資源下落とロシア経済3

ロシアの輸出額。GDP。原油生産量、外貨準備額の推移を順に引用しておきます。
発行体体・著者が不明ですが、以下にグラフが出ていますので、引用しておきます。 https://jp.tradingeconomics.com/russia/foreign-exchange-reserves”>

ロシア 輸出額

Russia Exports
ロシア – 国内総生産

Russia GDP

ロシア – 原油生産

Russia Crude Oil Production

外貨準備額

Russia Foreign Exchange Reserves

上記グラフによれば、2015〜6年ころを比較するとGDPが原油等資源価格急減に比例して約半減していることがわかり、18〜19日に書いてきたロシア人学者や東京三菱の海外駐在員情報の意見等と傾向がほぼ合致していることが分かります。
一方で外貨準備が逆に上がっているのは、18日紹介したロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が言う通り、国民(内需)にしわ寄せがいっていることを表しているのでしょう。
ロシアルーブル急落・半値になれば輸入品価格は2倍になりますので生活必需品・消費財の輸入が出来ない→貿易黒字→外貨準備増加です。

資源下落とロシア経済2

昨日見た久保庭眞彰氏論文では、ロシアの対外強硬姿勢は苦し紛れの真逆で2000年代に入ってからの油価高騰によって、ソ連時代の債務を返し国内再構築や軍の近代化(サイバー攻撃能力が飛躍的にアップしているのはその象徴?)が進み余力が出たことによるという趣旨のようです。
そう言われれば、その間のGDPが約2倍になっているということは国力2倍ですから、ソ連崩壊後失っていた自身を取り戻したい気持ちもわかります。
もともと西欧と仲良くやる予定ならば、ウクライナ侵攻もクリミヤ併合などを起こす必要がなかった・・もともと関係悪化を承知の行動だったという意見のようです。
ロシアはソ連崩壊後の混乱を収拾しようやく体力がついたので、民主化や人権重視方向にかじを切るのではなくその自信が強権支配や周辺侵攻.旧ソ連圏諸侯の盟主としての地位復活方向へとなったという解釈のようです。
言われてみると、中国も同様で豊かになれば欧米型人道主義・穏健な話し合い解決社会になるという期待が外れ、逆に中華の栄光復活を唱え内政的には強権支配補強・対外的には膨張主義満足のために豊かさを餌・・周辺国への開発資金の大判振る舞いをして浸透していく方向へ突き進んでいます。
豊かになった分を国民配分しないでで国民が納得するのか?いうことですが、10の儲けのうち1〜2割しか国民分配しなくとも解放前に比べれば国民は豊かになったことを実感できるのでしょうし、残り資金を権力周辺支持基盤に手厚く配り、国民監視のためや周辺国威嚇の軍事費に使っても国威発揚・・ロシアがソ連崩壊の惨めな記憶払拭に必死なのと同様に中国はアヘン戦争以来の屈辱の歴史を挽回するためにお金を使う事には国民同意があると言えます。
先進自由主義諸国では、分配が足りないという絶えざる批判にさらされているので労働分配率が上がる一方で、メデイアの煽る要求に応えるための各種施策・保育所増設・職業訓練など資金需要が増える一方ですが、他方で増税拒否キャンペインですから、概ね財政赤字に困る社会ですが、強権支配社会ではそのような不満を煽る仕組みがないので分配の不公平について権力者は気にする必要がほとんどありません。
民主国家でメデイアが国民不満を煽るのを前提に、メデイアの自由がない中露も同じ結果になると考えるのは間違っています。
全体成長を引き下げても、平等が主眼である筈の共産主義国家で極端な内部格差が当然視されているのは、パラドックスですが、そんな事は気にしない掛け声だけの主義主張の象徴です。
「共産主義・計画経済→国家意思貫徹=独裁政治必須社会のように見えますが、ロシア革命後約100年の歴史を結果から見れば、「共産主義だから自由のない強権政治になる」というよりは「強権政治をしたいがために共産主義が便利だからイデオロギーを借用して来た」だけのように見えます。
上記久保庭論文の意見は一般と違った角度からの分析で個別事象については傾聴に値しますが、グラフを見るとGDP成長率も少ししか下がっていませんが、原油価格が半分になってGDP・すなわち国力も半分になったというのが、一般的理解ではないでしょうか?
こうなると専門家の作ったグラフなのに昨日まで紹介した意見や明日紹介するグラフと違いすぎてどちらを信用して良いのか分からなくなります。
そこで上記著者が何となく偏ったロシアひいき専門家の疑いがありそうなので経歴を見ておきました。
久保庭氏の論説がネット評論家の元外交官馬淵氏のように何があっても「ロシア良い式」の意見開陳者の経済学者版かな?と見えるので、その故郷・出自を探ってみました。
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.html

