アメリカの指導力低下6(専制支配の恐怖)

経済メリットが中国の方が仮に大きくなっても、価値観が違い過ぎる・・従うと何をされるか分らない恐怖・・無茶・乱暴過ぎるところが嫌われてアメリカが有利に囲い込んでいるのですから、中国がもう少し人道的(法治主義が定着)になって行き、もっと経済メリットが大きくなり・・逆にアメリカの経済存在が小さくなって行くと(近い将来そうなると分るだけでも)大変です。
中国の方が,アメリカのように政府保護をやめろとか無茶な市場開放を要求しない分、国有企業が多く自国産業保護を残したい新興国にはメリットもあります。
経済実態では、新興国にとっては実はアメリカよりは中国の方が価値観が近いのです。
中国の怖さは専制君主制の経験そのままでこれからも統治方法を改める意識が全くない・・支配者になれば支配地内では合理的(法的)根拠なくヤミからヤミへ粛清して行くやり方を今も実行していることや、この支配方法を対外的には従属国へ持ち込む・・力を剥き出しにした一方的支配地域の設定や有無を言わさない軍による占領支配などもその現れですし、怖さでしょう。
属国になればチベットやウイグルに対する過酷な弾圧がそのまま自国に及ぶ恐れがありますし、国民に対しても法輪功の弾圧は有名ですが、最近で薄煕来事件の帰すうやその黒幕の周永康周辺への不透明な粛清の進行・・中国の事実上属国の北朝鮮でのおぞましい張成沢関連へ大粛清事件でも明らかです。
東南アジア諸国や日本では専制君主制の経験がないので、専制支配についてはこわ過ぎて親中国になるには確実にビビってしまうところです。
ここに目を付けているのが安倍総理による価値観外交です。
韓国だけは専制政治に親しんで来たので、何とも思わない・・抵抗感がないので先物買いの意識で早めに中国にすり寄ったことが分ります。
韓国は本質的・体質的価値観が欧米や日本・アジア諸国とは違うことを、この一事でもって証明しています。
右翼の言う「特ア」グループが、多様なアジアでは例外グループであることが明らかです。
習近平氏の言う「中華の栄光の復活」という宣伝が、アジア諸国を専制支配したい意味に取れるので、周辺国は警戒感を強めるしかないのですが、中国にとってバカげたマイナス宣伝です。
中韓両国はマスコミ等を使った大宣伝が好きですが、告げ口外交等は信用を落とす逆効果であることが分らないのと同様に、中華民族の栄光復活などと主張することが周囲にどのような影響を及ぼすことになるのかついて、分っていないのではないでしょうか?
この後で古代の閉鎖された社会での秦の天下統一・・合従連衡策と開かれた社会になっている現在とは状況が違っていることを書いて行きますが、開かれた海洋社会では支配者にさえなればどんな残酷なことでもやり放題という専制支配社会は成立しないことにまだ気が付かないのです。
専制支配が可能か否かは、民主主義かどうかという理念によるのではなく、逃げ場のない閉鎖社会か、開かれた社会を相手にするかに掛かるでしょう。
東南アジア諸国や日本は海路で外の世界に開かれているので、昔から専制支配が成立したことはありません。
緩やかなヘゲモニーを前提とする海洋国家を中心とするグループに対して「中華の栄光復活」を旗印に強面(こわもて)外交で威迫して行くやり方は、古代の秦が周囲を圧迫して支配確立して行くやり方を彷彿させますが、時代の違いよりは開かれた社会相手には出来ないことが分っていないのです。
中国は韓国がすり寄って来るともう属国になったつもりで、無茶な要求を始めたので韓国は尻込みを始めてアメリカグループのTPP参加を表明しました。
今の時代、立場が強いからと無茶な要求をすると、韓国だって外に逃げ場があることに中国はまだ気が付かないようです。
アジアからアメリカが手を引いても、中国が金融や会計その他各種分野で世界標準をリードするにはまだまだ基礎レベルが低過ぎますので、中国グループに入っても逆に日本アやアジア諸国が教えてやる関係ですが、当面のリスクは先端技術導入に応じないと中国内への企業進出を認めないというやり方で来ることでしょう。

