基軸通貨とは2


円は表向きは基軸通貨ではありませんが、円を一旦ドルに替えているだけでドル名義で世界中の資金の流れを規定している状態です。
日本と主要国の金利差を以下の表で見て下さい。
以下はhttp://kakaku.com/gaikadepo/hikaku.htmlからのコピーです。

各国の主要政策金利の推移

2012年4月現在、円定期預金の金利は0.02%~0.5%程度です。
他の国と比較するとどうなのでしょうか。下のグラフで各国の政策金利を比較してみました。

各国の主要政策金利の推移

アメリカ米ドル         ユーロ    ユーロ             豪ドル豪ドル            NZドル  NZドル            南アランド    南アランド

プラザ合意以降タイなど東南アジア諸国で工業製品を生産して迂回輸出しているのと同じことを、紙幣ではアメリカドルの仮面をかぶってやっていると言っても良いでしょう。
今や世界経済資金の流れを変えてしまえる超大国・・「実質基軸通貨国」の地位を日本は誰も知らぬ間に獲得していたことが中国との金利差・・あるいは世界中の中央銀行との金利差で見ることが可能です。
基軸通貨国と言われるアメリカは、いくら財務省証券を発行してもデフォルトになる心配がないといわれますが、同じことは円建てで発行している日本国債にも言えることをMarch 25, 2012税の歴史6(商業税3)の終わりころに書きました。
純債務国に転落しているアメリカでは外国に国債を買って貰っているのでリーマンショックまでは上記表のとおり中国並みの高金利でした。
リーマンショックによってなりふり構わず金利を下げ、今でも金融緩和の連続ですが、(というよりは下げざるを得なくなった)その結果どうなるのでしょうか
基準金利がどうであれ、国債の入札価格(額面何%割れかが)が実質金利ですのでそれがどうなっているかの問題です。
今のところアメリカ財務省証券・10年もの国債金利は2%前後で推移している・・歴史的低水準のようです。
日本国債の最近の相場は1%出るかどうかという水準(4月10日の新発10年もの国債で0、95%との4月11日日経朝刊の記事)ですから、約1%の金利差しかありません。

中国の場合では4月10日に紹介したように公定歩合でさえ6%前後ですから、逆ざやも良いところです。

これではアメリカのインフレ政策によるドル下落リスクと合わせて外国人投資家は買い難いでしょう。
基軸通貨国かどうかは別として外国が国債を買ってくれなくなると大変な事態になりそうですが、アメリカは紙幣を刷って国内にバラまけば、国内でだぶついた資金・金融機関が購入することになります。
日本国債を日銀引き受けする日本の真似を始めたと言えるでしょうか?
ドルの還流がなくとも自前でドルを増刷するから良いと開き直った状態でしょうか?
日本の場合経常収支黒字の範囲内での日銀引き受けだから問題がないのですが、国際収支赤字のアメリカで日本の真似をするとドル下落が必至です。
この際ドルがいくら下落してもその結果貿易上有利になれば良い・・世界的通貨下落競争開始が始まったのでしょうか?
実は中国も日本もアメリカに商品を買ってもらう必要があるので対アメリカ貿易黒字分はそっくりアメリカ国債を買ってドルを買い支えるしかない状況に追い込まれていると思われます。
ドルは値下がりするのが分っているのですが、それでも目先の売上がなくなるのが怖い・・倒産しそうな大口顧客に売り続けているような状態です。
アメリカに輸出して稼いだアメリカドルをユーロ両替するとアメリカは次の輸入資金がなくなるので買ってくれなくなります。
その分EUで買ってくれれば良いのですが、EUがアメリカの代わりに大量に輸入するには力不足です。
EUが買ってくれる限度で外貨準備をドルからユーロに徐々に中国はシフトして来たのですが、その結果がギリシャ危機に始まる欧州経済縮小・ユーロの下落でした。
外貨準備をどこの国の外貨で保有するかは、貿易黒字にしてくれる(相手から見れば赤字の)限度で、儲けさせてくれる国の外貨を持つしかないということでしょう。
そして儲ければ儲けるほど、赤字が累積する相手の通貨価値の下落リスクが高まるので、相手通貨で保有するリスクが高まるジレンマから逃れられません。

(ウマい話はないのです)






基軸通貨とは1

日銀の国債引き受けに関連して金利動向・貨幣の強弱に関心を持った方が多かったと思います。
世界の金利分布を見ると、豊富な資金を有する国には資金需要が少ないことから需給の関係で最低金利を維持しているので資金不足国は低金利資金に頼る構図ですから、経済の世界では最大の資金国が基本的な力を持つことになり、資金不足国はその動き・・金利動向に従うしかない現実を表しています。
中国は豊富な外貨準備があっても、まだ世界中から企業誘致・投資資金を導入し続けないと経済が回って行かない国です。
公表されていないものの実際には昨年あたりからバブル崩壊・・それも日本の崩壊よりは激しい崩壊が始まっていることは明らかですが、それでも金利を下げられない状態です。
以下は日本と中国の金利差です。
今は公定歩合と言わずに政策金利と言っていますが・・日銀が銀行に貸し出す基準金利と思えば良いでしょう。
http://www.gaitame.com/market/japan.htmlからの引用です。
国 名   政策金利名      値       増減幅 発表日    前回値
日本O/N Call Rate Target 0.00%~0.10%  -  2012/3/13  0.00%~0.10%
Basic Loan Rate       0.30%      -   2009/1/22    0.30%

O/N Call Rate Target・・・無担保コールレート(オーバーナイト物)
Basic Loan Rate・・・基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)

www.chinawork.co.jp/e-kinyu/2-b-b-kinri.htm – よりの引用です。

人民元金利

人民元預金金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目 金利調整前 金利調整後
普通預金 0.50 0.50
定期預金 満期型
3カ月 2.85 3.10(+0.25)
半年 3.05 3.30(+0.25)
1年 3.25 3.50(+0.25)
2年 4.15 4.40(+0.25)
3年 4.75 5.00(+0.25)
5年 5.25 5.50(+0.25)
総合型
(普通・定期兼用型) 1年定期満期型に準拠。
同ランク金利の6割で金利を計上
出所:中国人民銀行

人民元貸出金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目      期  間      調整前       調整後
流動資金貸出 6カ月(6ヵ月含む)     5.85       6.10(+0.25)
1年(1年含む)            6.31      6.56(+0.25)
固定資産貸出 1-3年(3年含む)    6.40      6.65(+0.25)
3-5年(5年含む)           6.65      6.90(+0.25)
5年以上                6.80      7.05(+0.25)
出所:中国人民銀行
注:貸出の条件①資本金が払い込み済み②信用ランク査定2Aまたは3A

以上の比較によれば日中の(公定歩合)金利差は約6%になります。
日本は潤沢な資金を前提に世界最低金利を提供出来る・・商品で言えば激安・最低価格提供ですから、日本の円は世界を席巻していることが分ります。
安い商品の場合、品質が落ちることがありますが、紙幣の場合品質差がないので利用コストは金利次第です。
中国は外貨準備が世界1としても、上記のとおりの高金利でないと資金を提供出来ないのですから、紙幣供給に関する国際競争力の差は明らかです。
対外純債権額では日本が世界一で中国がまだまだ遠く及ばないのは、中国の保有する外貨の内実は日本その他先進国が中国で投資した資金がドル外貨に変換されている部分が多いことを物語っています。
日本の場合外資導入によって経済発展・貿易黒字になったのではなく自前の資本で貿易黒字を稼いで来たのですが、中国の場合日本その他の外資が奔流のように流れ込んで、これが現地で全部中国人民元に両替しますので、中国政府はドルを大量に手に入れています。
トヨタやセブンイレブンが中国進出するときに日本国内で0%で借金して得た円・・例えば1000億円をドルに替えて、そのドルを中国に持ち込んで人民元に替えて中国の工場用地・店舗工事資金などを手当てします。
中国は入手したドルを市場で売ると元が上がって困るので、アメリカの国債を買うしかないのでアメリカ国債の保有が増える仕組みです。
一旦中国から外資引き上げが起きるとこの逆回転になります。
ギリシャ危機で欧米からの資金流入が細っただけで、昨年元が弱含みになったのはこの仕組みによるものです。
元は恒常的外資流入によって成り立っているとすら言えるでしょう。
ギリシャ危機で、中国はギリシャの救世主のごとく資金投入を一旦ほのめかしましたが・・あるいは人民元の内容を知らないマスコミの勝手な願望だったかも知れません。

結局何も出来ないで終わっているのは、欧州への資金拠出どころか自分の足下に火が着いていて、欧州からの資金引き上げにびくびくしている状態でしたから当然です。

上記のように中国では既にバブルが崩壊している状況にも拘らず金利引き下げに踏み切れないのは、海外からの投資資金の引き上げを恐れている状態を表しています。

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