輸入規制2とラストベルト地帯

輸入規制に頼ったラストベルトの解説です。
http://www.crosscurrents.hawaii.edu/content.aspx?lang=jap&site=us&theme=work&subtheme=INDUS&unit=USWORK059

ラストベルト (さびついた工業地帯)
イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニア諸州を含むアメリカの地域は「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれています。この呼び名は、これらの地域の多くの産業が時代遅れの工場・技術に依存していることからつけられました。
1970年代、激しくなる国際競争への対応策として製造業者がこれらの地域からアメリカの他の地域やメキシコに工場を移転、かつて繁栄していた工業地帯の経済が悪化したことによりこの名称が幅広く使われるようになりました。
これらの地域では、工場閉鎖にともなって失業者が増加し、多くの人々はこの地域を去りました。デトロイト、セントルイス、クリーブランドなどの都市、あるいはインディアナ州ゲリー、オハイオ州アクロンといった比較的小さな都市は、都心が衰退してしまったラストベルトの都市の例です。デトロイトは、現在も世界最大規模の製造業の中心地ですが、製造業が衰退していく中で、製造業への依存を減少することができずにいます。

ただし最近、産業の高度化に施工した企業が現れて持ち直しているようです。
上記によれば、企業自体が適応してラストベルト地帯から別の地域へ逃げ出して国際競争に適合していった経緯がわかります。
輸入規制を求めて古い体質にしがみついていたのは、企業経営者ではなく(新しい分野に挑戦できない?)従業員・労働組合だったようです。
企業経営者の方は古い体質グループを放置して他地域に進出してシリコンバレー等で新たな産業を起こして行ったようです。
古いマンションの修繕改築の話し合い(住民の多くが老人)に時間を費やしているより、近隣にできた新築マンション買い替て逃げて姉妹振りマンションはスラム化一方になったようなものです。
企業の方はラストベルト地帯から逃げていたということは、企業は自由競争の必要性・時代適応必要性を認めていたこと・新機軸の製造業に変身する必要性を認めていたことがわかる・・反対していた主役は、新時代についていけないリストラされる人材多数抱えている労働組合だったことになります。
労働組合の名誉のために書きますと、村落社会や町内会その他すべて団体というものは現状を全体とした運営ですので、新時代に適応できる有能な人材はホンの数%でしょうから、多数に従う民主主義の弱点でもあります。
現状変更になんでも反対するのは、組合の特性というわけではありません。
一般社会は自然発生的に生じていることが多いこともあって(陰であんな格好してとか、あんなことを言ってとか・・白い目で見られる・村社会は窮屈と言われることがあっても)直接規制がなく個々人の自由行動の幅が広い(本人さえ陰を気にしなければ良い)のに対して、組合では何でも「機関決定」というものが幅を利かしすぎて違反の問責?追求できる統制委員会的仕組みががっちり整備されて(左翼系組織も似たような傾向ですが)いる点が大きな違いでしょうか?
ソ連の粛清が有名でしたが共産党支配の中国では党紀違反を理由にある日突然党幹部の消息不明になったりしていますが、粛清支配を基本的体質とするソビエットのDNAを受け継いでいるからでしょうか?
日本では中国のように党紀違反を理由に党から拉致され取り調べを受けるような事態は起きていません(そういう権限がありません)が、組合の機関決定重視姿勢はこれの思想影響を受けているので機関決定の重みは似たようなところがあります。
ましてユニオンショップ制やクローズドショップ制の米国では、労組加入しないとその企業で採用しないし解雇する仕組みですから労組から除名されると職を失う効力があり、異論が許されない仕組みです。
ユニオンショップ制に関するウイキペデイアの説明です。

採用時までに労働組合加入が義務付けられ、採用後に加入しない、あるいは組合から脱退し、もしくは除名されたら使用者は当該労働者を解雇する義務を負う、という制度。雇い入れ時には組合員資格を問わないという点で、組合員のみの採用を義務付ける「クローズド・ショップ」とは異なる。これに対し、労働組合の加入を労働者の自由意思に任せるのが「オープン・ショップ」である。

日本の労働法ではこう言う硬直的システムを取り入れなかったので柔軟経営ができたのですが、日本で唯一の強制加入団体は日弁連と各単位弁護士会でしょうか?
昨今弁護士会の政治活動が増えてくると、強制加入システムに不満を言う若手弁護士が増えてきたのは当然の成り行きではないでしょうか?
任意加入の場合機関活動家?が独走しすぎると一般会員が脱退したり、新規加入が減っていくので組織率がバロメーターになりますが、強制加入だと、過激全学連のように機関活動家が牛耳っているのか多数支持を得ているのかが不明になります。
日本で唯一の強制加入団体である弁護士会の場合、不満な人は会活動参加を敬遠するくらいしかない→その傾向が実質的バロメーターになります。
米d国は自由主義国とは言うものの実際には規律が強すぎて個々人が自由な言動ができない仕組みのようです。
こういう頑迷な組織支配するところから、企業の方が逃げ出します・これがラストベルト地帯になった原因です。
企業にも適地を選ぶ権利があります。
ハンマーで日本製品を叩き壊していた背後の主役は、変化に応じられない労組だったイメージです。
こんなところでやってられないと多くの製造業は中西部工場をそのままにして、(チャイナプラスワンの先行事例?)他の地域で新工場設置・・新条件で募集・雇用するため?に動いたので取り残されたのでしょう。

国を選べる時代2(輸入規制1)

米国は自由競争〜市場開放を主張しながら日本が戦後復興すると繊維〜電気〜鉄鋼〜自動車等々で貿易赤字が増えると日本製品をハンマーでぶち壊すパフォーマンスをしたのが今でも記憶に残っていますが、こんなバカなことをしても衰退を免れることはできません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35787290W8A920C1000000/

日米自動車摩擦 1970年代から繰り返す歴史 2018/9/27 6:30
米デトロイトなど自動車産業の集積地では、日本車がハンマーで叩き潰される「ジャパン・バッシング」のパフォーマンスが繰り広げられた。

今回の韓国での日本製品不買運動の開始にあたっても日本製品配送用の?ダンボール箱を報道陣の前で踏みつけるパフォーマンスが行われましたが、馬鹿げている点は同じです。
不当な政治力で割高なものを庶民が買わされているならば弱者の抗議活動は正当ですが、輸入品は逆に大幅な冷遇・ハンデイを抱えて競争しています。
① 生産段階で母国生産地と違う輸出先現地の法令適合するための調整
② 右ハンドルを左ハンドルにしたり現地気候風土や現地使用傾向に合うように微妙な調整するなど需要地向きに仕様変更するコスト
③ 長距離輸送のためのコストと発注後納品までの時間がかかる
④ 入国段階での検査手続きや関税がかかる
⑤ 税関手続き等の専門業者の介在
⑥ 販売には系列販売店・アフターサービスの提供等のため一定規模のシステム構築が必要であるが、当初は販売量が少ないために初期先行投資がかさむ
⑦ 異民族への輸出の場合言語環境の違いなど営業活動上のハンデイ

等々のハンデイこそあれ、輸入業者が現地生産者より優遇を受けている不当な関係はありません。
ハンマーで壊すなどのパフォーマンスは、自由競争で負けているのを政治力で市場原理を歪めて現地企業保護を訴えるもの・自由競争反対論の宣伝をしているように見えます。
メデイアは内心「こんなバカなことをするようではアメリカもおしまいだ」いう意図で報道していたのかも知れませんが・・パフォーマンスするグループは、「現地製品が日本製品より劣っていても高く売れるようにしろ!」という主張をしていたことになります。
すなわち、冷蔵庫や車の売れる量が一定量とした場合、輸入制限すれば現地製品がわり高でも一定量まで売れる関係になりますので、輸入制限を求めるのはこういう目的で行っていることになります。
交渉結果を見ると騒動の都度数量制限が決まっていたようです。
上記引用の続きです。

対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を導入することになった。日米間の輸出自主規制は繊維や鉄鋼で前例があった。自動車の自主規制の枠は初年度に168万台。80年の実績(182万台)を下回る水準に設定された。自主規制は93年度まで続くことになる。

米国は自由主義経済の守護者のようなふりをしながら対日関係では繊維〜家電〜鉄鋼〜半導体その他いつも事実上輸入制限して自国民に割高な商品を買わせて来ました。
こういう米国の偽善主張は日米戦争をしかけた時から米国の伝統芸であり、対イラク戦争にもつながっていきます。
日本も農業保護が聖域と称して農産物輸入制限を続けてきましたし、後進国は産業がひ弱なために一人前に育つまでの保護としての関税が認められてきました。
米国の場合、一旦国際優位に立っていた産業老化に対する保護という面でまだ国際合意のない分野ですので二重基準の弊害が目立つのかもしれません。
これから成長する子供を大人と一緒に競争させるのは良くないという・後進国保優遇論理は理解しやすいのですが、世界トップ企業が新興企業の挑戦を受けて衰退していくのを保護する論理・政治が行われれば、新たな利便性を追求する新興企業が生まれにくくなります。
後進国の場合期間猶予をもらう間に成長するチャンスを活かせることが多いのですが(子供が大人になってもみんなが横綱や一流の格闘者にになれませんが、二流の人は二流まで育つ可能性が多いということです)しますが、老化する人が時間をもらってもその間老化が進むだけです。
米国が対日輸入制限をもとめた業界は、例外なく時間猶予の効果なくジリ貧になっていったのは当然です。
老人は大事にされるべきですが、いつまでも権力を握るのは老害になるのと同じです。
鉄鋼製品その他米国企業が輸入規制を求めて政府もその方向へ動くために消費者は一定量しか輸入品を買えない→割高な現地生産品を強制的に買わされる結果になります。
前近代の悪代官と悪徳商人が結託して商品不足にして、価格を吊り上げるような不当政治を国民の多くが本当に求めているのか不思議です。
数量制限は・・消費者だけが損するのではなく生産者も安くて性能の良い繊維・鉄鋼製品、半導体、車等々を使えないと困る・・輸入制限しない国地域の企業に比べて競争力を失っていきます。
米国の対日輸入制限効果は、中西部工業地帯だけに及ぶのでなくアメリカ全土の競争力に及ぶ、輸入制限に頼っているより、新時代適合を進めるしかないというのが全米企業家の思いだったのでしょう。
既存工業地帯での改革は反対者(労働者)が多く無理と見た企業家は、チャイナプラスワン同様に米国内の他地域への新規投資に走ったようです。
これが世界に冠たる中西部工業地帯がラストベルト地帯と言われるようになった原因でしょう。

国を選べる時代(企業→個々人へ)1

近代憲法では居住移転、国籍選択の自由が保障されるようになりましたが、実際には異文化地域への移住は大変なハードルがあります。
ところが韓国から日本へ往復1万円前後で格安航空券が売り出され、一時間前後で来日できる時代が来ると、徒歩〜馬等での移動時代と違い、コストと体力的障害がほとんどなくなります。
あとは、収入源の確保が中心です。
https://www.kayak.co.jp/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88/によると11月3日プサン→福岡間は5552円で1時間05分と出ています。
国際移動〜移住が容易になれば、企業が顧客に見放されるのと同じで、国家も魅力がなくなれば次第に相手にされなくなります。
逃げ足の早い資本・企業活動の流れが第一の指標です。
中国から外資に限らず中国資本自体が東南アジア等へ進出するようになった点は重要です。
この流れは中国の反日運動によって、日本がチャイナプラスワン政策に転じたのをきっかけとするものですが、その後韓国企業どころか中国企業自体も国外進出を始めました。
中国国内企業の余力が出たので進出しているのか?国内比重下げの逃亡かは見方によるでしょうが、結果として中国市場の魅力が相対化されてきた事実は動かないでしょう。
中国企業自体が国外に逃げる方向になってくると反日運動の隙をついて、中国進出を果たした西欧諸国も中国へ熱が急激に冷めてきました。
国民の逃亡かエネルギーが余っての進出かは別として、日本の地方過疎化が若者の流出に始まるように、移動には一定のエネルギーがいるので元気のある順に移住が進む・あるいは過酷な移動中に命を落とさずに生き残るのが原則です。
超古代からの人類移動の流れで見ても、仮にアフリカ起源が正しく何十万年前にアフリカから移動が始まったとすれば、移動に挑戦し成功したグループは未知の世界への挑戦に耐えられる元気印だったでしょうから、残されたグループは抜け殻状態になって行き、際限ない脱出循環に陥り結果的に輸出できるのは奴隷だけという19〜20世紀に一般イメージ化されていた極貧状態になってしまったのではないでしょうか?
欧州は新大陸への人口移動が始まり、移住者数増加に比例して活力ある人材比率が低下してきたように見えます。
よく知られているのがナチス時代にドイツを中心にした有能な人材の多くが米国へ亡命したことにより、それまでの開拓や労働者中心だった米国移民の質が変わりこれが科学分野発展の中核になり戦中戦後の米国の躍進を支えたと言われています。
迫害によろうと自然災害であろうとも磁力のあるところに人材が集まるということでしょう。
これに味を占めた米国では世界の頭脳を取り込む狙いで留学ビジネスが盛んになりました。
優秀な留学生が米国にそのまま居着くのを狙ったものです。
日本のノーベル賞受賞者で米国在住者が時々いるのはその事例にはまります。
ただし東西ドイツ統一後ドイツ移民はかなりドイツや西欧に帰ったと言われ、これがこの10数年来の米国一強陰りが表面化してきた原因かも?と私は想像しています。
11月2日現在、米国ドイツ系人口で出たウイキペデイアの記事です。

1990年のアメリカの国勢調査による人口統計学では、当時の総人口は5800万人にのぼるデーターの結果があった。ただし、「ベルリンの壁崩壊」以降は、統一を果たしたドイツ政府はアメリカが生み出した「IT」を新分野として採り入れるため、ドイツ系アメリカ人のIT専門家など優れた人材を中心とする受け入れの募集を開始した(1972年設立のSAPなど)。
そのため、90年代から2000年あたりにかけて、ゲルマン系(ソルブ系・カシューブ系も含む)のグループを中心に祖国ドイツ(オーストリア・スイス・リヒテンシュタイン・ルクセンブルクも含む)をはじめ、同じくIT分野を奨励した北欧諸国・オランダ・ベルギー・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカに移住する傾向にあった。21世紀以降のアメリカにおけるドイツ系の人口は徐々に減少した(2007年および2008年のアメリカの国勢調査による人口統計学で、4527万人にのぼるヒスパニック(現在は5400万人に増加)および3984万人にのぼるアフリカ系アメリカ人がドイツ系アメリカ人に代わって増加傾向にある)。
現在のドイツ系アメリカ人の人口はおよそ5000万人ほどである。
いわゆるラストベルト地帯→中西部に関するウイキペデイアです。

住民構成はゲルマン系やドイツ化したソルブ系とカシューブ系(西スラヴ系)などのドイツ系アメリカ人の人口が最多数で(ウィスコンシン州・ノースダコタ州・サウスダコタ州などは40%以上)、宗教も唯一アメリカ国内でカトリック(ウィスコンシン州・オハイオ州・インディアナ州・イリノイ州・ミシガン州など)が多い地域でもある。言語はペンシルベニアドイツ語(アメリカドイツ語)やアメリカ英語などを使用する。