言論規制とモラール破壊1

言論の自由がないと国民は真実のデータを出すこと自体が、政府批判になりかねないし、その内、データの報告・発表その前段階の正確なデータ作成すら出来なくなります。
こう言う社会では権力に迎合して虚偽報告を始めるのは当然の生き方となっています。
(中国では地方政府が自己の出世のために水増し報告するのが普通と言われていますし、ソ連でも末期には公式文書のうち何が事実なのか、最高権力者であるゴルバチョフがまるで分らなかったと書いているとおりです)
中国古代王朝から繰り返されている讒言による政敵失脚を狙う事例は・・皇帝には事実がまるで分からない土壌になっているから生まれて来るものです。
中国のGDPの推移と電力統計が合わないと批判されると、何年間か電力消費統計の発表がなくなった時期があったと言われています。
(経済評論家三橋氏が、繰り替えし主張していた意見です)
政治的意見・経済政策に関する意見は根拠のない抽象論ではなく、社会の実情を踏まえた意見になるべきですから、正確なデータがよりどころになります。
政治的意見の自由のない社会とは言い換えれば、正確なデータを出せない・真実を報告出来ない社会・・結果的にどこにも正確な統計・データ自体が作成されていない・存在しない社会と同義になります。
「言論の自由のない社会」とは言い換えれば、政府(権力者・上役)に都合の良いことだけしか発表出来ない・・即ち真実であっても都合の悪いこと=統計的データは作れない社会のことです。
権力者や上司が都合の悪いことを言われても聞く耳を持たないどころか、都合の良い嘘の意見の方がとおりの良い社会では、長期間の経過で国民一般に本当のことを言う習慣がなくなり道徳が頽廃します。
中国はこれを2000年以上もやって来たのですから、現在の道徳心の退廃は、当然の結末ではないでしょうか?
国民もそれぞれの地位に応じて、自分より弱者に対して同じような要求をし、順次最末端までこのような虚偽で塗り固めた意見が横行する社会になります。
韓国や中国では王朝交代があると前王朝をどのように貶めても自由自在・正義の物差しは戦争に勝ったか否かだけですから、彼らの主張する歴史認識とは、この基準で成り立っています。
こうした意識から王朝が代わる都度前王朝の文物を完全否定・破却するので、中国には、古くからの良いものが殆ど残っておらず日本に避難して来ていたのです。
彼らは根拠のない対日戦勝国気分に浸っていますから、日本を一段下に見下した態度が正しいと思い込んでいますから、(内容が正しいかどうかの基準がありません)自分に都合の良い歴史を次々とでっち上げてはこれに基づく謝罪と賠償を要求し続ける・・どんな無理難題でも言うことを聞かないと「敗戦国の分際で何を言うか」とアメリカにチクルのが原則的パターンです。
つい最近5月8日ころの朴大統領訪米は、韓国の不当な要求を拒否する安倍政権の不逞な?態度をアメリカに直訴しに行ったような印象でした。
多分中国も6月の訪米では世界問題を論ずるよりは、如何に日本の悪口を言いつのるかに頭を使っているのでしょう。
こうしたバカげたことが戦後70年近くも成り立っていたのは、これを裏で煽動・支持する勢力・・アメリカは常に日本の足下を掬うことばかり考えていて、戦後60年以上も中韓両政府はこの方法でうまく立ち回れたからです。
(アメリカが正義などどうでも良い国でなかったら、こんな狡いことは続かなかった筈ですから、これを誘導しているアメリカの道義的責任が大きいことになります。
中韓両政府は自分に都合が良いことを思いつけば・・これさえ主張すれば日本から金を取れる・・言うことを聞かなければときの権力者・アメリカでロビー活動をして日本に謝らせられるかどうかだけが基準になっていて、嘘でも何でも言い通す国柄になっているのは、こうした歴史によります。
彼らが「歴史認識尊重せよ・・共有せよ」とは、自己に都合の良い歴史を次々とねつ造しては、これを「(敗戦国は問答無用で)認めるべき」という意味です。

専制君主制と虚偽データ3

短期資金流出入の動きは先行指標として重要ですが、これが中国では自由化されていないのでヤミに潜って移動している状態です。
短期のヤミ資金の方が合法的資金よりもリスクが大きい分動きが素早いことは25日に書いたとおりで、速報値としてはヤミ流出入分の増減指標こそが重要になりますが、ヤミに潜っているためにこの重要な指標が政府も誰も手に入らないことになります。
例えば日経平均は、その日その日の市場を待たないとどんなキュラクがあるか不明ではありますが、突発事態を除けば、大まかなトレンドは信用残や先物指標の動きがある程度の予測資料となります。
先物取り引き・信用取り引きを禁じると、売り買いのプロの実際の心理を知ることが出来なくなり、却って予測能力が落ちることになります。
天気予報が必要なように、経済も予測・・先行情報を少しでも早く欲しいのが原則です。
中国の場合規制がある関係上、虚偽報告・やみ取り引きの比重が大きい社会ですから、実体経済のことはやみ取り引きを知らないと本当のことが分りません。
ヤミで動いている関係者には体感で分っているでしょうが、統計的な数字には出て来ません。
文化人類学者が未開地に住み込んで未開人の生活実態調査をするように、中国経済を研究する学者も研究室で公式データばかり睨んでいても、ヤミで動いている現場で一緒に生活=経済活動しないと分らない状態です。
中国では上(政府)が都合の悪い報道や発表を禁じていて、しかも上がって来た統計を誤摩化していて、さらに自由な資本移動を認めないので、下(実業界)は仮装・ヤミ取引に精出すのは当然です。
この結果、重要な先行指標であるヤミに潜った短期流入資金の動静がまるで分らなくなっているので、経済実態不明のママ政府が政策決定して行くしかない状態に自らを追い込んでいます。
自分の健康状態を知るための血圧や体温や脈拍等のデータについて、健康状態について都合の悪いデータを報告させないようにしていれば、イザ必要になって報告をさせても即時ではなく1〜2年ほど前の、しかもいい加減な数値でしか見られないような状態・・収拾のつかない国になっています。
中国では古代から現在に至るまで、上から下まで正直にやったら損する社会になっているので、競って虚偽のデータを出し合っている・・・周知のように地方政府は自分の成績アップのために何割か実績の上乗せ報告するのが普通になっていますし、その地方政府に報告する下部組織,そのまた株部門も何割か上乗せすることの繰り返しですから、中央政府トップに上がるときは天文学的膨張をしていて、実態不明の社会になってしまったのです。
環境汚染その他不都合な数値・成長率鈍化・失業率などは、この逆に縮小・・低め報告の繰り返しです。
中国政府としては、国民には正直に統計数字を出させて政府が発表するときだけ都合の良い数字に改ざんして発表出来れば便利ですが、政府が嘘を発表する手本を示せば・・下部組織や国民も嘘の報告を出すようになります。
我が国では親の背中を見て子どもが育つと言います。
虚偽歴史宣伝に始まってモラル軽視の社会では、全ての分野でモラルが失われるようになることを、専制政治の社会・歴史に関して2013/05/02「中国共産党→中国政府→人民3(モラルなき社会)」のコラムで書きました。
専制政治・・言論の自由のない社会では、権力者に都合の悪い・正しいことを言えない=政治的自由(思想信条の表明自由)がないだけのように見えます。
マスコミ批判も政治的自由権だけの限局した報道ですし、学校でもそのように教えます。
ところが、言論自由の必要性は個人が言いたいことを言えるようにする・個人の幸福権のためだけに意味があるのではありません。
言いたいことを言える社会でも虚偽の風説流布をすれば、場合によっては形法で処罰されるように、真実を主張することが前提です。

刑法
第三十五章 信用及び業務に対する罪
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

正しい意見を言うためには正確なデータ作成・・事実の集積が必要であり、言論の自由のない社会では、事実の軽視→虚偽報告が奨励される社会・・嘘つき社会になってしまいます。

専制君主制と虚偽データ2

5月24日に紹介したグラフによれば、中国の外資流入額は2008年までは年間1000億ドルを割っていたようですが、この後に紹介する(グラフに続いて掲載する予定で書いてありましたが虚偽データ〜モラル崩壊のテーマが挟まって先送りになりました)勝又氏の引用する報道記事によれば、ここ数年では毎年1000億ドル以上もの資金流入があって、中国経済が成り立っていたことが分ります。
リーマンショック以降の中国の内需拡大は、この外資流入増加・・年間1000億ドル=約10兆円もの連続流入によって可能であったことが分ります。
この分だけも10年間で、1兆ドルもの外貨準備が増えて行く計算です。
(中国の外貨準備著増と言っても、農協預金が増えたよううな性質のものです。)
日本で農協系金融機関に潤沢な資金があったのは、近郊農家が農地を売ったことによる土地成金の預貯金によるものであって農業収入が増えた訳ではありません。
近郊農家へ資金流入が停まった後には、農協系金融機関の影響力が縮小しています。
中国の場合も、外資導入・工場用地取得費とその後の工場建設費等資金流入が縮小するとアラブ産油国で石油が出なくなった場合のように、我が国で言えば、土地バブル崩壊後元気を失った農協系金融機関のように元気がなくなるのか?の関心でこのコラム書いています。
ただし、23日に紹介したグラフもそこに出典が出ているように、中国政府発表によるしかないので、真実はまるで分りません。
数字の誤摩化しがあって数字の絶対額は信用出来ないとしても、GDP・貿易黒字等水増しは一定のルール・傾向でやっているとしたら、グラフを見ることで長期的傾向は把握出来るかも知れないという意味で掲出しています。
この点では、2013/05/13「上海総合株価指数2」に株価指数の変動をグラフ掲出したのと同じです。
しかし、トレンドを知られるのが中国に不利になれば、この改ざん比率もまた変えて行くのでしょうが・・・。
外資がドンドン入っているときには少なめに発表して差額を貿易黒字として如何に中国の将来性が高いかの国威発揚宣伝に使っていたでしょう。
外資流入が減ってくれば、信用不安が起きて我れ先の外資流出が起きるのを阻止するために、今まで少なめに発表していたのを真実に近づけさえすれば、トレンドとしてはまだ増えているかのように発表することが可能です。
中央政府がある程度上がって来たデータに一定比率の改ざんを加えて発表している外に、貿易決済を仮装して流入していたヤミの短期資金流出入額も巨額だと言われています。
このヤミ流出入分を加えて、どれだけ外資が流出入しているのかが、マイナス局面では重要です。
中国経済に魅力がなくなるとこの規制違反・・バレルとどんな処罰があるか分らない大きなリスクを掛けてまでヤミで潜入するメリットがないので、ヤミ流出入収支分から(足が速い)先に減って行きます。
経済の変調を見るには、政府の都合の良い意見を書くエコノミストやマスコミの意見よりも、流出入外資の動きを見るとこれが一番海外の動き・評価を表して正確です。
外資には長短資金の2種類がありますが、長期資金は引き揚げが難しいので流入の増減という片方の側面だけしか短期的には見ることが出来ません。
しかも工場進出等は長期計画で決まって行くもの(計画してから相手国政府の許認可を得るだけでも年単位の時間軸)ですから、半年〜1年の動向を直ぐに知るのには不向きです。
23日に紹介したグラフを見れば分るように、2008年には契約額が減っているのに、資金流入額が増えているのは1〜2年前の契約の実行がずれるからです。
短期資金の動きは資本自由化されている国の場合、許認可が要らず即時性(コンピューター取引ですから数秒で動きます)があるので、数ヶ月のトレンドを見れば経済の傾向が分ります。

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