地方交付金(再分配)制度2(都市国家の有利性1)

企業を例にすれば、10の事業部門のうち9部門平均が10%の収益率でA部門だけ3%あるいはマイナスとした場合、A部門を売却した方が平均収益率が上がります。
赤字部門を抱え続けて収益部門の収益で補填していると収益部門の研究開発費や再投資資金が蚕食されて競合他社に遅れを取っていきます。
GMが最盛期にドラッカー氏に指摘されたこの提言を無視した挙句に破産に至った事例をラストベルト地帯のシリーズで紹介しました。
イギリスのシティ・オブ・ロンドンに関するウイキペデイアによると以下の通り荒稼ぎのようです。

シティは英国のGNPの2.5パーセントに貢献しており[5]、ロンドン証券取引所やイングランド銀行、ロイズ本社等が置かれる金融センターとして[注釈 6]ニューヨークのウォール街と共に世界経済を先導し[6]、世界有数の商業の中心地としてビジネス上の重要な会合の開催地としても機能している[7][注釈 7]。

1990年代初期に、IRA暫定派がシティ内に複数の爆弾を仕掛けて爆発させる事件が発生した[注釈 8][注釈 9]。居住する人口はおよそ11,700人だが、金融業を中心に約31万6,700人の昼間人口がある[9]。

これを英国全土にばら撒かずに、シンガポールや香港のようにスクエア・マイル(the Square Mile)?の狭いシティー内で収益分配できればボロ儲けでしょうが、そうは行きません。
居住人口11,700人でGDPの2、5%も稼ぐ・このおこぼれがグレーターロンドンに浸透しはるかな僻地にもおこぼれが行き渡るのでしょうが、この極端な職業の格差というか分離が、国民一体化を崩壊させているように見えます。
EU離脱支持が地方に多く、反対がロンドン市民に多いとのニュースを見た記憶ですが、このような極端な産業構造の分離が国論統一に対する妨げになっているような印象を受けます。
上海だって、独立して、周辺の安い労働力(昼間人口)を使って儲けを上海市民だけで分配した方が得に決まっています。
現在の香港騒動を西側メデイアが民主主義の危機と受け止めて大騒ぎですが、中国人の方は上海深圳と違い「香港だけいい思いをしている」・・巨大人口市場をバックに儲けているのに全土に還元しない不満があって、中国本土人民での支持が広がらずこれをバックに中共政府の対応が強気になっているように見えます。
貧しい・・近代化の遅れた国は実力のままの方が相応の待遇を得られて有利なのに、僻地が大国の仲間入りすると僻地の企業まで(中国でいえば)後進国向けの恩典を得にくくなります。
外国へ行った時に中国人として大きな態度を取れる程度のミエを張れるのと引き換えに相応の振る舞いが要求されるより、内陸のチベット人や少数民族の人は、その民族名で外国へ行き経済力相応の安宿に泊まる方がエコノミーで良いのではないでしょうか?
自分の属する国が大国であることによって何か良いことがあるのでしょうか?
中国が偉そうな主張をしながら、後進国の特別待遇を求め続けているのはズルイと思う人が多いでしょうが、この矛盾を抱えていることによります。
平均化の不都合の穴埋めに、円が上がると今でも苦しい農業等が余計困るので貿易交渉・・概ね農業保護の要求撤廃緩和の妥協の都度農業地域への補助金等の所得格差補正が行われてきました。
不採算事業・農林漁業の多くはそうですが、企業の事業部門のように不採算事業売却とはいかないので世代交代によって従事人口が減っていくのを待つしかないのでその間は環境変化に対する適応期間(失業者の再就職適応のための職業訓練や、失業給付と目的は同じです)とが必要です。
昭和30年代に高度成長が始まると金の卵と呼ばれる中卒集団就職列車が農村部から東京に向かいましたが、当時現役の4〜50台の農漁業労働者の工場労働者への変身は無理でした。
その頃でも長男は残ることが多かったので、結果的に約2世代かかりました。
それから約5〜60年でようやく農家の担い手がなくなってきた・・近代工場労働〜都市型労働への切り替えが終わった段階です。
今は都市内労働者が、ITやサービス関連への切り替え・再教育が模索されている段階ですが、今後は変化が早いので世代交代を待ってられません。
世代交代なしにIT化など急速進化する科学技術に適応していくのは難しくなりそうです。
今後の世代は大卒時の能力で人生が固定するのではなく、20年ごとに来る新技術への適応力次第で中高年時に大きな格差が生じることになりそうです。
40代に生じた技術変革にうまく適応できた成功者が、60代に来る2回目の変化に適応できないなどの厳しい社会になります。
10年ほど前までは60代になったばかりの人が新技術を知らなくとも「俺は逃げ切れる」という発想の人が多かったのですが、70代まで普通に働く時代が来ると、60代の人でも、もう一度新技術を学ぶしかない時代がきます。
農漁村が置き去りにされる時代には、地域格差でしたので政府の所得保障・補助金や地域経済の活性化目的公共事業による底上げでなんとかなってきましたが、今後は地域にお金を落として就労機会を与えれば良いのではなく(地方救済の公共工事の場合、農家の人が土木工事作業員に向いていたのですが・・)個々のニーズに合わせた再教育機会の提供が重要です。
日本ではこうした分配・所得修正政策が手厚かったので、地域格差問題にそれほど苦しまないし、個々人間の所得格差にも早くから手厚い修正・再教育プランが働いているので民族一体感を強固に保っていられるのだと思います。
東京都は持ち出しが多いので小池都知事が全国知事会等で不満を表明していた記事を読んだ記憶ですが、そもそも東京は周辺や地方経済があってこそ(千葉県には製鉄所や東京電力その他大工場がありますが)と東京に本社機能が集中しエリートサラリーマンや高級官僚がひしめくのであって、東京都民だけでは今の大規模なビル群が維持出来ないはずです。
大規模な催し物・高級芸能あるいは美術展音楽会などが東京で可能なのは、全国から人が集まるから興行が成り立っています。

