サービス社会化2(貿易依存度2)

新興国の高度成長・・GDPが上がった分のほぼ100%近くが輸出なので内需に関係しない上に、元々のGDPが低いので進出企業の対GDP比が高い・・結果的に貿易比率がバカ高くなるのが普通です。
最貧国や後進国が、近代製造工場の誘致によって近代工場への労働参加によって現地従業員の所得がアップするとそれまで裸足で歩いていた人も靴を買い、クルマやテレビも、あるいは日本向けエビ加工したり化粧品を作っていた人が自分も欲しくなります。
購買意欲が高まる→人件費上昇によっていわゆる中進国になると、輸出目的の生産工場の採算が悪くなって次の新興国ベトナムなどに移転して行くと中進国工場は自国内需中心に変化しないと生き残れません。
自国相手になると輸出に関わる恩恵で輸出用製品を買える層が育っていても、輸出がゼロになる訳ではないとしても輸出減少分の全量国内消費するには無理があって大幅減産ですから、失業対策上内需拡大→購買力アップに切り替えるしかありません。
内需の仲介役としてのサービス業従事者が必要であるし、一方で国内製造業減産による失業対策にもなります。
ところが、・・サービス業の生産性は先進国から誘致した近代製造業より生産性が低いのが普通なので、サービス業へ転換が進むと成長率が低下する循環に入らざるを得ません。
これが中進国の罠の原理です。
この辺は先進国の場合、新興国への工場移転が始まったときからこの問題が起きている点では先輩ですが、先行者利益享受期間が1世紀単位でであった結果、内需力が大きく育っているのと国内生産力のうち輸出分が少しずつハゲ落ちた程度・・緩やかな縮小なので対応力があります。
例えば日本ではトヨタに限らず各種名の知らぬ業界で見ても、今でも多くの企業は何割かの輸出を残していて海外工場を徐々に増やして輸出比率を下げていくだけのことです。
今朝の日経新聞朝刊15pにはNTNと言う私には何を作っている企業なのか全く知らない企業名(車軸メーカーらしい)で、トランプ氏の要求に応えて米国内工場の増強・現地生産比率を上げると発表したことを書いていますが、記事内容を見ると同社は現在海外売り上げ7割だが国内生産5割と言うことで、結果的に二割分が国内から輸出している構造であると紹介しています。
日本の場合消費材・・テレビ洗濯機などは最終組み立ての単純工程なので後進国へほぼ移管していますが、BtoB・・高度部品製造分野ではなお国内に多く留まって輸出企業になっているのが普通です。
この辺流れ作業用労働者中心のアメリカでドンドン製造業の職場がなくなっているのとの違い・・なお製造業が健在である原因です。
輸出成長から内需への時間軸の早さも問題です・・世代的に言えば、田舎から出て来た第1世代は先ず製造業や建設など3K職場で働いて、都市住民第二世代になってコンビニ等のサービス業についた方が無理がありません。
このように1世代以上経過の緩やか変化ならば業種転換も無理がないですが、新興国の場合、高成長ストップ即な内需切り替えでは、消費者も十分育っていないしサービス業向け人材も育っていません。
先進国でも日独等熟練工中心社会はまだ製造業が強いですが、アメリカ式単純粗放生産社会では、新興国が台頭するとすぐに製造業が凋落する点では、2極分化があると思われますがその点はここでは措くとして、製造業が衰退して行く社会では、その分サービス経済化して行くしかない点は同じです。
それでもアメリカイギリスの場合早くから成長していたので、過去の蓄積を背景に貿易赤字をものともせずに?内需を増やすことが可能・・文化力を背景にした商品競争力がある・あるいは世界進出用の研究開発部門を抱えている分だけ有利です。
韓国の場合も貿易依存度の高さ・・内需力の貧弱さが知られていますが、本来は中国より約20年間早く近代工業化していたのですから、成長に応じてちゃんと給与を払っていれば国民の消費水準・内需率が上がって行くべきでした。
新興国の人件費が上がると輸出主導による経済成長が頭打ち・・貿易依存度低下=内需経済移行・・国民にとってはその前約10数年〜20年間の目一杯働いた高成長の果実を得られる時期に入ったので良いことですが、成長率基準で言うと経済運営の苦しみが生じます。
