構造変化と格差14(部品高度化2)

ところで、我が国でも高度化対応に成功していない企業も勿論あります。
(この間労働人口は大幅に減って来ているのですが)国内総生産がジリジリと増えていて貿易黒字が長年続いているので、全体としては高度化が成功している筈というだけであって、部分的には適応出来ず事業縮小になっている企業も沢山あります。
無限の事象の中からどの事実を拾い出すかによって歴史の意見が変わるように現在の現象もマスコミが恣意的に困った業者ばかり取り出せば、日本は大変な状態となります。
結局はトータルの総生産の増減や収支で見るのが正確でしょう。
例えば同じ繊維系でも三井財閥系列の大東紡をネットでみると、現在の株価は何と僅か60円台に下がっていて、本体の従業員数は50人台しかいません。
(古い企業なので都心の一等地に不動産があって不動産収入で生き残っている感じです)
同社は日本経済の主力が繊維から電機に移行する時代・・40年前からこれと言った新製品・新技術を創出出来なかったのではないでしょうか。
製鉄、造船・重工業分野、電機系もみな同じで、造船・新幹線・原発等の組み立て施行は韓国や中国に譲ってもその核心技術・部品は日本からの輸出で成り立っていたり、テレビや冷蔵庫などを国内で造れなくなっても、多くの国内工場はその部品等の輸出で生き残っていますし、うまく転換出来ず消えて行った企業も多くあります。
人件費の安さにつられて、早くから海外進出した企業は当初こそ大成功しましたが、同業他社が同じように海外進出すると、結局は内部蓄積した技術力のない企業の多くは淘汰されて行きました。
(消えて行ったいろいろな会社がありましたが、私が宇都宮にいた頃近くに工場のあった「アイワ」(最後はソニーに吸収されてなくなりました・・・もその一つだったかな?)
生き残れるか否かは目先が利くかどうかではなく、技術力の差にかかっています。
ある場所の立地に目を付けてラーメンやその他の店を始めると最初は成功するのですが、場所が良いと競合店がひしめいてきます。
そうなると結局生き残れるかどうかはその店の味・腕次第・・・腕が悪ければ草分けかどうかは関係がありません。
技術力を高めた変身成功の結果、日本の産業が高効率化していることが更に貿易黒字を維持することになり、ひいては円高を押し進め、他方で総生産に占めるエネルギー効率が世界最高水準になっている原因でもあるでしょう。
今後効率化が進み円高がさら進めば、さしもの自動車業界も高度化に適合して生き残れる企業と生き残れない企業に分かれる・・これまでの衰退産業と同じような経路を辿ることになるのですが、これは発展段階に関する避けられないルールだとすれば、大変だと騒いだり驚いていても解決にはなりません。
為替相場=円相場は突出して儲けている産業の競争力だけで決まるのではなく、利益率2〜3%から5〜6%のようにちょっとしか儲けていない企業や、2〜3割の高利益率の企業やすでにマイナスになって輸入している分野(原油や鉄鉱石など資源系あるいは食料系は元々から輸入です)を総平均して、国の貿易収支が黒字になった度合いで決まるものですから、突出して儲けている企業にとっては、平均値以下の基準で上がった分には、なお十分な利益が出る仕組みです。
円が1割上がると苦しいのは数%から1割程度の利益率・・すれすれで輸出している企業であり、15%の利益率の企業は円がⅠ割上がってもなお利益が出ます。

構造変化と格差13(部品高度化1)

