EUの中国離れ→(EU弱体化と対日EPA・フランス混迷)2

対EUEPAに関する政府発表は以下の通りです。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ie/page22_003091.html

(参考)
日本のEPA・FTAこれまで21か国・地域と18の経済連携協定(EPA)が発効済・署名
済(2018年7月現在)。
EUの最近のEPA・FTA・韓国:2010年10月署名・カナダ:2016年10月署名
日・EU経済連携協定
背景
<経緯>
2013年 3月 交渉開始決定
2017年 7月 大枠合意
2017年 12月 交渉妥結
2018年 7月 署名
本協定はアベノミクスの成長戦略の重要な柱(総理施政方針演説等)。
日本の実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ,雇用は約0.5%(約29万人)増加の見込み。
(内閣官房TPP等政府対策本部による試算)
自由で公正なルールに基づく,21世紀の経済秩序のモデル
(国有企業,知的財産,規制協力等)。
世界GDPの約3割,世界貿易の約4割を占める世界最大級の自由な先進経済圏が誕生。
(EUのGDPは17.3兆ドル(世界GDPの21.7%)。日本のGDPは4.9兆ドル(世界GDPの6.1%)。)
⇒ 早期締結は,日EUが引き続き貿易自由化の旗手として世界に範を示し続けるとの力
強いメッセージ。
⇒ 日EU双方の経済界には早期締結への期待あり。日EU首脳間でも早期発効を目指すことを繰り返し確認している。EU側は,12月13日に欧州議会,20日に理事会の承認を得られる見込み。
(カタイネン欧州委員会副委員長による10月23日の記者会見での発言)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181208/k10011739531000.html

日本とEUの経済連携協定 国会で承認 来年2月発効へ
2018年12月8日 6時04分
協定の発効に向けて国会承認を求める議案は、6日の参議院外交防衛委員会で可決され、8日未明開かれた参議院本会議で採決が行われました。
その結果、自民・公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決・承認されました。
EU側は今月下旬に承認手続きを終える見通しで、協定は、来年2月に発効されることになります。

立憲民主などの野党はいつも何かと「この点がはっきりしないと賛同できない」と不満を言って(ケチをつけては?)は日本にメリットのアリそうな政治は結果的いつも反対であり、少しでも先送りしたい姿勢です。
働き方改革であれ、外国人労働者拡大であれ、法律段階では一定の方向へ踏み切るかどうかを決めるのが中心テーマであり、方向性・大綱を決めるのが政治家・政党の論じるべき争点です。
このために多くの法律では施行後数〜5年程度で運用実績をみて再考する規定が置かれているのが普通です。
ですから細かいデータが違っていることは法案反対の理由にはなりません。
神様のような予測できないのですから、枝葉末節のデータの粗探し・・そのデータが整うまでは議論できないとして審議拒否する・・そんなことを言っている・・百年河清を待つような議論・反対のための反対・・ケチをつける類ではないでしょうか。
最後はいつも決まりの不信任決議案提出等での時間稼ぎですから、そんなことをするために国会議員がいるのか不思議に思う人の方が多いでしょう。
これではどこの国のための運動なのか?という疑念が起きて国民の支持が減る一方でしょう。
EUの混迷に戻ります。
フランスではこの10日間ほどマクロン下ろしの大騒動が連日報道されている状態です。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12189-20161909025/
2018年12月08日 15時00分

閣僚は次々と辞任し、パリでは激しい大規模デモ 低支持率に悩むマクロン大統領の行く末
昨年の5月に39歳の若さでフランス大統領に就いたフランスのエマニュエル=マクロン氏が燃料税増税方針を先月、発表した。それに端を発して抗議デモが全国各地で勃発し、、パリで一部が暴徒化し、建物が破壊され車両が炎上する事態にまで発展した。
マクロン氏は減税などで大企業や富裕層を優遇してきた。マクロン氏は「金持ち大統領」と批判されてきた。庶民の怒りは頂点に達し、社会の不平等に対する不満が爆発。支持率は発足一年半年で66%あった支持率が12月4日の調査では23%まで落ちた。

この騒動を受けて、数日前マクロン政府は来年1月1日から始まる予定だった燃料税アップ撤回発表していますが、それでも騒動が収まらず12月8日の週末デモが強行されたとニュースになっています。
https://www.asahi.co.jp/webnews/ann_i_000142645.html

フランス 政権へ不満爆発でデモ再び 1300人超拘束
12/9 06:20
燃料税の増税をきっかけに始まったデモは、政府が増税の見送りを発表しても暴動が収まる気配はなく、事態収束の見通しは全く立っていません。