地域格差と地方交付金制度1

地方税収と地方交付金比率等の現状紹介です。
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/30data/2018data/30czb01-03.html

3 地方財源の状況
平成28年度における租税収入及び租税負担の状況並びに地方歳入の状況は、次のとおりである。
ア 地方税
地方税の決算額は39兆3,924億円で、前年度と比べると0.8%増(前年度6.3%増)となっている。
地方税収入額の62.0%を占める住民税、事業税及び地方消費税の収入状況は、第14表のとおりである。
イウは省略
エ 地方交付税[資料編:第21表、第129表]
地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域においても一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するための地方の固有財源である。また、その目的は、地方公共団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を損なわずに、その財源の均衡化を図り、地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方公共団体の独立性を強化することである。
地方交付税の決算額は、17兆2,390億円で、前年度と比べると0.9%減(前年度0.2%減)となっている。また、歳入総額に占める割合は17.0%(前年度17.1%)となっている。

上記の通り、地方税決算額約39兆円に対して約17兆の交付金ですから、格差是正用資金比率が大きい・・昨日2割と仮定して書きましたが、約3割であることがわかります。
本社の集中する東京都の税収が大きいままでは格差が広がり過ぎます。
地域格差是正のためには国税比率を上げて、格差調整資金として使うことになりますが、自治体の自主性との兼ね合いです。
シンガポールやモナコは、日本の地方交付金に当たる資金負担しないで周辺から吸い上げるばかりでうまいことをしていることになります。
古来から都市国家にした方がいいとこ取りで効率がよく、現在のシンガポールや香港などが突出的に一人当たりGDPが高くなっている所以です。
これに似た例がドイツと南欧諸国との関係です。
EUがなくドイツ単独通貨であれば、輸出黒字の積み上がりはドイツ通貨マルク高となり、輸出価格上がり輸出が減り、輸入品価格が下がるので国民が輸入品を安く買えるようになり貿易黒字にブレーキがかかるのが為替制度の仕組みです。
EUの通貨統合によりEU全体の貿易収支平均でユーロ相場が決まるためにEU全体で貿易収支が均衡していれば、ドイツ1国がいくら貿易黒字を積み上げてもユーロ相場が同じのままなのでドイツは為替相場による修正がなく国力以下の安い通貨のままで際限ない黒字を続けられ、EU域内の恒常的赤字国にとってはいくら赤字が続いても為替相場の下落がないので、赤字が自動的に修正されないまま・・弱小国・南欧諸国にとっては、競争力以上の割高通貨を強制される損な関係です。
この関係は日本でも地域や業種によって輸出競争力差があるのに車や各種工業品など競争力のある業界の大幅黒字の結果、円高になると弱い産業を抱える地域がもしも別の国であれば通貨が下がるはずのところ、同じ国に属しているために国際競争力の弱い地方農産品も車等工業製品の競争力を基準にした通貨との平均価格=日本全体の貿易収支によって決まる円相場で輸入品と競うことになります。
競争力の弱い農業しかない地域の通貨相場が下がるどころか、自分らに関係ない車の輸出が増えると逆に円相場が上がる関係になります。
このように見ると通貨単位は小さければ小さいほどその地域の実情に応じた国際交渉可能なので実は有利なことがわかります。
この後続けて都市国家の有利性を書きますがこの原理によります。

交付金の分配

6月17日に書いたように国民全部から貰った資金・交付金を一人一人にきちんと配ってくれたら、何時あるか分らないことのために一時避難や二重生活に備えた生活を延々と繰り返すよりは、恒久的に仕事ができるように仙台や東京などにその資金を持って出て行ってしまいたい人がかなりいたでしょう。
一人当たり1000万円の場合、赤ちゃんまで含めた3人家族で3000万円貰えますし、親子3世代で一緒に移転すれば、かなりまとまったお金になります。
仮に原発立地の4町の住民だけを前提にすれば、これが当初人口が今(約4万人)の3分の2=約25000〜26000人であれば、一人当たり1000万円配っても2500〜2600億円に過ぎないので、この程度の資金は前もって配っておいて自分で好きな別荘地でも(首都圏の郊外マンションでも)購入しておいてもらっても良かったのです。
(一人とは赤ちゃんや超高齢者を含めてですから、3世代で転居となれば大変な金額です)
残りのお金で役場その他の機能移転・バックアップを考えたり、避難行動の応援や連絡調整などに使っても資金は有り余っていたでしょう。
お金だけでは故郷を捨てられないと言う心情論が出てくるでしょうが、故郷を捨てられない人はお金をもらうのをやめて自治体で用意した避難用地に別荘を建てるか、危機が来るまで座して待つのも勝手ですが、最後まで残っていた人が避難するにしてもみんなで予め用意した場所に一緒に移転すれば今のようにいきなり体育館に避難して雑魚寝をするよりはマシです。
本当に共同体維持に熱意を持っている人は一緒に移転する・・別荘地に自分用の避難用建物を建てるでしょうし、そんな何時あるか分らない危険におびえながら二重生活するくらいなら、まとまったお金をもらってムラから出て行ってしまった(無関係なところで仕事を探して)方がマシだと言う人は別のところに行ってしまうでしょう。
ともかく本人の好きに任せれば良いことです。
ムラの人はお金なんか欲しくない筈だ・今の生活を守りたいだけだと訴える人が幅を利かして来た感じですが、それを本気で思っているならば、交付金をもらって原発立地に賛成したり交付金欲しさに原発誘致決議などしなければいいでしょう。
危険・・具体化すれば逃げるしかないこととの引き換えに、予め交付金をほしがるのは、ふる里の維持よりはお金の方が良いと言う意味・意思表示ではないのでしょうか?
ムラのみんなあるいは大多数が共同体維持希望者であるとする主張に自信があれば、・・お金を配って見ても、ほんのちょっとした落ちこぼれが出るだけで心配が要りません。
実際にはお金を配ればムラ社会を出て行ってしまう人が多いことを本音では知っていて、分配に反対していることになります。
夫婦別姓論・・選択制に反対する論者は、選択制にすると別姓選択が多くなる・・そういう国民の方が多くいることを自白しているようなものであると、04/16/05「夫婦別姓28(完・・・夫婦別氏の選択性)多様な婚姻制度6」で書いたことがありますが、住民への分配も同じで、本当にお金よりも共同体維持を望む人が多いと言う自信があるならば、配るからどうしますかと提案してみたら良いいのです。
配ってみて住民がどう言う行動をとるかは住民の意思に任せるべきであって、政治家が勝手に住民の意思は「お金より共同体維持であると決めつけるのは僭越です。
お金を住民に配るのには反対にも拘らず、巨額交付金を欲しいと動いていた人たちは、そのお金を何に使いたくて危険な原発誘致運動をしていたのでしょうか?
住民個人にはびた一文使わせないが、自治体と言う団体で使いたくて、(イザと言うときのために資金を管理していなかったようですからら・・・)交付金獲得にしのぎを削って来たことになります。
結局は危険を被る住民をダシにして貰った交付金を、政治家が自由(結果的に・・主に土木建築工事に使い切っているのですが・・・)に使おうとする魂胆だったのでしょうか?
他人がとやかく言うのではなく、お金を配って当事者がどちらを選ぶか任せれば住民の本心が明らかとなります。
事前にお金を配ってもらって町を出る人とお金をもらわないで町に残る人が決まれば、高齢者等どうしても土地を離れたくないなどで、危険な町に残った人の分だけ避難用地を用意すれば良いので取得用地の規模も事前に確定出来ます。

