消費者信用の拡大策7と破産新受件数推移

日本で個人破産が今後社会問題になるほど増えるかどうかは今後の様子次第としても、いずれにせよリーマンショック以降の経済では消費の動向が重要化していることから債務データ全体だけでは分からない、その一部である個人負債比率の指標性が高まっているように見えます。
従来経済対策としての金融緩和が、企業投資資金を潤沢にして投資活発化を狙ったものでしたが、平成に入った頃から消費の下支えや拡大効果を期待するようになっています。
この結果、金融緩和→消費信用拡大の流れが出来ているので、消費信用拡大自体を政府の失策であるかのように批判材料にしたり、消費信用利用者を白眼視するよりはそのコントロールが重要になってきました。
この失敗がサブプライムローンに端を発したリーマンショックだったというべきであり、消費信用拡大が一過性の「悪いもの」と見るのは間違いです。
お金持ちからゼロ金利で消費信用にお金を回すのは、いわば一種の所得再分配機能を果たしている面もあります。
総融資額の1割が仮にデフォルとするとすれば、全体として資産家層の回収が減る・その分の所得再配分が行われたのと同じです。
高齢者から孫や子供に贈与を進めて消費を促す贈与税軽減政策に比べれば、本当に困っている弱者の消費を助けたのですから公平性が優っています。
車が危険だからと禁止するのではなく、車の安全技術向上を図り、安全運転のためのルール整備や講習をして行くのが必要なのと同様で、消費金融も減りさえすればいいのではなく、如何にして飼い慣らして行くかこそが重要です。
日弁連や単位会が消費者教育の必要性を前提に、だいぶ前から中高校生を相手に出前講座を実施しているのは合理的な方向性です。
日本を先頭に先進諸国が超弩級(異次元)の金融緩和・消費拡大策をして来た結果、世界中で庶民の消費信用が膨れ上がって来た・・中韓等の将来性も企業債務だけ見ていると間違う時代が来たと見るべきでしょう。
金融緩和の効能から見ると企業は合理的ですから、いくら金利が下がってもあるいはマイナス金利でも販売増の見込みがなければ増産投資しません。
日本の車製造で言えば、トヨタやホンダが投資資金が不足している訳ではありません・・プラザ合意以降国内生産をこれ以上増やして輸出を増やしていけなくなった国際情勢があります。
国内需要で見れば車に限らず冷暖房機やブルドーザー・建機であれ、いろんな分野で増産投資は限界です。
「100万円借りて95万返せばいい」なら借りた方が一見得するみたいですが、借りた資金で出店したり新工場建設して商品の販売増が見込めないと借金元金の半分も返せないことがありますから、景気動向の見通しが悪いとマイナス金利で 貸すと言われても尻込みしてしまいます。
補助金行政はマイナス金利の行政版で、比喩的に言えば、初期投資資金の半分を補助してくれれば初期投資資金100%借りる場合に比べて借入金が半分で済む・・5割のマイナス金利だったことになります。
補助金行政が盛んだったのは、初期投資負担さえ何とかとなれば採算ラインが見込める成長経済時に「呼び水」として有効だったのですが、初期投資だけではなく稼働後のランニングコスト自体の赤字・恒常的赤字が見込まれる時にはこの手法では企業が手を挙げません。
福祉施設で補助金誘導が有効なのは、初期資金の多くが補助金でまかなわれれば、その後のランニング・運営は設備不足がまだまだ続くので心配がないからです。
このような流れの変化の結果・旧利権官庁が旧建設省や経産省から厚労省に広がったことになります。
経産省は国内補助金のさじ加減による産業育成よりは、日本企業の海外展開後援の方が重要になり、TPP交渉を見てもわかるように事実上海外経済交渉の本家になりつつあります。
農水省も長期間保有してきた補助金のバラマキ権限行使よりは、いかに日本の農業を守りそのためには逆に輸出していくかの、国際交渉の役割が増大しています。
何事も専守防衛・守るばかりでは現状維持すらできません。
政府はこれ以上の輸出増を見込めない以上は、国内消費拡大・内需拡大による産業活性化が必要になったので、補助金行政の市民版である商品券配布や1億創世資金として地方ばらまきをしました。
商品券の場合本来消費予定品を買うのに商品券を先に使ってその分紙幣を温存・貯蓄する人が多く全体消費が増えず不発に終わりました。
消費拡大にはまだまだ消費意欲はあるが、お金がなくて消費出来ない層に訴求するしかない→借金額を増やす方法→金利1割低下=債務額1割増まで消費しても支払額が同じですから金利低下による消費拡大を誘導するようになります。
政治が債務膨張を誘導して来たのですから、その目論見通りに庶民債務が増えたのは(政策が正しいかどうかは別として)政策の失敗ではありません。
この点消費者は企業家と違い単純で「一見お得」(その先のランニングコスト・・長期的にみて借金をふやして家計が成り立つかまで考えないで飛びつく傾向があります。
消費奨励と民度次第で詐欺的お得商法にひっかかる比率が違ってきます。
この視点で見ると、日本は世界の先頭を走る超金融緩和国ですが、7月10日に書いたとおり貸金業規制の変遷・経験を経ていることもあって?個人負債は中韓やアメリカの車ローンや学生ローンのように膨れがっていないイメージですが、私が知らないだけかも?と思って「破産増加」のキーワードで検索してみました。
検索してみると、NHKの「クローズアップ現在」に以下のようにセンセーショナルなフレーズで取り上げられていることが分かりました。
www.nhk.or.jp/gendai/articles/395
2017年4月12日(水)若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン
  ゲスト 宇都宮健児(弁護士)
  ゲスト 飯田泰之(明治大学准教授)
  武田真一・田中泉 (キャスター)
・・・・国の規制改革推進委員として、銀行の実態にも詳しい飯田さん。
この問題の背景、どう見ている?
飯田さん:もともとの数字を確認すると、10年前に比べまして、消費者金融会社の貸付が10兆円減少して、そして銀行系のカードローンが2兆円増加したということですので、この消費者向けの無担保での貸出、マーケット自体はかなり小さくなっているんです。」
上記表題では「いかにも大変な事態になっている」かのようなイメージですが、内容は大分違っています。
内容にきっちり別の意見を書いていれば、「デマ報道でない」というメデイアの狡い報道の仕方がここにも見受けられます。
大方の人は忙しいので、週刊誌等の表紙など見て終わり・・最後まできっちり読む人は滅多にいない結果、・・私も内容まで読む暇がないので、破産が急増してるらしいという方向で描こうとしていたのですが、ちょっと時間が出来たので念のため内容に入って見たところ内容はこんな程度した。
実際政治では、大見出しの印象操作効果は抜群です。
そこで、その他メデイア報道がどうなっているかを見ると、東京新聞や朝日新聞がすぐ出てきますが、その他メデイアでは取り上げていないのか出てきません。
ただし、東京新聞も朝日も「破産急増」ではなく単に「破産増」だけの題名ですからNHK報道の意図性?角度付けが突出している印象です。
何のために根拠もないのに「急増」と報道しているのか不明です・・・。
NHKや朝日新聞は明るい話題は気に入らない傾向が見えます。

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