久保庭 眞彰自己紹介
1972年
横浜国立大学経済学部卒
博士(経済学,第166号) 一橋大学
名誉博士(Dr.h.c.) ロシア科学アカデミー中央数理経済研究所
1987年
ソ連科学アカデミー中央数理経済研究所客員研究員
1990-91年
カリフォルニア大学バークレー校・ハーバード大学客員研究員
2005-2006年
レオンチェフセンター客員研究員
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.htmlによる自己紹介です。
研究歴
大学院時代は、ソビエト数理経済学の理論的調査や分権的最適計画メカニズムに関する数理経済学的研究を行いました。
一橋大学着任後は、時代の変化と研究リソース環境の変化に対応して、理論的最適化モデルの性能を計算機シミュレーションによって確かめる作業や、産業連関表を利用したソ連・東欧の静学的・動学的多部門実証分析を行うことに重点を移しました。
ソ連崩壊後から現在にいたるまで、市場経済への移行に直目して、
(1) ロシアや新興国諸国の経済成長と国際石油価格・交易条件・交易利得・エネルギー効率の変動の関係についての現代的時系列解析、
(2) 産業連関表等を利用した新生ロシアや中央アジアの経済・産業構造分析、
(3) 新興国とBRICsの比較経済研究、
(4) ロシアの財政連邦主義や金融・証券制度に関する統計的・制度的分析、
(5) EU・アジア・BRICs国際産業連関表を利用した各国間経済リンケージの分析、
(6) ロシア・中国・中央アジアの鉱工業生産、GDPの歴史的遡及統計推計、
(7) 環境経済
に関する教育・研究を試みております。

その他海外歴がありますが、レオンチェフセンターレオンチェフセンター自体が、「レオンチェフが幼少期から大学卒業まで(1906~1925年)を過ごした故郷サンクト・ペテルスブルグ(旧ペトログラード・レニングラード)に,改革派の拠点の1つとして1991年に設立された研究機関・・)学問の故郷・郷愁が旧ソ連圏にあるような印象です。

資源下落とロシア経済1

資源輸出に頼るロシア経済の現状を見ておきましょう。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-06-01-23

ロシアの国情およびエネルギー資源 (14-06-01-23)
2016年01月
・・・ロシアは鉱物、森林、水産など豊富な天然資源を有する国家で、特に石油と天然ガスの生産・輸出に関しては世界トップレベルのエネルギー大国である。
ロシアはこれらのエネルギー資源を背景にエネルギー輸出大国に成長、エネルギー産業はロシア総輸出額の6割以上、連邦予算歳入の4割以上を占める同国最大の産業である。
しかし、国際経済市況に左右されるなど不安定要素も多く、エネルギー資源輸出依存から脱却する経済姿勢が問われている。