交付金の性質?

いわゆる電源3法(電源開発促進税法・特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)・発電用施設周辺地域整備法)の交付金の性質については、www.nuketext.org/yasui_koufukin.html「よくわかる原子力 – 電源三法交付金 地元への懐柔策」の記事によれば、以下の通りらしいです。

「交付金制度の制定は1974年。そのころ通産省(当時)資源エネルギー庁の委託で作られた立地促進のパンフレットには、次のように書かれていました。
 「原子力発電所のできる地元の人たちにとっては、他の工場立地などと比べると、地元に対する雇用効果が少ない等あまり直接的にメリットをもたらすものではありません。そこで電源立地によって得られた国民経済的利益を地元に還元しなければなりません。この趣旨でいわゆる電源三法が作られました(日本立地センター「原子力みんなの質問箱�)。」

経済的利益の還元・・即ち補償金のことでしょうが、何に対する補償金かと言うことです。
補償とは、何かの不利益に対する補填・補償ですが、原発が立地するだけでどのような不利益があるのかと言うことです。
第一原発に関しては敷地だけで90万坪もの買収ですから、巨額資金が地元に落ちていますし、その他漁業補償あるいは取り付け道路用地買収・港湾整備等による地元への資金投下はマイナス要素ではありません。
福島第一原発だけで常時6000人の従事者がいるとも言います。
科学者比率が高いとは言え、彼ら自身の食料や宿泊施設需要、彼らの仕事ができるように補助的事務員の雇用・清掃その他現場作業用労務の需要、関連企業の出張者(も頻繁です)に対する宿泊需要や食料供給関係者等々地元に及ぼす経済効果は計り知れないものがあります。
私の経験で言っても、平成の初め頃に茨城の東海村原子力研究所には千葉県弁護士会の司法修習担当副会長の時に修習生を引率して見学に行っています。
こうした需要もあります。
これらの需要に応じて各種建物ができれば地元には、固定資産税も潤沢に入ります。
双葉町の例ですが、http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/8444456/blog_id/13876の
「増設容認、金の魅力 神話の陰に—福島原発の推進側を見る」からの引用です。

「原発立地を促すための国の電源3法交付金、東電からは巨額の固定資産税などの税収……。原発関連の固定資産税収だけでもピークの83年度は約18億円。当時の歳入総額33億円の54%に達した。」

勿論6000人に及ぶ従業員の給与等に対する税金も住民税等として入ってきます。
大熊町の人口動態ですが、以下は上記同所からの引用です。
「徐々ににぎやかになった。出稼ぎもなくなったしな」。志賀の言葉を裏づけるように、原発での雇用が生まれ、町の人口は増加の一途をたどった。1965年に7629人だったが、国勢調査のたびに増え、2005年には1・5倍近い1万992人となった。」
とあります。
本当に生活にマイナスであれば・・大気汚染や臭気・煤煙・・振動等で苦しめられている場合、そんな場所で人口は増えない筈です。
原発施設の老朽化に連れて固定資産税も減少して行き、町の財政が苦しくなります。
これに連れて人口も減り始めた双葉町では、ついに新設を求めて誘致決議までしていたことを6月9日に紹介しましたが、原発による具体的被害がない・・不安感と言うことだけで巨額補償金を貰っていたことの証左でしょう。
上記のとおりで、立地することによる何の迷惑があるのか不明ですから、補償対象は具体的な損害に対するものではなく、原子力・・放射能漏れに対する強度の不安感(を言い立てているだけ・・本気で怖くはないから誘致決議をするのです)に対するものに過ぎないと言えます。

交付金の使途2(積み立てていたら?)

