基軸通貨とは4

基軸通貨の定義次第ですが、本来は債権国の通貨が基軸・・自立した通貨(好きなだけ発行出来る・・)であって、債務国の通貨は経済論理的にはこれに引きずられるしかなく、他国通貨に引きずられる通貨が基軸でありえません。
最早USドルは経済的な意味では(日本の金利政策に引きずられる立場の紙幣が)基軸通貨ではなくなっているのに、みんなが気づかないと言うか、アメリカの息のかかった学者ばかりなのでエコノミストは誰もこうした意見を言わないからでしょう。
昨日と4月1日に、中国が逆ざやにも拘らずアメリカ国債を買わざる得ない逆転現象を少し書きましたが、これは1つにはアメリカの軍事力による面と実際にアメリカが赤字でも商品を大量に買ってくれるメリットがあるからです。
いくらアメリカが軍事大国と言っても、中国が西洋やアジアから稼いだ黒字分までアメリカに逆ざやでお届けするとは思えません。
アメリカで稼がしてもらった分だけ仕方なしに還流するしかない・・還流しなければアメリカはこれ以上物を買えなくなる・・そうすると中国も日本も輸出が成り立たなくなった大変だからということで辻褄が合っているだけです。
その他に12日に少し書いた還流資金の新興国への再投資のからくりもありますが、これは14日書きます
この論理では最後にアメリカにデフォルトされても、「ま、なかったことにするか」という気持ちでアメリカ国債を買っていることになります。
日本人が日本国債を税金を払う代わりに買っているのと似たような心情になっているとも言えますが、そこは自分の国とよその国に対する気持ちとは違うので、アメリカが誤解していると大変なことになります。
アメリカの現段階は、債権国としてのゴリ押しではなく「大きすぎてつぶせない」という債務者の方が強い開き直り論理になっている・・こういう段階の国は・デフォルト寸前のギリシャ同様で本来的な基軸通貨国ではありません。
アメリカの危機的現状に気づいていても学者はそれを遠慮があって言い出せないとしたら、権力に遠慮して本当のことを言えない学者なんて本当の学者と言えるのでしょうか?
紙幣大量発行国は貨幣の価値が下がるので、経済学の理論ではインフレになる筈ですが、日本の場合約20年間もゼロ金利・紙幣大量供給にもかかわらず何故デフレが続いているか・・国債を30兆円枠内で大分前から引き受けているにも拘らず一向にインフレになる気配がない現状に焦点を当てた議論が全くありません。
この点については、9/15/08「国債の無制限引き受けとインフレ1」February 22, 2012「為替相場と物価変動2(金融政策の限界2)」前後のコラムでも書きました。
あるいは/「2012/03/28日銀の国債引き受けとインフレ論1」以下でも連載しましたが、日本の場合、国際収支の黒字の範囲あるいはこれを少しうわ回る程度しか大量発行していないので、円がホンの少し安くなって景気が良くなった程度でした。
国債の残高のコラムで書きましたが、GDP比でもなく財政赤字比率でもない、国際収支との比較の問題です。
日本の場合、国際収支黒字のまま日銀引き受け・紙幣増刷ですから問題がいないのであって、国際収支赤字の国がこれをやると通貨の下落に直結します。
今回のギリシャ危機対策として欧州中央銀行が引き受ける案がマスコミ意見では最良とされていますが、ユーロ全体の下落に繋がっているのはその結果です。
旧来理論では説明不能だから黙っているのでしょうが、これは一国閉鎖経済からグローバル社会になったので世界全体で見なければならなくなったこと・・経済学の基準を変えて議論すべき事柄です。

基軸通貨とは3(逆ざや)