http://www.bk.mufg.jp/report/ecostl2014/20140901_ldnreport.pdf
Economic Research

海外駐在情報 BTMU Focus, London Naoko Ishihara
September 1, 2014
The Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ, Ltd.
Economic Research Office (London)
ロシア経済にみられる資源エネルギー収入依存の功罪
ロシア経済と資源エネルギーの関係をみると、ロシアの実質GDP成長率は、原油価格の伸びにほぼ沿う形で推移しており、資源エネルギー市況がロシア経済へ与える影響の大きさが端的にみてとれる(第1図)。
また、資エネルギーの存在感が最も明確に現れているのは輸出で、輸出総額の7割近くを占める(第3表)。2000年から2013年にかけて、ロシアの資源エネルギー輸出は6.6倍増加し、輸出全体を大きく押し上げた。
この間の輸出数量と価格の変化をみると、数量では1.0~2.4倍であったのに対し、価格は4倍以上に上昇し、輸出額の大幅な増加をもたらしたことがわかる。
また、2005年以降の変化をみると、原油と天然ガスの輸出数量が頭打ちとなっており、近年になるにしたがい、価格の変動が輸出額を左右しやすくなってきたことがみてとれる。

資源がロシア経済に占める比率・・先ずは輸出に占める資源比率を見ておきましょう。
世界ネタ帳によるロシア輸出内訳表です
http://ecodb.net/country/RU/trade/

基本情報
輸出品目
燃料・エネルギー製品 70.6%、金属および同製品 7.7%、化学品 5.8%
輸出相手国
オランダ 13.3%、イタリア 7.5%、ドイツ 7.0%
輸入品目
機械・設備・輸送機器 48.5%、化学品 15.9%、食料品・農産品 13.7%
輸入相手国
中国 16.9%、ドイツ 12.0%、アメリカ 5.2%
出典: JETRO (%)は金額の構成比を表す。

資源輸出が総輸出の7割ということでしたが、上記のとおり資源関連製品(現地加工の石油半製品など)を含めるとほぼ100%になっています。
同じ量を輸出しても手取りが(資源価格下落とルーブル価格下落によって)約半分になると国家財政だけでなく、国民総所得自体も半分・生活レベルが半分になります。
昨日紹介した元ロシア人学者のいう通り、同じお金で「以前2袋買えたのに今(14年頃)では1袋しか買えない」実態・・生活水準が半分に下がっているのですから、いくら言論統制しても(国内的には不満表明できないだけで)国民不満の蓄積は大変なものでしょう。
GDPが半分になっても国民等しく半分になるのではなく、強権政治下では必然的に政権に近い順に良い思いをする傾向が強まりますし、軍や治安関係予算配分が多くなる傾向があると、その分民生分野の配分が平均以下になります。
まして対外威嚇を始めると軍事関係への予算配分が多くなり、そのアンバランスが極まっていきます。
この結果?ロシア国内の老人や弱者の生活苦の実態が時々報道されています。
なぜか2014年の記事ばかりで最近のネット記事がすぐには出てきませんが、以来約4年経過で原油価格はバレル当たり50ドル前後で停滞したままですし、その間にウクライナ侵攻等があって、経済制裁が強化される一方ですから、国内不満はもっと深刻化しているはずです。
他方で、原油下落効果や経済制裁効果も兵器輸出が伸びているので大したことがないという以下の論文もあります。
以下のグラフを見るとGDPはそれほど下がっていないように見えます。

対ロシア経済制裁は効いたのか?-久保庭 眞彰

2017年12月16日 ロシア
対ロシア経済制裁は効いたのか?-久保庭眞彰
経済制裁のロシア経済へのマクロ的影響
図1に見られるように、経済制裁の効果の観測を難しくしている要因は、経済制裁開始のすぐ後の2014年の第4四半期から、油価の大幅下落が生じたことに大きく起因している。ロシア経済成長は、油価の動向に大きく依存する。油価下落により、2014年末から成長率大幅減速が生じたのであり、経済制裁の影響とはいえない。ロシアでは長期的に見て、10%の油価上昇(下落)は約2%の国内総生産(GDP)成長率上昇(下落)をもたらす。
ところが、図1の直近期間については10%の油価下落は約0.5%のGDP成長率下落をもたらすにすぎない。製造業生産についても同様である。従って、経済制裁と油価下落の下で何らかの要因が成長率の一層の下落に歯止めをかけているのではないかという疑問が生じる。