福島第一原発周辺市町村では、標準計算通りとしても約5400億円を当初から全部受け取った訳ではないので、その関係のおおざっぱな運用計算をするために福島第一原発の時間軸を紹介しておきましょう。
2011年6月11日掲載のウイキペデイアの福島第一原発に関する記事・年表では

「1964年7月には最初の60万坪については交渉を妥結、・・」(全部で90万坪予定)
「1970年(昭和45年)11月17日 :1号機の試運転を開始、1971年(昭和46年)3月26日 :1号機の営業運転を開始」
「1974年(昭和49年)7月18日 :2号機の営業運転を開始」
「1976年(昭和51年)3月27日 :3号機の営業運転を開始」
「1978年(昭和53年)4月18日 :5号機の営業運転を開始」
「(同年)10月12日 :4号機の営業運転を開始」
「1979年(昭和54年)10月24日 :6号機の営業運転を開始」

となっています。
2011年6月9日に紹介したように交付金の支給は原発施設の完成稼働後ではなく、立地計画決定後・用地買収開始・・竣工・・運転開始10年前からの支給開始です。
一基当たり(標準計算)では、運転開始10年前から運転開始までに391億円、運転開始後10年間で502億の交付で合計20年間で約900億円弱の迷惑料が支払われます。
福島第一原発の上記年表によると、福島第一原発立地市町村では、標準計算によると1号機に関しては合計900億円弱を1981年までに貰っていて、1989年までには6号機まで合計約5400億円弱全部を貰い終わっていることになります。
最後の6号機運転開始の1979年までに交付された金額は、運転開始前に払われた金額・・6×391億円=2400億弱ですが、この時点では1号機は運転開始後9年も経過していて約500億がほぼ貰い終わる直前ですし、2号機だって5年も経過していますので約7割の350億を貰っているとすれば(支給は10年均等割ではなく、最初が大きく次第に減って行く形式です)これらを順次プラスして行けば、1979年には3000〜3500億円前後は貰い終わっていたことになります。
1979年から今回の震災までの期間は32年弱ですから、仮に30年間の運用益としてみれば莫大な金額になっている筈です。
仮に年5%の単利運用でも20年で100%、(元利合計6〜7000億円)30年だと150%(元利合計7500〜8250億円)です。
実際には単利運用はあり得ないので、仮に5年に一回利息を元金に組み込んでも巨額になります。
今でこそデフレ下で金利運用益は低いですが、バブル崩壊の1990年前後までは10数%の運用が普通でした。
以下は、平成12年度会計検査院の決算検査報告の一部です。
「昭和51年1月から59年12月までの9年間で平均0.054ポイント(政保債平均利回り7.667%)と、変動もほとんどない安定した発行環境が続いた。・・」
政府発行債でもこんなものですから、(上記0、054と言うのはこれに上乗せするスプレッドのことです)資金需要の旺盛な民間の公社債・・投資信託で運用すれば、我が家の経験では年利15%前後の利回りが普通でした。
信託銀行の貸付信託に預けると、年利7〜8%で複利計算してくれるので5年でⅠ、5倍、10年でちょうど2倍になると言う触れ込みでしたし。
(20年で4倍ならば1兆4000億以上30年で2兆7000億になっていますし、信託銀行に預金するしかない庶民と違ってもっと有利な運用があった筈です)
土地の値段はあっという間に2倍に上がる時代でしたから・・・債券の利回りも高かったのです)
もしもの災害積立資金に充てるために前金で貰っていたとすれば、一定割合は積み立ててておくべきですから、このうちの元金部分だけ全部を今回の具体的被害者に分配しても、なお地元には、貰った元金の何倍もの資金が残る勘定です。
ちなみに福島第二原発は、第一原発のある大熊町に境界を接する富岡町と楢葉町の境界に以下の通り設置されています。
1号機 – 1982年4月20日
2号機 – 1984年2月3日
3号機 – 1985年6月21日
4号機 – 1987年8月25日
一基当たり約900億円の交付金は立地市町村だけはなく周辺自治体にも一部分配されていたとしても、これら4基に対する交付金の一部も双葉町と大熊町は隣接自治体としてもらっていたことになります。
おおざっぱな計算としては合計10基分約9000億円がこの地域に交付されていたとして計算するのが妥当でしょう

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