格差・国内格差と国家間格差

中国の場合、対米巨額貿易黒字をどうするかの問題は、実質的輸出国がそれぞれの利害があって応援してくれるとしても、その外に5月27日まで書いて来たようにアメリカの金利上げの攻勢も凌がねばなりません。
日本の場合、世界一金利が安くても北朝鮮情勢が緊迫すると「有事の円」で円が上がる仕組みです。
他国の追随を許さない・・日本経済は世界最強ですので、アメリカが金利を上げてその差額分日本の円が下がっても何の心配もありません。
円が下がれば交易上有利になるだけです。
超低金利政策は為替操作ではないと言い訳していますが、結果的に「円」と言う貿易商品の値下げになって円の輸出・・貿易黒字なのにその割に円高を防ぎ貿易を有利にしていることになります。
これは経済原理によるのですから日本が何か不正をしている訳はありません。
日本が金利を上げるとどうなるか・・世界中が追随して金利を上げるしかなくなって高金利で窒息してしまうでしょう。
日本企業が海外投資する場合、日本の最低金利で資金調達出来ます(その代わり両替コストがかかります)が、競合の海外勢は自国の高金利調達ですから日本企業は競り合い上有利になっている原理を書いたことがあります。
こうして日本企業の海外投資がドンドン進んでいく・・対外純資産国の地位が固まる一方の下地を作っていることになります。
こうして見ると国際収支のパフォーマンスの良い国を一時的に腕力でへこませても合法的に攻める方法はない・・民度レベルの高い方が結果的に勝利するのは当然の原理であると分ります。
ただし、これが進み過ぎると日本の一方的な蓄積・・他方は利息や収益送金するばかりで貧しくなるのはおかしい・・徳政令みたいな国際合意が出来る・対外資産に頼り過ぎるのはリスクがあると言う意見を書いて来た所以です。
今はまだ、アメリカその他国内の格差がテーマで「国別格差があるのは当然」と言う風潮ですが、これはアメリカが世界からマネーを巻き上げながら国内格差があるからこれで済んでいるに過ぎません。
アメリカが世界からマネーを巻き上げる力をなくし日本一人勝ちになると国内の格差反対論が格上げされて「どこかおかしい」日本一人勝ちは不正だとと言う声が国際的に高まります。
何事も勝ち過ぎるのは良くない・・日本は矢面に立つ1番手をアメリカかどこかに任せておいて2番手で良いのであって、目立たない・矢面に立たないようにするのが国を守る大もとです。
今のところ日本は1番手をアメリカンにお願いしてその楯の御陰で、逆風を凌げていますが、これがいつまで続くかです。
日本を平和的に攻撃する方法が世界中にない・・、中韓にとっては口惜しいが手詰まりになっているので、ありもしない慰安婦・売春婦攻撃をしてきましたが、これも失敗に終わると武力制圧の脅しくらいしかないのが現状です。
日本は再軍備禁止で軍事力がないので、アメリカに頼るしかないのですが、アメリかもメルケルドイツ首相の発言にあるように実は当てにならなくなって来たので、自分である程度守るしかなくなりつつあることは確かです・・・そこで対中防衛力整備が日本にとって急務になります。
p.reuters.com/article/merkel-speech-trump-idJPKBN18Q01X
2017年 05月 31日 18:18 JST
メルケル氏は28日、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)後にミュンヘンで演説し、「他国に完全に頼ることができる時代はある程度終わった。私はこの数日でそれを経験した。われわれ欧州人は自らの運命を自分たちの手に握らねばならない。欧州人として、自らの運命のために闘う必要があると知るべきだ」などと語った。
同氏は29日にも、前日の発言における多くの要点部分を繰り返し、こうした見解を意図的に発信したことが明らかになった。」
5月26日にサーチナの記事で紹介したとおり中国は2兆ドルも純債権を有しているとしながら、所得収支が赤字になっています。
中国の場合、この数年外貨準備の急激な減少と言う実態・・中国の場合発表数字が当てにならないと言われていますが、その真偽は統計に現れない経済の実態を肌で知っている中国人自身の行動を見れば分ります。
実態を知る人民が中国から資金を逃がすのに必死になっている様子・・これこそが統計とは違う実際の姿が見えます。
この数年では、円とユーロの下落による外貨評価減が外貨準備減少分の約半分とも言わ(言い訳?)れていますが、(ユーロ保有内容が不明のママです)残り半分を占める資本収支赤字・資金流出の原因分析(外国企業買収もあり資本逃避分もあるなど)が必要です。
沈没しそうな泥船から我先に逃げ出したい心理状態のように言われていますが、汚職摘発を逃れるために海外資金逃避する人を含めた金融に敏感な人だけの話であって、普通の人は海外旅行後にちゃんと国に帰って行きますから、クニから逃げ出したい人ばかりではなさそうです。
裸官のように目立つ逃げ方をしているのは中くらいの知恵者であって、本当の知恵者は逃げなくとも政府の政策をくぐり抜けられる・したたかに生き残る智恵のある人・・自信のある人が一杯いるでしょう。
貿易黒字の統計も実は怪しいものです。
造船事業が大変な状態になっていることを17年3月22日に紹介しましたが、中国の苦境は人件費が上がったことによるのではなく、元々中国の生産性が上がっていなかったことによるのですから、世界景気収縮による不況の影響はいろんな業種に及んでいます。
中国の人件費がアメリカと同じくらいかもしかしたら高くなっているとか日本の人件費よりも高いと言う意味は、絶対額が高いと言う意味ではなく、生産性比で見たら割高と言う意味らしいです。
例えば中国人の時給が仮に5〜600円で日本が1000円とした場合、日本人の人件費が割安・・働きの(悪い?)中国人に5〜600円払う方が高く付くと言う意味ですから大変です。
人件費の安さにあぐらをかいて生産性向上に努力しなかったからです。
今になって、日本の工作機械・ロボット導入に必死・・ロボット需要大国になっているようですが、一人当たり生産性を上げるには機械化するしかないことに気が付いた・そうなると低賃金労働者の供給源である巨大人口が重荷になって来ます。
19〜20世紀型巨大人口が勝敗を分けるという発想の間違いが出てきたのです。
ここで、話題をMay 21, 2017「アメリカの傲慢と中国の適応力2」で書き始めていた中国の内需転換に戻します。
中国の場合地域格差はあるものの切れ目なく最低賃金を引き上げるなど製造業従事者に対する所得分配がある程度うまく行っていた可能性・・現状を見ると韓国に比べて中間層がそれなりに(人口の1%でも1400万人です)分厚く育っているように一見見えます。
ところが、これは中韓の高成長開始の時間差だけの現象・・中国も省力化が進むと折角育ちかけている中間層が崩壊する可能性があります。

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