米中親和性(米中取引の可能性)

アメリカのご都合主義的ルール改変に戻りますと、アメリカは自分の作ったルールに適応しては台頭して来る日本に負けが続くと次々とルールを変えて行く繰り返しでした。
日本はアメリカのルール変更に絶えず適応して来たのですが、実力で負けているのを誤摩化すためのルール変更ですから、このやり方はどこまで行ってもイタチごっこでアメリカに取っては無理があります。
正義・経済原理ではどうにもならないので根拠なくスーパー301条で高額関税で脅すしかなくなっている・・現在の高関税をかけると言うトランプ氏の主張はまさにこの本音の再現です。
日米戦争も自分たちは植民地支配しながら、日本の中国進出だけを許せないと言う勝手なルール変更でした。
以下はアメリカの門戸開放宣言に関する引用です。
自分がフィリッピンを植民地支配を足場に中国に進出したかったのに先発の日本が邪魔になっただけの話です。
http://www.y-history.net/appendix/wh1401-132.html
世界史の窓
1899年と1900年の二度にわたり、アメリカ国務長官ジョン=ヘイの名で発表した、中国に関する門戸開放・機会均等の原則を求めた宣言。
アメリカは1860年代の南北戦争のため、中国大陸への進出が遅れたが、1898年に米西戦争の勝利によってフィリピンを獲得、そこを足場に中国に進出しようとした。しかし、すでに1898年、イギリス・フランス・ドイツ・ロシアが相次いで租借地を設けるなど、中国分割が進んでいた。そこで1899年、アメリカは国務長官ジョン=ヘイが声明を発表し、清国において通商権・関税・鉄道料金・入港税などを平等とし、各国に同等に開放されるべきであると主張した。この門戸開放と機会均等の2原則に加え、さらに翌1900年、ヘイは清国の領土保全の原則を宣言した。この三原則を「ヘイの三原則」といい、さらにアメリカ合衆国の中国に対する外交原則を門戸開放政策 Open Door Policy という。門戸開放政策は以後アメリカのアジア対外政策の原則的な要求となり、ロシア・日本の中国大陸への進出に対してもこの原則を掲げて反対した。」
上記のとおり、アメリは自分がスペインから手に入れたフィリッピン等の植民地の市場開放しないまま、「中国でだけ自分より先発している国は門戸開放せよ」と言うのですから自分勝手な主張でした。
腕力次第でどんな無理難題でも押し付けられると言うのがアメリカの姿勢で、この本質を見抜いた北朝鮮が「正義」よりも先ずは抵抗力が必要と覚悟を決めたのが核開発固執政策です。
露骨な腕力・・・報復合戦で貿易が止まると、黒字国の方が損する関係ですから、日本は対抗してアメリカに45%の関税をかける力はありませんし中国も同じですから睨まれたらおしまいと言う脅しに応じるしかない点は中国の強引な世界戦略と同じです。
黒字国は「不正」・・不正に対抗するためには次々とルールを変えても良いと言うのがアメリカの伝統的主張でこれがスーパー301条問うに結実している論理であり、トランプ氏の結果主義もこの伝統を継承していて単に乱暴な表現をしているだけです。
世界が1対1で成り立っている場合相互主義も一見合理的ですが、多角貿易でなりたっている多角面で考えるとアメリカの主張は幼児的レベルにあることが分るでしょう。
言わば貨幣経済がない物々交換の場合、結果的に5分5分の交換しか成り立ちませんが、貨幣が介在するようになるとAB間ではBがあるものを買うばかりで、CB間ではCが買うばかりCD〜XY・・と無限の循環を経て行き結果的に公平になることを可能にしたものです。
日本で言えばアメリカで黒字を稼いで他方で原油・鉄鉱石その他資源を一方的に買う関係ですし、原油売った国はその代金でアメリ悪化rへ気や食糧その他を買い、フランス、イタリアから衣料品を買うなどで世界が回っているのです。
芸術家や労働者は作品や労働の対価を得る代わりにその他の場面では消費支出するばかりです。
八百屋やスーパーに行って、作家が自分の作品を毎日買ってくれないから不公平だと言うと八百屋もスーパーも困るでしょう。
その上で最終的に黒字になった人がお金持ちと言う訳で、自分の労力投入を生活に必要な範囲にととどめて余力は趣味や社会貢献に向ければ良いことですが、(老後の生活費等の蓄積も必要ですし子育て資金もいるでしょうからどの程度の貯蓄が程々かは一概に言えません)その差額を際限なく蓄積するのは守銭奴と言うことになりますが、それはその人の生き方の問題であり絵描きが必要以上に絵を描き、ベストセラー作家が億万長者になるのが不公正と言うものではありません。