元々、食糧や洗濯機など欲しい財が1〜2%しか供給されていない場合、生産量を前年比何%増やせるかは重要な指標です。
しかし供給・・例えばピアノが100%行き渡った場合、前年比生産量が1割増えても二割増えても買い手がつかないのは当たり前・・だから輸出に活路を求めて来たのです。
相手国に供給不足がある場合、他国との輸出競争に勝つ→国内生産が増える成長率に意味がありましたが、世界的に供給過剰になって来ると、国内生産が頭打ちになった場合と同じで前年比増の成長率にこだわる意味がなくなります。
市場が飽和状態になった場合、市場規模が同じでも個別企業にとっては、ゼロサムゲームで生き残れる企業がどこになるかでしのぎを削る意味がありますが、マクロ経済での成長率やGDP指標は意味がありません。
我が家ではバルミューダと言うパンがおいしく焼けるトースター新発売のときから愛用していますが、国内のトースター利用数が殆ど変わらない場合、よりよい製品でどこが勝ち残れるかと言うだけで国内のトースター販売数はほぼ変わらない・・同様に各種製品に工夫を凝らしても全体GDPは変わりません。
国民の満足度勝負・・生活水準アップ中心社会では、GDP成長率神話はあまり関係ないことが分るでしょう。
良い物を作ればその製品が海外にも売れますが、今バルミューダをネットで調べると日本の若者グループが開発したものですが、台湾製造による輸入品であることが分ります。
国内メーカーのトースターを撃退シテの快進撃ですから、トースターの総売り上げは同じで結果的に日本のGDPが逆に下がっている関係になっています。
上記のとおり、海外進出循環を経て内需中心経済になると製造業は製造コストの安い国に移行して行く・・・成長率が下がるのは当たり前です。
これを前提に失われた20年と言われて来ましたが、日本の国民にとっては内需が豊かになる個々の国民が成長の成果を享受出来る・すごく良い時代であったと繰り返し書いて来ました。
お隣の韓国も国民を大事にして内需転換時期をもっと前に来させるべきだったのですが、これが先送りさせていたのは外資支配による結果でないかと憶測しています。
アジア通貨危機以降銀行・金融機関は殆ど全部、その他大手企業の資本が外資に大方に握られてしまった関係で、低成長モデルの内需にシフト出来ない・・国民が貧しいまま・労働分配率が低かったままになっていた可能性があります。
この結果、人件費上昇による中進国の罠にはまらなかった幸運?と、タマタマ超円高(超ウオン安)効果で長い間輸出が好調だったので貿易依存度が高いまま・・内需転換が先送りされていたことになります。

サービス社会化1(貿易依存度1)

WTO違反の裁定などどうせ時間がかかるので、その前に日本が屈服して来るだろうと言う実力主義・・WTO裁定(負けるのが分っていても)の結果を中国は気にしない態度を明らかにして来ましたが、僅か1年で大規模訪日団を送るところまで追い込まれたのは中国の方でした。
レアース禁前後には、事前に決まっていた訪中使節その他ありとあらゆる日中交流日程を予定が立たないなどと言う理由で次々とキャンセルして来たことから見れば、自分の方から訪問して来るなどは180度の方向転換です。
ただ、この辺はそれほどメンツにこだわらない中国人民の柔軟性で、韓国のようにトコトン修正出来ない硬直民族との違いです。
いろんな事象に対するネットコメントを見ると、韓国人のコメントでは北朝鮮政府声明のようにいつも決まりきった反日意見しか出て来ませんが、中国人のコメントはネット検閲が厳しいと言われる割に、自国を客観的に見るコメントが多いのをみるとこれが、政府の柔軟性と繋がっているのでしょう。
もしかして柔軟性と言うよりも実利100%の国民性・・恥も外聞もない・・実利優先と言う方が正しいのかも知れませんが・・。
中国地域は異民族支配の方が長い・現在でも多民族社会ですから、物事を相対的に見る習慣が本来あるとも言えます。
