データ公開(秘密体質1)

話がそれましたが、民主党政権(参議院議長は民主党出身です)でも根回しの必要性を正面から否定して新たな社会にしようとする人ばかりではなく、自分たちが根回し能力が低いだけであって自分に対しては根回し無視,事前相談がないと怒る人間が多いことが分ります。
それどころか防衛大臣の判断が本当だったとすれば、危急時の価値判断が現場の方が優れていて政治家の方が大きくずれていることになりそうです。
自衛隊現場では、東電社側による「原発が大変なことになっているので、緊急に帰京する必要がある」と言う説明を聞いて判断したのに、現場から防衛大臣への報告ではそこを端折って報告したので、大臣は単に民間人の搭乗だと思ってそんなことより災害救助を優先しろと言った可能性もあります。
地震発生直後数時間の段階ではまだ原発問題は大きな関心を呼んでいなかったので、東電関係者以外は危機感が広がっていなかった可能性があるからです。
別の件では,原発問題専門家として内閣府参与に登用されていた人が自分の意見が通らないことに政府の対応は場当たり的だ(指導力がない)と腹を立てて3〜4週間くらい前だったか?辞任しましたが、自分の意見が通らないことを理由にトップに指導力がないと言うのも変な論法ですが,我が国の正義とはそんなものです。
ついでに書いておくと、学者は自分の意見を通さねばならない立場ではなく、自分の意見を臆さずに主張することに意味があるのであって政治家は多種多様な意見から政治責任を持って取捨選択あるいは止揚して創造的な決断をするべきものであって立場が違います。
学者生命にかかわると言うならば、自分の意見を政治家に遠慮して主張しなかった場合だけであって、きちんと主張した結果政治家に採用されたかどうかではありません。
学者である以上多様な意見があり得ることくらい分りそうなものですが、自分の意見が政治家に採用されないことを怒るとは不思議な主張です。
政府決定に連帯責任を負うのが嫌だと言うならば、議事録の公開を求めるべきかどうかの問題です。
今回の震災対応の問題点は政府の秘密主義に大きな問題があり、これが却って世界中から日本製品閉め出し、対日観光客の激減などの2次被害に繋がっているのです。
何ミリシーベルトで危険があるかどうかの議論経過・・前提事実・・客観的データを、政府が国民に隠す必要性がありません。
あるいは風向きによる放射能飛散状況の動態図(スピードとか言うものらしい)を何故隠していたのかも疑問です。
何故日本でそういう科学技術がないのか(日本は本当に先進国かな?と)疑問に思いながら、仕方なく私の場合ドイツが公開していた動画を見ていました。
後でそういうシステムを日本も動かしていたのに、国民には隠していた(隠すつもりがなかったかも知れませんが公開していなかった)ことが分かりました。
議論経過・科学的データをオープンにした上で、政府がその中のどの意見をどの理由で採用したか、それが政治決断として妥当だったかを国民の審判・あるいは世界中の批判に委ねるべきです。
辞任した原発学者が記者会見で政府判断の不当性を暴こうとしたら、政府から公務に関しては守秘義務があると注意されて記者会見が取りやめになったと言う報道です。
議論経過を何故秘密にする必要があるのか疑問です。
ただし、彼は政治家ではないならば、誰がどう言ったかではなく自分の意見論文を書けば良いのであって、政府判断の不当性を力説する必要性はありません。
実践的にどの意見を選択するのが正しいかは政治判断の領域で、学者・専門委員の職分を越えています。
とは言え、政府(後に書きますが官僚)は科学の領域に関することまで何故オープンな議論を怖がるのでしょうか?
国際交渉では、相手のあることですからすべて手の内をさらす訳に行かないので国家秘密性があり得ますが、国内の原子力事故で、何がどうなっているのか国民に知られると、あるいは外国に知られるとどんな不都合があると言うのでしょうか?
コチラの対処方法が予め伝わると、原子炉の方で予め反応して別の事故を起こし、裏をかかれると言うのでしょうか?
相手は生き物ではないのでコチラの動きを知られても困ることはない筈ですが・・・。
データを開示するとそのデータなら別の方法が有効であるのに、政府の対処方法は誤りだと言う批判を恐れている・・政府・官僚は自分のやっている事に自信がないからでしょう。

東電の体質改善

他方滑稽なことですが、根回し無視と言うかそういう方向の能力が不足している筈の菅内閣自身ですら、東電から海水注入の事前報告ないし伺いがなかったとかでイチャモンをつけてせっかく始めた海水注入を東電が中止せざるを得なくなったと言う流れが(嘘か本当か不明ですが・・)1週間ほど政治問題になっていました。
緊急事態の連続で事前の根回しまでやっているヒマがなかったことは官僚体質で染まっている東電でも同じだったのでしょう。
政府は否定しているので深層は薮の中ですが、5月26日になって,東電の現場所長が上からの(無茶な)指示を無視して(自分の責任でやると言ったかどうか知りませんが、上の政治的メンツのやり取りで海水注入を止めたら大変なことになると言う判断でしょう)記録上は、上からの指示通り注入を停止したことにしたまま、実際は注入を続けていたことが判明しました。
彼こそ,国民の危機を救った国士ではないでしょうか?
東電は東電で,26日報道では、政府からの中止指示があったのではなく、そのときの会議の空気を読んで中止を命じたと変更するのですが、12日と言えば菅総理が東電の拙劣な対応を怒りっぱなしのときですから、中止命令はないとしても空気を読んだことはその通りなのでしょう。
ところで、政府関係者の不快感を見た・・空気を読むくらいで、原発被害が拡大するかどうかの瀬戸際となるべき冷却行為を中止するような重要決定を安易に出来るのでしょうか?
せっかく海水注入を始めたのをやめると大変なことになることは誰でも分ることですから、(私など素人でもどうせここまで来たら原発の再稼働見込みはないのだから,何故最初から海水注入をやらなかったのだと事務所で話題にしていたくらいです。
「せっかく冷やしているのをやめたらどうなる」と言うことですから、重要な命令を会議の雰囲気だけから勝手に命じるとは到底考えられない筈ですし、どうしても政府が事前相談がなかったと言う理由だけから中止しろと言うなら、大勢の前で「本当に中止して良いのですか?』と確認をとるのが普通です。
多数の会議出席者が誰もそんなやり取りを聞いていないとすれば、冷却をやめたら大変なことになるのが分っているのに国民の命運がかかっているような重要行為をその場の空気だけで何故決定したのかを明らかにする必要があります。
中止などと言う無茶な指示に驚いた現場所長が腹をくくって自分の責任で中止命令に応じなかったものと思われます。
東電では,上からの指示を無視した彼を処分することにするとして、如何にも政府命令があったかのような態度でまだ頑張っていますが、「空気を読んで命じた」と言う腰砕けの再発表自体から見て、政府命令で中止したと言う明確な以前の記者会見とは違い過ぎてどこかに無理があります。
大規模な機器や人員動員の注入作業中の中断は大変なことですから、実際に現場で注入をやめたら大混乱・大騒ぎになっていた筈ですので、現場判断で中止したかしなかったかは、直ぐに分っていた筈です。
実際に中止していないにも拘らず、記録上の中止指示データをそのまま、2ヶ月も経ってから恰も中止していたかの如く公表した東電も東電ですが、科学に素人の安倍さんが細かいデータにいち早く気づいて、データ発表と同時くらいに政治問題にしたこと自体怪しい動きです。
安倍氏の指摘で政治問題になると、東電はいつものように歯切れの悪い誤摩化し的発言(が多くて国民の不満を蓄積していたのですが・・・)ではなく、直ぐに記者会見して「政府の中止命令で止めた」と明言して応じました。
事前報告やお伺いがなかったことを問題視した意見があったかも知れませんが、事前お伺い・根回しの有無だけのためにこんな馬鹿げた指示を政府が命じたとは思えないのが大方の反応でしょう。
その場で文句を言われたこと・雰囲気だけを理由にして・・結果の災厄を無視した中止命令を下部に伝えていたとすれば、(個人的感情で)国家の命運を左右するようなマイナスに決まっている重要決定をしたとすれば、ことは重大です。
馬鹿げた中止を誰が決断・命令したのか・・そんな人材が重要事項を決定するべき役職にいるのは問題ですから、誰が命じたのかを先ず明らかにすることが必要です。
これを阻止した所長は賞賛されるべきですが,他方から言えばこんな明白に方向性の狂った命令があった場合、自己責任でトップの指示に反しても国家の災厄を阻止出来る人材・・反骨の人がトップから所長までの間で一人もいなかったと言うことです。
また東電社長が事故発生に対応して関西から急遽帰京しようとしたところ、新幹線が動かなくなったので航空自衛隊に頼んで一旦は離陸までしたのに、事前に防衛大臣の了承を得なかったことで大臣からのクレームで元に戻らされてしまい、却って帰郷がⅠ3日にずれ込んだことも東電による(と思われる)リークで分ってきました。
緊急時に何故陣頭指揮出来かったのかの言い訳を兼ねた現政権非難報道ですが、これに対して政府側のリークらしく東電社長は当日奈良に公用と称して実は奥さん同伴で観光旅行に言っていたと言うすっぱ抜きも出ました。
東電の危機管理準備がお粗末だったために政府(だけでなく国民感情とも)との関係がぎくしゃくしたのは事実ですが、(イラ菅と言うだけあって菅総理がイライラをぶっつけていたのは推測できますが・・・)怒られた恨みを晴らすために次々とすっぱ抜き合戦に熱心になっている印象です。
しかし東電は官僚的体質が強いと言え、政治運動体ではないのですから、電力事業をきっちりやる責任があるだけであって(肝心のことをしっかりやって国民に迷惑をかけないようにして欲しいものです)政争に自分から頭を突っ込んで限られたエネルギーを使っている場合ではないでしょう。
東電の体質改善が必要な印象です。

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