図1 ロシアのGDP成長率と原油価格

図1 ロシアのGDP成長率と原油価格

出所:ロシア国家統計局、国際通貨基金(IMF)、筆者によるGDP季節調整を基に筆者作成
ロシアの企業と消費者への影響の大きい、ルーブルの対ドル為替レートと油価の動向についてはどうであろうか。
直近の2014年から2017年までをサンプルとする回帰分析によると、ルーブル価値(対ドル為替レートの逆数:ドル/ルーブル)は油価10%下落により6.8%下落する。回帰の当てはまりも優れている(自由度修正済み決定係数は0.96)。従って、為替レート下落に影響したのは、油価下落がほとんどで、経済制裁の影響は見られない。為替レートについては、油価変動を相殺するような対抗要因は観察されない。
3.結び
以上に見たように、今のところロシアに対する経済制裁は目に見える形では作用していない。もともと超優良銀行・企業とそれら主導の優良プロジェクトに関する経済制裁なので、特定の個人を狙った制裁はともかくとして、経済分野別の経済制裁は有効性が初めから疑わしいものがあった。欧州がロシアからの石油・ガス輸入禁止措置を取れば経済制裁は実効性を持つが、それはEUなどの自殺行為ともなるので、冷戦時代にもなかったことである。返済の確実な超優良企業へのファイナンス禁止措置は、米欧日の政府系ならびに民間の金融機関・企業(特に国際協力銀行(JBIC))にとっても利益はない。
2000年代に入って油価の持続的上昇という天恵と域内引き締めの影響によって、対外債務削減・軍事生産近代化・域内統一という一連の難題をクリアすることができた。
遅れていたサイバー戦の備えもでき上がりつつある。ここで、プーチン大統領は一層の民主化・開放化ではなく、NATOと対峙するロシア核大国の軍事的プレゼンスの確保に走った。NATOと対峙しなければ、ウクライナのEUへの接近の妨害やクリミア黒海艦隊へのてこ入れも不必要であろう。
近隣外国の同胞支援を訴えれば、ロシア民族主義が一挙に盛り上がることはプーチン大統領によって明確に自覚されている。第2次世界大戦の対ドイツ苦境下で最後にスターリンがロシア国民に懇願したのも「ロシア死守」ということで「社会主義死守」ではなかったのである。
この強固な解き難いロシア民族主義の伝統にプーチン大統領は守られていると同時に縛られている。
[執筆者]久保庭 眞彰(一橋大学名誉教授)

