日中の制裁合戦5(バブル崩壊2)

治安対策として国家命令で不要な人材を多く抱え込めば、国有企業の財務体質が数年で悪化しますので、企業体質悪化の先送りになります。
まして日本の投資が東南アジアにシフトした結果、東南アジアとの関係で急激に対外競争力を失いつつある中国企業にとっては二重苦になります。
バブル崩壊を先延ばしするため・・・シャドーバンキングの連鎖倒産を防ぐために出所不明の(公的?)資金が供給されてはその都度危機回避されていますが、これがシャドーバンキング問題が解決する訳ではなく矛盾激化の先送りにしかならないのと同様に、経済原理に反して国有企業に雇用を命令しても失業率悪化の先送り策にしかなりません。
ちなみに、軍事費拡大・武装警察力強化、ネット検閲強化策は失業対策事業・不満分子の吸収策として一定の合理性があります・・。
ネット時代が来れば言論の自由を制限するのは無理が来ると予想されていましたが、中国の場合膨大で無限と見えるネット書き込みを即時に削除する検閲が健在です。
これを支えているのが大量の大卒未就職者で、かれらの不満吸収対策としてネット検閲要員として大量に低賃金で利用していることが報道されています。
不満分子予備軍が不満分子の摘発に協力し、弾圧するのに利用される構図で中国らしい一石二鳥政策です。
ところで1年経過後の14年春の大卒内定率はどうなっているのでしょうか?
14年5月3日現在の日経ビジネスhttp://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060406/101059/?n_cid=nbpnbo_leaf_bnlu世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」によれば
「大卒予定者727万人、中国は史上空前の就職難かつて重宝がられた海外留学帰国組は今や見る影なし」の題名で以下のとおり報道されています。
「中国で今年6〜7月に大学を卒業する学生の数は、昨年の699万人より28万人増えて727万人となる見込みである。」
「中国の景気低迷は企業による求人数を大幅に減少させている。727万人もの大学卒業生のみならず、大量に帰国した“海帰族”も加えて、2014年の就職戦線は史上空前の激戦が繰り広げられている。この「就職戦線異状アリ」の状況を改善して、大学卒業生の就職率を高め、失業率を低減しなければ、中国社会の不安定要素はますます増大することになるが、抜本的な改善策は容易には見つからない。」
中国の場合政府統計が元々粉飾ばかりで当てにならない上に、億単位の農民工・出稼ぎで低賃金労働が成り立っているので、そもそも統計不能ですから、失業率自体正確に把握するのは不可能でしょう。
失業率を社会の体温計に利用出来ないとしても、マトモニ就職出来ない大卒だけで毎年何百万人も累積して行く社会って本来崩壊寸前ではないでしょうか?
まだ6月ころにならないと今春の就職率が出て来ないのですが、今のところこの状態で景気低迷が明記されていますので、昨年より厳しいという前提で書いていることは確かです。
仮に政府発表どおり成長率が昨年の約8%から7、4%に下がっただけならば、少なくとも昨年より7、4%の求人が増えていなければ整合しません・・求人が減ることはない筈です。
求人が毎年減っているということは、マイナス成長が続いていることを表しています。
私が書いているようにこの記事も中国の景気低迷・・マイナス成長は当然の前提で書いているのですが、別の記事では何故か政府発表どおりに毎年7〜8%も成長していると書くことが多いのですから不思議です。
(この人が矛盾したことを書いているというのではありません)
日本なんか簡単に屈服させられると散々自慢して敵愾心を煽って来たのに、実際には実力差があって何も出来ない人民軍が、いまさら国民に対して格好がつかなくなっています。
現在の中国の苦境は、全ての分野で実力以上に自慢し過ぎていた・・バブルが弾けるのが目前に迫っていることによります。

日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)

韓国では世界ニュースになった4月中旬の船舶事故(フェリー転覆)に続いて1昨日発生したソウル地下鉄事故によって安全面を軽視して・違法でも何でも稼いだ方が勝ち・・結果が全ての風潮・・価値観が漸く韓国国内でも批判されるようになってきた様子です。
能力があって急成長すれば良いのですが、日本で言えばブラック企業・・安全教育や設備/手順あるいは労働基準を守らない・・企業秘密を盗んでぼろ儲け・急成長している企業があります。
急成長する新興国の場合、必要なコストを手順やコストをケチって(設計図を盗んで来ても安く作りさえすれば勝ちみたいな)生産だけに特化するから成り立っている面があります。
このやり方がそろそろ限界にきたのが、北京を中心とする公害問題であり、韓国の事故多発社会でしょう。
韓国では、もっとも安全性を要請される原子力発電の規格部品でさえ不適格な適当な製品であったことが昨年バレたばかりです。
言わばブラック企業中心で設計もデタラメで、低コストを売り物に世界に進出していた咎めがこれから出て来ます。
中国が低賃金輸出や公害垂れ流し、知財剽窃等々非合法行為をやりたい放題にすることによって支えられていた外貨獲得が今後減少して行くと、離陸し切れていない巨大人口をどうやって養って行くかの課題に直面して行かざるを得ません。
改革解放前の貧しいままならば、今の北朝鮮同様に国民は我慢できたでしょう。
解放後上海等で目の前に豊かな都市住民を作り出して来たうえで、実態に合わない統計を発表しては・・国民に輝かしい未来を煽って来たので、国民はその気になってしまっています。
この状態で倒産続出・失業の嵐→国内生活レベルダウンに見舞われると、共産党政権に対する人民の不満が嵩じて行き国内政治が危機に直面して行くでしょう。
生活向上を夢見て(田舎の親が借金して)苦労して大学を出て見れば地下室で寝泊まりするアリ族の生活が待っているのでは、若者を中心に不満が蓄積して行くのは当然です。
ちなみに中国大卒の就職率は僅か35%でしかありません。
5月3日日経新聞ウエブ刊(2013/6/1220:48http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1000E_S3A610C1EA1000/)
によると「中国の大卒就職内定率35%に低下 13年春、ミスマッチなど響く」とあります。
記事内容は以下のとおりです。
「中国では大学などへの進学者が急拡大。今年の卒業生は約700万人に増える見込みだ。だが中国の労働集約型の経済構造は変わっておらず、国内総生産(GDP)に占める3次産業の割合は10年間で3ポイントしか上昇していない。大学生が希望する仕事はもともと少なく、最近の景気減速で求人数がさらに減少した。」
このニュースの何年も前からマトモな就職ができないアリ族が報道されていましたので、13年は12年より就職率が少し下がった程度でこの有様です。
700万人の約7割前後が毎年就職出来ない社会・・これが毎年累積して行くのですから・・多くはネズミ・蟻族として不本意な現場労働者等として食いつないでいます・・大変な事態が待っています。
日本のように親世代が裕福ではありませんから、韓国ではこのマイナス・・学費等の借金を解決するために売春婦になって世界を横行していますが、中国の場合まだ男子中心の進学ですから親が借金して息子を進学させて就職出来ないと親の家に戻る訳にも行かず、政情不安に直結します。
同記事では以下のように書いています。
『このまま内定率が上がらなければ、就職できない大学生らが共産党体制に不満を持ち、社会不安が急速に高まる恐れもある。地元経済紙によると、中国政府は今月に入って、国有企業に「社会的な責任を積極的に果たす」ために大卒者の採用を拡大するよう要求した。」

新興国の将来11(バブルとインフレ1)

