アメリカの地位低下と逼塞する言論空間

アメリカは政治経験が乏しい結果、伝統的に複雑な多角的交渉が苦手です。
・・まして個人としても政治経験のないトランプ氏は困ったでしょう・・多角的複雑な議論をするG20ではどうして良いか不明だから、プーチンやその他との1対1の会談に予定外の時間をかけて会議にほとんど出る時間がなかったとも読めます。
せっかく会議に出てもすぐに中座して娘のイヴァンカさんがその席に座ったことがおお騒ぎになっているほどです。
トランプ氏は多角的意見交換が苦手だからです。
G20が開催されたドイツ現地報道では、G20でのトランプ氏の言動にはほとんど関心がなく報道されなかった・・欧州にとって重要なのは中国の方向性というメデイアの関心であったと言われます。
国際貿易量で中国が主役を占めるようになる傾向があるときに、今後世界貿易に占めるアメリカの世界貿易に占める存在が縮小して行くことが明らかな状況下でトランプの保護主義宣言→何を言ってもアメリカの言動より中国の行動予定・発言に関心が集まるのは仕方がないでしょう。
韓国の最大貿易相手国が中国になって久しいですが、(だからこそ韓国が露骨に中国になびいたのです)ドイツも以下の通りですhttp://jp.reuters.com/article/germany-economy-trade-idJPKBN16303B
World | 2017年 02月 24日 09:53 JST
「ドイツ最大の貿易相手国に中国が浮上、米国抜く」
アメリカの貿易上の優位性は、ニクソンショック以降放って置いても自然に下がっている趨勢下にあって、それが隠しきれなくなって表面化してきたに過ぎません。
これに苛立ったトランプ氏がFTAを見直す、中国に高関税をかける・メキシコ国境に壁を作る、北朝鮮を制裁するとかアラブ系の入国規制するなど無茶〜乱暴なことをいえば、国力低下によるストレスの溜まった国民にとっては溜飲が下がるでしょうが、これを言えば言うほど世界貿易に占める比重が下がる一方になるのが目に見えています。
北朝鮮問題はアメリカの国力の限界をわきまえて歴代政権が自重せざるを得なくて自重してきたものでしたが、これを優柔不断政治と非難しまくって大統領になったトランプ氏が就任後鳴り物入りで・・一種の瀬戸際作戦で世界中を騒がせたものの、これまでの経過を見る限りトランプ氏も歴代政権同様に効果的な政策を取れない現実に直面しています。
「少なくとも県外へ」の民主党だけではなく、小池都知事も築地市場やオリンピック問題と次々と騒ぎだけ大きくしたものの、終わって見ればなんのための騒ぎだったのか!という結果になっているのと同じです。
選挙目当てのパフォーマンスや奇をてらう政治家が出ると、国民はこれについ期待してしまうのですが結果的に振り回されて迷惑を受けるだけ(築地関係業者は予定が立たずに困っているでしょう)誰が政権を取っても現実無視の極端な政治は出来ないということです。
アメリカに投資しても中国のように国家要求によるゴリ押しリスクが少ない・・戦後秩序はアメリカに都合よくできているとはいえ、一応制定法によるルール化・透明化していることが魅力でした。
(アメリカの)法による運用が保証されているので、これに従ってさえいれば先が読める・恣意的運用による不透明さ・・後進国のカントリーリスクはこれです・・が少ないことから、世界から新規投資されてきた傾向(移民人気も根っこは同じです)がありました。
今後投資家にとってはアメリカも中国並みのリスク国家扱い・投資しないと市場参入させないと脅されるから仕方なしに投資する程度の国になっていくのでしょう。
そうなれば、よほど投資に旨味がある見通しがない限り投資しなくなる・・無茶を言えば言うほど影響力が下がる一方になります。
トランプ氏の発言に一貫性がなくコロコロ変わると「また言ってる」・・とその内どこの国もそれほど気にしなくなる・図体がまだ大きいので無視できないだけ・中国以上に迷惑な存在になって行く可能性があります。
中国にとっては、領土拡張主義で無茶をやって世界から袋叩きに遭いそうになっていた時に、努力しないでも最大競争相手アメリカの敵失・自滅によって覇者の地位が転がり込んで来そうになって内心ほくそ笑んでいることでしょう。
中国も対等者間の多角的交渉の歴史経験がありませんので、お互い「イイトコ勝負」というところでしょうか?
相手を陥れたり敵失によって転がり込んできた地位は、ふさわしい能力の裏づけがない分だけ脆弱です。
専制支配の経験しかない中韓政治家は、長年権謀術数で勝ち抜くことを優先課題でやってきましたので、自己の力を蓄えるよりは相手の力を削ぐスベには長けています。
自己能力が十分で周りから押されて地位につくのではない結果、自分の地位を脅かす政敵の浮上には敏感です。
この結果猜疑心の虜になり粛清/恐怖政治に陥りがちです。
専制君主制に代わる近代的表現である共産党1党独裁・粛清装置とセットになった独裁政治が本性にあっているのです。
中国共産党はネット環境を逆手にとって、膨大なチェック・監視要員を雇うことにより、世界全部を恐怖支配し尽くす制度を構築するために励んでいるように見えます・・。
そんなことにエネルギーを使うよりは社会を良くする方向へ若者のエネルギーを使うべきですが、権力者にとっては、社会のためになるかよりは、自己権力維持の方が優先するのでしょう。
ただし、人海戦術のネット検閲をバカにしてはいられません。
最近アメリカでもヘイト関連意見を駆逐する動きが報道されているように、AIの進歩で運営者は単なる「広場」の提供にとどまらずいろんな情報蒐集ができてその気になれば簡単に削除妨害できるようになってきました。
今後犯罪勧誘情報その他の削除義務・・運営者の削除責任が重要になってきていることを、今朝の日経新聞6pのフィナンシャルタイムズのオピニンでは紹介しています。
メデイアが大合唱し運営者がヘイトと認定すれば?裁判等の公的判断を得ずに自由自在に削除できてしまう・・正式なデモをメデイアがヘイトと認定すればこれを暴力で妨害した方が正義であるかのような変な風潮になってきました。
相手をヘイト集団と認定さえすればメデイアやネット空間から抹殺できてしまい、意見の違う相手にまともな発言をさせない・変な社会になってきました。
アメリカ国内でこの種言論弾圧運動が行き過ぎると、不満すら表現できない鬱屈がついには暴動やテロになってくるリスクが高まります。
裁判で負けそうな事案だけ厳選しているから良い・・世の中の道徳はこのような自制によって出来ているのだと言うでしょうが・・。
第一次世界大戦の頃から極東軍事裁判〜戦後の世界支配のルールに見られるアメリカの相手国に対するご都合主義政治・自国に都合がいいかどうかによる・・二重三重基準の正義・・アフガンゲリラを育てた結果9・11のテロに育つなど悪行の数々をしてきた経験は国内でも根付いてきたようです。
子は親の背中を見て育つと言いますが、アメリカが外で数々の非道徳なことをしてきたツケが身内に及んできたと言うべきでしょう。
欧米はまだ人道主義という衣をまとっていますが、この権能を悪い方・政府に都合の良い支配道具にあからさまに使っているのが中国政府というところでしょうか?
閉鎖社会であればスターリン型恐怖政治は国の隅々まで広がる一方で永遠に続くかも知れませんが、世界全部を恐怖政治で支配し尽くすのは不可能ではないかと言う淡い希望を抱いていましたが、AIの発達が思わぬ方向へ行きそうで・・どうなることやら・・。
いずれにせよ、こんな危険な方向性を持つ国家が世界の覇者にならない方が良いに決まっていますが・・。

朝鮮半島の戦略的地位低下1

反日運動の激化に先行して韓国は10数年前ころから日本文化輸入禁止を徐々に解禁し始めていることを9月7日のコラムで書きました。
韓国は日本文化輸入/生活文化に関して、教えを請う必要性を理性では自覚しています。
劣等感が強過ぎてひねくれてしまっているので、正面から「素直に教えて下さい」と言えないところが韓国・朝鮮民族の不幸です。
このひねくれ根性は明治維新以降の格差拡大に端を発するのではなく、その前の数百年に及ぶ江戸時代の通信使交流時代にも顕著でした。
通信使はせっかく来日して日本を見聞して歩くチャンスがあったのに、日本独自に発達した各種技術や学問の発達を学ぼうとせずに、彼らは毎回「日本は貧しい・遅れていると言う偏った・日本を嘲ることばかりに注力した報告しか出来なかったのは、今の韓国関係者が、印で押したような反日の意見しか言えないのと同根です。
実際には理性的で立派な人が今でも一杯いるようですが、彼らは公式発言になると判で押したように日本批判あるいは如何に日本が劣っているかの強調しか発言出来ないようです。
朝鮮通信使達も日本に来て見るとその違いや発達ぶりに驚くのですが、国にかえってからうっかり「日本に学ぼう」と言えば、本当にクビ切られてしまうので何も言えない・・結局国内改革に結びつかないで数百年過ぎてしまいました。
相手から学ぼうとする姿勢欠如の結果、この間に大きな差がついてしまったので,西洋が押し寄せた19世紀頃には数百年分以上の進歩差がついてしまいました。
(正確には李氏朝鮮成立以前から停滞してしまった・日本の平安〜鎌倉〜室町時代ころから絶え間なく社会が進歩し続けていたことに全く気づかない・・知りたくない・事態を直視したくない民族性に問題点があるでしょう)
以前どこかで書いたことがありますが、日本は白村江の戦いで負けたころから朝鮮半島から縁を切る政策に転換し、遣隋使・遣唐使は朝鮮半島経由から直接揚子江河口・上海付近に上陸する航路に切り替えていたことを書いたことがあります。
この結果、朝鮮半島経由の利点・・日本列島への交通上の通過点の優位性をそのころから失ってしまったことによって朝鮮半島の経済・文化的衰退が始まったことに気がつかないと言えます。
気がついていても,凋落を認めたくないということでしょう。
19世紀末からタマタマロシアの南下圧力があって、日本にとって朝鮮半島が戦略上の価値が高まったので、それまでのように「好きなように言わしておけ」と放っておけなくなってかまって貰えるようになって脚光を浴びていたのですが、朝鮮族は千数百年ぶりに訪れた約100年間のチャンスを活かし切れないまま終わりそうです。
今では陸続きで攻めて来るばかりではなく、海空軍や大陸間弾道弾等が発達して日露の間に中立ないし親日の民族があった方が良いものの、半島が仮にロシアに席巻されたとしても明治初期ほどの緊迫性がなくなってきました。
まして戦前とは違い、超大国アメリカの庇護下に入ったので、ソ連・ロシアの軍事脅威は殆ど誰も感じなくなっています。
結果的に朝鮮半島の戦略上の重要性は戦前に比べて数百分の1ほどの価値に下がり、日本にとって良き隣人ならば別ですが、そうでない限り重要性を全く感じなくなっています。
アメリカとしては前線が遠いほど良いので朝鮮半島を重視して来ましたが、アメリカにとっても直ぐに移動出来ない軍事基地を半島に持つリスク・・人的損失リスクの方が気になっている状態で、最近は出来るだけ後方・・即ち海洋基地に撤退したい本音が見え見えです。
むしろ韓国側で国連軍の指揮命令権の韓国への委譲先送りをアメリカに要望するようになっています。
アメリカは本音では朝鮮半島の支配権がロシア・中国へ移ろうが移るまいが「どうでもいいや!』という態度に変わりつつあります。
中国にとっては元々ロシアと長大な国境を接しているので、朝鮮半島が仮にロシアの勢力下に入っても距離的リスクに関しては50歩100歩でしかなく死活的重要性がありません。
どこの国も朝鮮半島については、それほど重視しなくなっている・・あまりうるさいことを言うなら放っておけば良いというのが、関係国みんなの共通認識になりつつあります。
中国でさえもあまり恩知らずに言いがかり的要求を続ける北朝鮮に愛想を着かし始めて距離を置きつつあることは周知のとおりです。
地政学的距離感の変化を韓国は分っているのか分らないで威張っているのか知りませんが、この焦りが却って反日意識を激しくしているのかも知りません。
日本から見ると韓国は反日だけやっていると思っている方が多いと思いますが、反米だけではなく、スポーツをやれば対戦相手と満遍なく喧嘩する・・外国移住・国外脱出熱が盛んですが移住先でそこの住民と悶着を起こすので、結果的にどこの国でも最も嫌われているのが韓国人気質です。
元々相手の文化が自分より優れていれば、大金を投じて留学生を送ってでも,あるいは高給を払ってでも優秀な人材を招聘(明治のお抱え外国人など)するなど積極的に受入れるのが普通の民族の姿です。
韓国では逆に相手が優れていることを理由に、文化輸入を禁止して来たこと自体が世界でも稀な異常な対応でした。
正々堂々と日本から学ぼうと言わずに、こっそり日本大手企業の技術者を引き抜きあるいは日本文化を盗み、これが元々自国文化だと国民に嘘を教えようとするから、韓国の歴史認識は世界中でファンタジーと揶揄されるようになっていて誰も相手にしない異様な結果になります。
この負い目があって、自国のでっち上げ歴史認識を相手に認めさせることが全ての交渉の出発点になるのですから、集団精神異常になったのではないかと疑う人が増えて来ました。

女性の地位と社会進出

December 8, 2010「フランス大革命と所有権の絶対4」で書いたように、わが国では農地支配は重層的関係で、武士は領主支配権だけで農地の直接所有権までは持っていませんでした。
小作関係も同じで、西洋では自分の農地感覚ではなく従業員的立場で耕作していたので、(一所懸命の伝統がなく)エンクロージャームーヴメントで簡単に追い出されてしまったのですが、我が国では名目上は地主所有になっても、実際には小作人が直接農地管理をしていて一種の請負のような関係で敗戦後農地解放まで来ました。
ですから農地解放で、スムースに現に耕作している農民所有に復帰出来たのです。
元々農民の多くが小作関係に転落したのは地租改正・貨幣経済化・・金納制になってからのホンの僅かな期間に過ぎなかったことを、04/09/04「地租改正と農地売買の自由化3(大地主の誕生と小作農の出現=窮乏化)」前後で紹介しました。
我が国では国民の大多数を占める庶民・農民の生活は(武士・領主と農民の関係同様に)女性の労働に頼っていた・・武力(夫の)支配は観念的政治支配権(家の中で形式上大事にされていた)だけで直接支配権まで持たなかったことから、女性は飽くまで農業の主役のままでしたので実質的発言力が高かったのが、西洋やアラブ系の女性とは違います。
(今でも旧式の温泉ホテルや料亭はおカミさんが実質支配人で、男の社長は商店会の集まりに出たりウロウロしているばかりです)
西洋の歴史をそのまま理解して日本の男女関係を理解したら間違いの元です。
上位階級の理想・価値観が専業主婦・お姫さまでしたので、明治以降庶民も給与所得による収入に変化し、しかも高度成長期でサラリーマンの所得が上がると誰もが専業主婦になるの(専業主婦を養えるエリートとの結婚)が理想と思い違いしてしまったのです。
(女性には、何故か働かないお屋敷のお嬢様や奥方に対するあこがれ・・シンデレラ物語の精神があります)
皮肉なことですが女性の理想・・汗水たらさずに、どろんこになって働かないでいられる生活は、それを実現すると実質的地位低下をもたらすことに気がついていなかったのです。
日本の女性の実質的地位の高さは家庭内で実際に働いているのが主婦・妻自身であって使用人任せでないところが大きいのです。
この点西洋では、レデイーファーストと言いながらも実質的には家庭内の地位が低いのは、育児もベビーシッターや家庭教師に任せ、自分はパーテイー等で楽しむだけでは、立場が弱くなるのは当たり前です。
ただし、貴族の場合領地経営は奥様の仕事で、夫はロンドンなど宮廷に出仕して領地経営にはあまり関与していませんでした。
領主夫人は執事を引き連れて年中飛び地の領地周りをして領地ごとの管理人から収支の報告を受けて帳簿をチェックし細々とした指図をしなければならず休む暇がなかったようです。
西洋では別荘と言うか各地に屋敷があり、巡回裁判所などの伝統があるのは、こうした巡回の歴史(領主裁判権の時代が長かったのです)があるからです。
このように男女の実質的格差・・女性の家庭内地位は日本以外の国では日本よりはかなり低いのに、社会進出になるとインドやその他後進国ですら日本よりも比率が高いのは、外国の女性は家庭内を牛じることに対する関心が低い・・元々家事に時間が取られていなかった歴史によるところが大きいでしょう。
日本の女性は有史以前から支配して来た家庭内の実質支配権が空洞化する危険を冒して社会進出するしかない(従来の家庭運営形態では二者択一しかなかった)ので、独身を選択する女傑(土井元衆議院議長など)に偏ってしまうので大量進出が進みません。
これが、家事育児の社会的受け皿の整備と夫の協力(お手伝いの域を越えた)参加によって、女性が家事育児に割く時間が減少し社会進出が容易になって来たのが昨今の現象です。
ベビーシッターや家事使用人(ここ数十年間は長寿化の結果いつまでも元気な妻の母親が代わって家事を引き受けることによって、テニス・バレーその他女性専門職業が成り立つようになっていますが・・・)に頼らず社会参加を実現する我が国の方向性は正しいのですが、省力化であれ社会のインフラ整備・夫の協力教育その他何であれ、女性の家庭内の実質的関与時間の縮小が、家庭内の発言力低下をもたらす効果は同じでしょう。
July 14, 2011「結婚離れ1」以来のシリーズは、この変化が家庭内の男女関係・・結婚制度にどのように変化をもたらすかの関心で書いています。

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