我が国の文化受入れ態度2

明治維新当時の民法、商法や刑事法の制定過程を06/04/03「民法制定当時の事情(民法典論争1)07/26/05や「明治以降の裁判所の設置7(破毀院と大審院1)」等で連載紹介しましたが、明治初期からフランスの学者を雇い入れて、フランス式法制度の導入に力を入れていましたが、結局明治30年代に入ってボワソナード民法やロエスレル商法のフランス法から、ドイツ法に切り替えて施行しました。
幕末からの付き合いで、英米やフランスの方式・・当時の覇権・流行思考様式が充分に入って来ていましたが、我が国は英米をニワカ(成金的)国家・文化がないことを見抜いていたのです。
最近パクり国家的フランス文化のメッキが剥げて、本家のイタリア系文化が見直されているのはこのような動きの一環です。
明治以降敗戦までに西洋式思考・・和魂洋才に関しては、ドイツ由来の学問基礎が根付いている結果、戦後70年に及ぶ米国支配でも米国式学問・マスコミによる誘導は庶民にしか効果がない・・上滑りな影響しか与えていない気の毒な原因です。
我々法律界でも「英米法」とカギ括弧付きで理解しているだけで、今でもこう言う変わった法律制度があるよ!程度の、理解に留まっている人が主流であることから分ります。
アメリカかぶれから見れば、日本の思考方式が世界の潮流に遅れているとなるのでしょうが、結果としてみれば日本人の論理思考形式がドイツ的に考えて行く方が馴染み易いことを表しています。
是非は別として、アメリカ主導の国際経済秩序・・IMF体制・IMF主導の各種経済処方箋に対して懐疑的な意見を持っている人が日本人の大方だと思います。
中国では、アメリカ留学組のMBA取得者を多く抱えてそのまま経済政策をしようとしていますが、畳の上の水泳修練のようなMBA取得者の意見で実体経済を運営出来る筈がないと言うの我が国では大方の意見ですが、中韓ではそのまま幅を利かすようですから驚きです。
ですから、アジア危機でも欧州危機でもIMF仕込みの処方箋は実態無視の強制である・・と言う意識が強いので、ギリシャ等が抵抗するのは当然であると我が国では受け止めています。
アメリカにとっては、アメリカのMBA取得者が何の影響力も持てない日本は面白くない国でしょう。
金融資本主義・市場経済万能主義はアメリカがいうので「そうですか?」と受入れていますが、本音では、「どこか胡散臭い」と思いながら仕方なしに参加しているのが多くの日本人ではないでしょうか?
経済活動もいわゆる和魂洋才で(英語を話せないと通じないと言う程度の意識で)アメリカ式に国際展開していますが、心からそう思っている経営者は滅多にいないでしょう。
日産は経営者まで外国人にして、報酬も日本基準からすれば破格ですが、多くはこれに違和感を抱きトヨタ方式を支持していると思われます。
戦後アメリカは日本占領政策の一環として、報道界に虚偽歴史を報道するように強制して来たこと(私もこのコラムで何回も書いていますし)が最近分ってきましたが、国民は心底から受入れていたものではなく、この上滑りの文化侵略に迎合したのは、マスコミ・文化人だけでした。
何千年単位で出来上がっている日本の基礎的な文化破壊は愚か、明治維新後導入した西洋文化・・基礎に出来上がっているドイツ法(即ちドイツ式思考方法)ドイツ文化(音楽等)理解を根こそぎ奪うことが出来ませんでした。
とは言え、アメリカの音楽もかなり根付いています・・・今ではジャズの本場が日本に移りつつありますが、佛教が入っても神社崇拝はなくならなかったし、漢詩が入っても万葉以来の和歌が更に発展して来たし、洋画が入って来ても日本画が更に発展したように日本文化を棄てて受入れているのでありません。
美術館は別として、売り絵となる(即ち公的資金ではない自分のポケットマネーを払って買う・消費者の支持を受けている)のは日本画です。
ジャズが定着したのは、和魂洋才の応用編で、中国の過去の優れたものが中国で消滅しても日本定着して残っているのと同様の文化受け入れスタイルの現在版と言えるでしょう。

我が国の文化受入れ態度1

ドイツの最近の対中国接近等の動きを見ると、(昨日紹介した鳩山政権同様に)充分に考えないで目先の損得・国民受けを狙ってあわてて行動しているような印象です。
ドイツは長い中世時代には領邦国家であった関係で地域間競争があった点は我が国と同様で、じっくり社会の成熟と文化を育んでいたので、その点が強みです。
英仏では王権が強かったので早くから、国家一丸として時代の進運に逸早く対応出来る・・重商主義政策に邁進出来た優位性がありました。
歴史教育では、ナポレンによる民族国家成立を理由にしていますが、その前のルイ大陽王の時代は民族国家成立前ですから、その成功は中央集権制度確立の成果によると言うべきです。
その代わり、中央集権制の宿命で国内競争が弱いので、国内的に文化成熟しなかった(フランスの得意とするものの多くはイタリア文化のパクリです)と思われます。
日本では庶民相手に浮世絵や歌舞伎、俳句、落語その他の芸術が花開いているのに、西洋では、王侯貴族相手の肖像画程度しか芸術や音楽がなかった原因です。
統一の遅れていたイタリアでは、今でもフェラーリや料理文化などの各種の技術があるように、ドイツでも、領邦制が国際展開が遅れる関係であった代わりに、国内諸候の領土主権が強固であった分、競合する技術や文化発達の歴史を持っていました。
これがドイツイタリア共通に音楽が高度に発達し各種技術力が高い所以でしょう。
ドイツは封建制のために国内諸候に対する対応に忙殺されていた外に、西洋の端っこ・田舎にいたために都会人としての気配りや国際情勢対応能力が身に付いていない点は宿命的です。
(・・このために宗教戦争の舞台にされて外国軍がドイツで入り乱れて30年も戦うようになったなど)
田舎者のままで機敏な国際対応能力が劣ってはいますが、同じ国際体制が続くと、国内技術・文化の厚みが底力を発揮するので、ドイツが地力を発揮する前に作られた国際秩序がドイツの底力と合わなくなってきます。
第一次、第二次世界大戦も大きな目で見れば、実力に比例した国際交渉能力不足を武力で解決しようとした結果とも言えます。
この弊害克服のために、EUは、設立当初からドイツの意見が入って作られた初の国際制度ですが、今回南欧諸国に対するEU処理の混乱は、田舎者のドイツが牛耳っているので、うまく行かない面があると思ってみています。
我が国は、ドイツ同様の封建制でしたから、各地領主ごとの経済(特産品)競争があり国際経済組織としての為替制度など発達していたほか、いろんな文化が西洋よりも発達していました。
明治維新の大変革時でも我が国は、当時圧倒的覇権国家だった英米の統治方式をあわててそのまま取り入れませんでした。
古代佛教や律令制の取り入れや儒教の取り入れ、キリスト教の受入れ・・等々我が国はその都度智恵を働かせて慎重に対応して日本人の精神(和魂洋才)を大事にして来たのですから、本当に祖先は偉かったと思います。
左翼・人権派系は(兎も角)「世界の流行に乗り遅れるな」今では国際人権委員会の動きがどうのと言う主張・・思考方式が普通です。
英米思想の根本=ユダヤ系の金融資本主義であり、「宣伝に勝ちさえすれば良い方式」ですが、今はアメリカ支配だからとそれ一色で進みたいのが日本の文化人です。
中韓では、国を挙げてこれが良いと思ったら一直線に全面取り入れですから改革は早く(韓国ではアメリカ支配になるとすぐにキリスト教徒が多数になっていますし・法制度の改革も急激です)「金儲けにさえなれば何でも良い」「噓でも何でも宣伝戦に勝ちさえすれば良い」と言う思想そのままに邁進している様子です。
韓国は「アメリカの力が落ちて中国の時代が来そうだ」となれば中国寄りに露骨に舵を切ります。
中国政府の主導するアジアインフラ銀行に乗り遅れるな・・政府の判断ミスだと言う政府批判が一時マスコミを賑わせましたが、ネット発信による批判によって、すぐにトーンダウンして来ました。
ネットの発達によって、中韓寄りのマスコミによる世論誘導力(何故誘導したいのか不思議ですが・・)が格段に落ちて来たことが分ります。
明治維新直後・自由民権派によるヤイノヤイノの憲法制定要求には、政府は拙速に応じませんでした。
20年近くもかけてじっくり市町村制度など地方制度を整備しながら、世界の実情を調査研究した上で、(帝国憲法は明治22年発布です)国情が似ている上に、実際には長い歴史経過を見るとドイツ諸国の方が文化その他の基礎が進んでいると見抜いた我が国は、法制度や医学・文化学問の基本をドイツから学ぶことにした智恵と似ています。
緊急に決めるべきことと、充分な準備時間をかけて慎重にやるべきことの区別をしてこそ大人の智恵と言うものでしょう。

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