中国がリーマンショック後約40兆円の財政出動すると宣言したときにその資金をどこから引っ張るのかについての報道がなかったので、以下は推測に過ぎません。
私が常々書いているように、自国通貨建ての国債の場合には、中央銀行が無制限紙幣発行(約40兆円分)をして、その紙幣で無制限に国債を引き受ける方式が可能です。
・・あるいはその応用かもしませんが、外資による中国国内への投資金をそのまま外貨準備にしないで、人民元に両替したりして国内で使う・・それでも不足する分は、外貨準備金を取り崩して人民元に両替する方式を取ったのではないかと推測されます。
これまでは人民元を国内にだぶつかせないためと人民元の為替相場が上がらないようにするためにトヨタ・日産などのドル外貨による投資があると、その資金(ドル)そのままで(人民元に両替する元が上がってしまう)アメリカの国債を買って人民元に両替しないままで来たのですが、この逆張りをやっていたと思えば良いでしょう。
リーマンショック後人民元の対ドル相場が少し上がったのは、外資による投下資金をそのままアメリカ国債購入資金にせずに国内で人民元に両替して国内で(中国政府債の引き受けに)使ったりそれでも不足する分はドル外貨準備の還流(ドルを売って人民元を買うのですから)の結果と見れば整合します。
17日の日経新聞朝刊11面では
「中国の為替制度がドルやユーロのバスケット方式なのに、ドルが下がっても対ドル相場だけ上がって来たのはアメリカに対して配慮してきた結果であり、ここに来てユーロに連動して下がっているのはアメリカに対する配慮がなくなっているからである」
と書いていますが、配慮の問題ではなく経済合理的な行動結果・ドル預金を減らしていることによるものではないでしょうか?
(ここに来てユーロと連動して下がっているのは、欧州経済依存度の大きい中国経済の実態・・対欧州貿易黒字の減少によるものでしょう)
中国が上記の通り外貨準備の取り崩し、あるいは外貨準備に回すべき資金を国内で人民元に両替して使うことによって、外貨の両替があった分だけ国内に人民元紙幣が多く出回ります。
この約40兆円分の紙幣増加が不動産バブルと食品インフレ発生の元凶になったでしょう。
何回も書いてきましたが、我が国のように生産過剰で飽食高齢化社会の国では、紙幣が2倍流通しても野菜や牛乳、アイスクリームを2倍食べたい人が少ないので消費が伸びないで預貯金が増えるだけですが、中国ではまだ飢餓線上の(大げさかも知れませんがこれに類する)国民が何億人といますので、紙幣が仮に2倍手に入れば消費材全部平均に資金が向かうのではなく、底辺層では生鮮食品に集中しますので消費が2倍どころか5〜10倍に伸びることになるのは当然です。
一定の収入以上になっている・・例えば上海の中間層にとっては食料品への渇望は卒業していますが、今度はマイホーム入手が夢ですから、そこへ殺到します。
仮に5%の紙幣増刷供給増があったとすれば、生鮮食品と不動産にこれが集中したので食品関連では50〜100%前後のインフレとなり不動産関連ではバブルとなってしまったのです。
補助金の関係で白物家電製品等へのシフトもありましたが、これは元々リーマンショック→輸出減による生産縮小の下支え目的ですし、需要に応じていくらでも増産可能なので、インフレにはなりません。
すなわち現在社会では、工業製品は補助金を出しても(車であれパソコンであれ・・)生産過剰の下支えになるだけで物価上昇には全く寄与しませんが、(我が国でテレビの地デジ移行に伴う特需がありましたが、量が売れただけで値上がりはしませんでした)食品関係は(野菜であれ豚肉であれ・・牛乳であれ)需要急増に合わせて増産を始めても一定期間かかるのでその間急激なインフレになります。

構造変化と格差拡大1

国際収支表については何回か表のコピーを紹介していますので、今回はGDPの推移をwww.google.co.jp/publicdataのデータから一部紹介しておきましょう。
上記のデータによれば1990年の日本の国内総生産は447兆3699億円で、1998年489兆8207億円、2009年は560兆6580億円に伸びています。
これが2008年のリーマンショックによる落ち込みを挽回出来ずに2010年は539兆8807億円に下がっている状態ですから、1990年からリーマンショック前の2007年までの18年間で1.25倍=25%の増加をしていることになります。
電気その他重厚長大型産業の多くが白物家電の海外展開に象徴されるように海外進出し続けている・・従来型国内生産が縮小している中において、GDPが落ち込むどころかジリジリと増加していたということは、多様な分野で大幅な産業構造の転換・・高度化が進んでいる・・成功していたことが明らかです。
まして、団塊世代の退職が始まり、労働力減少しつつあることを考えれば、なおさら効率よく稼いでいることが窺われます。
単純作業中心の組み立て産業が出て行った穴埋めに、これに代わる収入源・・高度な産業が育っていたことになります。
我が国においては、底辺労働向けの大量生産型産業が海外に出て行った後にも国内総生産が減るどころか少しづつ増えていて、貿易収支の黒字はバブル崩壊前同様に維持し続けていたし、その間に海外進出が進んだので海外生産分・・海外利益分だけ所得収支の黒字が増え続けていたことになります。
これが国際収支表の中の所得収支の増加になって現れていて、リーマンショック直前には年間12〜13兆円規模になっていて貿易収支の黒字(年間10兆円前後)を追い越すまでになっていました。
この辺の数字は07年5月26日の2のコラムで国際収支表自体をコピーして紹介してありますので参照して下さい。
上記国内総生産の推移に関するデータによると(何故かうまくコピー出来ないので上記のように抜粋しました)日本はグローバル化によって出て行ってしまった国内生産分を穴埋めするための別の産業の創出・・産業高度化への転換に見事成功していたことになります。
高度化転換出来た分野の従事者はバブル崩壊前よりも高収入を得ていて、他方で生産縮小による収入減の人もいて結果的に日本全体で25%の上昇であったことになります
産業構造が高度化転換(各種製品の最終組み立て工程を新興国に移管し、その製品に組み込む各種部品の高度化や研究者やソフト関連の発達でしょう)に成功しても、最後の組み立て作業的現場単純労働向け産業が減って来ると、高度化産業に必要な人材に転進出来る人は限られていて、転進出来ない人材が増えてきます。
現在国内に残っている各種生産現場でも最終組み立て工程は、パートや派遣・期間工など非熟練工中心になっています。
最終組み立て工程分野の多くが海外に出てしまい、この分野ではここ20年間毎年のように労働需要が減少し続けています。
人口構成は一般的にピラミッド型ですから、どこの国でも裾野・・中間・末端労働者人口の方が多いのが普通ですが、この分野中心(ホワイトカラー層も減っていますが)に需要減が起きたのがこの20年間我が国の抱える大きな問題でしたし、これからも問題であり続けることになります。

