求愛2と時機

男女関係の合致方式は正札販売とは大違い・・昔のママで・・・例えば農家の庭先で博労が牛馬を売ってくれとかバイヤーが農産物購入を申し込むのに似ていて、相対の交渉が成立しなければ農家も売りません・・・今でも結婚を申し込まれても同意するか否かの権利が女性に留保されているのです。
商品売買の場合は購入・注文者の提示する条件は金額次第ですが、求愛の場合貨幣表示だけではなく(いわゆる3高と言う類型もありますが多くは・・・)総合力評価ですから、オスの方が安易に申し込んで拒否されるのは、面目丸つぶれ・・精神的ショックが大きくなります。
そこで、ある程度瀬踏みを続けてからでないとうっかり申し込みさえ出来ない・・このリスクにおびえて安易に深入りしないで遠巻きにしているだけの若者が多くなって、その内に年齢が過ぎてしまう・・のが現在でもあるでしょう。
リスクに弱く、求愛行動の動物的本能が薄れて来ているのが、昨今の草食系化・独身率上昇の現象にダブっているようにも思えます。
ボヤボヤしていて異性にのぼせる年齢が過ぎ去ってしまうと、これまで書いているようにオスの方は何のために結婚するのかと言う合理的疑問が湧いてくる人が多くなります。
勿論女性の方も、一定年齢が過ぎると「あえて子供が欲しい訳でもないし・・一人で生きて行けるし・・」となってお互い消極化してしまいます。
オスは年齢的に求愛行動をしたくなる時期があって(メスの発情期はほとんどの動物で年一回原則ですがオスの場合、年齢的期間限定です)、この時期に(のぼせ上がって)愛想を振りまいて一所懸命に異性を求めて「メスを釣る」行動をするのですが、恋が成就してしまうとあれほど熱心に求愛していた相方の女性に対するあこがれが急速に色あせてしまう仕組みです。
オスのこうした身体の仕組み自体は仕方のない事ですが、メスの方はそこからがオス引き止め・・毎日帰ってくるようにする正念場・・智恵次第と言うことで、古代から営々と工夫し、頑張って来たのです。
まさに若気の過ちで一緒になってしまうのが良いとする前提で、一緒にさえなれば後は女性の智恵で何とかなると言う時代が続きましたが、これは一人では生きて行き難い社会が続いていた社会背景によるものでした。
今では離婚後の生活保障が手厚くなってくると、女性がじっと我慢する必要がなくなって来ましたから、一緒にしてしまえば何とかなる時代ではありません。
まして、今のように双方ともに一定の経済力があって、(独身でも食事や洗濯に困らないなど一人でも生活がし易くなっています)しかも30代後半になってくるともう一人でいいやと言う人が増えてくるのは当然です。

求愛1と意思の合致

妻にとって一緒にいることが、気を使うばかりで苦痛な夫ではなく、一緒にいたい・・少しの時間でも一緒にいるのが楽しいと思わせるような男・・恋人関係を維持していない限り(そんな良好な関係では別れ話は出ないでしょうが・・・)ひとたび別れると復縁は無理な印象です。
男は従来「釣った魚に餌をやる必要がない」とばかりに横着を決め込んでいて、家庭にいること自体がお荷物になっていたことが原因で何かの機会に妻から(離婚後の各種保障が充実して来た事から、)「チャンス」とばかりに離婚を求められてしまう時代が来ているのですから、夫の方こそちょっとした事で離婚を求められないようにして置く必要があります。
仮に事情があって離婚、別居しても復縁を希望するならば「永久就職ではない」と結婚後の日常から心構えを変えて行く必要があります。
昭和年代まで、「釣った魚にえさをやる必要がない」と言われていたと言うことは、オスはまず先に(餌で)釣る必要があったと言う意味ですが、一般的に動物・鳥類の世界でもオスは求愛してメスに選んでもらわねば性行為出来ない仕組みだったからでしょう。
オスの方もどうせ選んでもらうなら、気に入ったメスに同意してもらった方が良いので、オスが声をかける相手を先に選択出来る面もあって、この結果オスが選択権を持っていてメスは待つだけのような印象ですが、本来はオスの求愛行動が先に必要・・メスの選択権決定権の方が優先です。
正札販売の場合、客が「これ下さい」と声をかける事すなわち購入申し込みで、商店(料理屋でも同じです)が喜んで応諾する仕組みですから、正札販売が定着した現在では、声を先にかる方能動的な立場が有利な印象です。
契約・・意思表示の合致の仕組みについては、09/21/07「契約の成立1(民法263)申し込みと承諾1」前後で説明した事がありますが、契約は申し込みと応諾で成立します。
商店の場合、承諾する前提の正札を付けて陳列しているのは「申し込みの誘引」をしていることになり、客がこの正札に対して申し込みをしても商店にはなお応諾するか否かの自由がありますが、余程の拒否事由がないと商道徳的に断れません。
注文すれば必ず応諾してもらえる正札販売の商習慣に慣れて来た現在社会では、求愛・注文する方のオスは、求愛を待っているメスよりは何となく優位になったような印象(誤解)になっていたのでしょう。

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