上皇の生活費を内廷費に加える疑問2

皇太子になると東宮御所として住む場所も違うし行楽等のお出かけ単位も別々、お付きの職員も違うのが古来からのしきたりですから、これを天皇家と同一世帯とは昔から言わなかったでしょう。
古代からそれぞれ生活費拠出者の妻の実家が違う以上は、別世帯感覚だったのではないでしょうか?
内廷費に天皇家と成人した皇太子一家あるいは天皇家と上皇家の家計を一緒にした内廷費を決めて「後は自分たちで決めて下さい」というやり方は、生活保護で言えば、親世代夫婦と子供世代夫婦が別に生活しているのに「一括支給するのであとは自分たちで分配して下さい」と言うのと似ています。
内廷費がここ20年ほど変化ないようですが、民間人同様高齢化で3世代世帯時代になっている・・このため長期にわたる高齢化世帯の生活費問題・・年金持続性が社会問題になっている・・天皇家でも高齢化による負担増は同じです。
約20年で急速に変化した高齢社会問題化が進む中で、過去20年間以上も同額据え置き・・しかも上皇一家も内廷費に組み込まれるのであれば、実質減額ではないでしょうか?
http://news.livedoor.com/article/detail/12666674/

天皇陛下の「譲位」で浮上 「皇室の予算と財産」の問題
2017年2月13日 12時0分
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山下氏は、皇室をめぐる一連のカネの問題について「戦後70 年間、状況が変わっても、法律の見直しをおこなわなかったことが一因」と語る。
皇室の未来を見据えた法の大改正が、今こそ必要なのだ。<皇室費の内訳をザックリ解説!>
【内廷費】3億2400万円
天皇・皇后両陛下、皇太子ご一家の日常費用。年間額が定められている。「’96年度より同額で、8100万円ずつ年4回支払われます。用途の3分の1は、内廷職員の人件費

一例を挙げれば、天皇家の場合、お出かけになると入場料(美術館1800円の場合)は無償でも入場料以上の身分相応のお下賜金を(相手にとっては接遇のための人件費、警備・入場規制その他莫大なコストがかかります)支出する必要があり、一般人の交際費と比較になりません。
一般人が結婚式に招待されて会費徴収がなくとも会費相当額以上のお祝い金を包むのと同じです。
上記記事は天皇家・皇室経費に対して批判的論調でこの機会に見直すべきという論旨です。しかし、この20年間・物価は上がらなかったにしても高齢化・/人生と100年時代に入りつつある現在、違った角度からの見直しが必要と思います。
一般家庭を例にイメージ的に表現すると、残されたお婆ちゃま、お爺様が息子や娘夫婦と同居して8畳間程度の隠居部屋で日向ぼっこしているイメージの生活・・ちょっとした手元小遣いがあれば足りる想定・これが国民年金支給が月額6〜7万円の制度設計でした。
ところが長寿化の進展で定年後の寿命が延びたことで、80歳前後まで夫婦揃っているのが普通になってくると定年後次世代と同居する人が少数になり親世代と次世代の生活費一体化が崩壊して、大多数では世帯が別になってきました。
そうなると一軒の家の中で隠居部屋だけ維持するのと違い、生活費が二重に必要となり収入源が国民年金しかない高齢者の貧困を引き起こすようになっています。
もともと電気ガス水道や、家の維持あるいは家賃等生活費全部を年金で賄うようになっていなかったからです。
長寿化→年金支給期間の長期化による掛け金と支給額のバランスが悪くなっています。
例えば年金支給期間を10年間平均で想定していて掛け金を設定していた場合に、長寿化により受給期間が20年間に増えると論理的には支給額を半額にしないと収支があわず大幅赤字になります・・金利動向その他の修正要素がありますが以上は単純化意見です。
長寿化や想定外低金利等により年金収支が赤字化し、国庫負担が増える一方になっている状態では毎月支給額を増やすどころではないことから、受給開始年齢の引き上げや元気な人には働いていただき生活費の補充(自助努力)をしてもらうしかない状態に陥っているのが高齢化問題でしょう。
ここで内廷費が高齢化に対応していないのではないかの疑問に戻ります。
従来の内廷費制度は高齢社会が始まりつつあってもまだ少数派時代・・壮年期の天皇夫妻と成人前の宮様の核家族と、残された皇太后お一人がひっそり過ごされる標準パターンを前提としていたように見える点です。
昭和天皇が崩御されて初めて次世代天皇が即位したことが象徴するように、天皇即位後は、皇太后の細々とした生活費だけを前提にしていました。
これがれっきとした上皇御所となると公務員だけも昨日紹介したとおり65人も必要になる規模です。
これに比例して天皇家とは別の活発な行幸啓などの私的費用負担が増えるはずです。
皇室も高齢化の波は同じで、核家族プラス数年の余命を生きながらえる皇太后の細々とした生活費負担程度(旧来の大宮御所と上皇御所の違いです)とは違い、今や、天皇一家と上皇一家という民間で一般化している2世帯住宅・2世帯の生活様式になっています。
上記引用記事によれば内廷費の
「用途の3分の1は、内廷職員の人件費」
というのですからなおさら上皇御所となると大変です。
内廷費によって生活する消費単位(上皇になってもその生活費が内廷費に含まれるとなれば)が、(昔のように核家族プラスおばあさんが日向ぼっこしているだけの時代と違い)2倍近くなっている点を考慮すると20年以上前のまま、内廷費が同額据え置きのままでは実質大幅減額になっているのではないか?という視点での感想で書いてきました。
そのような視点での議論をした上で、もともと内廷費が高額すぎたという結論があるならば別ですが、そういう議論がないまま同額据え置きはおかしくないか?という疑問です。

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