内需拡大とバブル発生

日本は海外展開に伴う国内生産の急減速(前年比増がなくなっただけでしたが・・・)を埋めるために急いで内需拡大に舵を切ったのですが、(内需拡大するための資金はたっぷりあるので・・・)内需の準備・受け皿のないところに紙幣供給ばかり増やして金利を下げたので、(家電製品その他は行き渡っていたので買うものがないという国民の意識もあって)さしあたり実需の伴わない宝飾品や絵画・不動産に需要が集中してしまいました。
ちなみに日本のバブルの約20年後、リーマンショック後の成長率の急減速に耐えられない中国が、国際貢献名目に内需拡大政策に切り替えて、何十兆円か巨額支出しました。
中国では都市部を除けばまだインフラも充分ではなく、家電製品すら行き渡っていない状態でしたから、(事故を起こした高速鉄道網の急拡大もその一環でした)それなりの効果がありましたが、既に家電製品等が行き渡っている都市部では、豚肉等の生活必需品の高騰や不動産・マンションや貴金属美術品バブルに転化しました。
このために今年春頃から引き締めに転じていたものの、欧州危機に関連して経済が低迷(日経新聞12月14日朝刊7面によれば膨大な裾野のある造船業界では、今年10月の受注は昨年同月比2割しかない・・3割の造船所では今年に入って受注がゼロほど落ち込んでいます)して来たので、まだバブルが終わっていないのに金融緩和するなど迷走しつつあります。
東南アジア諸国では欧州危機による景気急減速に備えて内需拡大政策が一斉に発動されていますが、既にリーマンショック後の内需振興によってバブル状態になっている中国が同じことをやると、バブルの二乗倍になって大変なことになりかねません。 
貧しい中国人民がいきなり贅沢しろ、豊かな生活をしろと言われても、家電製品等が一定量充足すれば、豊かな生活に慣れていない国民は量をこなすくらいしか出来ません。
上海等都市部では2戸目3戸目の投資用マンションを買うようになっているのはその結果です。
(田舎の料理は量で勝負すると言われているのと同じです)
我が家では、10年ほど前に比べてずっとおいしくなったほうれん草、小松菜その他の国産農産物の味を楽しんでいますが、いきなり内需拡大と言っても品質が向上するものではなく、10〜20年して効果が現れて来るものです。
徐々に生活水準を引き上げるしかないのが、生活文化と言うものです。
いきなり湯水のようにお金を使えと言われても、使ったことのない国民は、従来型の消費を拡大するのが関の山で、品質改善・生活水準向上には時間がかかります。
手っ取り早い消費は量で勝負するしかない・・インフレになるのは当然です。
せいぜいこれまで買ったことのないもので贅沢品と言えば、貴金属や美術品・土地ですから、これに資金が集中したのは当然です。
(どうってことのない中国の絵が馬鹿高い値段になっていたようです)
本来の需要を越えて政治の力で無理に消費を煽っても空回りしてバブルになるしかなく、金融引き締めが遅かったからバブルになったというのは後講釈に過ぎません。
金利政策も内需拡大政策の一環ですから、勿論重要ですが、我が国の場合国を挙げて実際の需要以上に内需拡大するしかないと思い込んでいたことに原因があるのです。
海外展開と内需減少の関係に話題を転じますと、国内生産を維持したままの海外進出は前年比増の誤摩化し・・迂回輸出目的であれば続きますが、海外でもそこそこのものが造れるようになって来ると同等品については国内生産が割高・・国際競争力がなくなってきます。
現地生産能力の漸増に連れて、低級品から順次国内生産比率を下げて行くことになるのは必至です。
今まで国内生産はそのまま維持し、増産分だけ海外生産するというポリーシー通り国内生産を維持して来たのは、有名どころではトヨタ自動車くらいしか残っていないでしょう。
その分、トヨタは現地生産の進んでいる日産等に比べて新興国での競争に遅れを取っている感じです。
トヨタでさえも今年急激に進んだ超円高には耐え切れずに、国内生産を縮小せざるを得なくなりそうな雰囲気です。

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