労働分配率低下論2(省力化投資と人材レベル強化策)

企業は売れ行き不振対策として値下げ競争に突入すると、将来性がないので新製品工夫しか生き残りできないのと同様に人手不足だからと(省エネ努力しないで)単なる給与引き上げ競争に入るのでは先行きの展望がありません。
これは個別企業だけの問題ではなく、国単位の国際競争での生き残りの成否でも同じです。
人手不足対策として企業が省力化に躍起になっているのは合理的ですから、外国人労働者導入を極小にするために機械化が進む・人件費率が下がるのは当然です。
オートメ化どころかAI化が進むと人間の仕事がなくなるという意見もありますが、今のところ、日本社会は、失業の増大で困っている社会ではなく、人手不足で困っている社会です。
将来に備えるために人手不足の今こそ、このチャンスを生かして省力化投資→高度設備操作に対応・適応できる人材育成に力を入れるべきです。
身近なコンビニ店員で見ていても、商品配置場所案内等の従来型能力にとどまらず、ATM操作から劇場.航空券購入その他店員の対応能力の多様性・進化には驚くばかりです。
多様な処理能力が発揮される前提として、レジその他の処理が簡便化してかかりっきりにならなくて済む合理化・.これが失業になるのではなく、コンビニのマルチ化・サービス提供余裕を与えている・実態があります。
お陰で消費者はあんちょこに高度な利便性を享受できているのです。
省力化と人材レベルアップが一体化してこそ高度なサービス社会を維持できることが分かります。
AI化が進むと、知的レベルの高い人でも職を失うかのような意見がメデイアでは一般的で不安を煽っていますが誤導です。
最低作業とされていた現場系・土木工事現場でも(下水道やガス工事を通りがかりにのぞいてみると)パソコン画面を見ながらの工事が増えているし、コンビニ店員の例を書きましたがヨドバシカメラでも同じで高度な商品知識や、高度知的レベルがないと働けない時代がすでに来ているので人材の底上げ、高度化投資が社会にとって重要です。
この点では、国民の底上げ・従来型義務教育だけではまともに働けないのが常識ですから、高校授業料無償化などの政策は時宜にかなった方向性でしょう。
弁護士業務も従来型作業の多くの部分がAIにとって代わられるとしても、その代わりにさらにマルチ的な別の能力が要請される時代が来るはずです。
その代わり昨日書いたように高度作業に適応できる個々人の所得が上がっていくのが理想的です。
20代に名門大学を出て一流企業に大卒時に就職できたとか、ある資格を若い頃に得ているというだけで終生安閑とできる時代ではなく、働き方のレベルアップが日々要請される社会になるのは、技術革新のサイクルが早くなり日進月歩である以上・・我々の世界でも法令改廃がひっきりなしです・・仕方がないでしょう。
これからは、いろんな資格は運転免許証のように一定期間経過で再テストが必要な時代が来るべきかも知れません。
もちろん企業人も例えば10年ごとに再スクリーニングが必須の時代が来るべきです。
01/19/10終身雇用と固定化4(学歴主義3)」等の連載で定年延長ではなく、およそ10年程度に短縮すべきだと書いたことがあります。
人手不足で業容縮小するしかないほど困っている社会なのに、労働分配率にこだわり省力化投資を目の敵にする?マスメデイアのイメージ論調は、どのような社会を理想としているのでしょうか?
「人手不足対策の工夫するな!ただ困っていろ!」というのでは、日本社会が困ってしまいます。
いろんな企業で人手不足のために、業態縮小(閉店時間切り上げや配達時間限定•回数減など)を余儀なくされている企業の状態が日々報道されています。
たとえば以下の通りです。https://jp.reuters.com/article/japan-labor-shortage-idJPKBN19E0JA
2017年6月23日 / 15:44 / 6ヶ月前
焦点:広がる人手不足が企業活動圧迫、潜在成長率ゼロ試算も
東京 23日 ロイター] – 人手不足で生産やサービスを制限するケースが運輸業だけでなく、製造業も含めて広がりを見せてきた。このまま労働力不足が継続すれば、2030年には日本の潜在成長率はゼロ%ないしマイナスに落ち込むとの試算もある。

上記記事ではゼロ〜マイナス成長予測を書いています。
今の好景気循環は、国際競争に勝っていて競争力が高待っている状態で注文に追いつかない・.増産できない状態がそのまま続くと想定していますが、人不足→賃上げ競争による労働者奪い合いだけで終始していると、国全体で見れば増産対応ができません。
しかも、この方式に委ねると賃上げ→製造その他のコストが高くなりすぎて結果的に競争力低下・・注文が多くて納品待ちが続くのではなく、そのうち競合国に負けて注文がへっていく動的な面を軽視しています。
ゼロどころかマイナス成長になってしまうのが原則でしょう。
多分メデイアの論旨は、だhしめえtふぁら外国人労働者を早く大量に入れろということでしょうが、人件費競争をしている限り国民一人あたり所得が上がりません。
しかもて賃金労働として引き入れるとその家族・次世代の底上げ教育が必要で却って
トータルコストが上がります。
最近少年院で外国人少年比率が上がっていると言われています。
だいぶ前から書いていますが、子供の日本語能力が低いので、子供社会に馴染めないし社会人になり損ねているし家に帰っても親は殆んど日本語が話せない(親子の意思疎通もままならない)という状態で、どうして良いか分からないママ少年院を出て行く状態が言われています。
弁護士会としては今後福祉と連携していかないとどうしょうもない状態という議論が起きています。
学校現場ではだいぶ前から、日本語の殆んど分からない子供に対する教育の仕方について問題になっていますが、外国人の安易な(数万円人件費が安いからということで)雇用は社会に対して大変な負荷をもたらす危険をメデイアは何故か報道しません。
サービスを含めた商品供給が従来比2〜3割増えても人員を同率増やすのではなく、数%増で間に合うようなシステム構築などの成否が生き残りの明暗を分けます。
こうした工夫→システム刷新実行には数年単位の時間がかかるのでその間人材不足になるのでしょう。
この場合従来100人の仕事が120人必要になっても従来どおりの100人で賄えるようになると各人の給与を何割か上げる余地が企業に生じます。
従来基準で120人分の仕事が100人でこなせるのは省力化投資の結果でから支払わずに済んだ20人分の人件費のうち省力化投資の方に多くが吸収されますが、少しは賃上げ要因になるでしょう。
それでも、売り上げ増2割に対する労働分配率が下がることになります。
省力化投資にある程度比例して国全体で言えば総人件費・.労働分配率が減って行きますが、個々の労働者の所得水準が上がり国民は幸福です。
その代わりに20人失業するのでは困りますが、好景気下で拡大基調の現在、例えば好調な物流系で100人雇用が必要な時に省力化投資で80人で済むというだけで、解雇する訳ではありません。
雇用の奪い合いが緩和されるだけのことで、今では他産業でいくらでも募集があるので、その心配がありません。
人手不足の今こそ、このように省力化投資に邁進・誘導し構造転換させていくチャンスではないでしょうか?
スーパーレジが自動化されるとレジ要員が大幅減ですが、その空いた要員を別の部署の作業に振り向けられるようになるほか、新規採用が減った分は人手不足の他の業界の応募者になっていくでしょう。
こうした循環の結果、社会全体で人手不足解消される点が、企業の省力化投資の損益分岐点・均衡点になるでしょうから失業者が溢れる心配は論理的にはありません。
上記のためには人材市場が合理化(流動化に耐えるように)されていることが重要です。

労働分配率の指標性低下2(省力化投資と海外収益増加)

6月24日の日経新聞「大機小機」の主張を引用しておきましょう。
「・・・第二次安倍政権誕生と同時に始まった今回の景気は拡大56ヶ月を迎え、経常利益は史上最高を更新し、産業界は好況を享受している。雇用報酬は横ばいで民の暮らしは豊かになっていない。今回の景気は[産高民低]だ。・・「消費低迷の背景として人口減少や社会保障の将来の不安、デフレマインドの定着などが上げられている。だが、注目すべきは労働分配率が今回の景気回復局面で急低下し・・・たことだ」「労働分配率の低下は先進国共通の傾向の現象だ」「・・労働分配率が変わらなければ・・消費も多いに盛り上がっていた筈だ・・昨今の先進国の消費低迷と低成長の背景ではないか」
と書いています。
労働分配率は国内総生産に寄与した関係者間の分配の問題であり、企業の好況は海外収益を含めた概念ですから、この比較するのはすり替え的で論法です。
労働分配率については、以下に簡潔に解説されています。
http://www.shimoyama-office.jp/zeimukaikei/keieisihyou/keiei7.htm
労働分配率とは、付加価値のうち人件費の占める割合をいいます。
労働分配率=人件費÷付加価値
付加価値とは、企業が生産、販売等の活動により、新らしく生み出した価値をいいます。 簡単にいえば、材料を1,000万円購入し、工場で製品を製造し、その製品を5,000万円で販売した場合、付加価値は5,000万円-1,000万円=4,000万円となります。
付加価値の計算方法は、主に次の2つがあります。


このように、付加価値とは言わば粗利であって加工するための間接・直接のコストが入っています。
中国がGDPアップのために需要無視でドンドン公共工事していてもGDPだけは増える関係です。
上記の通り控除方式では、製品にするための工場設備等の経費が控除されていませんから、付加価値には昨日書いたように機械設備の費用が含まれている・・設備費用が多くなればなる程付加価値に占める労働分配率が下がる関係です。
加算方式の場合にも、機械設備等のコスト等は金融費用や減価償却費等として加算されますから同じです。
先進国であれば機械設備投入比率が上がり労働力投入量を減らすのが普通→付加価値に占める労働寄与率が下がる→労働分配率が下がります。
また豊かな先進国では企業の海外展開に比例して個々人も金融資産が増えているので、消費力は個々人の金融資産や知財収入等を含めて総合的に考えるべきです。
労働分配率は国内で付加価値を創造した分・・GDPの分配率の問題であって、海外収益どころか国内収益・企業収益とすら直截リンクしていません。
GDPは利益と関係がない・・中国で言えば需要無視の鉄道や道路マンションをいくら造ってもGDPそのものは増えます。
GDPが重視されたのは、無駄な投資をする企業や国はないと言う暗黙の前提があったからです。
自由市場で競争する企業でも見通しを誤って無駄な投資になる場合がありますが、その代わり市場から手痛い報復を受けます。
中国の場合市場競争がないので政権が続く限りソ連と同じで無駄ワオ強制できますが、長期的に見れば、「無駄なものは無駄」・・国民の損失になるでしょう。
国際比較の知能テストや学力テストでも、予め生徒に問題を練習させておくような不正をする国がない信頼で成り立っていますが、これをやる国が増えると国際比較が成り立ちません。
労働分配率に戻しますと利益ではなく設備等のコストを含めた概念ですから、喩えば、IT化やロボットや機械設備投資の結果生産量が5倍になっても労働者の寄与率は下がることはあっても上がることは滅多にありません。
設備の合理化で生産量が5倍になった結果支払う相手の大方はロボットや設備投資代金であって、労賃をこれに比例して増やすのは無理があります。
「労働分配率低下が先進国共通の現象」と言うのは当たっているでしょうが、設備投資等が増えれば付加価値に人件費率が下がるのは当たり前・・それと消費停滞とは直截関連しません。
コストが人件費だけの労賃がほぼ100%の社会(極端な場合、いくら働いても海外から収奪される植民地社会)と国内生産は機械化が進み、国内生産が減ってもその代わり海外収益に頼る割合が高くなる・個人金融資産の蓄積の大きい先進国社会との違いを無視しています。
共産党系のスキな搾取論を言うならば、国際的比較では今でも成り立つ議論のような気がします。
先進国が自国内労働・国内生産以上の生活を出来ているのは、その差額分を(知財・金融その他の名目で)「後進国から搾取している」からと言う論拠の1つとしては意味があるでしょうが・先進国内の所得分配論としては、時代錯誤論です。
先進国では、産業間(業種内の業態) 格差こそが問題でしょう。
古くは1次産業〜2次産業〜3次産業への移行(場所的には都市から農村への所得移転策がその1形態です)が重視されましたが、今は同じ2次産業でも重厚長大から軽薄短小へ程度の大まかな振り分けから、部品系の消長に移っていますし電子機器からIT関連へともっと細かな分類が必要な時代です。
ロボット産業と言っても分野別にいろいろです。
部品と言ってもどんどん進化して行くので電池のように元は機械等の構成品に過ぎなかったものが、今や電池の中の細かな部品を作る企業が部品業界であって、電池は完成品扱いではないでしょうか。

労働分配率の指標性低下1(省力化投資と海外収益増加)

働き以上の高給取りが100人減れば、その分製品コストが下がり国民全般が物価下落の形で受益し、業種的には利益率が改善される資本家やIT関連やロボットその他の製造装置販売関連が受益していることになります。
資本家や金融のプロ、IT技術者の高額受益は税として還元する・インフラ整備や図書館や文化施設・社会福祉資金になっているのが先進国ですが、生活保護やフードスタンプなど恩恵の配給のレベルアップよりは自分で稼ぎたい人が多いでしょう。
以前から書いていますが、同じく月30万円で生活する場合に、福祉支給によるのではなく、自分の働きで生活したいのは正しい欲求です。
従来同一企業内だけで労働分配率を議論して来たのですが、新たなパラダイム発生により今やサービス業と製造業・IT、ロボット産業・製造装置製造業界・配送関係などの異業種・社会内で調整が行なわれる必要が生じて来たと思われます。
6月24日日経新聞朝刊17p「大機小機」では、従来型分析・・労働分配率低下を重要指標として先進国共通のマイナス動向であるかのように論じています。
これまで書いて来たように、世界の工業基地として国内需要を満たすだけではなく世界への輸出分を含めた生産基地であった先進国では、プラザ合意以降日本を先頭にに東南アジアその他で生産しての迂回輸出が始まり、次いで2000年代にはいると消費現地生産が主流となって来た結果、輸出向け分の生産が縮小して行きその内逆輸入が始まれば、国内生産がジリジリと縮小傾向をたどるようになったのは当然です。
ただし、日本の場合最終品組み立て工程を新興国へ移したのみで部品等を輸出する産業構造に変化した結果、製造業はアメリカほど大きく衰退しませんでした。
それでも、濃く汗院のジリ貧が避けられないのでリーマンショック直前頃・・05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」のコラムで約10年間の国際収支表を紹介したことがありますが、今後キャピタルゲインの時代が来る//当時で年間約18〜19兆円の国際収支黒字の約半分が貿易黒字で残りが所得収支黒字でした。
そして現在では、昨年も約20兆円の黒字でしたが、その殆どが所得収支の黒字であって貿易黒字はあったりなかったりの繰り返しでほぼゼロ→17年5月の発表では貿易赤字でした。
このように国内生産による稼ぎはジリジリと減っている状態です。
2007年5月のコラムで儲けの半分が所得収支(海外からの利子配当所得)になっている以上、プラザ合意以前の輸出(国内生産)だけで稼いでいた時代に比べて、国内生産による儲けが減っているのだから、企業利益に対する国内労働に対する労働分配率が減るのが当たり前・・資本収入が多くを占める時代が来ると言う意見を書いたことがあります。
今年の5月13日にも書いています。
企業も儲けの海外比率が上がれば上がるほど、国内労働の寄与率が減っているのだから、国内労働者に対する企業収益との比較では労働分配率が下がるのは当然です。
比喩的に言えば、海外生産による儲けが1000億円で国内生産の儲けが100万円しかない・・収支トントン・あるいは100億の赤字であるが、過去の蓄積による配当や知財等の収益(営業外利益)及び海外収益の送金で何とかなっている場合、国内労働者に海外儲けの6〜7割も配れないでしょう。
トヨタなど海外収益の大きい企業の場合国内製造業の単体では、仮に90単位しか賃金を払えないのに海外収益や知財・金融利益などによる穴埋めによって100の賃金を払っているパターンが考えられます。
アメリカではその地域がダメになればゴーストタウンにして移転して行き、職人の技能が引くkレバベルトコンベアー方式で対応する何ごともアンチョクです、新興国の方が人件費が安いとなれば、国内に踏みとどまって何とか生き延びようとするよりは研究開発部門を残すとしても労働現場は人件費の安いところへ移転してしまうドライ・安易な生き方ですから、日本のように部品輸出で生き残るという工夫が乏しかった印象です。
この4〜5日の動きでは、トランプ氏の迫力に脅されて今年1月頃にメキシコへ工場新設中止発表したフォードが小型車フォーカスの生産を今になって中国生産に移管し、より大きな工場新設を発表したことが話題になっています。
今朝の日経新聞1面の春秋欄では、トレンプ氏の威光のかげりを反映しているとも言われていますが・・。
トヨタに代表されるように日本では、国民・同胞の生活維持が第一目標ですから、何が何でも国内工場を温存しながら海外展開する工夫・・これが部品輸出に転機を見いだしたのですが、アメリカでは丸ごと出て行くので、製造業従事者が極端に減ってしまい低賃金のサービス業従事者が増えてしまいました。
企業が(社内失業を)抱え込まない社会・・アメリカでは給与としては生産性以上を払えないが、国全体で見れば放置出来ませんので、後進国から大手企業や金融等の分野で配当金が入って来るのでこれを税金で取って分配する・社会保障資金になっている面があります。
例えばGMが中国で儲けたと言っても国内GM工場労働者に国内生産性以上の給与を払ったり余計な人員を抱え込まない・・失業者がいくら増えても企業利益は税で政府に収めればそれで責任を果たしていると言う考え方でしょう。
こうなると本当に海外収益を国内還流しているか・・法人税の実効性が重要になって来るので、税逃れ・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たと見るべきでしょう。
先進国では多かれ少なかれこう言うパターンになっていますから、企業利益増大に比して労働分配率が下がる一方に決まっている・・労働分配率低下を社会正義に反するかのように主張する論法は経済実態にあっていません。
そもそも、労働分配率の議論は従来の定義では企業の儲けを基準にするのでははなく、国内付加価値.総生産・GDPに対する労賃分配率を言うものですから、海外での儲けが増えていることとは関係がない議論です。
24日日経の「大機小機」は、全体の基調としてアベノミクス以来企業の好況(海外収益を含めた概念)が続いているのに労働分配率が下がっているから消費が盛り上がらないと言う紛らわしい論旨を展開しています。
海外収益増加による好況の場合には国内労働者はその収益に関係していないのですから、企業全体の収益増に対する国内労働者の配分比率が下がるのは当然です。
国内収益100%の企業が10%売り上げ増になれば、その増収増益に寄与する労働者がほぼ10%増えるとすれば比例関係です。
しかしこの後で書くように国内完結企業でも、増収に寄与する労働力量が変わらず最新機械設備やロボット導入あるいは画期的新製品開発による場合もあります。
これらの場合、増収増益による収入の大半は機械設備・発明対価等の代金に消えて行くのであって、機械化等によって現場労働者が逆に2〜3割減ることが多く労働寄与率・分配率は逆に下がります。
消費力のテーマであれば、高齢化が進むと高齢者の労働収入は減っているが、現役時代に蓄えた金融資産による収入・・海外債券を含めた金融収入その他と年金等が収入の大部分を占めているのですから、年金生活者が好景気で月に10万円でも働くようになると、消費力は働く前に比べると大幅増になります・・労働分配率と何の関係があるでしょうか?
企業の好況と個人の消費力を比較するには労賃の増減だけはなく個人金融資産の増加率を含めて比較しないと意味がないでしょう。
多くの若者が少額でも株式等への投資できる制度が出来ていて若者ですら、証券投資している時代です・・そして日本全体では世界中から利子配当等の所得が年間20兆円近くあるのですから、金融資産・知財収入その他を見ないで労賃だけ見ても実態が分りません。

中国バラまき投資の限界2(ベネズエラ危機3)

5日に紹介したデフォルト直前のベネズエラに対して中国は多額の債権を有していて、最早回収を諦めていると言われています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4752   2017年5月5日(金)
中国「ばらまき外交」の限界 経済悪化が深刻なベネズエラを教訓に 岡崎研究所
「フィナンシャルタイムズ紙は1月25日付社説で、長年にわたる誤った経済政策運営によりベネズエラの経済・社会は深刻な代償を払っているが、同国の最大の債権国である中国も、法外で甘い条件での貸し付けが大きな問題を生むことを学んでいる、と指摘しています。」
「ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は緊急資金援助を求め中国とサウジアラビアを訪問したが、明らかに何の成果もなかった。投資家たちは、ベネズエラのベンチマーク国債を「デフォルトの危険あり」のレベルまで落とした。」
「ベネズエラ最大の債権国である中国にとって、これは重大なことである。この状況は、中国が続けてきた、ほとんど条件もなく、透明性のないままに、多くの場合は資源を対価に多額のローンを提供するという形の対政府資金援助の実情を中国に付きている。」
「中国は新興国に対し気前よく大金を貸しており、ここでベネズエラでの経験から貸出条件を厳しくすると国際的な開発環境に大きな影響を与える可能性がある。しかし、中国が「底なしの貸し出し外交」(open-wallet diplomacy)に制約を加え始めたのはベネズエラだけではない。ジンバブエは、昨年100億ドルの救済パッケージを断られ、約束された20億ドル貸付には具体的な石炭鉱山のプロジェクトおよび将来の採掘による税収が担保とされた。中国は、世界銀行やIMF、アジア開発銀行といった多国間機関が貸し付けに厳しい条件をつけるにはそれなりの理由がある、ということを学んでいる、と指摘しています。」
AIIBにこぞって参加した後進国は中国の(慎重な融資審査しない)乱暴な融資決定を期待していたでしょうが、イザ始まると意外に中国も厳しい審査をする可能性があります。
後進国相手のインフラ受注では、中韓は無茶に有利過ぎる(ほぼ出世払い?)支払条件で日本等先進国から受注を奪って来ましたが、上記のとおりの結果が出て来ました。
インドネシアの新幹線受注も支払い条件が無茶過ぎて日本が土壇場で奪われたことが知られていますが、経済原理無視の無茶な受注で表向きの受注実績だけ拡大しても先がないことが分らないのです。
これが民営ではなく国有企業だから出来る(出血輸出が続けられるのも原理が同じです)ことですが、経済原理に反した投資をしていれば、時間の経過・結果的に国家経済を蝕んで行きます。
インフラ工事代金支払いが出世払いのような契約では、さすがに中国政府の資金が続きません・・あちこちで受注だけして放りっぱなしの工事が一杯あると言われています。
こんな無茶な受注が出来ていたのは、中国の将来性を囃し立てて外資がドンドン流入していたので、その資金転用が出来ていていたからに過ぎません。
中国の民度限界が見えて来て外資が引き上げ始める・・あるいは新規投資が減り始めるとこれまでの大判振る舞いの支出(軍事費だけではなくいろんな分野の支出)を絞るしかありませんが、一旦広げてしまうとこれが難しいのです。
特に、アフリカ等へ使ってしまった資金をどうするかで困り始めます。
中国の3兆ドルの外貨準備と言っても日米欧に対するものは公表額面どおりの価値があるでしょうが、中国の場合公表数字自体が当てにならない上に、その他の構成比が不明・・額面どおりの価値があるかどうか不明と言われる所以です。
対日投資の増減発表でもルクセンブルク経由など複雑化していて、その多くは中国スジの資金として推測されているだけです・・敢えて不透明化を狙っているのでしょう
内容がはっきりすると困ると言うことは本当は?と誰もが憶測を逞しくしたくなります。
外貨準備3兆ドルと言っても中身が薄いのを世界中が知っているから、中国がある日決済資金不足でデフォルト直前になってしまわないか?中国リスクを世界中が気にしています。
この心配が中国からの資本流出の動きを加速します。
外資のうち工場設備等に投資した資金は簡単に逃げられませんから中国は「釣った魚に餌をやらない」と言う露骨な政策で強気ですが、何やかやと言いがかりをつけては支払を遅らせるので、新たな外資も警戒して入るのが減って来ます。
国民の方も輸入代金を簡単に支払わせてくれないと「そんなに苦しいのか?」となって、疑心暗鬼が募りいわゆる隠れたホットマネーの流出と国民の海外資金逃避が始まるとどうにもなりません。
外資とのせめぎ合いだけならば、純債権国かどうかが大きなポイントですが、人民からの外貨両替要求になって来ると外貨準備がいくらあっても間に合わなくなります。
まさか国内流通紙幣を全部ドルで買い上げるのは不可能ですから、国民が国内流通紙幣を次々とドル交換に持ち込むようになると際限がない・・底抜け状態になります。
銀行の信用不安→我先に預金払い戻しを要求すれば、取り付け騒ぎになりますが、この場合中央銀行が紙幣満載のトラックを乗り付ければ騒ぎが収まります。
しかし、外貨であるドル交換要求殺到の場合人民銀行がドル紙幣を無制限印刷して供給するわけには行きませんからこの手は使えません。
外貨への交換制限しかないでしょう。
物資不足による配給制度を貨幣に応用したことになります。
外貨不足の最貧国では臨時に外貨割当制が取られることはありますが、・・IMFで昨年秋にSDRに採用されたばかりの中国が、これをしなければないとはこれほどの屈辱的なことがあるでしょうか?
中国の外貨危機・交換制限は外資による売り浴びせによるばかりではなく、国民の政府不信によるとすれば世界史上初めて新手の金融危機の始まりです。
今はその取り付け騒ぎの一歩手前・・人民が外貨準備攻防の主役であるからこそ、昨年から国民の外貨交換条件をドンドン厳しくしているのは恥も外聞もなくした政府としては正しい政策でしょう。外貨両替制限の内容を以下に紹介しますが・やり過ぎっぽい印象です。
ここまでやると人民は余計政府を信用しなくなり・・いよいよ売り抜けに工夫を凝らすようになるでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-03/OJ6XGS6S972D012017年1月3日 15:34
資本流出リスクを警戒する中国当局は、新年を迎えるに当たって個人による人民元の外貨への交換について要件を追加した。」
詳細紹介を省略しますが、知りたい方は上記にアクセスしてご自分で入って下さい。
要点は誓約書に違反すれば3年間外貨両替出来なくなる外、マネーロンダリング調査対象・・ブラックリストに入ると言うことで、正規ルート利用者は震え上がってしまい・1年分枠を一度に使い切れなくなりました。
その頃に日経新聞に解説が出ていましたが、正月明けに1年分の限度額一杯の両替請求がドット出ると投機筋が見て空売りを膨らませていたのですが、政府はその裏をかいて(上記具体的使い道の誓約書記載義務)成功したことになります。

中国バラまき投資の限界1(ベネズエラ危機2)

中国が逆ざやのアメリカ国債を買わされるのは不満ですが、買わないで貿易黒字だけを積み上げるのではアメリカが怒るし・・かと言って、資本流出に直面していて人民元を買い支えるしかない・大暴落では現在のベネズエラのような事態が待っています。
逆ざやにならないように自国金利を日本のようにアメリカ以下に下げられれば良いのですが、金利を下げると資本がさらに逃げて行くのでそれが出来ないので「どうにもならない状態です。
中国は仕方なしにアメリカの顔色を窺っていたのですが、この1〜2年資本流出が激しいことから、人民元防衛のためには背に腹は代えられない・人民元の買い支え用資金としてアメリカ国債をドンドン売ってしまい、今では日本よりも少なくなってしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6565.php
「米国債最大保有国が中国から日本に、元安防衛で外貨崩し」
2016年12月17日(土)20時37分
中国が世界最大の米国債保有国の座を日本に明け渡した。下落が続く人民元を支えるために外貨準備を取り崩しているからで、円安が進むのを好ましく思っている日本と正反対の事情が背景にある。
投資家は中国の米国債保有動向から目が離せない。もしも大規模な売りがあれば、ただでさえ上がっている米金利に一段の上昇圧力が加わり、それがドル高/人民元安の加速をもたらしかねないからだ。」
シンガポールのフォーキャストPteのエコノミスト、チェスター・リャウ氏は「中国は人民元相場維持のためにドル(資産)を売っているが、日本は円安を喜んで放置している」と指摘した。
人民元の対ドル相場は15日、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げと来年の想定利上げ回数の上方修正を受け、8年ぶり余りの安値に沈んだ。」
中国としては南シナ海問題で中国の主張を認めないアメリカに対する意趣返しもあったでしょうが、アメリカ国債をドンドン売られるとアメリカは黙っていられない・・「黒字だけのいいとこ取りは許さない」(「黒字を減らすかアメリカ国債を買いますか!いやなら関税45%」)と言うトランプ氏の強烈な対中批判になって来たことになります。
中国はオバマの弱腰を前提に南シナ海で中国批判するならば・と言う脅し?でドル売りを仕掛けて見た積もりだったでしょうが、トランプに一喝されてみると、中国としては年間6000億ドルも黒字を稼ぐアメリカ市場を無視出来ないので・・引き下がるしかありません。
しかしアメリカ国債を売らなければ資金繰りがつかないし、輸出を減らすわけにも行かない・・どちらも出来ず進退窮まっていたのですが、北朝鮮情勢緊迫化を利用してアメリカの言うことを聞くカードを切れたことによって、為替操作国認定を避けるのに成功しました。
経済原理に基づく解決の道を探せなかったので、政治の場での譲歩・・・南シナ海の譲歩よりは傷の浅い北朝鮮を渋々切り捨てたことになります。
遂に切り捨てられた北朝鮮が正面から中国批判を始めたことがこの数日出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170504-OYT1T50079.html       
圧力強める中国に北朝鮮の不満爆発…対立激化2017年05月04日 23時08分
【ソウル=中川孝之】北朝鮮の朝鮮中央通信が3日、中国の政治家らが「敵対勢力とぐるになり、残酷な制裁にしがみついている」と異例の名指しでの中国批判を展開したのに対し、中国政府が4日、「我々は公正だ」と反論するなど中朝対立が激化している。 トランプ米政権に同調して圧力を強める中国に対して北朝鮮が不満を爆発させた形だ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7540.php
北朝鮮が初めて中国を名指し批判
5月3日、北朝鮮中央通信社(朝中社)が中国を名指しで批判した。北朝鮮が中国を批判するのは、これで3回目。しかし、名指し批判をしたのは初めてのことだ。
アメリカ景気の底堅さ・失業率改善などを背景にアメリカ連邦準備理事会での金利上げ決定近し・・とマスメデイアが15年来囃し立てていますが、経済原理によれば経済力差に金利が連動すべきであってこれを無視してアメリカ連銀が低金利政策を長期間維持するのは無理なことが下地にあります。
経済力(実際には償還能力)がなくとも旧家・名門であると言うだけで安い金利で借りている旧家のようなものです。
日本の異次元緩和には、アメリカと違って出口戦略がないことを批判するのが一般的論調ですが、日本経済が世界最強経済である以上最低金利しかないと言う根本が無視されています。
・・・もしも逆に世界最強の日本が金利を上げると世界中の資金が(円キャリー取引の逆張り)日本へ吸い寄せられてしまうので世界中がこれに負けずに揚げるしかないので、世界大恐慌が起きてしまいます。
イエレン議長が15年暮れ頃に金利上げ出来ない理由として「今上げると中国経済が持たないと言う説明していましたが、日銀の金利政策が世界の中央銀行の役割になっているのですが、これを誰も(政治的配慮で?)言いません。
2番手経済のアメリカが金利を上げる気配だけでもこの1〜2年世界中が右往左往しているのですが、日本が仮にアメリカの金利よりも挙げると言い出したらどうなるかちょっと考えただけでも分るでしょう。
償還能力・・信用に反比例して金利が安くなっているのが経済原理ですから、この20年あまり日本が世界最低金利になっているのは日本の信用力がそれだけ高まっていることを表しているのであって・有事のドルから有事の円に変わっていることもこれを示してています・・日本の不景気とは関係がありません。
A国よりも信用のない国は不景気でもA国よりも金利を下げられません・逆に高くしないと資金が流出して大変なことになります・・この原理を無視してアメリカは実力以上に安い金利で資金を腕力で還流させているのですから長期的に無理があります。
出血輸出で象徴されるように中国の貿易黒字は次第に縮小に向かっている・・中国投資に妙味を感じなくなった外資が逃げ始めた・・資本流出危機で苦しくなった中国にとっては、逆ざやになっているアメリカ国債を売って資金繰りを何とかしたいのは経済の原理から言って当然でアメリカに「腕力だけで」売るな!と言われても経済原理に反したことに長期間従わせるのは無理があります・・。
ところで、中国の3兆ドルの外貨準備と言っても(仮に公表どおりに外貨準備があるとしても)その内容に疑問符があります。
中韓はアフリカその他後進国への投資・・・政治的思惑から、不採算事業をむやみに受注する傾向→結果的に工事代金が(不良)債権になっている・・高利回り債券保有率が高いと言われていますが、これらの多くは資源下落による悪影響をモロに受けている・最貧国・後進国や新興国中心です。
資源国は資源下落→新興国で経済失速が始まった上に15年以降アメリカの異次元緩和政策からの出口戦略が始まる予測→アメリカの金利が上がれば似たような金利でリスキーな投資する人が減る・・資金引き上げリスクに直面しています。
中国の投資先の多くはアメリカの金利上げ予測による資金引き上げに直面していてデフォルト寸前です。
新興国に対する中国の債券?は額面が大きく表面金利は高いものの、実勢相場が大幅下落していて中国がイザと言うときに換金出来る・・回収すべき債権・・ドル換金出来る資金にはなりません。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC