政党と内閣支持率推移3(劇場型政治から安倍政権へ)

3月2日に紹介したグラフを見るとバブル崩壊後小泉政権を除けば政権獲得後すぐに幻滅に見舞われ短命内閣が続いたのを見ると、新時代に応じた人材養成期間が必要であったことがわかります。
キャッチアップ・調整型政治に慣れ親しんできた社会でいきなり構想力・実現力を求められても、そういう人材が産業界を含めた各種分野で中堅幹部等にしか昇進していなかった・・そう言う人材は海外子会社に飛ばされているなどすから、創意工夫・企画力のある人材が中枢に抜擢され昇進してくるまでの期間が必要です。
その間目くらまし的に劇場型・イメージ・パフォーマンス戦略に走るしかなかったのは・・・政治の足腰・前提たる実業界自全体が従来型キャッチアップ商法からどうやって脱皮・転換するかに苦しんでいたのですから、政治分野だけ成果をあげるようなアイデアがある訳が無い・堅実な裏付けのないパフォーマンスに終始したのは当然です。
パフォーマンス政治=実現性のない格好付け政治スローガンの意味とすれば、バブル崩壊後安倍政権に至るまでの各内閣を見ると、小泉氏以外のパフォーマンスが全て失敗した原因と小泉政権との相違点を見ると小泉氏以外は、鳩山氏の「少なくとも県外へ」同様にすべて前向き政策の提示でした。
バブル崩壊後政治家だけではなく、超円高と中国の開放による超低価格攻勢に実業界もどのように対応するか模索中でしたので、どう言う構造改革が必要か不明のまま「蛮勇を振るって改革する」という期待感を煽るだけでは(裏付がなく実行力を伴わなかった結果)政権発足直後失速した点では鳩山氏に限らず結果からみると保革を問いません。
鳩山氏は何をするか不明の構造改革論と違って「少なくとも県外へ」と焦点を絞った点で小泉劇場同様にインパクトがあったのですが、郵政民営化は国民がそのスローガンに熱狂さえすれば一定の法改正自体可能ですが、基地移転は相手が米国ですし、国内的に見ても移転先の同意・用地獲得などの手当てが必要ですから、熱狂・国内をいくら煽ってもどうにもならない・・スローガンの実現不可能性は素人にもすぐに判明した点で目立ったにすぎません。
小泉劇場の成功の秘訣は、野党の「〇〇反対」と同じ「ぶっ潰す」というだけで新たに何かする提案をしていない、出来もしない前向き政策を提案していません。
現行政策をストップするだけで具体的政治に対する期待感を煽らなかったので、既存政治家にいじめられているイメージだけ膨らませて、いじめられている人に対する同情心・判官贔屓で成功したものです。
「ぶっ壊す」のは、新たな制度構築に比べて権力者にとっては楽なことです。
たとえば道路をつくるといえば道路用地買収から予算までいろんな手順・実務能力が必要ですが、(「少なくとも県外へ」が失敗したのは受け入れ先の同意その他の実務がいるからです)中止ならば実行中の工事の次の工事の発注さえしなければ済みます。
小池氏はその真似をすればいいと思った・・まず最初の大政党を敵に回しての孤軍奮闘のイメージ戦略で有権者の同情心を掴み、都知事になって実際に何かする必要が出てくると築地市場の移転では、豊洲の粗探しで工事中断に持ち込みました。
オリンピックのエンブレムに始まる騒動も全て粗探しに始まって手続き中断を狙ったものでした。
築地移転もオリンピックも目先の注目期間が終わり、何のための中断だったか(停滞の損失)に関心が移る頃に総選挙になったので失速してしましたが、ともかく工事中断効果があったことは間違いがありません。
このように「やめる」だけならば、トップの権限で公約通りに実行可能な点が前向き政策との違いです。
民主党政権での「事業仕分け」が華々しかったのは、事業廃止だけだったので強引無茶な仕分けが可能だったにすぎません。
(馬に水を飲ませないことはできるが)「飲ませることはできない」という箴言の応用です。
革新系のように反対・粗探しによる議事・進行妨害だけならば国民の納得不要で簡単ですが、前向きの政策の場合には国民が自発的に動いてくれないと進まないので難しいので自己満足ではどうにもなりません。
小池氏のオリンピック問題のカラ騒ぎや築地移転のいちゃもん騒動では、以下の通りの大損失ですが関係者の協力不要で先送り可能でした。
オリンピックでは東京都以外の競技場検討というだけ言って大騒ぎした結果、競技場が元の予定に戻るなど関係者は不満だらけですが、国益のためになんとか間に合わすしかない・仕方なしの協力関係になっています。
築地移転に至っては具体的損害が出ています。、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201707/CK2017073102000110.html

2017年7月31日 朝刊
東京都の築地市場(中央区)から豊洲市場(江東区)への移転延期が長引き、築地市場の建物解体工事を都から受注した業者が困惑している。移転時期が不明なため、都が契約解除を求めているためだ。業者にとっては大きな仕事を成し遂げて実績にしたいとの思いがあり、「落札した契約を都の都合で破棄されるなんて聞いたことがない」と反発している。 (唐沢裕亮)

http://ytanaka.g.dgdg.jp/toyosubook/ebook-8.pdf

大騒ぎをし、数百億円の損失を残した、豊洲移転延期騒動は何だったのか

上記では各分野の中断による損害を弾いていますが、省略します。
小池氏は、次の予定された次の工事着工OKの印鑑を押さないだけでは格好がつかないので、過去の決定手続き過程調査が必要と言って時間稼ぎをしていたように見られてしまいました。
パフォーマンス政治脱却に成功した安倍政権(BtoCからBtoBへの実業界の対応が進んできたことが背景)時代になっても、まだパフォーマンス劇場型の小型版・・二番煎じで支持率を維持できると誤解していたのでしょうか。
バブル崩壊後次から次へと政権が交代してもその都度支持率急落の連続でしたが、3月2日紹介のグラフで第二次安倍政権の支持率を見ると、派手なパフォーマンス不要で内閣支持率が党支持率を長期安定的に上回っている初の本格政権になっていることが分かります。
安倍政権が次々次繰り出す政策が良いから経済順調・支持率維持なのか、経済が息を吹き返した時に政権獲得したから支持率が安定しているのかの関係は不明ですが・・。
内閣支持率の安定こそ政敵・野党に限らず中韓等敵対国は、政権党を攻撃するよりは先ずは安倍政権打倒に必死になっているのでしょう。
60年安保以降〜高度成長期以降の野党の動きを見ると体制(政策)選択の主張で競争するのは無理が出てきたので、各種反対運動や国会議事妨害目的になって行き、清水幾太郎がそのように変化していった丸山真男ら主流的文化人らと反目するようになっていったことをFebruary 23, 2018,に紹介しました。
「何でも反対」論は、四日市の公害や熊本の水俣病などによる公害反対激化したころまでは社会的意義のあるものもありましたが、駅前商店街(零細商店)を守れなどの反対になってくると市中心部の空洞化の原因となり、空港立地や高速道路反対・工場立地反対など地域経済に対するマイナスが目に見えてきました。

政党と内閣支持率推移3(小泉〜小池劇場)

バブル崩壊以降は長期低迷打破・・局面打開期待に応じて、就任当初の期待感人気で内閣支持率が高くなるものの実際にはどうして良いか不明時代ですから、就任直後から内閣支持率が急減し政党支持率以下に下がる短命内閣が続いたことが3月2日に紹介したグラフでわかります。
小泉内閣になって初めて恒常的に党支持率を逆転するようになったのは、社会構造の何を大胆に構造改革できたのか、単なるパフォーマンスの連続・目眩し「劇場型政治」が成功したに過ぎなかったかは、(小池劇場はこの模倣と言われましたが失敗しました)私にはわかっていません。
「1内閣1テーマ=郵政改革の成果」だけで「よし」とするかの評価の問題です。
ゆうちょ民営化の原型はすでに中曽根内閣の民営化路線でレールが敷かれていたのですから、無数にある公的事業民営化流れの一つに挑戦しただけです。
小池新党の選挙公約のお粗末さについてその頃に連載しました。
中曽根内閣の民営化は、国鉄民営化等いわゆる3公社5現業に限らず、その後各種広範な国営事業民営化改革に連なり、今や国立大学や国立病院も博物館も今は「国直営の国立」」ではありません。
この動きは国関連の道路公団その他各種公団の民営化につらなり、地方自治体の公益事業や公民館等の民営化や民間委託部門の拡大など今なお裾野を広げつつあります。
上記に比べて郵政民営化騒動は何であったか?日本社会に何を残したのかどのような波及効果があったのかまるで見えません。
金融部門に限定しても、郵貯が民営化されたことによって、日本の金融業務慣行がどのように変わってどのような利便性を持つようになったのか、国際競争力強化にどういう効果があったのか?他の金融機関の進化にどんな影響を与えたのでしょうか?
金融部門の中の1業態・たとえば信用金庫制度をなくす程度?の部分改革・・改革と言えるのか不明ですが、ともかく世の中の不満・閉塞感に訴えるために既存権力システムに挑戦しているパフォーマンスを示しただけではなかったでしょうか?
小泉改革は社会の構造変革ではなく、その後に野党の主張・流行となった隠れ資金・特別会計などの埋蔵金がある筈!運動の先駆け・・財投資金を明朗化する程度で終わったのではないでしょうか?
財務省は豊富な郵貯資金の取り入れによる財投政資金なくなり、その分赤字国債に頼るようになります。
ただその頃に書いた記憶ですが、郵貯資金でも国民に返すべき貯金ですから、いつか返さねばならない国債と実は同じです。
郵貯の場合満期が来てもそのまま更新する人が多いので事実上返さなくて良いのですが、国債だって企業の社債だって借換債を前提にしている点は同じです。
国債や社債の場合、満期時の市場の信認に頼る点が大きな違いのように見えますが・・.郵貯だって高金利時代になれば、相場に金利を合わせないと更新してくれない点は同じです。
小泉政権は自己を目立たせるため自民党の支持基盤解体に挑戦し、支持基盤の弱体化に成功した結果、その後遺症・・支持基盤の再構築に自民党が苦しむようになって短命政権が連続し、ついには野党に転落した原因です。
小泉氏が今でもメデイアや野党系に人気のある所以です。
「自民党をぶっ潰す」というスローガンを掲げて党首になった小泉氏が、自民党の強固な支持基盤であった各地の特定郵便局の解体に向けた郵政民営化攻撃・・・周囲から冷ややかに見られている中でドンキホーテばりの突撃は反自民のメデイアの賞賛・脚光を浴びる文字通りのパフォーマンスで人気取り・メデイアの支援を受ける相乗効果を狙ったものでした。
この辺は「小池劇場」と言われた一連の騒動も如何にも強いものに挑戦するかのような方向性は小泉氏と同じですが、実は相手は本当に強い安倍政権に正面から挑戦せずにすでに15年以上前に退陣した元総理と、猪瀬舛添2人の後任都知事の前に退陣している80代の高齢元都知事をやり玉にあげる点で異常でした。
すでに小泉政権の前の2000年ジャスト頃に退陣した森元総理の主催するオリンピック委員会の既存路線のひっくり返しによりそのボスである森元総理に恥をかかせることから始まり、この決着がつかないうちに築地市場移転問題もひっくり返し、何期(猪瀬〜舛添)も前に高齢化を理由に現役を退いた老人・・社会弱者になっている石原元都知事を公開の場に引き出して(100条委は強制力があります)何年も前の細かな決定経緯を問い詰めるなどでした。
ウイキペデイアの記事です。

百条調査権の発動に際しては、証言・若しくは資料提出拒否に対し禁錮刑を含む罰則(同条第3項)が定められており、国会の国政調査権(日本国憲法第62条)に相当するものである。議会の議決にあたっての補助的権限、執行機関に対する監視機能、世論を喚起する作用等を有している。

不正行為の有無等であれば事実経過確認が重要ですが、政治決定の妥当性については結果に対する政治責任で評価するしかないのが原則です。
結果の妥当性に文句をつけられないから、手続き関与者に質問してイヤがらせしようとしたのでしょうが、パフォーマンスとは言え・・私なども数年前の言葉のやり取りを聞かれても書類記録に残っている以上の個人的記憶はほぼ100%ありません・・・ちょっと筋悪すぎた印象です。
個人が都知事に会った場合には滅多にないことなのでその時の記憶が強いでしょうが、都知事は超多忙で膨大な書類決済しているのですから、何年も前の決済事項を議会証言をさせるために呼びだすこと自体が異常です。
国民や(このままではオリンピックがどうなるのか)都民(市場関係者にとっては移転時期変更のために事業計画が止まったママになっている)ので早くきめてほしいのですから、必要なことは決定手続きが杜撰であったか否の確定(司法手続き)ではありません。
一見して都知事選挙に勝った勢いで弱った相手を吊るし上げようとした「弱いものいじめ」で決定でき兄弱さを隠すための時間稼ぎをしている印象を受けました。
退陣したパク大統領をすぐに逮捕拘留した韓国現在政治の印象を受けます。
議会で老人を吊るし上げても結局何も出ないで、築地移転がどうなるかについては約1年間工事が遅れたただけで終わり、オリンピック計画も見直しすると騒ぎを大きくしただけでほとんど変わりなく終わった印象です。
(地下水問題を解決した功績を言うでしょうが、こう言う不具合は工事進行過程でその程度出るのが普通ですから、その都度修正して行けばいい程度の問題であり選挙の争点だったか?という疑問です)
小池氏の選挙戦略はマスメデイア出身者らしくいかにもイメージ戦略過剰で裏づけになる政策が皆無であったように見えます。
(小池新党の公約は内容空疎であったことを連載しました)
何をするという責任ある政策提言ができないことから、60年安保以降革新系野党の国会戦術・資料が足りないとか審議時間が少ないなど手続き問題ばかり主張するようになった戦術と同じです。
都知事選自体が大政党のバックがないまま健気に闘うイメージで票を集めたものでしたし、その後は勢いに乗って個別に敵役を作りターゲットにする戦略で注目を浴びただけでその先何の展望・どうするかの政策が一切なかったのですぐに失速しましたが、国民はすでに内容のない小泉劇場を経験していたこと・個人攻撃に特化した点を嫌った・・見る目が肥えていたことが大きかったでしょう。

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