奥田氏意見2=議論ステージ無視

先週金曜日に「労働事件でこういう証拠が重要か否か」の電話相談があったのですが、議論のステージによって意味が変わるので労働事件の内容によるので一概に言えないことを以下のように例示して説明したばかりです。

「100万円貸したので100万円返せという貸し金訴訟でいうと、被告が借りたことを認めない場合には貸し金の証書が重要であるが、被告が借りたことを認めるが返したとか時効だといういう争いになれば、時効になっているか、返したかどうかが争点になるので、貸金証書の意味がほとんどなくなる。
時効の場合には途中で時効を中断する事実があったか?返したという場合には被告が100万円送金の証拠を出せば、原告はそれは別の貸し金や売掛金の支払いだったという場合には、別の売掛金や貸し金の証拠が必要になるなど、ステージによって必要な主張や証拠が違うので一般論の質問には答えられない」

議論にステージがあって「この方向へ!と決まって次のテーマに移ってから前の議論を蒸し返すのはルール違反ですし誰も相手にしません。
奥田氏の国会意見陳述に戻ります。
国民多くが安保法案に反対しているとか、軍備=戦争になるという自衛権否定論・・70年間の平和を守れという議論は自衛隊/再軍備否定論は村山内閣時代に終わった議論です。
もっとさかのぼれば、朝鮮戦争勃発〜中華人民共和国成立によって、東西両陣営対立の国際環境になってしまった結果、戦争こりごりの日本国民が全世界と仲良くしたかっ点は誰も争わないでしょうが、どっちつかずを許さない国際環境に二択を迫られた以上は、西側陣営・・米国庇護下で進むしかないと決意を決めたものです。
そう決めざるを得ず決めた以上は、西側陣営を裏切り中ソとの軍事同盟などあり得ない・・米ソ軍事対立が激しくなれば日米安保に進む前提になっていたものです。
第一次安保条約〜条約期限到来時ごとの安保条約改定は、予定された軌道内の行為ですので、軍事同盟反対論→戦争に巻き込まれる論=戦争法案論は、新たに蒸し返し議論すべきテーマでなかったはずです。
非武装平和論に基づく60年安保に始まる無茶なデモ騒動は、国民支持を受けなかったのは当然であり、その後昭和40年代〜50年代と主張不明の全共闘時代を経てデモやストライキ騒動をやればやる都度旧社会党支持を減らす方向に働いた結果を見れば、選挙で勝てない憂さ晴らしをメデイア界と組んで社会経験のない未熟な若者を煽って景気づけしていたにすぎません。
自衛隊憲論→憲法違反論や非武装平和論は、上記国際環境下では非現実的すぎて旧社会党が村山内閣時に撤回に追い込まれ、その後社会党の中堅以下の議員が流出参加した人材多数を占める民主党政権においても、普天間〜辺野古基地移転の閣議決定で、日米同盟重視路線の是非は解決済みになっています。
ところで同盟条約が必須となれば、相互協力を含むのが原則=議論ずみと見るべきです。
雇用すると言えば給与支払いが当然の前提ですし、正札のついた商品を注文すればその代金を払う意思表示と見做されます。
工事等でも値切った場合、実は手抜きとか腕の悪い職人が担当することになるのと同じで、物事は等価交換が原則で相応の対価関係で成り立っています。
建築工事等で注文主が文句ばかり言ってると余計ミスが起きやすくなるのは、待遇が悪いと能力が発揮できなくなるということでしょうか?
こういう機微を多くの人が理解しているので、植木屋さんなどがくるとお茶の時間を設けて丁寧にもてなすし、バーその他どこへ行っても客の方が愛想を使い気持ちよく接する習慣になっているのでしょう。
日米安保の場合、敗戦国と戦勝国の関係から始まっているので、初期には日本に相互的義務を果たす力もなかったし米国も必要としなかったので、片務的同盟で始まっていますが、こういう関係は一時緊急避難的関係を前提にしています。
天災等で一時避難してきた当座は炊き出ししたり無償で宿泊させても、永久にただで良いというルールではありませんし、戦争経験者でいえば、空襲を逃れるために疎開していて戦争が終わって、東京に帰った時には、相応のお礼をするのが普通です。
米国が世界的に並ぶものなき圧倒的兵力の時代には、(お金持ちと貧乏人あるいは雇い主と従者が食事すれば雇い主や金持ちが奢るに決まってます)相互関係といって黙約わずの日本に応援してもらう必要がなかったでしょうが、米国の圧倒的覇権に陰りが見え始め、一方で日本の国力が向上した以上は、五分五分負担とは言わないまでも能力相応の下支えに協力して欲しくなるのは当然です。
災害避難者がいつまでも無償で住み続けると「そろそろ出て行ってくれませんか!となるのが普通ですが、日本がいつまでも知らんプりしていて、しかも迷惑論でなにかと邪魔扱いされているとなれば米国が、いざとなるとどこまでやってくれるか心配になるのが普通の神経です。