私事ですが、最近7年ぶりに眼鏡を造り替えて昨日貰って来たところ 顔の輪郭がはっきり見えるのに驚くとともに、人並みに顔のしわが増えて皮膚のツヤが衰えているのにも気づきました。
昨日のコラム最後に書いたように、まだ若いと思っているのは自分一人であったことが客観的に明らかになったこの一日でした。
不思議なことですが、「最近風邪を引かないし健康になったな・・」と実感した途端に風邪を引くなど、健康に関する意識は何故か真逆になることが多い傾向があります。
おごった気持ちが油断を招くのか、ちょうど病の兆候が忍び寄っていてこれを本能的に感じた結果、普段気にしない健康に関心が向いて、「最近体調がいいな・・」と意識に上って来るのかも知れません。
風邪に限らず何らかの異変が出て気づく前に、風邪その他の病因が進行していることが多いものです。
とは言え、皮膚のツヤが年齢相応になっているのが分った程度で、今のところこれと言った病気もなく元気に新年を迎えました。
ここで、正月特別コラムを終わりにして昨年12月30日までの通常コラムの続きに戻ります。
2011-12-30日のコラムで炭素繊維で有名な東レを例に書きましたが、同じ業界であった倉敷の大原美術館関連で私のような素人にも有名なクラレ(倉紡)がどうなっているかをデータでみてみましょう。
同社ホームページで売上高利益率の推移をグラフでみると高度成長期は売上ばかり伸びて利益率は低下の一方で、シェアーばかり競う時代であったこと・・今の韓国や中国みたいな状況だったことが分ります。
1980年代以降現在まで売上高はほぼ横ばいでそれほど伸びていないのに、利益率はドンドン伸びて2003年度当期利益額(単位不明ですが数値だけ比較すると)が8,051に対して、2007年度(リーマンショック前)では22,412に約3倍弱増加しています。
1980年〜85年頃の売上高は2007年頃とほぼ同じですが、売上高利益額は、2007年ではほぼ倍増になっています。
過去に売上高が2倍あって利益が同じ場合、薄利多売・・多くの生産をしていたこと・・多くの雇用を吸収していたことが分り、20年以上経過して売上高がほぼ同じなのに利益率が2倍になっている場合、雇用比率が下がっていること・・製品の高度化転換・高収益化が進んでいると推定されます。
上記の例はホンの一例であってそれ以外に多くの分野で我が国は産業高度化に成功した結果、国内総生産の落ち込みもなく(バブル崩壊後も漸増していたことを既に紹介しました・・気になる方はご自分で国内総生産の推移をネットで調べてみて下さい)、国全体の貿易黒字がなお続いていたことから、(蓄積した分だけ円が上がる道理です)リーマンショック以降急激に円高が進み、これについて行けない多くの業種で淘汰が進んでいます。
ちなみに、リーマンショック、ニクソンショック・あるいはギリシャ危機などと天災のごとく言いますが、本来の経済現象の変化に合わせて生じるべき変化を政治的その他の事情で人工的に無理にせき止めていた咎めが出た(ダムの決壊に類する)ときに、このように表現しているに過ぎません。
地殻変動のひずみが一定量を超えると大地震が起きるのに似ています。
リーマンショック以降の経済の大きなうねりは、長期にわたるアメリカの赤字累積・紙幣の乱発に対するひずみの是正作用が連続して起きているに過ぎませんし、・・我が国の円高も長期にわたる黒字にも拘らず超低金利の結果円キャリー取引を通じた円の流出によって円安を演出していた咎めが出た・・アメリカも欧州も低金利になると同じ金利ならば、黒字国の円が過去に上がるべきだったのに正当に上がっていなかった分まで上がる(下がるべき国は下がる)のは当然です。
ショックとは調整過程の始まりに(気づかなかった人が)ショックを受けていることであり、実際に起きているマイナスを塞き止めて来たダム(ごまかしが効かなくなった)決壊が目前に迫った下流の地域の危機を言うマスコミ用語です。
円高ショックと最近言わないのは、国民が経済実態・円の実力を前からよく知っていたからショックでも何でもないからです。

構造変化と格差12(輸出入均衡の必要性)

