上海株暴落〜通貨切り下げ1

中韓と仲良くすべきかのテーマに戻ります。
日経新聞朝刊の経済論壇だったか、経済教室だったかには、6月3〜4日ころから「日韓関係は冷静になって仲良くすべきだ」と言う論文が、論者を入れ替えながら(結論が同じで)連載されていました。
その前には、中国主導のAIIB参加の必要性を誘導するかのような論説が続いていたことを批判的に紹介しましたが、それが終わると今度は韓国と仲直りの必要性の連載です。
ホントに日本の国益のための報道をしているのか、中国、韓国系の人材がマスコミに根を張っている結果なのか理解に苦しむ人が多いのではないでしょうか?
真実は誰にも分らないとしても、中韓が困り始めて中韓が何とか日本と修復したい状況になるとイキナリ中韓と仲良くしようと言い出す政治家やマスコミは基本的信用をなくしています。
論説の正しさを理解するには、前提になる中国や韓国の経済状態の客観的把握が重要です。
6月1日と2日に「勝又壽良の経済時評」5月18日付き記事からの引用で、中国が、07年からの短期間に27兆ドル(この数字単位は翻訳間違いである可能性があると書いてきました。。
・・(原稿はその頃に書いておいた先送り分です・・)
かりに3桁違ったとしても2700億ドル・・約30兆円)も対外借金を増やすとは尋常ではない規模ですが、中国は過剰生産力削減命令またはこれ以上の市場淘汰に任せると政権が持たない印象です.
上海株大暴落がその後に起きましたが、政府の強制介入・・売買強制停止や刑事処罰の強迫で小康状態ですが、経済実態の悪化を政府の力で長期的に誤摩化し切れるものでありません。
ここ数日の動きを追います。
8月10日の日経朝刊では、前年同期比1〜6月の業種別指標が掲載されていたので、これを11日のコラムに紹介したばかりですが、翌8月11日には、人民元基準値2%の切り下げ発表です。
7月輸出額が前年比8%減少に危機感(外貨不足の心配?)を感じた結果、発表直後にこの打開をすると表明していた結果が「2%強制切り下げ」と言うことらしいです。
8月12日朝刊3pには中国ではここ半年間で矢継ぎ早と言うか泥縄式の経済底入れ政策が続いていることが表になって出ています。
金融緩和は昨年から始まっていましたが、今年に入ってからは、2月、3月、4月、5月と毎月のように基準金利を下げていてもどうにならなくなって、(基準金利を半年に1回変更しても連続切り下げあるいは切り上げと報道するのが普通・・金融政策は間接効果期待ですから、効果が出るのに半年前後かかります・・これを毎月変更するのって金融政策の態をなしていないのではないかと思うのが普通の解釈ではないでしょうか?
12日夕刊には11日に続いて12日にも人民元基準値1、6%の連続利下げが発表されていました。
8月13日日経朝刊3pによれば、7月の一日あたり平均鋼材生産量が、前年同月比1、9%減、自動車も11、2%減(乗用車に限れば、26、2%減)発電量も2%減、消費小売り総額が、10、5%増と伸び率が前月比0、1ポイント下がったと書いています。
長江沿いに林立する重慶市の高層ビル群の空き室率が50%に迫るとも書いています。
いわば総崩れ状態ですから、これでは7%%成長に届かないではないか?と言うのが新聞の小見出し?ですから、不思議な意見です。
この統計から見れば、7%に届くかどうかよりは、マイナス何%になるかの議論をすべきではないでしょうか?
8月13日に仕事から帰って夕刊を見ると、今日もまた人民元1、1%の切り下げ報道です。
中国政府に言わせれば、相場の実勢に合わせただけ・・自由化を進めているだけと強弁するのでしょうが、それならば政府が強権的に基準値を毎日決めないで為替相場の自由に任せておけば良いことです。

通貨切り下げ4(インフレ7)