日本の場合、国債相場が1%周辺でアメリカ国債金利相場が2%近辺ですから為替差損リスクの外は1応1%の金利差があってさしあたりの損がありません。
(ドル下落リスクを考えれば、純粋金融取引としては5〜6%の金利差が欲しいところです)
中国の場合国内公定歩合でさえ6%前後ですから国内貸し出し金利・国債はその2%前後の上乗せ金利とすれば、アメリカ国債を買うのは6%前後の逆ざやになっている感じです。
逆ざや保有で大損をしている上にドル下落リスクを抱えるとなれば、中国にとってアメリカドルの保有はリスクどころかはっきりしたマイナスの関係ではないでしょうか?
http://jp.reuters.com/article/economicNews/idJPTK807868120120113によれば、2011年末の中国の外貨準備は
「[北京 13日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)が13日発表した2011年
末時点の中国の外貨準備は3兆1800億ドルと、9月末時点から206億ドル減少した。
外貨準備の減少は、貿易黒字の縮小と投機的資金の流出が影響している可能性がある。」
となっており、3兆1800億ドルの外貨準備の内アメリカUSドルの額が分りませんが、その8割前後とすれば、約2兆5千億〜3兆ドルにも上ることになります。
2兆5千億〜3兆ドルのアメリカ国債その他のドルを保有していると、年間6%の逆ざや=1500〜1800億ドルを毎年アメリカにかすめ取られているようなものです。
中国の対米貿易黒字は、http://www.gci-klug.jp/masutani/2011/01/14/011663.phpの記事によれば、
「対中赤字は依然、米国の貿易相手国の中では最も大きい数字で、1‐11月累計でも前年比53.7%増の2524億ドル。年率換算では2753億ドルとなり、2008年に記録された過去最高2680億ドルを突破すると見られている。」
とあります。
仮に中国の対米貿易黒字が年間2〜3000億ドルあっても年間1500〜1800億ドル分が逆ざやで損をする・・黒字が黙ってかすめ取られているのでは、実質1200〜1500億ドルしか黒字がなかったのと同じですし、その上保有ドル外貨が2兆5千〜3兆ドルもあるときに、毎年約1割アメリカドルが下落してしまうと2500〜3000億ドル前後も目減りしてしまい、何のために稼いでいるのか分らないほどの大損をしていることになります。
中国は貿易黒字によるUSドル保有増加の外に外資導入よるドル増加と人民元高防止のため・・逆から言えばドル買い支えのために大量にドルの保有が増えています。
この関係は、中国国内で高利で取得した資金をゼロ金利のUSドルに付け替えている関係ですから、モロに逆ざやの損をしていることになります。
アメリカから見れば、ゼロ金利で資金を取得した金融ブローカー・金融業者が、高利の中国に再び持ち込んで高利運用して儲けている関係です。
こういう無茶な関係(ドルの下落傾向と低金利状態でドル還流を誘導するの)はいくらアメリカが大量に商品を買ってくれるし、軍事力が怖いとは言っても、いつまでも続くとは思えません。
日本の場合も、約1%しかない金利差では、アメリカドルの大量印刷によるドル安政策が目に見えているのに、アメリカドルを大量に持ち続けるのは危険すぎるでしょう。
危険であってもアメリカに車など買って貰わねばならない以上、アメリカドルを貰うしかないのは分りますが、世界中から出来れば貰いたくないと思われている通貨はいつかは駄目になるのは明らかです。
日本の円は、世界中から持っていたいと思われている通貨だからこそ、日本は軍事力の裏付けがなく、世界最低金利でも、イザとなればいつも円高になるのです。
USドルはいつかは大暴落を演じることになる・・ギリシャ危機の大規模版になると思っていますが、暴落は何かに対する暴落ですからその対になって高騰する通貨があることになります。
ユーロは対極になり得ないことが今回の騒動ではっきりしましたので、その対極として暴騰するのは円でしょうか?
それとも人民元でしょうか?