EUの中国離れ→親日化(ゴーン事件の背景1)

ゴーン逮捕は単なる刑事事件ではなく深い権力闘争・・ひいては日仏国益の絡んだ大きな政治闘争を背景にしたもの」と一般に言われています。
私個人的には政治的思惑など抜きに検察が法規違反を純粋司法的見地から立件したものと信じたいですが、捜査中で違法行為内容不明で合理的な論評不能なためもあってか?メデイア界ではこれだけの大事件になんの論評もしないわけにいかないからでしょうか?
政府首脳とすり合わせがあってもおかしくないという憶測中心のメデイア界の意見が広がっている印象です。
ただしニュースでは10日午後起訴と出ていますので、今後は憶測ではなく起訴状に対する専門的論評が可能になってくるでしょう。
ゴーン事件については、従来以下に紹介する記事のような憶測解説が一般的でしたので、NHK意見を代表として紹介しておきます。
全文引用では長くなりますので「はしょり」ながら紹介します。
NHKが報じている以上は、当たり障りのない大方の意見でしょうし、内容を見ると(筆者としては独自意見のつもりでしょうから、失礼かもしれませんが結果から見ると)いろんな単発的意見の集大成(まとめ)のような印象です。
全文NHKからの部分引用です。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/nissan_ghosn/
2018 11 20

ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」
井上 久男ジャーナリスト
ゴーン会長は、日産とルノーのトップとして、それぞれの会社の自主性を保ちながら、生産や調達などの面で連携の成果を出してきました。三菱自動車も事実上の傘下に収め「3社連合」を率いています。ゴーン会長が不在になれば、アライアンスにどのような影響が及ぶかが注目されます。
フランス政府は日産の製造をルノー工場に移行させる強引な戦略が今回の社内闘争の引き金になっていると噂されています。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58561?page=2
両社の提携に転機が訪れたのが2015年だ。ルノーの筆頭株主である仏政府が2年以上保有する株主の議決権を2倍にするフロランジュ法を適用して、ルノーへの経営の関与を高めようとした。日産は、仏政府がルノーへの関与を高めれば、間接的に自社にも影響が及ぶと判断、仏政府への対抗策を講じた。その一つが、ルノーと日産の提携契約の見直しだった。
見直したのは出資比率引き上げの際の手続きだった。現在、ルノーは日産に43・4%、日産はルノーに15%、それぞれ出資して株式を持ち合っている。日本の会社法上、日産がルノー株をさらに10%買い増して25%以上の出資比率にすれば、ルノーの日産に対する議決権が消滅する。
これまでの契約では日産がルノーへの出資比率を高める場合には、ルノー取締役会の承認も必要としていたのを、契約からその条項を消すことでルノーと合意。この契約変更によって、日産取締役会の決議のみでルノー株を買い増すことができるようになった。仏政府の影響が日産の経営に及んできた場合、株式買い増しを行なってルノーの議決権を消すことが狙いだった。
フランスが突きつけた「3つの条件」
