自然発生的集落の未発達→内政経験未熟1)」に紹介したばかりです。
アメリカの政党・共和党は経済を含めた外交とセットの戦争のためにある政党と言われていますし、民主党・リベラル系は庶民の味方と称してバラマキだけで利害調整型政治はできません。
日本の民主党政権も韓国の文在寅政権も同様で、単純に「無駄を省けばバラマキ資金が出てくる(日本民主党政権)」「仕分け」など韓国文在寅大統領も内部留保を吐き出せとか、公務員を80万人?(正確な数字は忘れました)の大量雇用するとか、最低賃金引き上げなど強権的決定で押し切ろうとするやり方が基本であって、利害調整で何とかしようとする姿勢がありません。
以下は、https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/page-3.htmlから「文在寅大統領」のキーワードで拾った検索データの一部です。

韓国、「最低賃金」大幅引上で零細企業に財政援助の「間違い」
韓国、「原発廃止表明」原理主義と独善で唖然「電力対策」欠く
「社会的大妥協」という強制
『ハンギョレ』(6月11日付)は、「文在寅大統領、働き口解決法として『社会的大妥協』を提示」と題して次のように伝えた。
文氏の選挙公約では、次のような点が上がっていた。
(1)公的機関で81万人、民間で50万人の雇用創出(潜在失業者を除く実数で135万人であるから、これを吸収する人数)
(2)最低賃金を時給1万ウォンに引き上げる(労組の要求通り。現在は約7000ウォンであるから20年までに実現するためには年率15%の引き上げが必要)
(3)4大財閥を中心とする財閥改革(労組の経営への参加)などを掲げた。一言で言えば、韓国経済を成長させ、その果実で分配を改善するのではなく、現在のパイの中で分配を変えるということであろう。」

韓国新大統領の政権運営を見ると平成10年代始めの日本の民主党政権の運営と似ているのに驚くばかりです。
「草の根の意見を大事にして・・」というのが決まり文句ですし、自分たちだけが民意の代表という決めつけをしていますが、実際に政権を取ると国民意見吸い上げ・利害調整能力がないので、八ッ場ダム工事中止決定や強権的にできることばかりに精出していた印象でした。
権力的決定はどうにもならない・権力の及ばない利害調整の必要な沖縄基地移転問題ではアメリカ相手に為すすべもなく大恥を書いたのは、強権決定に頼っている民主党政権の本質的矛盾によるものでした。
文在寅が、就任直後サード配備工事中止を命じたものの、対米関係上無理があって結果的に配備せざるを得なくなったのは鳩山政権の基地移転問題と同じです。
政治家・政党が「〇〇をやる」という以上は、何事も反対意見があることを前提に利害調整を自分ならばうまくやってみせるという意味であって、「アメリカに反対されたのでできません」というのでは、当初からできる見込みもない公約・・虚偽公約になります。
上記原発ゼロが問題視されているのはゼロにした場合に穴埋めの電力をどうするかの総合政策がないまままの発表だからです・中国の大躍進政策のように、決めた以上は権威に関わるので電気不足で国民が困ってもやるというならば別ですが・・。
同様のことは、蓮舫氏の30年までの原発ゼロ政策発表が無責任として民進党内で総スカン受けて引っ込めざるを得なくなったのと同じことを文在寅が繰り返しています。
こういう稚拙な政治家が国内批判もなく5年間もトップに君臨する・・人材不足・引いては民度の低さが韓国の不幸です。
アメリカの自治体紹介を年内から来年初ころに再開したいと思っていますが、アメリカは気がつくと国内政治・利害調整をうまくやる能力がない・・自国内で利害調整能力のない民族が国際政治の利害調整者を務めるのは無理があると気がついた状態です。
国際政治のヘゲモニー争いに執心して国富をつぎ込むのは国民福利に関係のないことだと気がついたのが、トランプ氏の唱える「アメリカンファースト」との意気込みとすれば時宜を得ていることになります。
アメリカも今後はロシア的外延拡張政策より自分達のために・・「内部の充実が重要・・先ずは利害調整できる程度まで民度を引き上げることが先決」という意味の方針転換とすれば歴史必然であり、正しい方向性というべきです。
ちなみに昨春以来の小池都知事の「都民ファースト」のフレーズは、都民無視の対外支出が都政で続けられてきたのならばこれを改めるのは当たっていますが、小池知事は過去の何が都民ファーストでなかったのかについて何も言いません。
小池都知事は都政で前任者がしていたことの何が都民ファーストでなかったのか明らかにしてこれをやめて今後何にファーストの焦点をあてるかの説明がないまま、1年以上過ぎてしまいました。

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