特定秘密保護法10(実証的議論の必要性)

具体例に基づいて落ち着いた議論をして行くのが、成熟社会のあるべき姿です。
我々弁護士は相手を罵るのではなく、データ(証拠)に基づいた落ち着いた議論をして勝敗を決めて行く習慣です。
マスコミは特定秘密保護法の成立に反対表明し、恐怖政治になると大々的に報道する以前に、その前提として米英独仏等で実際に運用されて来た法文と我が国の法案との違い・程度・・比較対照表程度は最低限作成して国民の合理的な議論の叩き台を提供するべきではないでしょうか?
私は弁護士会で行なわれているこの種問題の意見書作成に関与している訳ではなく、仕事の合間にブログを書いているだけですから、世界中の法律を渉猟する暇がありません。
法律専門家の集団である弁護士会が意見を発表する以上は、世界中に実際にある法律の類型化した資料を作成した上で、類型ごとに運用によってどのような問題が生じているか・・このためにどのように科学技術の発展が阻害されて来たかについて具体的な意見書にして欲しい感じです。
実際に検証した結果なのかも知れませんが、もしもこうした研究をする経済力(・・検証チームを世界各国に派遣するには資金が必要です・・)がないので何もしていません・・海外の実例を知りませんと言うならば、何も知らないのに、専門的に検証した結果のように装って意見を発表するのはおこがましいことになります。
内部検討ではこう言う地道な検証が行われた結果の反対意見になっていると期待したいところですが、弁護士会会員に対してもこうした資料の配布が全くなく、公開されている意見書にも全く反映されていません。
外部(私のように弁護士会員でもチーム外の一般会員を含めて)の人にとっては、まじめに検証した結果の意見なのか、単に反対のための反対をしているのかが分りません。
国民全部に配布するのは物理的に出来ないまでも、チームに関係のない一般会員向けに最低限他国の法令状況や運用によるマイナス作用等の具体的なデータを広報して欲しいものです。
これがなくて会長声明等ばかり配布されても、昔の社会党のように反対のために先ず反対しているような誤った印象を持ってしまう一般会員が多いのではないでしょうか?
従来日弁連や単位会の運動はもっと具体的・・実務家らしい運動が多かったのですが,特定秘密保護法反対になるとイキナリ抽象的・・飛躍した主張・・パンフレットみたいなものばかり送って来るのを危惧しています。
法律というものは具体的社会生活に根ざすものですから、数学の理論みたいにどこでも妥当する観念で処理できるものではありません。
米英独仏等の先進国でどう言う規定の仕方があって、実際の運用の結果どのような不都合が起きているか、これを我が国の実情に当てはめるとどのような修正が可能かなど具体的に論じるべきです。
米英仏等のどの条文に対して自民党案のどこが良くないのか、どう修正するべきだというのかの意見であれば、読者が判断し易いので、専門家集団としての意見書の意味があるのではないでしょうか?
「秘密を認める法律の存在自体が良くないから地道な修正的議論が出来ない」と言い出したら,世界中どこでもこの種の規制がある筈ですから、どこの国にも妥当しない意見・・現実を無視した空理空論のたぐいとなります。
世界中で兵器等に関してテロ防止・スパイ防止関連法(法令名はいろいろでしょうが・・)が存在しているのが明らかですから、(全部公開していたらスパイや盗聴問題が起きません)何らかの不都合があったとしてもそれを上回る秘密保護の利益があるからでしょう。
堅実な議論をするためには、感情的反対・賛成論ではなく秘密保護によって得られる・・守られる利益と、秘密にすることによって生じる不都合の比較考量に関する実例に基づいた議論が先ず必要です。
安倍総理個人で見ても、テロから身を守るために要請される警備上の秘密が当然ありますし、その秘密のために国民が被る被害との兼ね合いその不都合と総理の命を守るメリットの比較を議論すべきです。
(警備計画を知りたい人には言論の自由侵害があることになるのでしょうが、警備計画を国民一般が知らないと社会発展にどう言う不都合があるか・・?)

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