2018年に入り、「ポスト・ゴーン」を巡って仏政府が動き始めた。日産は16年に三菱自動車を傘下に収め、日産・ルノー・三菱の3社アライアンスが誕生。その後17年にはゴーン氏は日産社長兼CEOの座を西川廣人氏に譲った。ゴーン氏は現在、日産、三菱両社の会長とルノーCEO兼会長を兼務している。
ゴーン氏のルノー会長兼CEOの任期は18年までだったことから、ルノーCEOを退任すれば、このBV会長職も手放さなければならなかった。
こうした状況下で、フランスのマクロン大統領は、ゴーン氏にルノーCEOの任期を2022年までに延長する代わりに次の3つの条件を突きつけた。
① ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにする
② 後継者を育てる
③ ルノーの現在の中期経営計画を達成させる
ゴーン氏はこの条件を呑んでルノーCEO職に再任された。
この条件①があることから、ルノーと日産が経営統合に近い形で関係をさらに深めるのではないか、といった見方が強まっていた。持ち株会社の下にルノー、日産、三菱をぶら下げるといった見方も出ていた。こうした関係強化策をゴーン氏は18年度中にもまとめる動きを見せていた。
仏政府が特にこだわっていたのは条件①だ。なぜなら、今のルノーは日産からの配当や最新技術を当てにしなければやっていけないほど経営体力も商品力も劣化している。日産なしではやっていない会社になってしまった。見方を変えれば、日産にとってルノーが「重荷」になりつつあった。
日産の西川CEOは、経営の独自性が維持できなくなるとして、これ以上ルノーの支配が強まることを嫌った。提携時にルノーから8000億円近い支援をもらったが、この20年近い関係の中で配当金としてルノーに「恩返し」しており、その額は優に8000億円を上回っている。
社員らの「反発」
仏政府やルノーが強引に日産への支配力を強めれば、西川CEOには、前述したようにルノー株を買い増して日産への議決権を消滅させる強硬策も視野に入っていたと見られる。この強硬策を実施するには、日産の取締役会での多数決で、「西川派」を過半数にしなければならない。
西川派は、坂本氏、井原氏、豊田氏と見られ、西川氏自身の票を入れて4票しかなく過半数を取れない。ゴーン氏はCEOを西川氏に譲ったとはいえ、取締役会メンバーは巧みに構成し、自分の意向が通る人選にしていた。
極めつけは、グレッグ・ケリー氏の存在だ。「ケリー氏は代表権を持つ取締役でありながら日産で勤務している形跡がなく、実際には海外で牧場経営をしている。ゴーン氏が公私混同で会社の金を使うための筋書きをアドバイスするなどの『悪知恵袋』」(同)と見られている。
今回の事件でも、ケリー氏が不正に深く関与したとされている。ゴーン氏とケリー氏を日産取締役会の中から追い払えば、西川氏は過半数を取れると踏んだ、と見られる。
昨年に発覚した完成車検査不正問題も、日産の社内不満分子が国土交通省に情報提供したことが発端と見られ、車検制度にもつながる時代遅れの古い制度を残したい国土交通省が、それに乗りかかって日産を叩いた。
社内の不満は、ゴーン氏ら一部の外国人が高給を取り、会社の金で贅沢三昧なのに、現場への投資は怠っていることへの反発であった。ゴーン氏自身が長期政権で権力の座に長くいて、腐り始めていたことは間違いない。
社内の不満を放置していれば、不満の矛先はいずれ西川氏自身に向かってくる……西川氏サイドはそう判断したのではないか。真相解明には時間がかかるだろうが、それが今回の事件の背景にあるというのが、筆者の見方である。

欧米と日本の対応3(EU→求心力低下)

トルコが自立したいのは当然ですが、これを表面化した手始めは難民急増に対する取り扱いに関するEUとの対等な(強気)交渉でした。
以下は日経新聞記事です。
http://www.nikkei.com/article/DG 2016/4/4 21:39
「2015年にシリアなどからトルコを経由してギリシャに渡った難民・移民の数は85万人に達する。最大経由地のトルコとEUは、今年3月、トルコが ギリシャに渡った難民・移民の送還に応じる一方、EU各国がトルコ国内の難民キャンプからシリア難民を直接受け入れることで合意した。
送還に応じる見返りに、EUはトルコに対する資金支援を60億ユーロ(約7600億円)に倍増させるほか、トルコ国民がEUに渡航する際の査証(ビザ)免除措置の導入を6月へ前倒しし、トルコのEU加盟交渉も加速させることを決めた。」
大手新聞はなおトルコのEU加盟希望に脈があるかのように書いています・・大手はうっかりしたことを書けないのは仕方がないですが・・、トルコの本音が変わって来たと読むべきでしょう。
ましてイギリスの離脱方向が出た今となっては、無理してEUに入れてもらう必要性が減じたことは確かです。
トルコはクリミヤ戦争で西欧列強の応援を受けて以来西欧列強に従属しっぱなしの屈辱の歴史でしたが、ここに来て正面の敵であるロシアとの関係修復・・ロシアの背後にいて日露戦争で勝ったことのある大国日本との関係強化など、中東の混迷もあって、地域大国としての復活・・独立志向が明白化してきました。
ロシアも国内のトルコ系民族の不服従(勇猛で知られるチェチェンその他中央アジアに広がる少数民族はトルコ系です)に苦しんでいるので、トルコとの修復は望むところです。
この動きに面白くない国々による、歴史的仇敵であるロシアとの仲違いを引き起こす陰謀(・・ロシア軍機の撃墜事件は何故起きたか闇の中でしたが、賢明にも双方感情的にならずにうまく修復してしまいました)だけでなく周辺国からも引き放す陰謀画策が激しくなり、昨年からイキナリトルコ国内でテロが頻発し、エルドアン大統領批判が大きく報道されるようになって来た原因とも言われます。
唆しがあれば直ぐに乗る中韓とは違い・・ロシアもトルコも冷静なので、欧米の陰謀や唆しに簡単に乗らないので、今のところトルコ、ロシアの関係悪化は見られません。
応酬の一致団結による対外政治力発揮効果を見てみると、確かにサミット7カ国首脳会議に西欧から、6人も出席出来るので数の上で有利になっていますが、加入者にとって見るとメリットがあるかと言う視点が必要です。
加入国が27カ国の場合、自国意見は27分の1しか反映しない上に小国は国力比例してもっと発言力が低く・・言わば独仏の官僚主導になってしまいます。
その代わり小国・・生活水準の低い中東欧やバルカン等諸国にとっては、文化度の高い英仏独に自由に出入り出来るメリットは大きなモノがありますので、自分の意見があまりとおらなくとも不満はそれほど大きくはありません。
日本にアジア諸国の人が出稼ぎに来るのは、政治意見を言えず言葉が不自由でもそれ以上のメリットがあるからです。
イギリスにとっては独仏とは対等者間であるのに文化基盤の違う(大陸と海洋民族の大きな生活習慣のが違い・・独仏とポーランドとの違いより大きいでしょう)独仏主導で自国の生活ルールの端々まで口出しされる不愉快と引き換えに独仏と自由に往来出来ることによる生活水準向上メリットは多くありません。
イギリスの発言力は大国なので27分の1ではなく2〜3倍の27分の3あったとしても独仏連合に多数決で負ける点は同じです。
イギリス以外は皆大陸諸国・・大陸的画一的処理方式が海洋国イギリスの生活方式にあわないのに、いつも多数で押しきられてしまう・・この状況にイギリス人の不満がたまっていたと見られます。
イギリス国民投票の結果は、トルコの加盟意欲にも大きな影響を与え・・EUの拡張主義・画一処理が曲がり角に来たことを世界に示した大事件であるからこそEU・・マスコミが焦っているのでしょう。
EUの設立理念が自由貿易促進ならば、・・・「民族の個性を残したまま関税さえ下げて行けば良いのでないか?」と言うのが、イギリス国民の思考方式でしょうから、何故何もかも1つの国になる・・民族移動の自由まで認める必要があるのか?と言う疑問です。
この辺が大陸の観念論・・中央集権的的画一処理優先発想とイギリスの経験論・・必要が生じてから(つぎはぎ的に?)考えて行けば良いという意識・・私たちも海洋民族として共感出来るところです。

欧米と日本の対応2(EU→一体化・対外障壁)

今回のイギリスの国民投票結果によるEU離脱騒動・・マスコミ報道によれば、EUはグローバリズムの本家みたいな印象を受けます。
しかし、EU結成〜拡大の流れを見ると、グループに入った各国別の貿易障壁を低くする努力・・低くした結果を他の国にも解放する努力をやめる方向へ努力して来たことが分ります。
EU参加のメリットを周辺国に強調することは、結果的に参加しない国との差を強化することに繋がって来たからです。
吸収合併の繰り返しによる大規模市場メリット強化=域内外差の強化をして来たのですから、その目的は、内外格差・・外堀的国境の拡大政策(戦前のブロック経済の強化政策)・・帝政ロシアの版図拡大・・東進〜南進政策の焼き直しです。
19世紀ロシア南進の衝突・限界点がいわゆるクリミア戦争でしたが、今回西欧による東進の衝突・限界点がウクライナであり、ロシアによるクリミア編入事件でした。
以前ロシアのクリミヤ編入に関してどこかに書きましたが、ウクライナはロシア民族の故地・・発祥の地ですからこの地をEUに取り込まれることは現在でもロシアにとって、譲れない境界線と言うことでしょう。
西欧諸国が世界の共通市場化・グローバル化を目指しているのであれば、国の合体ではなくWTOの進行を図れば良いのです。
国境の壁を低くするよりは、自分の市場規模を大きくする・・内部自由化に邁進するのは、国の内外の障壁を低くする運動とは矛盾します。
EU結成進行と同時にWTO交渉が意図的にサボタージュ・停滞してしまった原因ですし、他方で自己市場規模拡大=EU拡大を続け、EUに入っているかどうかで大きな差を設ける・・戦前植民地ごとのブロック化の焼き直し・・ブロック経済拡大強化こそがEUの目標であったことになります。
(June 16, 2016「国際政治力学流動化5(ウルグアイラウンド中断→FTA)」で、ウルグアイラウンドの失敗・・その後の停滞はEU拡大促進と裏腹の関係にあることを書きました)
バルカン諸国で言えば、巨大市場のアメリカも日本も中国も遠過ぎる・・隣国がEUに入って自国が入らないままですと陸続きの対西欧貿易で大きな格差・不利が生じます・・この脅しを利用して隣接の中東欧諸国の加入希望を煽り・・当然国際政治問題でも、西欧の主張に反対出来ないので国際政治力発揮戦略にもなります。
古来から強国や豊かな国が誕生すると周辺国は競って使節団を送って来た所以ですが、多くは「交際しましょう」と言う程度の引力であって、吸収合併まで強制するものではありませんでした。
TPPは通商条約参加であって,アメリカ国内の州の1つになれと言うものではありません。
EU加盟勧誘は、武力による強制ではありませんが、貿易交渉の不利益を餌に事実上吸収合併を強制したものです。
使節を送って文化影響を受けるのと吸収されて支配が直截及ぶのとでは、周辺民族に対する衝撃度がまるで違いますが、EUは核となる英独仏等が予め決めた先進国ルールをそのまま受入れない限り加入を認めない強硬な仕組みです。
言わば軍事占領よりも(古来から民族支配の場合総督を於いて支配地の文化に応じた別の法制度を執行するのが普通でした)強力な強制でした。
私的理解によればこれは大陸的・・仏独的中央集権支配の理解でことが進んだものと想定されます。
EU離脱騒動が始まって以来ちょこちょこと書いていますが、海洋民族・・経験主義の(ある程度ルーズに決めて行きたい)イギリスが何でもキチキチと決めて行く独仏的官僚主導政治に我慢出来なくなったのではないかと言う理解です。
軍事行動出来る限りの周辺国を際限なく吸収合併して来て属国的併存を許さなかったのは、アジアでは秦の始皇帝の統一国家であり、その次にはモンゴルです。
その後の清朝も中共政権もこの系譜を引いていて、軍事力の及ぶ限り出来れば直截支配・・最大限勢力拡大したいことから、少しでも力をつけた思うと対外膨張策に出たくなるのです。
我が国では古来から生物に多様性があることを前提にそれぞれを大切にする「八百万の神」の精神でやってきましたし、封建制と言われる徳川政権に限らず古来から基本は中央集権よりも地域にそれぞれの神がいる・・間接統治社会です。
西欧の人道主義もその基本は民族にも多様性があり、併存しながら共存して行くのが良いとされて来た筈です。
多様な民族の共存のあり方としての国際ルール・・グローバル化のあり方に関する議論で多様な意見を尊重しつつ決めて行くためにガット→WTOが運営されて来たのです。
EU結成は多様性を前提にするWTO交渉・・粘り強く交渉する努力を放棄して、日々の生活ルールまで一体運営に参加・・吸収合併に応じる国だけの小宇宙を作里、加盟しない国を不利益に扱う思想でやって来たように見えます。
イギリス国民が離脱の意思表示をすると激しくその不利益を強調するのはその対の関係です。
単なる貿易協定ではなく、準国内扱いする以上は時間の経過で日常的生活ルールまで干渉するようになって行きます。
この不満を回避するために最低基準を「キリスト教国」と言う枠をつけたつもりでしょうから、トルコに対しては理由なき理由をつけては加入を長年認めませんでした。
・・この1年程度の動きによれば、トルコは熱望していたEU加盟を諦めて・・見切りを付けて?EUとは(ぺこぺこするのをやめて)是是非の交渉相手として行くことに方針を決めた可能性があります。

欧米と日本の対応1(EU→大規模化)