このように幼児的論理を恥ずかしげもなく主張して腕力にまかせて強引に押しきる(さすがに恥ずかしい主張と知っているらしく従来はスーパー301条で日本を脅しただけで実際に適用した事例がない・・ヤクザが脅すだけ実際に滅多に暴力を振るわないの同じと思いますが・・日本は拒否してまた武力侵攻されると困るので仕方なしに応じて来ました)のがアメリカの伝統的主張・・レベルが低過ぎて話にならない相手と言い切ればそれまでですが・・。
ヤクザが暴れているので落ち着くまで放置して見守るしかないのに似ています・・これが150年間(英米一体の無茶苦茶時代とすればもっと長い)も続いて来たのが世界を不幸にしています。
今回のイタリアサミットでは、トランプ氏は、持論の高率関税の正統性をそのまま言い張ったようですが、互いに報復関税競争に入ると第二次世界大戦突入前の大恐慌の繰り返しになります。
このときもアメリカが先に高関税で保護貿易に入ったので、欧州側が直ちに報復関税をかけて泥沼に陥ったものでした。
今回のサミット解説では、日本は自動車などゼロ関税が多いので、相互に高関税をかけあっても日本には損はない・・アメリカは日本にはこれの要求を出来ないだろうと言う楽観論が出ていました。
しかし第二次世界大戦前も米欧の高関税報復合戦に日本は参加しなかったのに、回り回って・・経済圏の囲い込み・ブロック経済化進行→植民地を持たない日独伊が弾き飛ばされ→資源と市場を求めるいわゆる帝国主義戦争・・アメリカによる中国市場の門戸開放要求もその一環でした。
欧米既得権には手を着けず日本が比較的早く進出していた中国市場だけの門戸開放を要求したことになります。
結果的に日本が欧米列強の標的にされてしまった歴史です。
今回も中国の改革開放後日本が地の利もあって実は中国への市場浸透率がトップになっている筈です。
日米の対中投資残高で検索してもなかなか出て来ませんが、中国自身が公表していないので、国別に過去に発表している年度別投資額の累積からの推論するしかないらしいですが、進出しても失敗して資産が目減りしている分もあれば、成功して現地資産が増えている企業もあるなど複雑です。不採算で引き上げた分もあるので過去の投資単純合計でもなく複雑らしいです。
その上単年度投資だけ見ても、たとえば15年度だけで見ると日本財務省発表では1兆円以上の対中投資なのに中国発表では僅かに32億ドルあまりしかないなどの大幅な食い違いがあります。
日本では、中国での収益の本国未送金分(29日アメリカの海外滞留金の説明を書きましたが日本も結構あるようです)だけで1兆円以上あるとの解説です・・を中国国内再投資としてカウントしているに対して、中国は純粋にその年にお金が入った分だけ日本からの投資として計上するなどの大きな違いらしいです。
中国としてメンツを守るために先進国から受けている投資を低く見せたいのでしょう。
このように単年度でもそれぞれ統計の取り方が違う上に、長期の累積残高となるとIMF方式と国連方式とでは、2倍近くの数字の開きがあると解説されています。
結果的に投資残高の推計は難しいので国別比較表を正確には出来ないようです。
以下に漸く日本の13年の対中投資残が出て来ました(どこからどうやって出したのか不明ですが・・)。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r150301asia.pdfみずほ総合研究所 アジア調査部上席主任研究員酒向浩二
中国向けは製造業・非製造業共に減速続く
・・・日本の対中投資残高に目を転じると、
2008年末時点の4.4兆円から2013年末時点には約2.5倍増の11.4兆円となり、アジア域内での突出ぶりが顕著である。
2014年11月10日に、北京で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場で、安倍首相と習近平国家主席の首脳会談が約3年ぶりに実現した。そのため、今後、日中関係は徐々に正常化し、日本の対中投資も回復することが期待されているが・・・」
とあって、データが古いですが、2013年で11、4兆円となっています。
他方米国の対中直接投資残高は30日に紹介したとおり「2010年末で604億5200万ドル」となっています・・時期が4年もずれているのが残念ですが、10年が2008年と13年の中間点とすれば、10年当時日本の方が僅かに残高が上回っていると言うことでしょうか?