IT人材等の若手有望株がドイツや西欧に逃げてしまってからの貿易戦争では、新時代適応に遅れをとるのは無理がないでしょう。
ドイツ人が何故逃げたかですが、米国移民2〜3世でも同じ待遇なら祖国が良いという意識が働いたのでしょうか?
もともと国外移住者の多くは、相応の功利的判断祖国への郷愁を上回った結果でしょうから、行った先の将来性に疑問符がつくと、自分が居住地のために捨石になって頑張るより有利な場所に再移住判断になり易いし、母国の景気が良いならなおさらです。
米国に新規才能を引き止める磁力がなかったのでしょうか?
せっかく米国定住している人らが祖国に帰ると言うことは、欧州から新たな優秀人材供給が途絶え始めたと言うことでもあるでしょう。
国際競争で戦える人材が去ったのちになって、関税引き上げ等による一時的政治力・腕力で輸入制限するのは無理・悪循環になります。
これこそが米国が世界に主張してきた米国の価値観・・自由競争・・グローバル主義ではなかったのでしょうか?
都市間・国家間競争で生き残るには、時代適応力のある市民が必要・→人材育成・磁力こそが政治に求められています。
ところで、人材育成してもその地域に魅力がないと近隣の磁力のある都市・地域に人材が吸い上げられるばかりで結果的に吸い上げられる地域は痩せていきます。
この辺の仕組みは地方と中央のテーマで10数年前に書きました。
美味しいミカンや柿その他果物を都会に輸送販売するばかりでは、果樹園が痩せてしまうので吸い取られた養分(肥料)の補給が必要です。
優秀な子が出ると東京の有名大学へ進学させて、都会で就職し、その子らも都会の2〜3世となっていく・・故郷に帰らないのでは送り出す地方が痩せる一方です。
中央で活躍する人材が多いと自慢しても、有能人材を輩出するばかりでその子孫も東京に住みつづけ、誰も子孫が帰ってこないのでは地方は痩せる一方です。
こういう状態で大都会に本社にある産物・ブランド品やスマホなど地元県で生産しないと買わないと脅しても地方がなんとかなる訳ではありません。
米国のラストベルト地帯は日本や中国との競争に負けたのではなく、シリコンバレー等米国他都市がIT化〜高付加価値産業化に転換して成功しているのについていけなかった・・国内競争に負けたのが原因です。
ラストベルトに関するウイキペデイアの解説です。

この地域は、その場所故に製造業と重工業の中心となってきた。お誂えの資源である石炭はウエストバージニア州南部、テネシー州およびケンタッキー州やペンシルベニア州西部と北東部で産出された。
・・アメリカの製造業の雇用数減退は北西部や中西部での工場の廃棄につながり、これを強調する「銹地帯」(ラストベルト)という別名が付いた。
製造業の雇用は減少したが、アメリカの生産量は確実に増加している。
2000年以降は貿易用品の生産量は減少しているためにある意味で貿易問題とはなっているものの、アメリカは世界でも優れた生産地域の地位は確保している。
アメリカの製造業は労働集約型の生産工程では低賃金の国に負けるのでこの領域から離れ、高付加価値製品の生産と先進的無人化生産方式に移行している。その困難さにも関わらずラストベルトの領域はアメリカでも輸出量で一番の地域である

アメリカは近代産業革命の進展と資源大国の地位の両輪で経済大国となり世界の覇者になれたが、資源大量消費型産業の重要性が減退してきたので(重工業からIT産業化へ)米国の圧倒的優位性が終わったとこれまで書いてきました。
今も原油生産ではサウジを抜いたと言われていますが、資源の重要性が下がったのです。
また世界最大の生産国になった米国が販路を求めて、推し進めた貿易自由化のおかげで資源のない日本でも自由に買えるし、物流コストも安くなる一方なので自国産であるかどうかより、機能性や製品の信頼性の方が重要になってきたのです。
ソニーやトヨタが世界企業になれたのは、資源の有無と関係がありません。
こうなると資源直結・立地の優位性で発展した中西部工業地帯は、成功体験を捨てない限り将来はありません。

先進国技術移転を求める中韓(強制移転と米中対決)

企業にとっては儲けられそうなところに投資するという鉄則が働きます。
樹木で言えば元の木が根元から腐り始めて遠くに散らばった種子が新たな森を形成するのは良いことです。
サムスンで言えば韓国内で新鋭工場を作るよりも、日本や米国で作ればフッ化水素等や資材も自由に供給を受けられますし技術導入も容易ですし、他方需要地の中国に工場を持てば商品は売れるものの技術窃取被害どころか強取被害にあいます。
先進国であり需要地でもあるアメリカに工場を持てば、技術移転を受けられるばかりか現地需要もあり競争上有利です。
しかし、新興国企業が先進国への進出する場合には、本国生産→輸出の場合にあった低賃金による競争優位性がなくなります。
隠れ補助金や低賃金等による下駄を履かない裸の競争力が本当にあるかの実力が試されます。
日本進出の場合ほぼ同質産業構造の上に日本に比べての技術優位性もないために低賃金以外に需要面では食い込む余地がないのでサムスンなど多くは研究所設置(何を研究するのか?日本最先端技術品をいち早く取り込みあるいは業界に参加してその動向を探りいち早く自社研究にとり込む情報収集拠点?知財取り込みに励む→ほぼ産業スパイ拠点みたいな仕事かな?)が普通です。
中国は先進国の技術移転絞り込みに対抗して需要地を抱える強み・・一人当たり購買力が高い訳ではありませんが、大量人口だけが取り柄です・・で現地進出企業に対して知財等の技術移転を法制度上強制できるようにしたことが欧米を刺激し米中対決の原因になっています。
https://www.ngb.co.jp/ip_articles/detail/1642.html

2018年米中貿易摩擦の焦点、「強制的技術移転」政策とは — 「自主創新政策」摩擦への遡り
2018/12/20
・・・・米国側が一貫して具体的な論点としているのが中国政府による「強制的技術移転(Forced Technology Transfer: FTT)政策です。USTR(米通商代表部)が2018年3月に公表した通商法301条調査報告書も主要論点の一つとしてFTT政策を明記しています。(*USTRは2018年11月20日付でその後の中国対応状況などを調査した追加報告書を公表)
【Cases and Trends】 中国、政府調達規則の一部廃止 – 米国が警戒・批判する自主創新政策で中国が譲歩? (2011/08/23)
我が国では記録的に早い梅雨明けとなった6月末から7月初めにかけ、欧米のメディア(Reuter, Forbes他)を中心に、「中国が自主創新政策を一部撤回」、「中国が米国の圧力を受け、政府調達規則を緩和」といったニュースが相次いで流れました。別のメディアでは、「北京が、政府調達プロジェクトにおける、強制的知的財産移転(Mandatory IP Transfer)を廃止」(China Briefing 7/4/2011)と報じています。

廃止を訴えていた米国商工会議所、欧州商工会議所などは、中国政府の決定を歓迎しつつも、「今回の決定はあくまで中央政府レベルのもの。さらに地方政府や国有企業レベルでも、早期に同様の措置がとられることを願う」とコメントしています。

法強制を緩和→国法から地方政府条例、規則や要綱等の運用に格下げ?したという報道を見た記憶でしたが、上記によるとすでに既に7年も経過しているようですが、移転強制の実質は同じだから米国が怒り出したのでしょう。
ただし上記の通り名目上の妥協はできても実質的な技術移転強制をやめると中国は中進国の罠にはまるので、文字通り核心的利益として、中国は存亡をかけて絶対に譲れないという強硬的態度を今も崩していません。
米中協議は昨年から決裂したり部分妥協再開きしたりの繰り返しで現在に至っていて実際にはなんの進展もないことは対北朝鮮交渉と同じです。
部分妥協といっても経済制裁圧力の一部解除したり強化したりの繰り返し(中国が反撃材料として買い付けを絞っていた小麦などを買うと表明し、米国は制裁開始を先送りするなど)で肝心の知財移転強制に関する妥結が一切なく時間を空費しているだけで、結果的に中国の時間稼ぎになっています。
この1週間ほど前に再妥協・再交渉のテーブルに乗る宣言をしたばかりです。https://jp.reuters.com/article/us-china-trade-talks-2nd-day-idJPKBN1WQ2JF

2019年10月12日 / 04:38 / 5日前
米、対中関税見送り 通商協議で部分合意
今回の「第1段階」では中国による米農産品の大規模購入のほか、一部の知的財産権、為替、金融サービスの問題などについて合意。さらに米国は15日に予定していた対中制裁関税引き上げを見送る。

北朝鮮も核開発をやめるのは国や体制の存亡をかけた戦いと位置づけていて、核戦争をも辞さない態度を示しているために決裂しそうな瀬戸際まで行くといきなり「あいつはいい奴だ!などとトランプ氏が言って見たりして、突然再交渉が始まる期待を抱かせるなど後一歩の圧力が効かない交渉を続けている点は同じです。
こういう交渉態度では、北朝鮮は核とその運搬能力の保持開発こそ命綱とする国家方針に自信を持つ一方です。
ただし、対北交渉では経済制裁に対する有効な反撃をされる心配がないのでこれを一切緩めないままですから北の国民が塗炭の苦しみに遭っているのですが、李氏朝鮮以来国民などいない・人民が再貧困下にある点を一切気にしない政体ですので、国民がいくら困窮しようとも政権にとって全く痛痒を感じないようです。
韓国の場合は市場規模が小さいので、(中国のように進出したければ)技術移転しろと強制する訳に行きません。
ちなみに日本車の韓国輸出量は以下の通りです。
https://www.asahi.com/articles/ASM944V8YM94UHBI01J.html
韓国輸入自動車協会が4日発表した8月の日本車の新規登録台数は、前年同月比56・9%減の1398台だった。7月は前年同月比17・2%減だったが、下げ幅が拡大した。韓国経済の停滞から輸入車全体でも5・6%減ったが、日本車の落ち込みが目立つ。
日本はトヨタだけで年間1000万台前後製造しているというのに、韓国では日本車全部で56%減とはいえ、トヨタ、ホンダ、日産、ダイハツスズキ、日野自動車、スバル等々その他全部で月間わずか1398台では、半分になろうと1割になろうと驚かないし、韓国市場に誰も魅力を感じていないでしょう。

韓国と中進国の罠(半導体産業の内実)2

韓国を追いかける中国現地企業も製造装置や部材が韓国系同様に手に入れば地元の強みで韓国系は押されていく流れでしたが、米中対決激化で思わぬ応援というか、ファーウエイ・騰訊をはじめとする中国民族企業への高度部材や技術移転がストップになりましたので、競合する韓国系はチャンスと見ていたでしょう。
ところが韓国内の反日運動煽りすぎで、日本のホワイト国除外決定となり韓国の出方によってサムスンやSKハイニクスに対する高度部材供給がストップする可能性が出てきました。
韓国勢に漁夫の利を得られたくない中国は日本の対韓輸出規制強化は大喜びでしょう。
半導体設備業界のランキング見ておきます。
https://news.mynavi.jp/article/20190319-791516/

2018年の半導体製造装置メーカーランキング – 日本企業はトップ15社中7社
地域別では、米国メーカーが4社、欧州メーカーが2社、韓国、中国が各1社ずつという構成になっていることから、半導体製造装置業界における日本企業の健闘が目立つ結果となったといえる。

世界半導体製造装置産業に中韓が15社中各1社入ってるのには驚きましたが、統計だけ見れば中韓が自分で製造装置も作れるようになったということでしょうが、その実態を見ると中国で言えば、現地進出条件が合弁形態になっている関係で現地工場使用向けの低レベル品から現地化・技術移転が進むのが普通です。
・・中韓にとっては中高度技術をできるだけ現地化したいのですが、先進国が簡単に移転しないので中国が強制移転に乗り出したことが米中摩擦の究極の原因です。
売上高で見ると下流製品ほど量が出るので、売上高ランキングで見ていると実際の国際競争力がわかりません。
メデイアは売り上げで比較して中韓はすごい!と賞賛していますが、最終製品汎用品を大量生産を担当すれば売り上げ高では裾野に行けば行くほど大きくなるのは当然です。
半導体分野も製造装置では概ね日本からの製造装を輸入して部品組み立て・最下流で量産を担当している状態を脱却しきれていないようです。
https://japanese.joins.com/JArticle/255209?servcode=300§code=300

半導体素材の国産化率50%…その裏には韓日ノーベル化学賞0:8
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.07.05 08:20

半導体の製造は300余りの工程があり、工程別に専用の素材と装備が必要となる。サムスン電子やSKハイニックスはその全体工程の製造競争力が世界最高水準だ。
しかし300の工程に必須の素材と装備はそれぞれ日本と米国が世界最高の技術力を持つ。
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると、2017年基準の韓国の半導体素材国産化率は50.3%。国内の分析もほぼ同じだ。韓国半導体協会は「国産化率が素材は48%、装備は18%程度」と分析している。
国産化率50%は集積回路(IC)など低価格製品を含む半導体全般の国産化率であり、サムスン電子やSKハイニックスのDRAMやNAND型フラッシュメモリー超微細工程に必要な素材の国産化率はさらに落ちるということだ。
IBK経済研究所のチャン・ウエ研究委員は「サムスン電子やSKハイニックスの高仕様半導体に必要な素材と装備の国産化率はさらに低く、日本や米国に大きく依存している」と説明した。

しかも組み立て工程を中韓に移転しても、そこで使う高度薬品・フッ化水素などは世界生産の90何%を握る日本からの供給に頼っているのが、今年夏のホワイト国除外騒動で(部外者にも)白日のもとに晒されたばかりです。
製造装置を日本から購入して設置し(設置作業も日本のプラント業者が担当するのかな?)運転が始まれば必須部材を日本や米国から買う・・鵜飼の鵜みたいな役割です。
必須の高度製品の場合、末端商品価格から見れば大したことがないので、内実を知らない一般国民はサムスンや中国は生産量で日本を追い越したと増長していたようです。
産業構造とすれば、中核部品に特化してきた日本の構図と汎用品で数量を稼いできた中韓等の違いが今年夏のホワイト国除外騒動で一般の目にもはっきりしたばかりです。
ローエンド製品ばかりでは後を追う次順位国にすぐ追いつかれます。
自動車業界は以下の通りです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50477070R01C19A0FFJ000/

韓国車生産400万台割れも ルノー・GM系が減産
産業維持の限界ライン ストや内需低迷 現代自も
2019/10/1 23:00 日本経済新聞 電子版

韓国自動車産業の地盤沈下が鮮明になってきた。国内生産台数は5年で1割以上減って部品産業などの維持に必要な400万台割れが目前に迫り、世界順位は5位から7位に転落した。内需の伸び悩みに加え、外資系が世界戦略の見直しに伴って生産を減らしたためだ。
「部品産業などの維持に必要な400万台割れが」目前という日経新聞記事がそのころにありました。
400万台が部品産業の生存ラインか不明ですが?
素人考えでは国内300万で国外進出自国企業への部品供給100万台分で合計400台分の需要があればいいように思いますが?
素人には理解不能な複雑な理屈があるのでしょうか?
国内関連業維持できなくなるとどうなるかが迫っているらしいのに!局面打開のためにインドに進出すると言うのですが・・本国を見捨てて国外逃亡100年の計ということでしょうか?
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_prod/productionfig_japan_2018

日本の乗用車メーカー 生産台数 (2018年1-12月累計)

合計 9,236,859 100.0% 0.5%

出典: 各社ニュースリリース

17日紹介したようにサムスンも需要地中国での半導体工場投資を増やすしかない状態です。

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