アメリカが貿易赤字の穴埋め用に無制限にドル印刷を始めてドル下落が現実化して来ると、新規国債の引き受けは新札発行で対応出来るとしても既に買った人までも売り急ぐので、マーケットでは暴落傾向になって行きます。
連銀は新発債だけではなく既発債の買い支えまでしなければならなくなり、金融秩序はメタメタになるしかないでしょう。
連銀が買い支えてくれるので、売り浴びせた外国人はアメリカから資金(ドルを円や人民元、ユーロその他そのときの信用出来る通貨や金に替えて)を回収しては海外に引き上げるばかりですから、アメリカドルは際限ない外貨両替要求に見舞われて大幅下落どころか大暴落して行きます。
愛国心に従って指をくわえて見ていると自分の保有している国債の価値がみるみる目減りして行くのですから、その内アメリカ国民も売り競争に参加して行かざるを得なくなり、発行済国債のすべてが連銀保有に入れ替わるまで続くことに成り兼ねません。
ドル紙幣印刷は無制限に出来るとしても、その結果ドルの信任が地に墜ちて来ると、大幅下落中のドルでの取引はどこの国の商人でも敬遠しますので、結果的に今のギリシャみたいになってドル以外の通貨(アメリカにとっては円も外貨です)でしか取引が出来なくなります。
ところが、アメリカの場合・基軸通貨という美名に安住していたので外貨準備が経済規模に比べてホンの少ししかありません。
この状態では、外貨不足を補うための自国通貨建ての起債が出来ないので、円やユーロ建てで起債をするしかありません。
10日ほど前にインドの公社債募集用紙がおくられてきましたが、これによると同じインドの債券が円建ての場合1、何%、アフリカランド建ての場合7、74%、ユーロ豪ドル建ての場合5、93%と通貨ごとに金利差がついていてどれを選びますか?の募集でした。
同じ発行体の社債なのに通貨の信用によって金利差がまるで違うのが経済のルールです。
買う方から言えば、為替下落リスクのある通貨で買うときには、かなりの高金利でないと買えませんし、日本円のように上がる可能性のある通貨建ての場合、金利が安くても売れます。
ドル札を刷り過ぎて自国通貨建て起債の出来なくなった段階で、アメリカは普通の貧困国以下・・デフォルトしたの同様の格式が転落し、基軸通貨どころではなくなり、信用をなくして自国通貨建ての取引すら出来なくなってしまいます。
以上の次第で、現在の債務超過状態から見ればアメリカドルは何時崩壊してもおかしくない状態ですから、アメリカドルに対する基軸通貨という名称は実体的根拠のない空疎なものに過ぎません。
アメリカは、シェールガスなどの埋蔵量を誇示したり、人件費低下による製造業の復活可能性などをアッピールしていますが、人件費が中国に負けないほど安いという「売り」では国民が浮かばれませんし、どこまで復活出来るのか・・結局は資源国(後進国)として生き残って行くしかないのかも知れません。

通貨切り下げ3(インフレ6)

韓国ではサムスンや現代自動車その他の快進撃、あるいは原発受注など躍進がいろいろ報道されている割に、国民の方は非正規雇用・・あるいは大卒の就職難、あるいは海外移住や外国籍取得意欲の激しさ、自殺率の高さ・・等々聞こえて来るのは企業の躍進が国民の豊かさに連動していない事象ばかりです。
日本では財政赤字に関連して個人金融資産の分厚さがいつも引き合いに出されるのに対して韓国の場合は個人負債の大きさがクローズアップされています。
プラザ合意以降約30年間に及ぶ円高傾向の結果、(プラザ合意以前は1ドル250円前後で今は80円前後です・・)日本ではデフレ継続で企業や政府(組織)が苦しくなり国民個々人が豊かになったのに対して、そのころから通貨安政策に徹して来た韓国では逆の結果・・企業が伸びたのに対して個々人がやせ細っていたという比喩が出来るでしょうか?
ちなみに4月17日日経夕刊5ページの投資講座では、「過去25年のビックマックの価格差を書いていますが、日本ではやや下落しアメリカでは2、5倍になっているとのことで、この値段に釣り合う為替レートとしては86年に1ドル231円、11年は79円に該当し、ドルは66%も下落しているとのことです。
円表示でこの間の国内生産高がじりじり上がっているし、仮に同じとしても日本はドル表示で66%も生活水準が上がっているのに対し、アメリカではドルが66%下落している(同じ給与でも実質は66%減額です)のですからアメリカ人も大変です。
昨日、4月16日の例は分り易く数字を2倍にしただけであって、これが1、5倍でも1、2倍でも経済効果は同じです。
まして、インフレ対応による国内給与引き上げは、物価が上がってからの対応のために約1年くらい遅くなりますので国民にとってはもっとしわ寄せがきつくなります。http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2011121621408(東亜日報)によると以下のとおりです。
「中央銀行の韓国銀行(韓銀)が15日に発表した「第3四半期資金循環」によると、
家計部門の純金融資産(金融資産から金融負債を引いた差額)は3四半期末現在、
1146兆2000億ウォンに集計された。
これは2四半期末の1207兆7000億ウォンに比べて61兆5000億ウォンが減少したのだ。
このような減少幅は関連統計が作成されて以来、最も大きい数値だ。
韓銀の資金循環表上、家計は純粋な家計や小規模個人事業者、非営利団体を含める。
家計の金融資産は3四半期末2216兆9000億ウォンで前期対比41兆ウォンぐらい目減りした。
反面、家計部門の金融負債は第2四半期末の1050兆1000億ウォンから
3四半期末1070兆6000億ウォンで20兆ウォン以上増加した。
韓銀は、
「3四半期に欧州の財政危機で株価が急落して、 家計部門の株式や出資持分評価金額が目減りし、純金融資産が急減した」
と説明した。
一方、金融法人と政府の純金融資産は前期末よりそれぞれ35兆4000億ウォン、
3兆1000億ウォン増加して、家計に比べて状況が良いことが分かった。」以上のとおりで、最近のウオン安は輸出企業を潤しているものの家計を直撃していることが分ります。
ちなみに2012年4月16日の為替レートでは、1ウオン=0、07ですから、円で換算で、純資産が1146兆×0、07=80兆2200億円となります。
韓国の人口は4833万人で、日本の人口は1億2800万ですから、2,648倍です。
日本の人口比に直すと80兆2200億円×2,648=212兆4593億円の個人金融資産しかないことになります。(しかも上記のとおり、韓国では個人だけではなく非営利団体の資産も含みます)日本の個人金融資産は1500兆円前後と言われますが、負債額を引いた純資産額は約1000兆円前後当たりかも知れませんので、韓国人の5倍もの資産を有しています。(ネットで見られる限りの最新の日銀資金循環表(2011年12月)によると2008年の家計金融資産は1490兆円で負債は386兆円です)
実際に国民の豊かさは金融資産だけはなく、持ち家率等の資産構成にもよりますので一概には言えませんが一応の参考です。

通貨切り下げ2(インフレ5)

インフレになればインフレ率だけ給与を上げれば公平かと言うとそうではないので、日本でもどこでも、企業の活力を求める立場からは緩いインフレ待望論が強いのです。
急激なインフレは国民の不満がたまって政権存続の危機になるので困りますが、緩いインフレ目標を掲げるエコノミストが多いのは、この程度ならば国民が怒らない・・国民の気づかないうちにこっそりと所得移転が行われ易いことを期待しているのです。
緩くてもインフレ・物価上昇がある限り購買力が落ちることは確かですし、実際に「緩く」ですが為替相場も下がります。
その結果による国際競争力回復を期待しているのです。
緩くとも急激であろうとも通貨安=同率の物価上昇は、購買力平価の下落を通じて通貨安=物価上昇率だけ国民の所得を奪い(対外的には低賃金労働になってしまうので)、輸出企業にその分の所得移転する関係であることに変わりがありません。
日本でインフレが恒常的状態のときに私が考えていた数式と言うか、私なりに考えていたインフレと勤労者の関係式(資産家と勤労者・・持てるものと持たざるものの関係)がありましたのここで紹介しておきます。
持ち家を買うために、こつこつと貯蓄していた場合を想定した考え方です。
すなわち
3000万円のマンションを買うために年間所得6〜800万円の人が年間に200万円ずつ貯蓄していて2000万円まで貯めてあと5年で全額用意出来る予定をしたときに、マンション価格が2倍の6000万円になり、給与あるいは配当所得も2倍の1200〜1600万円になって年間貯蓄能力も2倍の400万円になるとどうでしょうか?(すべて2倍になった場合)
上記の例では自己資金で購入するのに今後積み増すべき必要な資金額が、インフレになる前には今後1000万円・・5年で目標達成予定でした。
すべてが2倍になるとどうでしょう。
6000-2000(保有自己資金)=4000不足となってしまいます。
その代わり収入・年間貯蓄能力も2倍の400万円になりますが、購入価格到達までには10年かかることになってしまいます。
対外純債務国の場合の海外債務返済も同じことで、100兆円の対外債務があるときに、自国通貨が半値になって外貨建てでの返済額が2倍になると通貨安によって貿易黒字が2倍になっても却って返済期間が延びてしまいます。
韓国と日本に当てはめて考えると、韓国等の通貨が仮に半値になっても(実際にそんな大幅な切り下げはあり得ませんが数字を分りよくしているだけですので誤解のないようにして下さい)円高になった日本等では必死にコスト削減に励みますので、韓国の貿易黒字がそのまま2倍になることはありませんが、外貨建て借金だけは、ウオン換算では2倍になりますのでもっと悲惨です。
実際のところ韓国のウオン下落はリーマンショック後に限れば、約2割と言われています。
以下は、サムスン系マスコミと言われる中央日報の日本語版です。
2011年09月20日09時05分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]

「韓国における公共部門と個人・企業の国家経済を構成する「経済3主体」の金融負債が3283兆ウォン(約220兆ウォン)と過去最大を記録したことがわかった。特に負債償還能力が急落しており、今後の韓国経済に負担を与えかねないという懸念が出ている。

国会企画財政委員会の李漢久(イ・ハング)議員(ハンナラ党)が19日に企画財政部と韓国銀行から提出を受けた資料を分析した結果によると、経済3主体の金融負債は2007年の2401兆4000億ウォンに比べ36%、881兆6000億ウォンの急増となった。」

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