徴用工と国内法論理(米中対決の相似形?)1

現在の米中対決もこの種の議論・中国の米国追い上げに対する米国の危機感によるというのが一般的で、韓国と日本の対立激化とどこか相似形です。
解説メデイアが同じだから、同じ視点の関心で事実調査し意見を書くからでしょうか?
米国時間5月10日午前0時01分以来の新規関税上げに続いて15日頃のファーウエィに対する取引原則禁止発表へと大規模経済対決が始まり、ファーウエィの方は自力で半導体等を賄えるので痛手ではないという同社会長の強気発言が19日頃の日経新聞に出ていました。
アメリカが規制発表するには、当然ファーウエィーの自己開発力や調達力等その後の動きの吟味を経た上でのことでしょうし、情報戦でしょうから双方の意見を鵜呑みにはできませんが、日本と韓国の対立も貿易制限に発展するには同じようなチェックが必要です。
対日依存度低下論に感情で反発するのではなく、データによる反論・解説が必要です。
本当に米国が対中締め出しで勝てるか?ファーウエィ締め出して却って米国の発展が阻害されるかは、ファーウエィの潜在能力如何にかかります。
これらの疑問に答える必要同様に、日本もネットで盛んな「韓国相手にせず論」で大丈夫かの分析が必須です。
日本企業の韓国外し・日本企業が韓国企業に供給している部品等の資本材輸出を禁止〜縮小して行くことが可能か自分の首を締めるかの分析意見が欲しいところです。
米中対決の場合は、米国の与国の多くが米国の締め出しに協力するでしょうから、冷戦時代のココム・チンコムの再来が可能か?の問題と、当時に比べて西側諸国と中国との関係はもっと入り組んでいるので再来自体が変質するので、その効果の見極めが複雑です。
ただし、メルケル氏が中国へ8回ほど訪問しているの日本へは1回も来ない・批判の強さに放置できなくなって仕方なしに、日本へ半日ほど立ち寄ったことを紹介したことがありますが、一時期に比べてドイツひいてはEUの中国一辺倒が目に見えるように弱ってきました。
ドイツやフランス政府の対中批判が増えてきたのは、日本撤退の穴埋めを狙って中国へ進出してみたが、甘言につられて進出して数年〜4〜5年経ってみるとひどい目にあったと不満を抱いている企業が多くなってきたからでしょう。
これに対し日韓規制競争の場合には、日韓だけの問題で日本は西欧諸国に正面から協力を求めるのは困難でしょう。
せいぜい同調的立場を取ってもらうのがやっとで、中国の反日暴動時同様に西側先進国は日本の抜けた穴埋めにチャンスとばかりに韓国に進出する方に傾くでしょうから、いま韓国が日本製品に頼っていると言っても部材の品質レベルが高いだけのことで、ドイツ等の技術導入で数%くらい使い勝手が悪くともあるいは故障が多くてもほぼ同様の製品を作れないことはありません。
世界競争は数%でも品質が悪いと市場では売上が3〜4割も変わることがあるので、日本は韓国へ供給を止めた余力を次順位レベルの国に技術供与に成功するかどうかにかかってきます。
そしてこれを狙っているのが中国企業でしょう。
中国は、日本→韓国→中国への製造回路を日本→中国への直線回路にする方法を狙って韓国いじめを展開中とこれまで書いてきましたが、日本の嫌韓感情を煽って韓国の中抜きを奪おうとしている状態下での米中対決突入ですから、なおさら日本との直接関係パイプを広げたいのは目に見えています。
日本は米国への遠慮があって中国への技術移転はしにくいでしょうが、半導体装置等最先端技術ではない中レベル技術なら米国の規制に触れないので、今後韓国抜きの関係が進みそうです。
このような半端な関係は西欧諸国も同様でしょうから、米国の中国に対する発展阻害策は全面戦争状態ではないだけに、複雑関係になっていることがわかります。
戦国大名成立過程・・越後国や尾張国などの国内統一戦国大名成立過程で、国内諸豪族が自分に着くか敵に着くか、中立を決め込むかなどの読みが必須だったのと同じです。
米中対決でも品質競争に過ぎないから同じといえば同じですが、日本に同調して輸出制限に協力する国が皆無どころか日本が抜けた隙に食い込みたい国の方が多い(アメリカのように違反すると制裁する脅す力がない)点が日本の弱みです。
アメリカだって、中国が米国産小麦を買わないで中南米小麦を買っても文句言えないのと似てるいますが・・・。
戦争開始前に彼我の兵力を図るように、経済戦争では貿易制限が相手に与える被害と自国企業に与える影響を図らないで単に勇ましいことを言ってれば 済むものではありません。
ところで小塩氏の韓国の対日依存度低下論は貿易収支のみを比較して論じていますが、韓国の対日依存度低下の実態は、日本企業の現地化方針に基づいて韓国への工場進出によって高度部品資材等を韓国内で現地生産するようになった結果、部品輸入が減った面が大きい筈ですから、対日依存度低下は貿易統計だけではわかりません。
韓国進出企業が訴訟リスクを理由に韓国内工場を閉鎖あるいは縮小して東南アジアに転出可能か?
可能としても、韓国内の日系工場で経験を積んだ韓国人労働者を使えば韓国が国産化可能か、あるいは日本がダメならドイツ等他の先進国技術導入でなんとかなるかによってきます。
既存技術の国産化は可能でしょうが、技術は日進月歩ですので、日本企業撤退時の技術で止まってしまうかどうかが運命の分かれ目です。
北朝鮮が日本敗戦時に日本製の先端工場を丸々入手したにも関わらず、その後何ら発展せず同じ機械を使い続けるだけで修理すらまともにできないで終わった経験が痛いでしょう。
反日暴動時の中国がもはや日本から得るべき技術移転が終わったと豪語して松下の工場焼撃ちをそそのかしていたのですが、既存技術の移転が終わったとしてもその後新たな技術が日本から入らなくなって困ってしまって、(ドイツに頼ったのですがうまくいかなかったようです)15〜6年頃から再び日本に擦り寄り始めた経過を見てもわかるでしょう。
米中対決同様に、日韓対決を考えるにあたっても韓国進出の日本企業が韓国から引き上げて東南アジア等に工場移転する覚悟があるかが第一の問題になります。
せっかく現地に根付いている企業としては撤退となれば大きな被害になるので、反日暴動のような激しい問題が起きないで、徴用工の給与未払い請求程度(1企業仮に数千万〜1億程度飲むしりとられるだけでは撤退の判断ができないのが難点です。
戦後企業には自分は対象にならないので日系企業全部の問題ではなく被害がまだら模様の問題があります。
結局はチャイナプラスワン同様に、韓国での操業メリットが低くなり企業判断で東南アジアに転進するべきかどうか迷っている状態であれば、この機会に脱出しようとなるのでしょう。
結果的に政治リスクあるいは後押しは超短期の変数に過ぎず、企業の行動合理性の赴くところ・・市場原理の範囲内に尽きるようです。

司法と政治の棲み分け1・徴用工判決

韓国では、徴用工問題で日韓条約無視の判決が相次ぎ(29日に三菱重工を被告とする判決がある)そうですが、政治の世界で決めたことを司法権が蒸し返しを認めること自体が西洋法の原理に反した行為です。
今朝のMSNニュースからの引用です。
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/

韓国・文政権の目に余る「背信行為」で米韓に亀裂/ar-BBQagqE#page=2
古森 義久 2018/11/28 06:00
(古森 義久:ジャーナリスト、産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
トランプ政権にきわめて近い国際戦略問題の権威のエドワード・ルトワック氏は筆者のインタビューに応じた際、韓国の安全保障政策における一貫性の欠如を取り上げて「無責任国家」と断じた。
韓国が日本に対して慰安婦問題での外相合意を反故にしたり、徴用工問題で本来、政府同士で解決済みの補償要求をまた持ち出してくることを、「情緒的な未成熟民主主義」(米外交雑誌『フォーリン・ポリシー』のエリアス・グラル記者)と酷評する向きもある。

日本司法界は最高裁まで行くと三権分立の基本原理・・常識範囲にとどまって来たのに対して、韓国の裁判所は小賢しい法解釈は出来るものの基本法原理を理解できない・・この限度を弁えないと言うことでしょうか。
もちろん立場によって、韓国の判決を擁護する意見もありますから私の意見は一つの立場です。
一見国と国の協定無視のように見えますが、国と国の協定によって個々の国民の損害賠償請求権がなくなるわけがないという論理もあるでしょうし、その他の色な論理がありうるのでしょう。例えば原発訴訟のように設置運営基準にはしてるかどうかの裁判が許されるのと同じで立場によれば、考え方が違います。
結局法の裁きと言っても、その当時の国際システムがあっているかどうかです。
戦乱等による人的物的被害に対して個々人が相手国に請求すればいいといっても、実際上無理があるので、戦争終了時の条約で賠償金等で解決するのが普通でした。
賠償金等を得た資金を政府が国内還流して間接的に国民が潤う関係・・ファジーな関係で解決してきた歴史でした。
負けた方は被害に遭いっぱなしで泣き寝入りですが、それでも仕方ないという国際常識でやってきました。
国と国の協定は個人に関係がないと言えるならば、日本人も韓国や中国での投資金の返還請求や損害賠償あるいは、米国の空襲等によって殺された大量の人々が損害賠償請求できるようになりそうです。
そもそも徴用工問題で不思議なのは、日本でも学徒勤労動員で知られるように多くが無償または低賃金で?強制的に労働参加してきました。
(無償だったかどうかも具体的に知りませんし、徴用工訴訟が、賃金が安すぎたという訴訟かすら知りません。)
学徒勤労動員に関するウイキペデイアの記事を以下に部分紹介しますが、賃金の記述がありません。

1938年(昭和13年)国家総動員法が制定された
翌1939年(昭和14年)に国民徴用令が制定された。
1941年8月には学校報国隊が結成された[1]。10月16日、勅令で大学・高等学校・専門学校の修業年限の短縮が通達され、文部省は省令「大学学部等ノ在学年限又ハ修業年限ノ昭和十六年度臨時短縮ニ関スル件」を公布し、大学・専門学校・実業専門学校の修業年限を三か月短縮した。。[1]。
1943年(昭和18年)6月に東条内閣は「学徒戦時動員体制確立要綱」を閣議決定し、学校報国隊を強化し、戦技・特技・防空訓練を図り、女子は救護訓練を行った[1]。
1944年(昭和19年)1月、政府は「緊急国民勤労動員方策要綱」と「緊急学徒勤労動員方策要綱」を閣議決定した[1]
4月には全国学徒は軍需工場へ動員された[1]。文部省は「学徒勤労動員実施要領ニ関スル件」を発令した[1]。
1945年(昭和20年)8月15日の終戦の詔勅を聞いた動員学徒は340万人であった[1]。

以下は女子挺身隊に関するウイキペデイアの記事からです

1944年8月8日、内地に限定されていた国民徴用令が免除されていた外地の朝鮮の男子にも適用するとする「半島人労務者ノ移入ニ関スル件」の閣議決定がなされた[31]。

賃金という名目があろうとなかろうと労働者.兵士が生きていくには、生活費が必要です。
アメリカの奴隷制が崩壊したのは、「丸抱えの奴隷(働けない子供も病人も仕事のない時も養っていなければならない)よりは、労賃を払う労働者形態の方が安上がりであったからだ」・・現在流に言えば終身雇用よりも非正規の方がお互い合理的というのに通じる面があるようです・・という意見があります。
朝鮮人も当時日本国民であり日本の法に従って徴用された(法的根拠があり違法ではない)のに、朝鮮人だけ何故損害賠償請求できるか不明です。
日本人を後回しにして朝鮮人だけ優先徴用されたのではなく、上記によれば朝鮮人の方が最後まで徴用されなかったようです。
強制=奴隷労働・人権侵害だから実質違法というのであれば、当時の世界水準で判断すべきであって、現在の法基準で賃金が安すぎると言うのでは無理があります。
当時ほとんどの国民は衣食住でほぼ使い切ってしまうのが普通の時代に、現在の生活水準で手取り可処分所得が少なすぎると言う基準であれば極端でしょう。
賃金ではなく強制性が強いといえば徴兵の方が死に直面する過酷強制ですが、徴兵されたことに対して世界中で徴兵制が憲法違反だと過去に遡って国家相手に賠償請求しないのが普通ですが、工場労働だけなぜ賠償請求できるかも不明です。
新日鉄その他企業は、無償又は低廉な学徒動員による代わりに、政府に軍需品を低廉な価格で納入していたとすれば、今になって賠償請求されるとその差額の損害を国に請求できるのでしょうか?
日本人も損害賠償請求すれば良いのにしないだけのことと言うのでしょうか?
日本の場合ソ連軍による女子暴行・朝鮮に残してきた資産の横領など相手の特定ができないこととが多いので、泣き寝入りしているだけとも言えます。
韓国人だって新日鉄や三菱など企業だけ相手にするしかない点では同じというのかもしれません。
いろいろと素人としての疑問を書き連ねましたが、みんな頭の整理がつかない結果、不当な国だという感情論だけが渦巻くしかないのでしょう。
大手メデイアが意味もなく韓国の肩を持つ洗脳教育するのは困りますが、客観的説明はすべきでしょう・・こういう時こそ韓国の論理を整理して報道する義務があるのではないでしょうか?
徴用工訴訟の論理構造がもう一つ不明なので、憶測感情論に陥ったままですがこれを前提に書いていくと、古来から中国からいろんな文物が入ってきても、その基本原理を咀嚼できない民度がここに現れたように思われます。
戦後でいえば、北朝鮮は共産主義政権とは言うものの独裁・恐怖政治の副作用のみを取り入れているのと同じです。
そういう傾向の人も我が国にも一定割合でいますが、我が国の「何でも憲法違反」と言い募る勢力も同じ批判を受けるようになるでしょうが、今のところ思想界もこぞって小児病的傾向ですから、みんなで自己陶酔しているばかりのようで、当面救いがありません。
多分戦後教育で洗脳されて育った我々世代がこの世から卒業して、世代交代が進まない限り現実無視の「立憲」にこだわる古色蒼然たる傾向は変わらないと思われます。
ただ若手弁護士でも平和主義=非武装と図式的に信じ込んでいる人が一定数いるのに驚きますが、よほど育ちが良かったのでしょう。

徴用工訴訟と国内法論理(米中対決相似形?)6

勝又氏のブログに出ている韓国事情です。https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20190518.html

2019-05-18 05:00:00
韓国は、ウォン相場の下落と反比例して、日本への評価が高まっている。この理由は、2つあるようだ。
その一。ウォン相場急落=通貨危機という切迫感である。日本にSOSを打ち、救援して欲しいという潜在意識。
その二。徴用工問題をめぐる日韓関係の悪化である。韓国で日本企業の資産を売却した場合に起こる日本の報復懸念に基づく。仮に、韓国で通貨危機が起こった上に日本の報復を受けたら、韓国経済は立ちゆかなくなる。その恐怖感が、「反日」から一転して「親日風」にさせているのだろう。現金なものだ。
『韓国経済新聞』(5月16日付け)は、「『メード・イン・ジャパン』なければ生産困難な製品多い」と題する記事を掲載した。

韓国、「日本様々!」メード・イン・ジャパンなければ、経済「保たない」
『韓国経済新聞』(5月16日付け)は、「『メード・イン・ジャパン』なければ生産困難な製品多い」と題する記事を掲載した。
世界最高の競争力を持つ韓国の半導体、スマートフォン、ディスプレー製造業者は依然として日本の装置と素材、部品メーカーの技術力に依存している。日本企業がなければ「メード・イン・コリア」製品をまともに生産するのが困難なほどだ。
(1)「 世界のメモリー半導体業界で1位と2位のサムスン電子とSKハイニックスは半導体工程に使う高純度フッ化水素をステラケミファ、森田化学工業など日本企業からほとんどを輸入する。フッ化水素は半導体製造核心工程であるウエハーの洗浄と蝕刻に使われる。ソルブレーンなど韓国企業がフッ化水素生産に乗り出しているが、歴史が100年を超える日本企業の技術力には追いついていないと評価される」
(2)「 スマートフォン用有機ELパネル生産に必須の蒸着装備も日本製が大部分だ。キヤノン子会社のキヤノントッキが世界市場の90%以上を掌握している。大型ガラス基板に薄い膜を均一に形成する技術力を保有しているためだ。機器1台当たりの価格が1000億ウォンを超えるのにサムスンディスプレー、LGディスプレーなど韓国の主要ディスプレーメーカーが装備を購入するため列を作って待つ」
(3)「昨年、韓国が日本との貿易で出した赤字は、240億ドルで世界1位だった。輸入半導体装備の34%、高張力鋼板の65%、プラスチックフィルムの43%を日本から輸入した。日本企業に対する過度な技術依存度が韓国看板企業のグローバル競争力を損ねるという懸念も出ている。

上記のような記事が韓国内報道で出ると嫌韓派には気持ち良いでしょうが、これに慢心していると足元をすくわれる危険があります。
対日依存度低下論は、韓国の対日批判の背景について日本側の推測記事・意見であって、韓国人が「もう日本には世話になりませんから言いたいことを言います」と主張しているわけではないのに、日本の勝手な憶測をもとに頭にきて?強硬態度に出るのは行き過ぎです。
法律相談で、自分の意見が通らないと、貧乏人は死ねというのか!とか、弱いものは泣き寝入りするしかないのか!などと感情的反応する人がいたり、企業の相談でも客が何を要求してもお店の方は何でも言う通りにするしかないのか!など、時々短絡反応する人がいますが、あなたのやり方はやり過ぎで許されないが、そこまでやらない中間に多様な方法があるという説明の前に、一足飛びの結論を出したがる人がいます。
デュープロセス・物事には手順があるという程度のことですが、相談事例やトラブル事例の多くでは、一足飛びの反応がトラブルになっていることが多いものです。

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