前回(12月29日)円高現象を市場に委ねた場合どうなるかを書きましたが、実際には、円高対策と称して円が上がったことによって弱くなった分野を関税で保護したり補助金を出して下支えすることが多いので、乱れます
円高によって弱体化した産業を補助金で下支えすると、トヨタなど成功企業の輸出が増えるだけで弱くなった部分の輸入があまり増えずせっかく円高になっても国内産業が簡単に入れ替わって行きません。
元気な産業に入れ替わって行くことによって効率の悪い分野から効率の良い分野に人、物、金などの資源が移動して国全体の効率が上がるのです。
円が上がることによって競争力を失う分野の輸出が減り輸入が増えることによって貿易収支・為替が均衡して行くことが期待されているのですが、補助金や関税で保護すると円相場が仮に2割上がっても輸入が増えないので、為替相場がさらに実力以上(前回例で言えば20%の円高から22〜23%)に上がってしまい、国内の弱い・生産性の低い産業分野の国際競争力が更に下がります。
国際収支もギブ&テイク・・「強い分野は輸出させてもらう代わり弱いものは買いますよ」ということで成り立っているのですが、(古代からの商品交換自体がそれぞれの最適生産品交換から始まっているものです)日本の場合、強いものは遠慮なく輸出させて貰い、弱い分野はその儲けで補助金を出して競争力を底上げして、且つ関税率を引き上げて輸入させないという「アンフェアーな体制」であったことになります。
物々交換の時代には、必ず相手のものを受け取る必要があったのでこんな芸当は出来なかったのですが、貨幣が介在するようになったことから、富みの蓄積が可能になったものです。
日本では輸入したい外国製品がないとよく言いますが、実は関税や補助金で輸入させないようにして来たからです。
これでは、儲けるばかりで輸入しないのですから、黒字が溜まる一方・・結果的に円が上がる一方になります。
日本の弱い分野・・すなわち近代化の遅れた分野・生産性の低い分野に対する補助金+関税保護は、保護すればするほど、弱い分野の輸入が円高になった割には増えないので、(他方で強い分野は輸出しまくるので・・)貿易黒字が溜まり結果的に円相場が上がってしまいます。
円高に対応するための補助や保護の結果、却って円の下落を妨げ円が上がる方向に行くので、競争力がなくなる一方です。
さらに補助金があると危機バネが働かないので、(危機克服エネルギーが技術革新よりも政治に向かい勝ちで)新技術の創出率も下がります。
円高緊急対策と称する補助金支給や関税率の引き上げは、更に円相場を上げるためにやっているようなものです。
関税その他の保護処置のことを、一般的には競争力がつくまでの緩和・・時間稼ぎというのですが、実際には逆効果になっていつまでも離陸出来ない・・むしろ弱くなる一方になっていることが多いのは、円高を収めるのではなく助長することによるものです。
円の切り上げの都度ついて行けない業種・地域・・主として農業では、急激な円高対策と称して補助金で何とかしながら、輸入阻止した分だけ円が上がり、上がった円を基準にすれば余計国際相場と開きが出る構図でした。
これに対して日米繊維交渉の後で輸出の主役から降りた繊維、その次の電機交渉の結果の電機産業等は、補助・保護がなかったので汎用品としての繊維系や白物家電では輸入品に押されながらも自力で技術革新に取り組みました。
例えば東レ(東洋レーヨン)で言えば炭素繊維が特に知られています(その他化学製品を多く造っています)が、東レだけではなく、特定分野(炭素繊維に限らずいろんな素材で)では逆に世界最強輸出産業に変身して生き残っている企業がいくつもあります。
(特定分野に特化出来なくて生き残れなかった繊維系企業はほぼ消滅し・・例えば大東紡のように生き残っていても大手企業と言えないほど縮小しています)
今年1年間ご愛読ありがとう御座いました。
明日の大晦日〜1月6日までは年末年始特別コラムになり、1月8日から、今日のコラムの続きになります。

構造変化と格差11(能力不均等2)