石炭鉄鋼連盟. EC→EECに始まるEU結成は、元はと言えば戦後米国に対する劣勢挽回のために構想されたものですが、先ず資源から入った点が象徴的です。
第1次〜2次世界大戦は資源争奪戦争(日本はABCD包囲網に対して、「油の1滴、血の1滴」と言う状態で戦端を開くしかないところに追いつめられました)でもあったので、資源確保が第一条件だったのでしょう。
第二次世界大戦時には石油の時代に入ってましたが、西欧諸国は石油産出地である植民地を次第に失って行く過程・・たとえば中東での利権が次々とアメリカのゴリ押し・・植民地支配批判の名分の元に?アメリカに奪われ続ける時代が始まっていました。
この最終章で起きた事件が、ナセルのスエズ運河国有化騒動・・英仏進駐事件だったことになります。
現在で言えば、アメリカが裏で反日運動を中韓に唆しているのと同じ状態ですから、ソ連からの英仏に対する強迫に対して当然アメリカは英仏を応援しません・・怒った英仏が自前の核武装をすることになった切っ掛けです。
折よく北海油田が開発されてこれが軌道に乗った80年頃から資源的側面が解決された結果、イギリスは戦後耐乏生活から何とか抜け出せた原因です。
マスコミはサッチャーリズム成功と言いますが、実質は資源特需によるものです。
・・7月2日現在のウイキペデイアによると「サッチャリズム(英: Thatcherism)は、1980年代のイギリスでマーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策である。」と書いていますので時期的にあっています。
(この後に紹介するように北海油田による原油輸出代金収入が軌道に乗ったのは80年代からです)
サッチャリズムは金融ビッグバンもやりましたので、金融取引のウインブルドン現象と言われるようにその収入も増えました。
これまで書いているように製造業復活ではなく金融取引や資源収入による場合、多くの労働力が不要ですので自ずと格差が拡大します。
ナウール共和国の例を引いて、資源収入等が上がるとその分通貨が上がるので、製造業等従来型国内産業にとっては国際競争上不利になる結果却って衰退して行く・・日本が原発停止による原油輸入による大幅赤字が円安を導いて製造業等の競争力が挙がる例としてFebruary 26,2013「原発事故と天佑」で書いたことがあります。
西欧・・得に英国はこの逆に精出して来たトガメが格差拡大を広げ今回の離脱騒ぎの遠因になっていると見るべきです。
上記ウイキペデイアには以下の記述が続きます。
「サッチャーが政権についた時点では、平均所得の60%未満で生活する層は約13%であり、ジニ係数は約25であった[12] 。サッチャーが退任する頃には、平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇した。」

西欧はアメリカの資源力と大規模市場を背景にした19世紀以降の挑戦に対して、資源確保とEU結成による人口では負けないぞ!と大規模市場・・単一市場化で対抗して来たことが分ります。
折角多くの国々が事実上合併・・市場大規模化しても少子高齢化で人口が減って行くのではどうにもならないので移民を入れる・輸血するようになりました。
しかし人口さえ多ければ良いのならば、中国やインドは昔から人口が多かったのです。
EUに関する外務省発表のデータを紹介しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
欧州連合(EU)平成28年6月1日
総人口(2015年)
 5億820万人(Eurostat、暫定値)(日本の約4倍)
略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合 1968年 関税同盟完成 1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
 GDP (出典:IMF World Economic Outlook)
16兆2,204億ドル(2015年)
対するアメリカは以下のとおりです。
アメリカ合衆国(United States of America)
                平成28年4月20日
面積 371.8万平方マイル(962.8万平方キロメートル、50州・日本の約25倍)(内水面18.1万平方マイル)
3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
GDP 17兆4,189億ドル(名目、2014年)

上記によればGDP規模=市場規模はEUが中東欧諸国編入で拡大し続けた結果、年間約16兆ドル対アメリカが17兆ドル規模でほぼ拮抗していることが分ります。
これを背景にアメリカと対等に渡り合うための共通通貨ユーロも創設しましたが、寄り合い所帯の弱さでユーロは今なお、基軸通貨ドルを脅かすには至っていません。
以下ロイター記述によれば、最盛期でも28%しかなく(イギリス離脱騒ぎ前)の今年4月には、19、91%に下がっています。
以下http://jp.reuters.com/article/forex-reserve-usd-eur-imf-idJPKCN0WX2A5
からの引用です。Business | 2016年 04月 1日 01:45 JST
「第4・四半期のドルの比率は64.06%(4兆3600億ドル)となり、前四半期の63.98%から上昇。 一方、ユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下した。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%だった。 」

米欧のGDP規模と通貨構成率の相違は何に起因するのでしょうか?
このシリーズは元々消費市場の大きさが実際の国力を分ける・・今や生産力を競う時代ではないと言う関心で5月7日「資源+生産力から消費力アップへ1」以来書いている原点に戻ると分りよいでしょう。
EUが貧乏人の集合体・・とした場合、GDPの割に消費水準が低調・・内需比率の低さが通貨構成比に現れていると言えるかも知れません。
EU内で最大の経済力を誇るドイツの内需比率の低さが有名ですが、ドイツの外需と言っても実はEU域内の内部貿易中心で域外から殆ど購入しないのでは、結果的に経済のEU域外に対する対外的影響力は多寡が知れています。

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