安保理拒否権行使3とロシアの孤立)2

ロシアは安保理での拒否権を盾にして(それがあることが自慢の種でしょうか?)アンチョコな拒否権行使で交渉時間を自らつぶしてしまい、その先どうなるかを読めなかったのでしょうか?
米英仏連合軍も明確な化学兵器使用の直接証拠「物」を入手できていない(シリア政府軍制圧地内なので)点に弱点があるようですが、数々の現地映像や報告の間接証拠がある以上は、調査拒否する以上は仕方ないと言う論理でしょう。
これが国際世論です。
数日前の日経朝刊によれば、米英仏のシリア空爆を侵略戦争だというロシア提出非難決議案が、15理事国中、賛成はロシア、中国、ボリビアの3カ国だけだったと報じられています。
国際世論の理解を得られていない・日本の旧社会党のように恥をかくのを知らずに?ただ否決されるのを承知でアリバイ作りのために?問責決議案を出す・・ただやっているだけの政治同様で・いわば外交能力がない国です。
日本メデイアは日経新聞も昨日か1昨日の記事では朝日新聞同様にロシアや中国への親近感が強いからか?化学兵器仕様による悲惨さ・人道問題を一切論じないで米英の他国主権侵害の「正当化」について論証されていない点を大きな見出しで取り扱っています。
この見出しを見ると、そもそも米英仏の空爆は不当行為をしている前提で正当化の主張責任があるかのような書き方です。
強盗や殺傷現場を見たら他人の家でも飛び込んでいってこれを抑止するのは正当な行為として、刑法では違法性阻却事由になっていますが、国際法では整備されていないから、正当化の主張立証責任が米英仏側にあるという形式論によっているのでしょう。
国際法上正当防衛等の法整備がないだけであって、前提になる化学兵器使用によって、一般市民が泡を吹いて倒れている状態を不問にしたこういう形式論がメデイアで主流になっているのには驚きます。
本質的に必要な議論は形式論ではなく本当に化学兵器による殺傷が行われていたか否かでしょう。
こういうメデイアは日本政府批判のためには、森かけや財務次官のパワハラにしろ、疑惑だけ大騒ぎし疑惑がない証明をしろと騒いでいますし・・日頃から人権人権と騒いでいるのですから、片手落ちというか御都合主義です。

刑法
(正当防衛)
第三六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第三七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

トランプ氏もプーチン以上に内政で追い詰められている・中間選挙の展望がひらけない・・目くらまし的不純動機が指摘されるようですし、英(EU離脱交渉のもたつきによる求心力低下)仏(新大統領としてのEUヘゲモニーの見せ場)もそれぞれ内政上の思惑一致らしいですが、ここでは政治背景の分析が目的ではなく、「ロシアは伝統的に軍事力をひけらかすことしか能がない」という点を書いています。
幕末にロシア軍艦が、対馬に実力上陸して英国の勧告があるまで退去しなかった事件をSep 20, 2017前後「ロシアの脅威」シリーズで紹介したこととがありますが、ロシアは伝統的に交渉よりは実力行使が先立つ国です。
ヤクザは警察が来るまで威張れるように、威嚇力をひけらかす事しか存在感を示せない国では、自分より強い国が出て来たら黙ってスゴスゴ?しかありません。
ロシアが得意分野への投資→国力不相当に軍事力強化に精出す・・その分民生部門への投資が減る→社会発展がさらに遅れる悪循環→国民不満の高まり→ガス抜き→対外プレゼンスを高めるための武力威嚇を繰り返す危険性が高まります。
2014年のクリミヤ併合やウクライナ侵攻は、色々な理由をつければつけられますが、大局から見れば、中国による資源爆買い縮小による資源価格下落による国内経済困窮の限界(資源価格高騰時の蓄えがあるので)下落による資金枯渇までに数年かかります)が近づいたので、なりふり構わず対外冒険主義に出たと見るのが妥当でしょう。
東洋経済からの記事です。
https://toyokeizai.net/articles/-/180689

ロシアの経済危機はかなり深刻なはずだ
プーチン大統領によって隠されているが・・・
ハーバード大学教授2017年07月27日
原油価格はピーク時から急落
・・・・ロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が、司法などの制度が脆弱なままでは、資源輸出依存のロシア経済が変わる望みはないと主張していた。
あまりに多くの決定が1人の人間によって行われていたからだ。同じ会議で私は、大規模な改革が行われないかぎり、エネルギー価格の急落は深刻な問題を引き起こすことになると力説した。
かくして、原油価格は暴落した。現在の市況(7月上旬時点で50ドル以下)ですら、2011〜2012年ピークの半分に届かない。
輸出の大半を石油と天然ガスに頼っている国にとっては大打撃だ。
ロシアが財政危機を免れていること自体、驚くべきことである。これには、ロシア連邦中央銀行が果たしている役割が大きい。だが、そのしわ寄せの大部分は消費者に降りかかっている。
通貨ルーブルの価値は米ドルに対して5割も減少。実質賃金と消費はともに急落した。以前は1000ルーブルを持ってスーパーに行けば2袋分の買い物ができたが、今や1袋分だと、あるロシア人が言っていた。
プーチンの失策を隠す国営メディア
ロシア規模の不況が民主主義の西側諸国で起きたとすれば、政治的に乗り切るのは極めて困難だったろう。だが、プーチン氏の権力は、まるで揺らいでいない。
国営メディアは失政を覆い隠すために、西側からの経済制裁を非難したり、クリミア併合やシリアへの軍事介入への支持をあおっている。
たいていのロシア人は、学校教育や国営メディアによって、西側諸国のほうがひどい状況にあると信じ込まされている。残念ながら、そのような情報操作は改革への処方箋とはなりえない。

改革の処方箋にならないとしても北朝鮮同様に閉鎖強権支配社会では、経済失策による飢え死にが、仮に何千万と出ても(スターリンによる穀物の飢餓輸出や毛沢東の大躍進政策の失敗でそれぞれ何千万単位の餓死者が出ていますが)政権危機にならない・・ことが歴史の鉄則です。
相手を弱体化するには、経済制裁ではなく豊かな生活をさせて(国民に豊かな生活の味を占めさせて抵抗力を削ぐ方が現実的です。
三国志演義で有名な曹操が劉備を籠絡するために贅沢させる・・「髀肉の嘆」あるいは孫権が劉備を招いて贅沢させる政策です。
一般的に豊かな地域の兵の方が貧しい地域の兵より弱いのが原則です。

 安保理拒否権行使2とロシアの孤立1

話題をロシアに戻しますと、ロシアの方ではアメリカの空爆事件に巻き込まれても何も反撃できないと却って面目を失うので、プーチンの政権維持にマイナスになるので、困ってしまう関係でしょう。
そのつもりで(ロシアの客観状況がどうなっているかを)ネットを見ると以下の記事が出てきました。
以下に紹介するのは今年2月の事件ですが、自国民兵が米軍の攻撃で約200人も死亡していても5人だけとしか発表できないのがコワモテロシアの現実です。
中国でどのような大騒乱や災害が起きても発表できる死傷者数の最大人数が「35人」に限定されているから、それ以上の大災害が発生することはないと言われている・もちろん根拠ない憶測ですが・・のと似た感じで、居丈高の割には自分より強い米軍の前では、縮こまっていることを国民に知られたくないからでしょう。
https://matome.naver.jp/odai/2142319664095117501

中国で事故が起きた際、死亡者の上限が35人となっているのはご存じだろうか? その理由や原因まとめ
更新日: 2015年08月25日
“『ビートたけしのTVタックル』の中で中国で大勢の犠牲者が出る事故が起こると、なぜか毎回のように「死者は35人」と発表される理由について解説された。”
“「中国は大事故が多いので、数週間に1度はそういう事故が発生している。最初に最少人数を発表し、あとから数字を修正することも多い」と、あくまでも「35人」という数字に深い意味はないことを説明した。”
過去に起きた事件の死亡者数を見てみると確かに数多くの死亡者数が35人以下になっているのがわかる
2003年貴州省 ガス爆発事故 :35人
2009年 河南省 平頂山炭鉱事故 :35人
昨年の大みそか、30万人が駆け付けた上海のカウントダウンイベントで転倒事故が発生。発表によると、35人が死亡、48人が負傷という大事故となった。
997年5月深センの飛行機事故、2008年11月雲南省の土砂崩れ、
2011年7月高速鉄道の事故、
2013年11月山東省の石油パイプライン大爆発など、
日本でも報道された大事故において「死者35人」という不可解な数字が何度も発表されている。
<過去に起きた事件 死亡者が35人以下のもの>
以下多数事例省略