円高に対して押し並べて国民レベルが低くてだれも高度化に適応出来ない場合、結果は単純です。
円高=輸出減少→貿易赤字化の結果・・長年の貿易赤字連続で海外投資残も使い切ってしまい、輸入品に押されっぱなしで大赤字が続けば、為替相場が下落して行きます。
仮に、現在の10〜20分の1まで円相場が下がってしまえば、国内産業・人材が低レベルのままでもいつかは(人件費・生活水準が同じところまで下がってしまうので)国際競争力が均衡します。
例えば、我が国が幕末以降誰も近代化に適応しないで、今でも江戸時代同様の生産性・・米作り等しかしていなければ、工業製品の全面輸入国になってしまい、為替相場は今の100〜200分1くらいに収まっているでしょう。
生活水準も江戸時代並みに留まるので、米・・その他の農業品の方が国際競争力があって米味噌等食料品の輸出国になっていたかも知れません。
この状態で新興国になれば工業製品の方だけ何とかすれば、生活水準が向上出来る・・今の新興国同様・・明るい将来が待っています。
これに対して、現在の我が国のように特定分野が強くて、(どこの国でも強い分野と弱い分野があるでしょうが・・)その分野で巨額貿易黒字を稼ぐと全体の為替相場は平均化されて上がるので、それまでの為替相場では均衡していたその他製品相場が割高となります。
この結果特定の強い分野以外は、国際競争力を失い、輸入に負けてしまいます。
このように為替相場を市場の動きに任せれば、強い分野はどんどん輸出し、(例えば強くなった分野で1兆円輸出が増えて仮に20%の円高になれば)他方でそれまで国際競争力が平均的であった分野が、上がってしまった為替相場の影響・・新たな円ドル換算では割高になって競争力を失います。
例えば、トヨタ等突出産業が貿易黒字を稼ぐ結果円相場が2割上がれば、従来国際相場より1〜2%安い生産費で輸出出来て来た産業にとっては、18〜19%の割高産業になってしまいます。(輸出産業から輸入産業に)
取り残される企業にとっては大変なようですが、例えば強くなった自動車業界が年1兆円従来よりも多く黒字を稼ぐようになったことによって、2割の円高になった場合を想定すると以下の通りになります。
円高によって国際競争力が弱くなってしまったその他分野の輸出が減って逆にその分野の輸入が増えて結果的に黒字が1兆円減る(輸出が5000億円減って輸入が5000億円増えることもあるでしょう)ことによって、円相場が均衡する計算です。
為替相場を市場の流れに委ねれば、競争力のある産業が更に輸出を伸ばし競争力のない産業は衰退して行き国内産業構成が入れ替わって行くことになります。
(我が国では長期間掛けて農漁業従事者が減少して行き、繊維〜電機〜車関係の従事者が次第に増えて来た過程です)
車が1兆円多く輸出しているときに、他産業のトータル輸出が1兆円も減れば、2割上がっていた円相場が元に戻りますが、1兆円も輸出が減るのは瞬時に減るのではなく徐々に減るものですから、相場もこれに連れて徐々に20〜18〜16〜14〜8〜5%と順次下がって行きます。
その過程で自動車以外の産業内の淘汰(脱落)が起きてその何割かの生き残った企業がコスト削減・品質強化・新分野の創出などの努力で筋肉質に変質して何とかその時点の相場に適応して行くことになります。
技術革新に成功して適応出来た分だけ輸入が減って来る・あるいは一部は輸出産業として復活するので、結果的に円下落途中・・例えば年間1兆円の黒字から2〜3千億円の黒字に減って来た頃=円相場が元の5〜6%高に下がった頃に輸出競争力がついたとすれば、この時点で円の下落を止めて盛り返すので中間的な10%高くらいに再度上がった相場で落ち着くことが期待出来ます。
(2割以上も円が上がると競争出来なくとも、10〜13%の円高くらいなら努力次第で挽回出来る産業は結構あるでしょう。(・・同一産業内にも強弱の差があります)

構造変化と格差10(国内不況と円高)