今回は日本が独占的地位を占めている訳ではないので、アメリカが日本より多く投資したければドンドンすれば良いだけですので、門戸開放の戦争にはならないでしょうが・・。

中国購買力持続性1

中国は改革解放当初・日米欧に大幅な遅れを取ったのは、人口が多過ぎるので国民レベルを挙げ切れない失敗と理解して、毛沢東の人口爆発政策が間違いだったことを前提として一人っ子政策に変更していました。
中国は解放以降数年前まで製鉄、造船,鉄道、石化事業その他生産力の巨大化こそが、国力の源泉・・19世紀型思考に染まって(市場原理の働かない国ですから)需要無視の生産力増強・・設備投資に走っていました。
需要無視の過大生産開始の過程でいわゆる資材・原料の爆買いを始めたところ、欧米メーカーやオーストラリアその他がこれが永久に続くと誤解して(多くのエコノミストは直線的に拡大して行く前提でもうすぐにアメリカを追い越すと言う予想が普通でした)中国の主張に何でもなびく傾向が出て来ました。
これに気を良くした中国がアメリカが勝手なルールを次々と打ち出しても世界が従うしかない原理・・強制出来る強みの源泉が巨大な市場・購買力にあることに気が付いたようです。
購買力に世界がなびくならば人口比で対アメリカで将来的に「中国の勝ち」と決めつけたのが、当面の太平洋2分論です。
反日暴動はこの手始め・・日本が巨大市場の中国に輸出・工場進出を続けたければ屈服するしかないと言う思惑・・・脅しで始めたものです。
日本に対するだけではなく世界中に向かって中国が同時に無茶・横柄な態度を示し始めたのは、アメリカのやり方を学んだ・・巨大市場を維持している限り無茶をやっても世界が従うしかない・・媚びて来るだろうと足下を読んだからですし、実際に西欧諸国や韓国は既に中国に明からさまになびき始めています。
フィリッピンが領海問題で抵抗すると早速バナナ輸入制限措置をされて慌ててしまい、あまり強く出られない状態です。
オーストラリアその他ASEAN諸国も不満があっても資源その他を買ってくれるのでなびくか、面と向かって中国の横暴に声をあげられない状態になっています。
特に西欧諸国にとっては南シナ海問題は直接の利害がない・・これと言った無茶を言われていないこともあって、ほとんど気になっていません。
日本の場合、尖閣諸島侵犯に絶対に退かないし反日暴動が起きると→ASEANへの新規投資振替・・逆懲罰に出ていますし、レアアース禁輸に対しても調達先開拓で逆襲に成功しています。
日本の動きによって、中国が大量生産国になったと言っても実は先進国(日本)からの部品供給による加工組み立てで成り立っているに過ぎない・・高度部品を買わないと自国産業が成り立たない先進国相手に禁輸や不買運動など出来る訳がないことを理解したようです。
購入品が最終消費ならば消費者の気分次第でボイコットも可能ですが、加工貿易の部材購入の場合自分勝手・気分次第とは行きません。
日本を敵視した穴埋めのために独仏に秋波を送り、独仏とも喜んで参入にいそしんでいる・・何かと中国の肩を持つようになっていますが、独仏と日本では植民地支配の様式を見ても分るように技術移転の心構えが違うのでうまく行ってないようです。
最終消費の場である商店の焼き討ちは出来ても、工場はオヤ会社から部品・半製品供給供給がないと最終組み立て加工生産が出来ません。
中国が資源購入国相手には一時的に爆買いを前提に大きな顔を出来て来たことは確かですが、生産輸出のための原材料輸入である以上購買力無視の生産は限界が来ました。
中国が原材料を爆買いして来たのは内需によるものではなく、過剰生産力→輸出を前提にするものですから、設備が出来上がって稼働を始めると過剰生産問題・・買い手がいない現実に直面します。
稼働を始めると(借り物技術ですから製品競争力がある訳ではなく、ローエンド製品を沢山作っただけが自慢では出血(赤字販売)輸出するしかない状態になって、世界経済の撹乱要因になっている状態です。
赤字輸出を垂れ流しをすると競合製品国は困りますが、出血輸出とは言い換えればその多くを占める原材料コストを回収出来ない状態ですから、仕入れを止めるか従来どおり高い値段で買えないので、仕入単価・・資源単価が下がるしかありません。
中国の需要無視の巨大な原材料輸入が昨年来激減して来たのが昨年来の原油その他資源・国際物流市況の急激な下落原因です。
こうなると中国の爆買いを原動力とする中国の強引・乱暴な政策は出ばなをくじかれた状態です。
5月8日の日経朝刊5pには建機最大手のコマツ社長のインタビュー記事が出ていますが、これによると2010年にはショベルの世界販売の50%が中国で販売されていたが15年には1割に下がっていると書いています。
5月9日日経新聞朝刊4pには、中国の輸入が(安値を利用して備蓄用原油の輸入拡大しているにも拘らず)18ヶ月連続減と出ています。
一定期間経過で在庫がなくなれば、赤字販売・輸出のために生産する必要がなくなる・・出血輸出で稼いでいる結果、上記のとおり輸入が18ヶ月連続減ってもなお黒字状態・貿易黒字微減と書いていますが・・そのうち微減では収まらなくなるでしょう。
上記に比例して発言力縮小が始まっている筈です。

現地生産と輸出企業化の可能性

現代自動車による韓国国内での超過利潤獲得を可能にしているのは、日本車を輸入禁止していたことによるのですが、昨年から米韓FTA発効によって、トヨタ車などが米国生産車として入るのを禁止出来なくなりました。
結果的に国内競争が激しくなり始め、国内超過利益を利用して海外販売価格を実力以上に安くする商売が出来なくなって困っています。
韓国では統計上の一人当たり国内総生産の割合に物価高で困っている・・実質所得が低いのは、国内総生産が国内で分配されずに企業利益分の多くは外資に持って行かれていることによって、国民個々人への分配が少ない・・一人一人の所得にはなっていないことによることを以前書きました。
(日本の場合は国債であれ、株式であれ、国内保有が中心なので企業利益=国民の利益でもあります・・国債がいくら増えてもこの面で心配がない・・次世代が負債だけではなく国債の権利も相続するので「次世代に債務を相続させるな」と言うマスコミ論調は間違いであることを何回も書いてきました。)
韓国では外資に儲けを持って行かれるだけではなく、国内市場においても国民には商品を高く買わせて、海外の人には安く売る・・結果的に国民から搾取して海外に利益を持って行く政策をしていることが分ります。
国民のための経済政策をしているのか(外資に牛耳られている)企業のための政策かよく分らないのが、韓国の政治です。
例えば韓国のコンビニでは日本と殆ど変わらない定価で商品を売っていますが、そこで働くバイト等の時給は、統計上の日韓の一人当たり収入比とはまるで違って低いと言われています。
物価も人件費も日本の3分の1なら整合していますが、一人当たり収入が日本の3分の1なのに物価だけが何故日本と同じになるのか普通に考えれば不思議ですが、現代自動車の例は一例ですが、いろんな分野で経済原理を歪めた背伸びをした価格政策を強要しているからでしょう。
物価だけが日本と同じで労賃がまるで低いのでは生活が絶望的になる・・海外への売春婦の流出や海外脱出願望が国民の大多数を占める訳です。
話を中国の経済離陸に戻しますと、国内消費用の現地生産企業の真似(技術を盗んで)をして現地企業が育っても、自前で研究開発した多国籍企業は日進月歩で更に新規開発して行きますが、現地におろした技術を物まねしただけの企業の多くはその先の発展が出来ないのが普通です。
社会は絶えず変化していて企業は絶えざる技術革新に追われていますが2000年も専制制で社会の停滞しか知らない社会ではこの辺の理解が低いようです。
北朝鮮は終戦時に日本が現地に設置していた最先端工業施設を保有していて、他方で日本の工場は殆ど全部空襲を受け壊滅状況でした。
その上、占領軍は日本での工場再開を認めない・・実質的植民地支配の意図を宣言していたことを紹介しました。
それで「北朝鮮は良いぞ・・日本はもう駄目だ」という宣伝どおり信用して多くの朝鮮人が帰国して行ったのです。
ところが朝鮮戦争を経て日本等からの新規技術導入が途絶えると、その後全く新規発展が出来ず未だに戦後直後にあった古い設備で操業していると言われています。
サムスンやポスコ(浦項総合製鉄)も日本企業からの絶えざるパクリが出来なくなれば、発展が止まるだろうと言われています。
日本等現地進出企業からのパクリ程度で中国が自前の製造業を立ち上げても、東南アジア等第三国市場で多国籍企業と互角に戦うのは無理があります。
格安人件費を武器として輸出基地用に勧誘した強みは急速に失われ始めていますし、改革開放直後は大豆等の食料品の輸出国だったのが今では世界一の穀物輸入国になっているし、原油や鉄鉱石その他資源も輸出国から輸入国になっています。
格安人件費の魅力を訴えて輸出用工業基地になっていたのですが、今やその利点がなくなって今後は自国消費用の工場しか誘致出来なくなってくると、早晩貿易黒字国から赤字国に転落して行くでしょう。
これに加えて、既に投資した欧米企業でも中国事業縮小撤退の動きが加速し始めています。
最近日本の株式市場で中国系ファンドが大量に売却して資金回収していることが報じられています。
戦争開始に備えて中国系の名義だけ隠して別の買い方をしているのか不明ですが・・・アングラ資金の海外逃避や事業の海外逃避による資金不足によることもあるでしょうし、バブル崩壊に備えた資金需要が増えている要素もあるように見えます。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC