国債無制限発行3(ロンバート型融資システム2)

ロンバート型融資による国債引き受けの場合、4月2日に書いたように既発行債引き受け資金の必要性は事実上一旦ゼロになったようなものですが、既発債が担保ですのでその担保掛け目範囲しか融資出来ませんので、追加発行分の引き受けがどうなるかが気になります。
例えばロンバート型融資を始めたときに国債発行残高が1000兆円あった場合を例に考えると、以後満期が小刻みに来る都度全部を日銀融資で引き受けさせて行くと、既発行分が全部償還されたときには既発行分の1000兆円が全部日銀融資と入れ替わってしまい、民間の引き受け資金分はゼロ・・即ちその分全部民間に回収済みとなります。
同額の資金分だけ、国内にはなお国債引き受け余力が民間に残ります。
元々預金の使い道がないことから銀行救済目的も兼ねて(本来の目的は国内需要不足の穴埋めですが・・・)国債が発行され続けているとすれば、1000兆円もの使い道がなくなるのでは銀行その他金融機関が参ってしまうので、実際にはそんな極端なことは出来ません。
バブル崩壊前から銀行その他金融機関は集まった資金の融資先あるいは有効利用方法がなくて、今でも困っている状態がずっと続いています。
(銀行は国債を買えなくなると融資先のない預金を無駄に仕入れたままになります・・国内個人金融資産は銀行に限らず生保・年金・郵貯などもありますが、これらは運用難のために今事件になっているAIJ詐欺などに引っかかり易い状態です)
資金余剰国では銀行の融資機能が衰退するのは当然ですから、銀行の存在意義自体を見直すだと言う意見を以前から書いています。
実際にはロンバート型融資による金融機関の引き受けは、金融機関等の引き受け能力(投融資先不足であまった資金で引き受けられる額)を越えた資金不足分だけ日銀が融資すれば足りるので銀行等の引き受け業務を圧迫することはありません。
イザというときのためにロンバート型融資に道をを開いたというだけで実際には極く僅かな金額分だけ・・緊急避難的に行うことになっているので、実際にどれだけ発動されているか分りません。
担保価値の範囲内しかロンバート型融資が出来ないとしても、例えば発行残高1000兆円全部の国債が同時に満期が来ない・・例えば、年1回ではなく小刻みに償還期限が来るので、個別に期限の来る国債ごとではホンの少しずつの償還資金ですみます。
(ネットで見ると平成16年6月時点での長短合わせた発行額が出ていますが、当時月間平均10兆円平均の発行だったようです)
仮に借換債100億円分の内資金不足分10億円だけ融資を受けて100億の国債を購入すれば、直ぐ後で額面100億円の国債が償還されるので、その借金は即時に全部返済出来ます。
その数日後に入札があっても同じ繰り返しですから、超短期間内の10億の融資と返済の繰り返しでいくらでも回転する仕組みになります。
こうして見れば全体で1割の書き換え用資金不足としても、1000兆の1割が一時に必要ではなく小刻みに発行される発行額の1割の不足・融資の繰り返しで足りることが分ります。
償還額と同額の書き換え用資金がロンバート型で賄えるとしても、プラス増発分の資金が不足する場合はどうなるでしょうか?
書き換え用には3億円の新規発行で足りるが、赤字予算のための追加発行分2億円との合計5億の発行をする場合、5億満額を借りれば(満額不足はあり得ないでしょうが・・・仮定の計算です)直ぐに満期償還されるのは3億しかないので2億分は直ぐには返せなくなります。
(担保に入れる国債は直ぐに満期が来る物ばかりではなく、その先に満期が来る物も合わせても良いでしょうから5億まで借りることは可能です)
数ヶ月先に来る国債を担保にしているとそのときに返せますが、その代わり数ヶ月先に担保にするべき国債を先取りして担保使用してしまってることになりその分更に不足して行きます。
次の償還期日である数ヶ月先までに民間資金余剰(貿易黒字ないし経常収支黒字)が生じていれば良いですが、同じように不足しているとした場合の話です。
ロンバート型融資に頼る場合、同額の書き換えなら問題がないですが、追加型増発を繰り返した場合に上記のとおり資金不足が顕在化してきます。
しかし、上記は発行額満額の資金不足で満額を借りる場合のことで、一般的には1割とか5%足りないだけでしょうから、書き換え用国債3億の内1割の3000万円と追加用2億円分をそっくり借りても、そのときに償還される国債が3億あれば十分返せます。
その次に満期が来たときには、合計5億が日銀融資の担保国債なので融資枠が大きくなります。
利払い費あるいは新たな復興資金用などのために国債を増発する一方になった結果、もしも個人金融資産を越えて発行残高が2000兆円〜3000兆円になっても、書き換え債の引き受け資金の不足は上記の例で分るように小刻みに償還して行くので個人金融資産を越えた分と同じではありません。
仮に個人金融資産1500兆で国債発行残高が3000兆の時に、(個人金融資産だけが引き当てではない点は後に書きますが、ここでは仮の話です・・)引き当て不足するのは1500兆ですが、実際には満期・書き換えが一度に来ないのでその数%に過ぎません。

国債無制限発行2(ロンバート型融資システム1)

日本より高金利国の投資家が、日本国債を買うと逆ざやですから金利差目的では購入動機がありません。
海外の資金を呼び込みたい国では他所より金利を高くしないと導入出来ませんが、日本の場合国内に(長年の貿易黒字の蓄積で)資金がだぶついているので世界最低金利のままで何十年もやって来られました。
外国人による国債購入動機については、10/30/08「円高相場と国債1」のコラムで紹介したとおり、為替相場の見通しと金利差がすべてです。
再論すれば国際金融危機などのときに超短期資金の行き場をなくして逃避先として最も安全な円に交換するしかない・・円値上がり期待で円を購入すると購入した円の保管場所に困ります。
機関投資家の場合個人と違って購入した円をタンス預金しておけないので、どこかに預けるしかありません。
零%近くの金利で銀行に預けるよりは国債を買っておけばホンの少しでも(1%前後)上乗せ金利を稼げる超短期運用先・・逃げ場としての利用しかないのが現状です。
昨年のギリシャ危機以来の超円高局面では、資金の逃避先として円が上がったのですが、そのときに彼らは円の仮置き場としてさしあたり少しでも金利のつく国債を大量購入したので昨年末の日本国債の外国人保有比率が数%も急上昇しています。
(リーマンショック時にも円が上がると同時に国債保有比率が上がりました)
このように我が国の国債は低利過ぎて外国人投資家には円相場急騰期以外には購入動機が限られていることから、仮に際限なく発行量を増やしても平常時には5%前後の保有比率(日本の国際貿易量の大きさ見てこの程度の保有は一定の国際貿易等の決済資金用として必要です)以上に上がることはないでしょう。
ちなみに賃貸用ビルやホテル稼働率あるいは失業率も移転誤差用として、いつでも5%前後の余裕・ゆるみが必要です。
とすれば、日本国債はもともと外国人投資家による引き受けを予定していないのですから、外国人投資家の引き受け拒否による国債引き受け不能・デフォルトあるいは大暴落になる心配がありません。
国債の増発がなく書き換え債の発行だけならば、民間金融機関の余剰資金が同じである限り書き換え用国債の引き受け資金が不足することはありません。
景気が良くなって預金の融資先が増えると国債引き受け資金がその分不足することがありますし、個人金融資産が徐々に減って来ると銀行等の融資用利用額が同じでも引き受け資金・余力が細くなります。
景気が良くなって民間資金利用が増えて国債引き受け資金不足時には、その分民間需要が盛り上がっているので政府が需要喚起のために国債で市中から資金を引き上げて使う必要がなくなるので、国債発行自体を減らして行くべきでしょう。
とは言え、満期が来る分の償還資金を政府が用意していないのが普通ですから、(どこの企業でも書き換えによる償還資金手当を前提に運用していることを書きました)実際には直ぐに不足分の資金を手当て出来ません。
景気が悪いままなのに個人金融資産が減ってしまい国債引き受け用資金が銀行等から縮小して行く場合(・・今後高齢化が進むとこのパターンが予想されます)も同じく資金不足になります。
これらの場合、償還予定額と同じ額の国債残高を維持するためには、紙幣増発しかないのでいわゆるロンバート型融資によって穴埋めする必要に迫られます。
ロンバート型融資+銀行による国債引き受けの仕組みについては、03/19/08「サブプライム問題と世界経済6(円の大量供給の功罪2)」のコラムで紹介しましたが、ロンバート式融資の場合、日銀が直接引き受けしなくとも既発行国債を担保に新規の国債引き受け資金を借りられるので既発行債の借り換えに関しては(担保の掛け目にもよりますが・・)銀行がほぼ際限なく引き受け可能です。
たとえば担保掛け目を9割に設定していれば、既発行債の借り換え資金として新たな民間からの引き受け資金としては、差額の1割だけで済みます。
例えば借り換え用の額面100億の新発国債をロンバート型融資で引き受ける場合を例にしてみましょう。
100億の既発行国債を担保に90億の日銀融資を受けて差額10億を金融機関の自己資金=預金等で賄っても、その数日後〜1日後あるいは即日(1時間後あるいは数秒後)に担保にした既発行国債が額面通り100億で償還されるので、資金的には殆どリスクがありません。
(数時間後あるいは数分・数秒後の償還金入金の場合、帳簿の書き換えに過ぎません)
この繰り返しで行けば、政府にとってはその時点までの既発行債残高の償還資金の準備資金が限りなくゼロに近づくので、ロンバート型融資を始めた時点で存在していた発行残高(その時点で800兆円の残があったとすれば・・)がゼロになってしまったような経済効果があります。
ロンバート型融資による銀行引き受けが行われるようになると、間に藁人形としての銀行をカマしているだけで事実上日銀直接引き受けと同じことになるので、上記ロンバート型融資のコラムでも書きましたが中央銀行の独立性を学者や関係者が何故今でも主張しているのかが疑問となります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC