海外投資家比率(国民の利益)2

外国人比率と言っても間接保有が繰り替えされて重層的になっていて、実態が分り難いので、韓国の個人金融資産の残高の方から見て行きましょう。
2011年12月14日韓国銀行(韓国の日銀みたいなところです)発表によると、韓国の個人金融資産は1146兆ウオンとのことです。
これを今の円に換算すると×0,066(2012-1-11日現在の為替相場)=75兆6492億円になります。
その内銀行預金が67、2%(50兆8362億円)で、保険・年金が21、7%とのことですから、株式や公社債市場へ向かう個人金融資産は、残11%=8、25兆円しかないことになります。
年金・保険は合計21、7%ですが性質上安全運用が求められるので、このうち最大3割としても、個人金融資産の21、7×0、3=6、51%=7、46兆円が株式投資と見られます。
参考までに我が国の年金基金連合会の運用表を見ると、国内株式と国内債券は各25%に留まっています。
ちなみに日本の銀行等金融機関でも資産運用先として2000年代に入って漸く証券市場向け投資が約3割になっているだけです。
仮に韓国の銀行も日本と大差ない運用とすれば韓国の金融機関に向かってる個人金融資産の67、2%の3割しか(全体の21%=15兆2508億円))証券市場(公社債と株式があります)に投資されていないことになります。
(このうち株式市場に何割投資しているかまでは分りませんが、半々とすれば7、6兆円となります。)
韓国人のその他投資8、25兆円のうち・・公社債と株式との投資比率が分りませんが、個人金融資産の7割近くも国民が銀行に預ける国民性を前提にすれば、その次に安全な公社債に向かうのが普通ですから、仮に同じ割合・7分3分とした場合、個人金融資産8、25×0、3=2、47兆円しか株式市場へ向かっていないことになります。
この2、47兆円の韓国株式時価総額に占める割合がどうなっているかです
現在の韓国株式市場の時価総額を見たいのですが、検索能力が低いためか過去のデータばかりしか出てきません。
アイザワ証券ネット広告によれば2011年6月30日現在の韓国株式市場の時価総額が出ていますのでこれによれば、
「時価総額:約89兆2,335億円(1,183兆4,692億ウォン)店頭時価総額:約7兆4,045億円(98兆2,042億ウォン)」
となっています。
半年前のデータで12月の個人資産から割り出すのは正確性に欠けますが、一応のことと理解していただいて計算してみます。
店頭を含めた合計96兆6380億円の韓国の株式時価総額の内上記2兆4700億円=2、56%しか韓国人の個人が保有していないことになります。
これに上記年金等の運用先としての株式保有額7、46兆円と銀行・金融機関の株式保有額7、6兆円をプラスしても15、06兆円弱でしかありません。
これは時価総額96兆6380億円の15、58%にしかなりません。
韓国上場企業の株式の実に84、5%もが実質外国人(企業)株主が間接的に保有している計算です。
しかも外国人は世界市場で分り易い評価のある・換金し易い世界大手企業中心に保有しているので、大手企業ではその比率が大きくなっています。
(サムソンでは55%であり銀行関係では77〜78%に達していると前回紹介した通りです)
大手企業に関しては、財閥という大量保有株主がいることも合わせると、韓国人個人・特に庶民の関与する比率は1%にも行かない可能性があります。
これは世上言われている外国人株主比率30%前後と大幅に違いますが、ここで書いている銀行や年金、事業会社等の保有金額については、その元手になる韓国人個人資産の再運用額を知るために書いているのであって、銀行や事業会社による総投資額を表していません。
(総投資額はもっと多い・・一般に言われているように外国人比率が約3割ということは残りは外形上7割に達する筈です。
しかし投資に参入している銀行の株式に占める外国人比率が7〜8割になっていることや・ここ5〜6年以上前から、外国人投資は株式比率を下げて債券市場中心に移行している実情を前提にすれば、金融機関や事業会社の韓国株式市場での総投資額には、この外国人資本の運用としての側面が大きいので、前回書いた通り実質的な外国人比率・意見の強さを見るには個人金融資産から追って行くことにした(外形上3割と実質の違いを見るための)分析をして来たものですから、開きが出るのは当然です。
ついでに韓国での外国人投資家の定義を書いておきますと、外国人投資登録は、韓国に半年以上居住していない人にだけ外国人投資登録が強制されているそうですから、外国人投資家の全部ではないことになります。
しかも、韓国では個人株主の内いわゆる財閥の一族保有比率が圧倒的ですから、一般人の保有株式はホンの僅かとなります。
比較のために日本の個人金融資産を日銀の発表でみますと、2011年9月末で1471兆円(韓国の約200倍)となっています。
日本全体の発行済み株式の保有比率については
   平成2 3 年6 月2 0 日付
   株式会社 東京証券取引所
   株式会社 大阪証券取引所
   株式会社 名古屋証券取引所
   証券会員制法人 福岡証券取引所
   証券会員制法人 札幌証券取引所
連名による「平成22年度株式分布状況調査の調査結果について」と題するデータがあります。
上記は平成23年3月末のデータですが、(平成23年度分・24年3月末分の統計は24年6月まで出ません)変化は緩慢ですからこの表でも傾向が分ります。
(毎年0、0何ポイントの変化があるかどうかです・・ちなみに外国人比率は3月11日の大震災後の大幅売り越にも拘らず前年度と変わってません)
別表4によると金融機関が29、7%、事業法人21、2%証券会社1、8%、政府公共団体0、3%、外国人(企業)の株式保有比率は、26、0%に過ぎず、個人株式保有比率は20、3%となっています。
同データ別表5によると株主数は延べですが、4591万人となっています。
延べ人数とは、各企業の名寄せが出来ないので個人が仮に10銘柄(10企業の株式)保有していると10人とカウントされるという意味です。
従って個人の保有銘柄平均が出ないと本当の個人参加者数が出ませんが、これは名寄せが出来ない限りアンケートのような概括集計しかできないので、今のところ正確なデータとしては公表出来ない・・後は各人の推計でやって下さいということでしょう。
私の個人的経験では、(遺産相続事件でよく出て来る株式保有表)多い人で10銘柄前後ですから、遺産で争うほどの資産家は50〜100人に一人もいるかどうかですが、最近の若者によるネット参入増の現象を見れば、小額多数銘柄取引が多いのでこういう人の平均数は20〜30銘柄前後になっていると思われます。
ネットユーザーと従来型(高齢者)保有者の平均をすると今では15〜20銘柄保有が平均と言えるかも知れません。
仮に10銘柄平均で459万人、20銘柄平均で230万人が参加していることになり、15銘柄平均で345万人が参加していることになります。
個人が時価総額で2割以上も保有していて、しかも一部富裕層だけのものでなく、もの凄く細かく散らばっている我が国では政治家だけではなく経営者も・・庶民の声を無視出来ないことが分ります。
韓国では、大学を出てもマトモな就職先がなくて(あっても30代で直ぐに追い出されることが多いなど)非正規雇用その他で国民はやられっぱなし・・塗炭の苦しみですが、・・企業経営者や政治指導者の目線は李氏朝鮮時代の両班政治同様に国民に向き合う伝統・・歴史がない上に株主構成が上記のようになっているのですから当然です。
・・国民の不満のはけ口として、日本叩きを激しくするしかないのは、大きな国内矛盾を抱える中国と同じです。

海外投資家比率(国民の利益)1

アングロ・サクソン流のエゲツナイアジア通貨危機の演出で株式やウオンが大暴落したところで救済と称して資金を投入する・・ウマイ具合に企業が乗っ取られてしまったようなものです。
サムスン電子の場合海外投資家比率55%以上と言われていますが、韓国の個人株主比率がこの後に書くように11%とすれば、残り35%が機関投資家保有となります。
韓国の機関投資家の外国投資家比率についてはOctober 3, 2011労働分配率1(韓国民の悲劇)出で紹介しましたが、銀行・金融機関関係の外国人株主比率はおおむね77〜78%になっているようです。
そうすると35%の7〜8割が外国人ですから全体の27〜28%がこの段階で外国人に流れます。
結果的に55%のサムスンでも、儲け全体の7〜8割が海外資本家に流れる感じです。
サムスンに限らずいろんな企業の外国人比率が上がって来るとそれら企業同士の持ち合いの結果、実質的には大変な比率に上がってしまいます。
この比率がもっと上がって行くとこれをもって韓国企業と言えるのか、中国清朝末期〜辛亥革命〜中国共産党樹立時に批判された買弁資本家(民族資本家との対立概念でしょう)とどう違うのかの問題になって行きます。
会社の関心が株主の意向に左右されがちなのは当然ですが、余りにも海外投資家比率が高くなると、工場・生産拠点のある国の国民への配慮が二の次になるのは自然の流れです。
我が国企業は、企業である以上は利潤を目的とはしているものの、最後の最後まで従業員を守る意識が強いのとはその点が大きく違います。
韓国企業や政治は「今度はこのやり方が良い」となれば直ぐに方向転換出来るのは、国民の意向・痛みなど問題にしない本質があるからでしょう。
その結果何か決めるとなれば、性急に進める結果(効率は良いのですが・・・)流血の惨事を引き起こす大騒動になることが多いのですが、そこは中国同様に圧政の歴史が長いので、力さえあれば押さえ込んでしまえば、いくら騒いでもそれでおしまいという国柄です。
上記のように、韓国では海外株主資本家比率が高い企業が多いので、サムスンその他の大業ががいくら儲けても国民にとってはその恩恵は今でも半分の半分程度しか意味のないことになりつつあるようです。
しかも個人投資家と言っても戦前の日本みたいに財閥形式の経済ですから、保有者が偏ってるのでなお大変です。
一般庶民を使い捨ての駒みたいに扱い、賃金競争に不利となればあっさり海外展開してしまいます。
(日本企業が中国の人件費等が上がればベトナム等へ移転しようかと簡単に考えるのと同じです)
この結果労働条件では非正規雇用中心の社会となり、片や国民は(そんな国に愛着がないので)少しでもお金が貯まれば外国籍の取得に精出すようになっています。
中国もそうですが国民がチャンスさえあれば外国籍をとりたいと願望している国っておかしな国ではないでしょうか?
中国や韓国人の行動原理を見ていると、市場万能主義というよりは、拝金主義という方がぴったりではないでしょうか?
お金だけに価値をおいた社会では、お互いに国民・同胞をどうするという意識が育たなかった感じです。
ところで純債権国と言っても、結局は個人金融資産の総額しか価値・意味がないことについて以前どこかに書きました。
例えば日本の企業が海外に債権や鉱物採掘権を持っているとしても、その株式保有者の大部分が外国人であれば、実際に持っているのは外国人になってしまいます。

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