更新・継続原則社会1(日本)

普通の労働者がホームレスになるようないびつな社会になりつつある原因を法制度の違いで見ておきます。
例えば契約更新を原則としない社会では、2〜3年契約の場合、2〜3年ごとに契約が自動終了しますので、大家にとっては次にもう一度貸すかどうかは大家の気持ち次第・・一方的関係になります。
前の契約が月額5万円であったか10万であったかに関係なく、契約終了後の新規募集価格を「月額13万」とすれば、元借家人かどうかに関係なくそれに申し込まない限り借りられません→契約期間終了すれば契約がない以上(ラーメンを食べ終われば店を出るように)家を出て行くしかありません。
法形式上は新規契約なのでどういう新規提案しようと「契約自由の原則」という論理構造のようですが、この辺は毎回行く店を変えても良いパン屋やラーメン屋が商品値上げ自由なのと本質が違っています。
パン屋やラーメン屋が1ヶ月後200円値上げすると書いてあれば、次から別の店に行くか?など顧客の自由選択ですが、住居や商店の場合「そんなに上がるなら契約したくない」という選択はよほどのことがないと(例えば1000円上がるのが嫌で引越しできるか?)できませんので、大家のいいなりになる傾向が強まります。
この違いに着目して日本では、大正時代から労働契約や賃貸借等の継続性を前提とする分野(講学上「継続的契約関係」と言います)では契約期間が終了しても(正当事由は滅多に認められない・労働分野では解雇権乱用の法理が確立しているので)原則として更新しなければならない制度設計になっていることを13日に紹介しました。
(元請け下請け関係は一見毎回個別の契約のようでありながら継続取引を前提としている関係でよほどのことがないと発注を打ち切れない商道徳関係に縛られます)
契約期間の定めがあっても更新(従前の契約条件がそのまま継承される)することが原則ですから、契約期間終了日が来ても自動的に契約が終了しません。
借家人が同意しなければ、更新しない理由として正当事由があるかどうかを裁判して争う必要があります。
正当事由とは何かですが、その例示として法律に「自己使用の必要性等の外・・」ですから、商業的借家や借地にこういう必要性などあり得ないので訴訟する人が皆無に近くなっています。

借地借家法(平成三年法律第九十号)
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
以前紹介しましたが平成の新法では自己使用等の他に「財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、」決められるようになった分流動化に資するようになっています。
「財産上の給付」申し出とは平たく言えば立退料の提案次第ということです。
参考までに大正10年からの借地法記載の正当事由の記載を紹介しておきます。
第4条
借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス 但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス
平成の大改革といってもこの程度の微温的改正でしたが大騒ぎになったものです。

この旧借地法や借家法は平成新法制定前の契約は旧法適用ですので、私も昨年から旧法適用事件で訴訟中です。
ただし判例理論が今の平成の法律とほぼ同じでしたので・いろんな法改正は判例実務の後追いが原則です・・不都合はありません。
14日に法家の思想紹介で書きましたが、日本はいつも法令改正前に実務が先行していく社会です。
社会の変化に法令が合わなくなる・・不都合が発見され、それを判例で修正していく流れで、その判例が世間の支持をうけて定着して行くとそれを新法令に変えていくという流れです。
象牙の塔にこもる研究者が社会の流れを先験的に見通して10年先の社会を前提にした法律案を提案するなど不可能なことですから、法はいつも実務変化の後追い作業になるのは当然です。
また現実に変化の芽も出ていないうちから10年先を見通した法案を提案しても国会での議決は不可能でしょう。
「今起きている変化の芽からこれが大きな潮流になりそうだからこの方向の規制をしたり緩める」というのを否定するのではなく、この変化が先に起きるのは実務界であり既存法令で不都合があるときに法規制の範囲をめぐる係争が増えてくるので半例が先行指標になるという意味です。
借地借家で言えば、時代の変化に合わせることも社会的にある程度(自己使用目的でなくとも都心のビル街で古い瓦屋屋根の家を温存しているのは社会的マイナスです)必要なので立退料支払いでの法の穴を埋めてきた実務慣行(知恵)があったのを法で明記し認証したことなります。
元に戻りますと、日本では期間満了=新契約ではなく・・「前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス」・・ 契約が同一内容のまま継続ですから、家賃を高くするには家賃や地代賃上げ・契約変更の場面になることが重要です。
「契約は守られるべし」というのがローマ法以来の原理ですから、相手が応じない限り裁判所の変更可否の判断手続きが必須です。
(労働法では賃上げ〜賃下げ交渉)
13日に借地借家法で書いたように意見が合わないと契約関係を維持したままの法的争いに移行します。
訴訟手続き等で鑑定等を経て結果的に大家の値上げ要求が正しかったとしても負けた方は差額に利息をつけて払えば良いだけですから、それほどのリスクはありません。
大家の方は、鑑定費用や弁護士費用等を負担するので、日本の場合1〜2万円程度の値上げ目的では裁判で勝っても費用倒れです。
しかも裁判所はいくら土地が急激(個別取引事例ではなく統計的に)年間1割といえばかなりのインフレですが)に上がっていてもそのままの引き上げを認めない運用が定着しているので、この種の争いをする大家や地主がいない・・何十年も同じ家賃のままというのが普通になります。
イギリスのエンクロージャムーブメントで小作人がいとも簡単に追い出されてしまうのを奇異に思うのが日本人です。

管理者よりのお知らせ:サーバーの更新を完了致しました。

お待たせ致しました。

データセンターでの、データベースサーバーの新しいマシンへの更新、及びデータ移行作業を終了致しました。

これに伴い、作者権限の復旧も致しましたので、更新が再開出来ます。

また、データベース、関連ネームサーバーデータ等変更が在りましたので、一部の巡回ソフトやCacheで読まれて居る方は、不具合が予想されます。

不具合が在る場合、Cache等で保存されて読まれている方は、一度Cacheを空にして頂けると不具合等解消すると思われます。

追記:

フロントエンド側のサーバーソフトの更新も行われたので古いブラウザソフトや巡回ソフトでアクセスされて居る方は限定的な影響を受ける可能性も在ります。

IE7相当以降のブラウザをサポートする形態になりましたので、古いバージョンのブラウザをお使いの方は新しいブラウザをダウンロードしてお使い下さい。お持ちのブラウザソフトや巡回ソフトが2006年以前にダウンロード/インストールされた物で在る場合、正しく表示されなくなる可能性が在ります。

最新のChrome, Safari, Firefox, Opera等の使用を推奨致します。

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