専制支配が長かった印象から外れますが、異民族・多民族社会であるから自由に意見を言わせると百家争鳴でまとまらない・・強権支配しか出来なかったとも言えます。
巨人と言われたチトー死亡後ユーゴスラヴィアが解体に向かった例でも分りますが、余程の指導者か強権支配しか社会が持たないのかも知れません。
低レベル社会では落ち着いたが話し合い解決が不可能なので、議院内閣制ではなく大統領制でないと国家運営出来ない原理に繋がっています。
大統領制とは専制支配の民主的修辞です。
元々漢民族自体が黄河中流域の洛陽〜開封までの盆地・・中原地域を囲む四囲の個性の異なった民族・・北狄(高原・山麓の狩猟民族・西戎(荒涼たる砂漠の騎馬民族)・南蛮(江南・湖沼水郷系民族)、東夷(黄河デルタ地帯の民族)が、市場交易を求めて渡河の容易な黄河中流域に集まって混合した民族がその原型です。
時代の進展により、狭い中原から交易圏が広がり、(春秋戦国時代に新興勢力楚王が、周王室の鼎の軽重を聞き、秦末漢楚の攻防も結局は長江流域が交易圏に組み込まれて来た時代を表しています)今では何千km単位の広大なイメージの西戎(アフガニスタン付近まで含む)南蛮(ベトナム〜インドを含む)東夷(朝鮮日本を含む)ですが、元は洛陽あたりを中心に目に見える範囲の周辺山地・原野・デルタ地帯の先を指していた言葉です。
交易権が広がると水運に便利な便利な下流に中心地が移り、洛陽から開封に都が移って行きます。
日本でも壬申の乱の頃の東国とは、今の岐阜県あたりを指していたのですが、中世では箱根以東をさすようになったように、周辺呼称の範囲は行動圏の広がりに連れて広がります。
レアアース禁輸に話題を戻します。
レアアース禁輸後約1年経過で勝負がついて中国経済代表団が訪日せざるを得ない結果になったのは、WTOの裁定(正義)によったのでなく、日本の技術力・抵抗力が上回ったことによります。
中国は嫌がらせで日本企業を閉め出したつもりだったのに、日本の高度技術が必要なので日本からの投資減退で参ってしまったことによります。
(穴埋めにドイツ誘致を計画しましたが補完し切れないことが分ったので、手のひら返しに訪日団を結成するしかなくなったのです。)
現在韓国が中国の締め上げに参っているのは、フィリッピン同様に韓国には代替の利かない高度技術が少ないのでスキなようにやられている原因です。
日本もBtoBではなくBtoCあるいは訪日中国人観光客や現地スーパーのような代替性の高い分野に頼る業界が増えると、中国が何か要求を通したくなるとイキナリ対日観光客を絞ったり、現地日経コンビニなどを標的の不買運動など嫌がらせが始まるので、リスクが大きくなります。
フィリッピンのバナナの通関手続を故意に遅らせて腐らせてしまったりしていましたが、レアアース事件のときにもこの味を占めてたのか?日本からの輸入品の通関手続を故意に遅らせるイヤガラセをしていましたが、部品は腐らないし困ったのは輸出向け工場で日本製部品の早期組み込みを必要としていた中国民族企業の方でした。
現在中国の対韓嫌がらせも観光・韓流その他消費系が困っているだけで、今朝の日経新聞によるとサムスン・SKなどの対中半導体輸出は今年二月は前年比5割増メモリーは8割増とかで好調らしいです。
今後中国の内需目的の進出企業が巨額投資してしまうと、フィリピンのバナナのように何をやられても我慢するしかない・・かなりのリスクが生じます。
ここからサービス経済化にどのように対応するべきかテーマに入って行きます。
3月11日日経新聞朝刊7pには、米雇用23.9万人増の見出しとともに「完全雇用の死角」の題名で1990年から2016年までに民間雇用者総数は3000万員増えたが製造業では500万人減り代わりにサービス業では2500万人増えている」
「長い目で見ると給与の高い製造業の減少傾向が続き給与水準の低いサービス業へシフトが進んでいる」
となっています。
その記事の冒頭に建設現場では、給与を2〜3割上げても人手不足のままと言う現象を紹介しています。
如何にも白人・中間層は元々3K職場・建設現場に来ない・・移民労働者が入って来ないとどうにもならないと言うイメージ操作っぽい記事でもありますが、一応こんなところです。
全体の論調は(移民に職を奪われたのではなく)完全雇用下なのに多くの人が不満を持つようになったのは、サービス業シフトが賃金低下・生活水準低下を進めたから・・と言う説明です。
先進国の発展過程は、一般的に地場で成功した企業が県外等へ輸出し、次いで◯◯地方から全国規模輸出となるに連れて工場も域外に作って行く、最後に海外展開して行くのでこの間に儲けの還元などで自然と内需・サービス業も追いついて行きます。
AI化やロボット化オートメ化進展で製造業の発展に連れて成長していたサ−ビス業が、(工場周辺飲食店ではなく)製造業と切り離して独自に必要な時代が来たのです。
中国、韓国などの中進国の足踏み現象を経済的に見ると、この順次発展の過程を経ていない分、より大きな構造問題が起きるように見えます。
自発的発展ではなく、低賃金を武器にした世界の工場機能を果たすときには、元々ゼロのところに先進国から先端的近代工場が進出して来るので後進国の前近代的生産性から見ると百倍?規模で生産性アップする上に、誘致にあたっては国内産業保護のために当初100%輸出用生産しか認めないことが多い・・国内需要無視の輸出型工場誘致ですので先進国本社で輸出先を用意してくれる・・作った分だけ売れます。
中国開改革開放後に日本向け野菜などの(日本人好みに合うように)生産指導が盛んでしたが、全量日本のスーパーなどが引き取る契約でした。
毒餃子事件の騒動の報道もこの種の流れは分るでしょう。

大規模工場閉鎖の恐怖

中国が、国民を豊かにするために外貨準備を仮に国民に均等分配すると一人当たりいくらにもなりません。
仮に13〜14億人しかいないとしても、一人1万円で13〜4兆円、ひとりあたり10万円でも130〜140兆円必要ですから、(100万円の場合その10倍)外貨準備を全部使ってしまう訳にも行かないので、国内底上げ福利政策に使うには足りません。
(一人っ子政策の結果違反して生まれても戸籍届け出来ないまま・・戸籍のない人が億単位でいると言われていて、実際には20億人近いとも言われていますから大変です。)
冷蔵庫や洗濯機テレビ・クーラーなどを1台ずつを配ったら終わりと言うか、その行き渡った後はその維持コスト・・電気代等(資源輸入)が毎年跳ね上がり生活費の上がった分を賄うには、人件費を上げるしかなくなりますから、国際競争力の低下・・貿易黒字が減ります。
たまに報道される中国のローエンド製品工場(独餃子事件の工場や最近期限切れ非衛生で問題になった鶏肉唐揚げ工場など)をカイマ見ると、何千人から万単位の工員の働く大規模な工場が多いのに驚きますが、言わば低賃金と人海戦術で世界の工場・輸出基地の地位を確保して来たことが分ります。
餃子や唐揚げの技術が優秀であるから世界市場を席巻しているのではなく、大量加工向け人件費の安さのみが取り柄です。
人件費が上がってこの種の工場が殆どなくなってしまうとすれば、これを高度部品工場に入れ替えて行くだけでは(これが仮に成功しても)何十分の1の工員数で足りますので、中国で大規模な失業が発生してしまいます。
日本のように手仕事に頼っていた零細町工場が、機械化された大規模工場に負けた場合、もとの技術を利用した転進の道・・成功するのは何割しかないしても・・があります。
零細加工業から大企業への過程を省略して、低賃金を売りした大規模工場がこつ然と現れた後進国では、バングラデッシュやインドネシア等の更なる低賃金国に追い上げられて工場閉鎖になると工員には何の技術もないので転進の道がなく大量失業になります。
日本でも工場が海外移転→閉鎖すると工員が自力で何か始められる人はごく少数ですからその点は同じとも言えます。
ただ日本の場合、近代化に負けた零細企業ばかりではなく、しぶとく生き残ってニッチな部品等で世界のオンリーワン企業に育っている例が一杯あります。
大きな木が倒れて、その空き地で小さな新芽・生命が一杯出てくるような状態です。
中国の場合、大規模低賃金工場が駄目になって来たのですが、日本のように大工場跡に部品工場が生まれる訳がないので、何とか日本から高度部品を進出させたくてウズウズしている状態です。
