新興国の将来15(中国暴発リスク2)

もしもアメリカの介入や仲介で紛争が治まった場合、(10奪った内2〜3しか返さない程度でも)中国政府は国内不満の持って行き場がなくなり、長期にわたって国内混乱に陥る可能性があります。
これが続けば、近隣諸国では難民流入リスクが高まります。
北朝鮮の難民と違い人口が巨大なので、その圧力は半端なものではありません。
対馬や沖縄や石垣島や西南諸島など居住人口の少ない島々では、軒並み中国人が最大の居住人口になってしまうリスクがあります。
中国から蛇頭などの手引きでのわが国への密入国圧力が10〜15年ほど前まで巨大でしたが、最近中国の生活水準が向上したからか密入国者が減って来たようですが、(私の経験する範囲での中国人がらみの刑事事件が減っているという程度の感想ですので、今のところ実態データまでは知りません。)これの巨大版になると思っておく必要があります。
このように考えて行くと、北朝鮮に限らず近隣諸国すべてが破綻せず順調に発展して行ってくれるのが日本にとって最も望ましい環境と言えます。
順調に発展して国内問題がなくなリ、本当の意味の自信がつけば根拠のない対日批判ばかりしなくなるでしょう。
新興国・・新たに工業化が進む國は戦前のドイツでも戦後の日本でも同じですが、当初は人件費が人口の大半を占めていた農業社会の生産性を前提に少し上乗せして決まるのでとても安いのが普通です。
次第に農民からの流入が細って来ると(中国でも農民工の流入が細ってきました)鉱工業生産売上増の分け前が必要になり順次人件費が上がって(この段階で初めて生活水準の向上が実感出来るでしょう)行きます。
今では単体の機械だけではなく半導体製造装置や新幹線運転技術原子力発電システムそのものまでそっくり輸入出来る(資金がなければ投資してくれる)ので、同じ機械やシステムを使う限り、新興国は立ち上がり段階では高賃金・高負担(社会の隅々まで張り巡らされた高度なインフラの負担コスト)の先進国に対してとても有利になっています。
新興国も一定期間経過すると、一定のインフラ整備が進むので、これらの負担コストが発生してきますし、繁栄の分配の結果人件費が上がって来るのを防げないので、安いだけでは優位性を失って行きます。
ただ先進国では韓国、台湾、中国等の人件費上昇を待って自国の競争力回復を期待しても、次々と人件費の安い新興国がうまれて来るので、事態の解決にはなりません。
ここ20年ばかり最後尾だった中国にとっても、新たに参入し始めたヴェトナムやミャンマー等インドシナ半島諸国やインドと比較すれば同じことが始まっています。
外資だけではなく中国企業自体も海外展開するしかなくなって来ると、国内企業の高度化がどこまで進められるかによって国内生活水準の離陸が頓挫するしかありません。
勉強しないで20点前後しか取れなかった生徒が俄然猛勉強を始めたときは30点〜40点と比率で言えばもの凄い高率で成績が上昇しますが、60〜70点となれば上昇率が低下するだけでなくその生徒の資質次第で70点でストップする生徒もいれば72点でストップする生徒もいます。
どこの国でも、最初勢いが良いのは当然ですが、中国がどのラインでストップするかです。

新興国の将来14(中国暴発リスク1)

今回は外国からの投資も減っているし貿易黒字も減っていて・・その上バブル崩壊で金融機関の体力がなくなっていることなど総合して金利下げ政策しか出来なかったのでしょうが、金利による所得移転目的は思惑から外れそうな雲行きです。
話を中国の今年度予算に戻しますと、赤字予算で全体の規模拡大をしない限り公安関係予算を突出させるとその分他分野の支出縮小となってしまいます。
(ただし、2012-6-17「新興国の将来9(治安予算1)」で書いたようにこの点の事実関係が今のところ不明ですので仮定形です)
もしも予算規模が成長率の範囲内であるとすれば、一般予算を減らすのは経済危機に際して国内景気縮小を加速させる政策ですから、(軍人を増やせば失業救済にはなるかも知れませんが・・)経済不安から暴動が頻発しても仕方がない・・その代わり公安・軍事予算を2割も増やしたという開き直り予算になっているのではないかと、世界を驚かしています。
公安。軍事予算ばかり増やさねばならない所に現在中国(共産党政権)の真の危機があると言えるでしょう。
中国は秦漢の滅亡以来どの王朝・政権も常に末端の流民化が、政権の滅亡を早めたのが中国2000年の歴史です。
庶民流民化に対応して鎮圧用武力を政権安定時よりは増強するのが常ですが、結果的に政権崩壊に繋がってきました。
国民を満足させられず鎮圧に頼るようになれば、政権末期が近づいていることになります。
経済(政策)は、経世済民の略語ですから・・国民に満足してもらうためのものですが、その目的を放棄して治安強化で押さえ込もうとする方向に舵を切ってしまった共産党政権は、国内不満を激化させて最後を迎えることになるかも知れません。
尤も「経世済民」は中国古代文献に発する熟語ですが、これを一般的に使い始めたのは我が国の江戸時代に始まるので、中国では近代用語が我が国からの逆輸入ですから、中国特有・・「金儲けさえすれば良い」程度に変質しているかも知れません。
中国が経済的に行き詰まれば、どう言うことが待っているのでしょうか?
最初の内は国民の不満をそらすために、対外強行策が繰り出されると想定しておいて良いでしょう。
尖閣諸島、南沙諸島など対外摩擦がここ数年既に始まっていますが、これらは内政の行き詰まりから目をそらすための先触れかも知れません。
中国の暴発を恐れて妥協を繰り返すのは、ナチスに対するチェンバレンの融和策と同じ結果・・それどころか巨大な内部矛盾を抱えているので際限のないことになると思われます。
例えば沖縄や南西諸島に多くの中国人が住むようになると、その保護のためという武力進出をしかねません。
北朝鮮の暴発を恐れているマスコミ論調ばかりですが、北朝鮮は内部結束が固いのでその心配はむしろ少なく、中国暴発の方こそ危険性が大きい上に強大な武力を持っているのでその警戒が必要です。
そのときに備えて相応の国防力を用意しておく必要がある・・物騒な時代が来るような気がします。
多分アメリカの国力・軍事力低下を見越して中国は動くので、アメリカが圧倒的兵力で中国を押さえ込めないでしょうから、初期占領されてしまうと解決がグズグズと長引くことによって軍事占領を既成事実化して行くことが予想されます。
しかもその島の居住人口の大半を中国系人が占めているとその正当性が高まって行きます。

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