円高になると企業が悲鳴を上げ、国民は物価が下がって大喜びの構図ですが、これは短期的な現象でしかありません。
企業は雇用責任を果たすために(余裕があるから)困っているだけであって、企業は本当に困れば(余裕がなくなれば)身軽に経費・人件費の安いところにドンドン移転して行けば良いので、本当に困るのは、簡単に移動出来ない国民の方です。
企業は新興国へ移動すれば低賃金で雇用出来ますが、人間の方は新興国へ移動して仕事があっても、日本の何分の1の人件費では困るので国内で従来通りで働けるならば・・と言うことで国内にしがみつくのが普通です。
労働者は円高になった当初、(いきなり賃下げはないので)物価安の恩恵を受けるだけですが、長期的には企業の海外進出が進むと、ジリジリと雇用が減り労働条件が悪化するのは当然の経済原理です。
円が1割上がれば、みんなそろって1割給与が自動的に下がる方式・・納品価格、失業保険、年金もすべて自動的に1割下がるスライド制にすれば公平ですし、企業も海外に逃げなくて済みます。
一律で強制しなくとも円高で輸入価格が下落していくので、時間の経過によって諸物価は下落して行きますが、時間の誤差だけなら我慢して企業も国内に留まれますが、人件費だけは賃下げが出来ない国民思想=宗教かな?があるので、この負担に耐えかねて徐々に企業は海外進出に活路を見出さざるを得ません。
一律強制的値下げの場合、たとえば電気料金だけ部分的円相場スライド制にした場合、却って不公平になり、複雑化しますので、すべての価格を一律機械的に上下させるのが簡単でしかも公平です。
(輸入原料費が1割減でも電力コストは燃料費が100%ではないので、すべてのコストを1割減にしてくれないと無理があります)
あるいは、現在年金制度では物価スライド制になっていますが、これでは、物価という間接的データによるので、効果が出るのに数年遅れになる外に何を統計に組み入れるかによって、その製品を多く使う階層と使わない階層によって、大きな違いが出過ぎて実際的ではありません。
年金で言えば超高齢者にとっては、スマートフォンなどの値下がりの恩恵は受けない代わり、医薬関係の相場変動は大きな影響があるなど階層によってマチマチです。
円相場に国内諸価格が連動しない状態においたままですと、国際競争に曝されている企業にとっては、販売価格は直ぐに・即日円相場上昇に連れて目減りするのに(1ドル100円の正札のままでも、円が次の日に98円に上がると企業の手取りは98円に減ってしまいます)、国内物価、人件費等が従来のままでは、コスト的にいわゆる股割き状態です。
政府の方は円高による国内不景気・・失業対策等バラまき傾向になって増税志向になりますので、ますます企業にとっては居心地が悪くなります。
円高傾向になれば、企業としては海外に逃げ出すのが、経済原理に合っているので(上記の例で言えばアメリカで全部造って売っていれば、1ドルが何円になっても関係がありません)ジョジョに海外比重を高める・・国内生産比率が下がる傾向になります。
海外展開資力のない企業は縮小・倒産し、労働者も失業して無収入になったり、新卒の就職が厳しくなります。
職場が縮小して行く中で失業を減らすには、ワークシェアリング・・非正規雇用の増加で薄めて行くしかないでしょう。
皮肉なことですが、一部の高度化適応成功と過去の黒字蓄積(利子配当の還流)が、国内雇用が大幅縮小して行くにも拘らず、円相場を引き上げ、平均的労働者の国際競争力を減退させ職を奪う効果を加速させていると言えます。
貿易赤字が続けば普通はその国の通貨価値が下がり、その結果再び貿易収支が均衡して行くものですが、我が国の場合、巨額海外投資資金・外貨準備があるので仮に貿易黒字基調になってもちょっと様子が違ってきます。
収入が減って苦しくなると支出を抑えれば貿易・家計収支赤字が収まるのですが、個人と違って政府の場合、従来支出を削るどころか不景気対策として、歳出増になるのが普通です。
貿易赤字国でのこの種のケインズ主義的支出は間違っているという意見をOctober 22, 2011「国際競争力低下と内需拡大5」で書いたことがあります。
我が国の場合、貿易収支が赤字基調になって経済が苦しくなれば、内需=バラマキを縮小して節約するのが筋ですが、衆愚政治化している現状では財政支出増を求める意見に流されて、資金穴埋めのために海外資金の引き上げに動く(海外のドルやユーロ資金を売って円を買う)でしょうから、貿易赤字になってもなお円相場が上がり続けるリスクがあります。
この連想作用で、復興資金として、海外からの資金引き上げが起きるとみた投機筋が円買いに動き震災直後に円が上がったのですから、私の個人的妄想・杞憂ではありません。

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