最近では部品輸入に対して独禁法違反等の嫌がらせを始めてトヨタなどでは、部品値下げを事実上強制されている状態です。
多分部品輸出するばかりで現地工場を建てないと「際限ない嫌がらせをするぞ!と言う脅しのつもりでしょう。
最近のアメリカ企業子会社の食品工場の期限切れ鶏肉問題の大々的なテレビ報道と言い、もう外資はいらないと言うメッセージとも読めます。
米企業子会社に対する大々的報道の後では、独禁法違反等で外資中心に嫌がらせを始めたのは、この流れかも知れません。
ただ、食品工場の不潔大報道の結果、中国政府の思惑・・アメリカが中国の太平洋2分割論を認めないことに対する意趣返し?目的とは裏腹に、日本人の中国製食品離れが大きく起きて、(飲食業関係で中国製を使用していると言えば顧客離れが起きるのが普通です)結果的にタイや周辺国からの食品調達へ動きが加速してしまいました。
これで懲りたので、特定企業摘発よりは独禁法で締め上げる方が良いとなったのかも知れません。

グローバル化と格差27(賃金センサス)

ところで、リストラによる中途退職者が、退職前同様の高賃金職場が見つからないので、失業保険や退職金のある間再就職しないでいる場合や、定年退職者が年金やそれまでの蓄積を取り崩して、退職後の低賃金を補完して行く場合は、言わば自前の蓄積によるものであって他人の世話になっていない人々です。
これらの原資は国際収支で言えば、貿易赤字でもなお所得収支の黒字分で経常収支が黒字になっている場合に匹敵するのでしょう。
上記のような自前の蓄積がないにも拘らず、グローバル化前の高度な生活水準を維持するには、高度技術者の高収入あるいは蓄積のある人の投資収益のおこぼれ・再分配で生活する方向・・底辺層になって行くしかありません。
3月4日の日経朝刊の報道では中国の最先進地域である広東付近での賃金・・月収約2〜3万円ですが、国内で同じような汎用品生産に従事する日本人は、賞与等込で月額約40万円以上も貰っています。
2010年の賃金センサス(厚労省)によると男女学歴総平均が「4,667,200」であり、高卒男子が4,619,000」で、短大卒男子が4,700,300」となっています。
この平均は全産業でパートその他すべて含むので分り難いですが、正規雇用者の場合平均よりも高いと推定して良いでしょう。
(ちなみに産業別のデータがokinawa-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/…/2012112102215.pdfに出ていて・・表があるのですが、出典や何年度分と明記していないのではっきりしません・・・)
製造業は従事者数が487、0710人平均年齢40、8歳所定内給与が30万1000円となっていますので、ボーナスなど、加えると平均40万円くらいになるでしょう。
(賃金センサスでは所定内給与と年間賞与など併記するのが普通ですので、賃金センサスの一部の紹介とすれば「所定内給与」とだけある場合は、賞与を含まないと解釈すべきでしょう)
更に将来払われる退職金や年金社会保険等の負担(企業負担が半分です)がこれには入っていませんが、これを加えると企業にとっては大変な負担額になる筈です。
ちなみに今朝の日経朝刊第一面には公務員の退職給付が高すぎるという記事の中に、民間では2547万円あまりが平均と出ていました。
中国等新興国の退職金制度の有無を知りませんが、少なくとも年金制度・社会保障制度は先進国よりも遅れている筈ですから、この面でも大きな差があります。
数日前に出ていた大阪市のバス運転手の賃金が民間に比べて高すぎるとの報道が出ていましたが、比較する民間賃金水準として以下のとおりと出ていました。
「大阪市交通局が市バス運転手の平均年収(約739万円)を4月から38%減の約460万円とする案」を提案したと報道されています。
バス運転手の相場と工場労働者の相場がどちらが高いか分りませんが、如何に機械化が進んでいるとは言えある程度の熟練を要する製造現場の方が少し高いと私は思っていますが、如何でしょうか?
(偏見と言われるかも知れませんが、失業その他で就職先が見つからないときに運転出来るという最低資格で最後に就職するのが各種運転手への就職ではないでしょうか?)

少子化の原因(富裕化と底辺層の男女同一賃金化)

出産・育児・種の維持保存行為は、本来親子の血統の強調によるのではなく、人類・社会に責任があるのですから社会負担化を進めるべきです。
社会化の進展途中・・不十分な現状では子育てコストを一族や親族・大家族更には核家族個人(夫婦だけ)へと順次変更しながら委ねて来たのですが、核家族化社会で男女同一賃金化が進行して来ると夫婦で一人前ですから、夫に子育て責任を負わせても、子育て中に無収入化する妻の分だけ生活費が足りなくなります。
これに対する社会の下支えが必要になってきました。
経済成長による富裕層の増加は一般的に少子化になり易いのですが、富裕化しない中間層でも女性の職場進出・生活力獲得によって、女性の子を産む意欲低下・・子を産まないと養って貰えないとする環境がなくなり・・結婚願望が後退して来たのは社会高度化の恩恵部分でもあります。
他方で自活能力の低い低所得層の女性は従来通り出産願望が強いままであっても、末端・現場労働系では若年層の低所得化・・・男女合計では同じとしても男性一人では出産育児中の妻子を養いきれない状態になりつつあります。
実際には出産抑制するのは一部ですから、多くの場合産んでしまってから貧困に直面して、給食費の未払い等が発生するようになったのです。
ここでワークシェアリングと少子化の関係を見ておきますと、国民総生産が同一の場合、ワークシェアリングで労働力を2倍にすれば一人当たり所得を半分にするしかないので、男女同一賃金化→男性の低賃金化が論理的必然です。
エリート系男性は今なお充分な所得を得ていますが、市場原理の働き易いフリーター・非正規雇用職場(例えばコンビニの店員など・・)では男女等しく低賃金化傾向が顕著です。
男女2人で働いて従来の男性一人の収入と同じになるのは一見公平な感じですが、子供を産み育てる場合を考えると出産によって妻が無収入化・出産後短時間労働しか出来なくなると男性の収入が数十年前の半分のままではやって行けません。
(コンビニの店員では、扶養手当もないでしょう)
この結果、末端職種の次世代若者が子育て負担に耐えられなくなるので、親世代の援助のない若者は子を産み育てるのが困難になって行きます。
この問題の解決には、底辺層の生活費不足分の支給は一種の対症療法でしかないので、原因の除去・・女性の出産による退職を阻止し、産休期間の収入保障・・失業保険同様の出産保険制度を造って2年間支給するなどが必要になることが分ります。
子供手当等よりは、この方面の手当の充実・・たとえば産休期間の長期化・その間の失業手当類似の支給制度を造り、育児しながらの職場復帰を容易にする(子供が10歳になるまでしょっ中休むことが多いので、この間子供の年齢に応じた企業への補助金交付など)こそ必要な施策ではないでしょうか?
我が国では、富裕化と女性の社会進出の増加による少子化進行に加えて底辺層が出産すると経済的に困難に直面することがあいまって、産業革命以降爆発的に増え過ぎた人口増の歯止め・・(明治以降人口が約3〜4倍になっています)・・人口縮小へ向かう切っ掛けになっているのですから、自然の摂理とも言えます。
以上によれば、政府の子供手当等の金銭面での助成策は、富裕化による少子化進行には何の効果もなく、少子化傾向の中の低所得層向けに若干の(本来は出産前後の失業を防止することですが・・)効果のある政策となります。
産業革命の先行者利益によって爆発的に増えていたわが国や先進国の人口が適正なところ(産業革命前の水準まで戻って)に落ち着く頃には、子育ての社会化が完成し、再び均衡関係(合計特殊出生率2)になるのでしょう。
ともかく、今のところは19世紀以降の産業革命によって増え過ぎた人口の減少策こそが世界全体で喫緊の課題です。
中国や新興国が遅れて近代化が進むに連れて人口爆発しているのですが、充分に増え過ぎている我が国や先進国が新興国と競争して増やして行くのは大間違いです。

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