日銀の国債引き受けとインフレ3

先進国ではお金の量に比例して消費が増えるのは(まだお金さえあれば何でも買いたい人が多い)低所得層が中心ですから、バブル崩壊後消費の下支えのために子供手当や社会保障の充実・・最低賃金のアップなどバラマキが進んだのは経済合理性がありました。
中流以上の階層にとっては、収入が1割増えてもその殆どが貯蓄に回ってしまい消費があまり増えません。
ですから増税は景気を冷やすどころか、収入の何割を貯蓄してしまいお金を使わない階層から税でむしり取って政府が全部使い切る方が消費刺激になるという意見をSeptember30 ,2011「増税と景気効果2」前後で書きました。
景気対策・・と言っても、上記の通り底辺層に対する社会保障の底上げ程度では、供給能力過剰下での生産維持・下支え程度でしかなりませんので、企業は金利が安いからと言って借金してまで設備投資をしません。
ですから、金融緩和や紙幣の大量発行よりは底辺層に対する紙幣バラまき・・生活保護水準等福祉水準の引き上げやサラ金の金利引き下げの方が消費下支え効果があります。
(これがバブル崩壊後サラ金に対する高金利を違法とする判例・不当利得関連の債務者保護判例が進んだ政治・経済的背景でしょう)
農産物と違って仮に生産が足りなければ工業製品は増産が簡単ですし、それどころか我が国はバブル崩壊以降供給能力過剰で苦しんでいるのですから、仮にコーヒーを2倍飲んでもコーラや酒を多めに飲んでも業者は生産設備をフル稼働に近づけるだけで値上がりまではしません。
デフレ現象の原因はこれまで書いているとおり、賃金・生活水準で10倍格差のある中国その他新興国からの低価格品の流入にあるのであって、我が国の場合金利や紙幣量をいじってもどうなるものでもありません。
企業の方も国内投資しても儲けられないのが分っているので、いくら金利を安く・・ゼロ金利にしても、あるいは量的緩和をしても借金して投資する気持ちがありません。
3月23日の日経新聞朝刊社説には企業の手元流動性が60兆円と出ていましたが、企業は儲けるタネがないので資金があっても使い切れないで困っている状態です。
銀行も預金ばかり集まっても貸す相手がいない・・借りたい人が少ない状態ですから、金融機能が縮小して国債を買っている状態になっています。
銀行が本来の金融機能を果たせなくなっていることから国債に活路を見出している状態・・銀行は最早存在意義をなくしているのではないかという意見を09/19/08「銀行の存在意義6(融資機能の衰退3)」 前後で連載しました。
例えば、ゼロ金利どころかマイナス金利にしても車やテレビの販売が増える見込みがなければ・・あるいは鉄鋼需要がないのに製鉄の増産、車やテレビ製造の増産投資しません。
家賃を無料にしてくれても店員の給料分も売れないようなときには、店舗を借りる人がいないし、無利息で貸してくれても採算が取れる見込みがなければ、デパートも進出投資しないでしょう。
現在の我が国では供給能力過剰社会・・言い換えれば(長期にわたる貿易収支・経常収支黒字の蓄積の結果)資金余剰社会になっているので、従来の経済学理論とは異なり紙幣を濫発しても今更インフレにはなりません。
ではその紙幣がどこへ行くのかと言うと、円キャリー取引で海外流出して行きます。
ゼロ金利でも借りないほど資金余剰の国もあれば・・だぶついた資金を借りたい国・・まだ供給不足社会は世界中にいくらでもあります。
我が国の底辺層同様に新興国あるいは貧困国では、需要はいくらでもあるのに購買力が足りない国が圧倒的に多いので、そこへ資金が流れて行くのは自然であり、理にかなったことです。
旧来または現在の経済学者は、供給不足下の国内完結経済を前提に紙幣が増えればインフレになるとバカの一つ覚えのように主張するのですが、先進国では供給・生産力過剰社会ですので、紙幣垂れ流しが国内だけでのだぶつきから需要のある海外への垂れ流しになって、これを受けた海外でインフレが進みます。
日本の紙幣垂れ流しがアメリカや中国のインフレ、あるいは国際的資源高騰の遠因になっていることを03/20/08「サブプライム問題と世界経済5(低金利競争1)」以下のコラムで書きました。

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