以下紹介する今年2月の事件は不思議にもロシア民兵と称する軍団が、最強を誇る米軍基地攻撃を計画して撃退されてほぼ壊滅した事件らしいです。
ロシアとしては、自国兵が米軍基地を正面から攻撃したとは言えないので、自国関与を否定するのは当然としても、死傷者数くらいまともに認めても良さそうですが、それが出来ない様子です。
この後で書きますが、米軍基地をロシア民兵と名乗って正面から攻撃する図太さ・・オバマが「世界の警察官をやれない発言」以来、世界中の無法者が我が物顔に羽を広げている状態がわかります。
こんなことをされているのでは、ロシア疑惑を書き立てられているトランプ氏が国内政治対策上も放置できなかったでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-13/P43FS16K50XT01

シリアのアサド政権を支持するロシア人を中心とする雇い兵部隊がデリゾール県で先週、米軍と有志連合が拠点とする基地に攻撃を仕掛けて失敗し、200人以上の兵士が死亡した。米当局者1人と事情に詳しいロシア人3人の情報で明らかになった。
かつての冷戦で対立した両国にとり、これまでにない数の犠牲者が出たもよう。
ロシア軍はこの攻撃には一切関与していないと表明。米軍もロシア軍の主張に異議を唱えていない。

https://www.cnn.co.jp/world/35115132.html

ロシア、「多数の」自国民死傷認める 米軍によるシリア空爆で
2018.02.22 Thu posted at 19:33 JST
(CNN) ロシア外務省は22日までに、シリア北部デリゾール近くで今月初旬、アサド政権支持の武装勢力が米軍支援の「シリア民主軍(SDF)」に攻撃を仕掛けた際、米軍による空爆の反撃で多数のロシア人が死傷したことを初めて認めた。
負傷者数は「数十人規模」としたが、死者数には触れなかった。
ロシア政府はこれまで多くのロシア人が死亡したとの一部報道を否定、死者については最大5人としていた。
戦闘にロシア軍兵士は関与していないとも主張。死亡したロシア人の遺族は、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」に所属していたことを明らかにしていた。
マティス米国防長官はこれら雇い兵とは関係がないとするロシア政府の主張を疑問視する見方を示していた。
記者団に先週末、「257人の武装勢力が自らの判断で敵対勢力の領地に進攻し、砲撃や戦車の攻撃を実施したとは思えない」と疑問視していた。

上記のようにロシアは自国兵または民兵の被害を認めても、米軍へ報復できないから政権の威信に関わるから政府と関係ない民兵だといい、しかもわずか5人という発表しかできない状態です。
これではウクライナに展開している偽装?民兵が、米軍の空爆を受けても文句言わないのかな?
このような弱腰状態のロシアが、拒否権行使の結果米英仏のシリア空爆で自国兵が被害を受けたと主張して対米報復戦・・戦線の拡大などする勇気はないでしょう。
ということは、拒否権行使は政治的失敗だったことになります。
合同調査団派遣に同意していれば、空爆を先送りできたしその調査方法や結果に対する評価など色々交渉の余地があるのですから、これを頭から拒否した外交能力の拙劣さが際立ちます。
平昌五輪をチャンスに北朝鮮がギリギリのところで交渉に応じる姿勢を見せたのは、米軍の単独武力行使威嚇に対して、中国もロシアもせいぜい武力行使は遺憾の意を表する程度で具体的に動いてくれない・・「北朝鮮が自力で米軍に対抗出来るか否か」だけと見極めたからでしょう。
自分がある程度対抗できると思っても米国がそうは思わないで突っ込んでくるとなれば、大変です。
北朝鮮とすれば、交渉に入って仮に決裂してもその期間(平昌五輪から見れば約半年前後は時間を稼げるでしょう)だけ稼いで先送りできるメリット(半年あまりの違いでもっと核兵器運用準備が進む?)だけです。
・・この間に中韓を取り込める・・引きのばし交渉に米国が怒っても交渉うち切りは乱暴だなどと主張すると、その程度のことならばもうちょっと譲歩しても良いかなどの立場の違いを利用して欧米諸国分断チャンスもあります。

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