基軸通貨とは2


円は表向きは基軸通貨ではありませんが、円を一旦ドルに替えているだけでドル名義で世界中の資金の流れを規定している状態です。
日本と主要国の金利差を以下の表で見て下さい。
以下はhttp://kakaku.com/gaikadepo/hikaku.htmlからのコピーです。

各国の主要政策金利の推移

2012年4月現在、円定期預金の金利は0.02%~0.5%程度です。
他の国と比較するとどうなのでしょうか。下のグラフで各国の政策金利を比較してみました。

各国の主要政策金利の推移

アメリカ米ドル         ユーロ    ユーロ             豪ドル豪ドル            NZドル  NZドル            南アランド    南アランド

プラザ合意以降タイなど東南アジア諸国で工業製品を生産して迂回輸出しているのと同じことを、紙幣ではアメリカドルの仮面をかぶってやっていると言っても良いでしょう。
今や世界経済資金の流れを変えてしまえる超大国・・「実質基軸通貨国」の地位を日本は誰も知らぬ間に獲得していたことが中国との金利差・・あるいは世界中の中央銀行との金利差で見ることが可能です。
基軸通貨国と言われるアメリカは、いくら財務省証券を発行してもデフォルトになる心配がないといわれますが、同じことは円建てで発行している日本国債にも言えることをMarch 25, 2012税の歴史6(商業税3)の終わりころに書きました。
純債務国に転落しているアメリカでは外国に国債を買って貰っているのでリーマンショックまでは上記表のとおり中国並みの高金利でした。
リーマンショックによってなりふり構わず金利を下げ、今でも金融緩和の連続ですが、(というよりは下げざるを得なくなった)その結果どうなるのでしょうか
基準金利がどうであれ、国債の入札価格(額面何%割れかが)が実質金利ですのでそれがどうなっているかの問題です。
今のところアメリカ財務省証券・10年もの国債金利は2%前後で推移している・・歴史的低水準のようです。
日本国債の最近の相場は1%出るかどうかという水準(4月10日の新発10年もの国債で0、95%との4月11日日経朝刊の記事)ですから、約1%の金利差しかありません。

中国の場合では4月10日に紹介したように公定歩合でさえ6%前後ですから、逆ざやも良いところです。

これではアメリカのインフレ政策によるドル下落リスクと合わせて外国人投資家は買い難いでしょう。
基軸通貨国かどうかは別として外国が国債を買ってくれなくなると大変な事態になりそうですが、アメリカは紙幣を刷って国内にバラまけば、国内でだぶついた資金・金融機関が購入することになります。
日本国債を日銀引き受けする日本の真似を始めたと言えるでしょうか?
ドルの還流がなくとも自前でドルを増刷するから良いと開き直った状態でしょうか?
日本の場合経常収支黒字の範囲内での日銀引き受けだから問題がないのですが、国際収支赤字のアメリカで日本の真似をするとドル下落が必至です。
この際ドルがいくら下落してもその結果貿易上有利になれば良い・・世界的通貨下落競争開始が始まったのでしょうか?
実は中国も日本もアメリカに商品を買ってもらう必要があるので対アメリカ貿易黒字分はそっくりアメリカ国債を買ってドルを買い支えるしかない状況に追い込まれていると思われます。
ドルは値下がりするのが分っているのですが、それでも目先の売上がなくなるのが怖い・・倒産しそうな大口顧客に売り続けているような状態です。
アメリカに輸出して稼いだアメリカドルをユーロ両替するとアメリカは次の輸入資金がなくなるので買ってくれなくなります。
その分EUで買ってくれれば良いのですが、EUがアメリカの代わりに大量に輸入するには力不足です。
EUが買ってくれる限度で外貨準備をドルからユーロに徐々に中国はシフトして来たのですが、その結果がギリシャ危機に始まる欧州経済縮小・ユーロの下落でした。
外貨準備をどこの国の外貨で保有するかは、貿易黒字にしてくれる(相手から見れば赤字の)限度で、儲けさせてくれる国の外貨を持つしかないということでしょう。
そして儲ければ儲けるほど、赤字が累積する相手の通貨価値の下落リスクが高まるので、相手通貨で保有するリスクが高まるジレンマから逃れられません。

(ウマい話はないのです)






基軸通貨とは1

日銀の国債引き受けに関連して金利動向・貨幣の強弱に関心を持った方が多かったと思います。
世界の金利分布を見ると、豊富な資金を有する国には資金需要が少ないことから需給の関係で最低金利を維持しているので資金不足国は低金利資金に頼る構図ですから、経済の世界では最大の資金国が基本的な力を持つことになり、資金不足国はその動き・・金利動向に従うしかない現実を表しています。
中国は豊富な外貨準備があっても、まだ世界中から企業誘致・投資資金を導入し続けないと経済が回って行かない国です。
公表されていないものの実際には昨年あたりからバブル崩壊・・それも日本の崩壊よりは激しい崩壊が始まっていることは明らかですが、それでも金利を下げられない状態です。
以下は日本と中国の金利差です。
今は公定歩合と言わずに政策金利と言っていますが・・日銀が銀行に貸し出す基準金利と思えば良いでしょう。
http://www.gaitame.com/market/japan.htmlからの引用です。
国 名   政策金利名      値       増減幅 発表日    前回値
日本O/N Call Rate Target 0.00%~0.10%  -  2012/3/13  0.00%~0.10%
Basic Loan Rate       0.30%      -   2009/1/22    0.30%

O/N Call Rate Target・・・無担保コールレート(オーバーナイト物)
Basic Loan Rate・・・基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)

www.chinawork.co.jp/e-kinyu/2-b-b-kinri.htm – よりの引用です。

人民元金利

人民元預金金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目 金利調整前 金利調整後
普通預金 0.50 0.50
定期預金 満期型
3カ月 2.85 3.10(+0.25)
半年 3.05 3.30(+0.25)
1年 3.25 3.50(+0.25)
2年 4.15 4.40(+0.25)
3年 4.75 5.00(+0.25)
5年 5.25 5.50(+0.25)
総合型
(普通・定期兼用型) 1年定期満期型に準拠。
同ランク金利の6割で金利を計上
出所:中国人民銀行

人民元貸出金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目      期  間      調整前       調整後
流動資金貸出 6カ月(6ヵ月含む)     5.85       6.10(+0.25)
1年(1年含む)            6.31      6.56(+0.25)
固定資産貸出 1-3年(3年含む)    6.40      6.65(+0.25)
3-5年(5年含む)           6.65      6.90(+0.25)
5年以上                6.80      7.05(+0.25)
出所:中国人民銀行
注:貸出の条件①資本金が払い込み済み②信用ランク査定2Aまたは3A

以上の比較によれば日中の(公定歩合)金利差は約6%になります。
日本は潤沢な資金を前提に世界最低金利を提供出来る・・商品で言えば激安・最低価格提供ですから、日本の円は世界を席巻していることが分ります。
安い商品の場合、品質が落ちることがありますが、紙幣の場合品質差がないので利用コストは金利次第です。
中国は外貨準備が世界1としても、上記のとおりの高金利でないと資金を提供出来ないのですから、紙幣供給に関する国際競争力の差は明らかです。
対外純債権額では日本が世界一で中国がまだまだ遠く及ばないのは、中国の保有する外貨の内実は日本その他先進国が中国で投資した資金がドル外貨に変換されている部分が多いことを物語っています。
日本の場合外資導入によって経済発展・貿易黒字になったのではなく自前の資本で貿易黒字を稼いで来たのですが、中国の場合日本その他の外資が奔流のように流れ込んで、これが現地で全部中国人民元に両替しますので、中国政府はドルを大量に手に入れています。
トヨタやセブンイレブンが中国進出するときに日本国内で0%で借金して得た円・・例えば1000億円をドルに替えて、そのドルを中国に持ち込んで人民元に替えて中国の工場用地・店舗工事資金などを手当てします。
中国は入手したドルを市場で売ると元が上がって困るので、アメリカの国債を買うしかないのでアメリカ国債の保有が増える仕組みです。
一旦中国から外資引き上げが起きるとこの逆回転になります。
ギリシャ危機で欧米からの資金流入が細っただけで、昨年元が弱含みになったのはこの仕組みによるものです。
元は恒常的外資流入によって成り立っているとすら言えるでしょう。
ギリシャ危機で、中国はギリシャの救世主のごとく資金投入を一旦ほのめかしましたが・・あるいは人民元の内容を知らないマスコミの勝手な願望だったかも知れません。

結局何も出来ないで終わっているのは、欧州への資金拠出どころか自分の足下に火が着いていて、欧州からの資金引き上げにびくびくしている状態でしたから当然です。

上記のように中国では既にバブルが崩壊している状況にも拘らず金利引き下げに踏み切れないのは、海外からの投資資金の引き上げを恐れている状態を表しています。

国際収支4(赤字を何年続けられるか)

以上書いて来たとおり、政府の財政赤字がいくら累積しようとも国内資金で賄っている限り・・国際収支のバランスが取れている限り問題がないのですが、(国際収支の赤字と政府部門財政赤字とはまるで関係のないことです)一定期間国際収支が赤字でも良いのではないかと思っています。
高齢者は過去に十分働いて蓄積して来たのだから、過去の蓄積の取り崩し(フロー収支では赤字生活)をしながら今の収入以上の生活をする権利があると思っていますが、これを日本全体に及ぼしても(個人的には蓄積のない人もいるでしょうから、それは所得再分配によって)多分ある程度許されると思われます。
これを国全体で見れば、増税であれ国債発行によるものであれ、その年の経常収支トントンまで使うのは現在のフロー収入範囲内の生活をしていることになり、これを越えて支出をして行くとなれば過去の蓄積の食いつぶしの始まりとなります。
ちなみにGDPの範囲内の支出という基準では、植木の手入れ、介護などいろんな働きがカウントされますが、これは繰り返し書いているように対外収入を生み出す働きではなく個人で言えば家庭内労働をお互いに外注して収入にカウントしているのと同じですから、意味がありません。
植木を年に1回手入れしてもらうよりは年2回の方が生活レベルが上がりますし、美容院も2ヶ月に1回よりも1ヶ月に1回の方が気持ちがいいし、デイサービスでの入浴も毎日の方が良いなどサービス業の付加価値が増えます。
サービス内容が良くなって国内総生産が増えても、対外的に収入(貿易収支面では逆に赤字要因になるでしょう)が増える訳ではありません。
もともと国債残高の累積に対する国民の心配・議論が国際収支赤字累積・・対外純債務国になってしまうのではないかの心配から始まっている以上は、国と民間・個人支出の総和がその年の収入を越えているかどうかについては、サービスの付加価値もプラスして行く国内総生産よりは貿易収支トントンを基準にするしかありません。
貿易赤字になれば、結果的にその年の稼ぎ・収入以上に支出(生活)したことになります。
現役労働者だけを基準にすれば貿易収支を基準にすべきでしょうが、高齢者の場合過去の蓄積による年金や利子配当収入範囲内の生活も健全収支の基準でしょうから、利子配当収入・貿易サービス収支も含めた経常収支の収支トントンが健全財政の基準になるべきです。
国際収支赤字額が対外純債権額=蓄積の何%かによって持続性が計れることになりますが、日本の対外蓄積の総和は対外純債権額になるでしょうから、年に対外純債権の100分の1程度ずつ食いつぶして行くならば、100年持ちますが10分の1ならば10年で干上がります。
ただ、貿易収支トントンを基準にすればそのときの本当の働きですが、経常収支は過去の蓄積の収益(利子配当所得や資本の売却)を含めたものですから、実は経常収支トントンまで使い切るときには、そのトキから先輩(現役高齢者だけではなく死亡した先輩も含めた)の過去の働きに頼り始めていることになるので不健全経済の始まりです。
将来国際収支赤字で大変なことになると警鐘を鳴らすならば、漠然と不安感を煽るだけではなく、国民の総意によって所得の再分配をするにしても、どの水準までの底上げを図れば国全体でどれだけの資金=予算規模が要り、その結果国際収支がどうなるかの見通しを示すことが先決です。
増税によるのであれ国債によるのであれ、どの程度の生活水準にすれば貿易収支トントンになり、どの程度であればそれ以内(黒字)か、以上(赤字)かを明らかにする研究調査こそが求められます。
例えば1割支出が多すぎるとすれば、インフラで言えば舗装道路延長・公民館その他全体に一割規模縮小・サービス分野で言えばどのサービスの回数を減らすなどすればどうなるなどの試算の提供が求められます。
国に必要な費用を税で取ろうと国債で取ろうと国際収支の結果は同じことですから、所得再分配のレベル・・国民が今年あるいは近い将来収入の範囲内で生活する場合あるいは、どのくらいまで収入以上の生活をさせるように所得再分配することが可能・・妥当かのデータ提供こそが経済学者・エコノミストの使命でしょう。
国民が収入の範囲内で生活するならば、そのためにどれだけ国債を発行しても対外的には何の困ったことも起きません。
どの程度の社会保障経費を使うとどの程度の国際収支の赤字見通しになり、純債務国に転落するまで何年くらい続けられるのかを説明して欲しいと思っています。
「この程度の生活ならば対外純債権残高の数%の赤字で済み、対外債権がなくなるまで30年以上もあります」と言うならば国民は安心です。
4月6日に紹介した日経朝刊の経済教室では、図表を示してこの先僅かな期間(5〜6年だったかな?)で所得収支黒字分を貿易赤字が食いつぶして行く見通しが紹介されています。
その論文が主張すべき結論は、現状の生活水準維持では今後何年で経常収支赤字に転落するから、「生活レベルをどの程度落とす方向へ調整すべきだ」ということであれば一貫していました。
ところが、上記論文では、国際収支の赤字転落見通しを紙面のほぼ全体で論じながら、これを避けるために一日も早く国債に頼らず増税すべきだという結論ですから、不思議な論理です。
ちなみに貿易黒字の間にインフラ整備・・例えば公民館は博物館や道路を作っておけばどうなるか・・設備は作ればその補修費や更新コストがかるので黒字の(お金のある)間に作っておけば後世の人が助かるものではありません。
仮に経済規模が10年後には今の1割縮小にするしかないとすれば、今から10分の9に縮小しても無駄がない前提で公的設備・市街規模などを計画して行く必要があります。

免責事項:

私は弁護士ですが、このコラムは帰宅後ちょっとした時間にニュース等に触発されて思いつくまま随想的に書いているだけで、「弁護士としての専門的見地からの意見」ではありません。

私がその時に知っている曖昧な知識を下に書いているだけで、それぞれのテーマについて裏付け的調査・判例や政省令〜規則ガイドライン等を調べる時間もないので、うろ覚えのまま書いていることがほとんどです。

引用データ等もネット検索で出たものを安易に引用することが多く、吟味検証されたものでないために一方の立場に偏っている場合もあり、記憶だけで書いたものはデータや指導的判例学説等と違っている場合もあります。

一言でいえば、ここで書いた意見は「仕事」として書いているのではありませんので、『責任』を持てません。

また、個別の法律相談の回答ではありませんので、具体的事件処理にあたってはこのコラムの意見がそのまま通用しませんので、必ず別の弁護士等に依頼してその弁護士の意見に従って処理されるようにしてください。

このコラムは法律家ではあるが私の主観的関心・印象をそのまま書いている程度・客観的裏付けに基づかない雑感に過ぎないレベルと理解してお読みください。