婚姻率の低下12(オスの役割縮小)

夫の育児参加を推進するために夫の育児休暇取得をマスコミが奨励していますが、これは女性の社会参加を容易にする意義もあるでしょうが、家庭での母子孤立化の防止に主眼を置くべきです。
育児の社会化が、高齢者介護のように訪問保育援助・赤ちゃんや幼児のショートステイまで進み、精神的ケアー制度も整備されると、夫の協力がなくとも母親一人で何とかなる時代が来るかも知れません。
育児の孤立化を防ぐためには、婚姻中の家事育児協力はいいのですが、離婚後の養育義務を別れた夫に全面的に負わせるのは(生計を一にしていれば別ですが・・・)これまで書いて来たように無理がある・・結果的にも酷なので別れた夫に負担させるのではなく、(とりわけ性格の不一致で離婚するときには・・・)社会でその多くを負担すべきです。
男の負担を現状より重くして行くよりは逆に逓減して行かないと、子供を産む場合のリスクを恐れて出産に抵抗する消極的な男性が増えてくるでしょう。
ところで、ここ20〜30年で産業構造が変わって来て男子でなければできない仕事が減ってきて、建設現場の重機でも女性が操作出来る時代になっています。
男女同一賃金化が進みますと男女ともに低賃金化が進む・・ワークシェアリングの経済的側面・・所得のシェアリングが進みます。
社会全体では国内総生産量が変わらないまま二人で働くようになる場合を想定すれば、二人で一人前の賃金にならざるを得ないので,最近の若者が多く就労している非正規雇傭では「これでは結婚出来ない」(男一人で家族を養う前提とすれば)と言われる程低賃金化して来たのは当然です。
1流企業に正規就職出来た一部を除く現在の若者の多くは、男であれ女であれ、誰かと一緒でなければまともな生活が出来ない時代が始まりつつあります。
男同士女同士あるいは異性とでも良いですが、ともかくルームシェアーの時代が来つつあることになります。
親が近くにいればそれで間に合わせられるので、今のところ独身のヒトはいつまでも親の家にいるのが普通ですから、他人同士のシェアーは親元から遠く離れて住む人達だけのことになるでしょう。
この辺は、都市住民2世と地方出身者との格差をテーマに February 5, 2011「都市住民内格差7(相続税重課)」前後で書きました。
今後は結婚していても、海外勤務や仕事で各地転々とする職業の場合、お互い専業主婦・主夫でないと相手に着いて行けませんから、(昔のように海外勤務と言っても高給取りとは限りませんので今後は共働きが必須です)転勤(国内でも)の都度共同生活関係を解消して現地妻ならぬ出て行った先々で気のあったヒト(異性に限らず)とルームシェアーの相手を取り替えて行くのが合理的な時代になるかも知れません。
学生時代に下宿屋で一緒だった程度・・同宿人程度の関係で自分の移動に合わせて相手を組み替えて行く軽い関係のルームシェアー・・結婚までしない軽い関係が合理的になって行くでしょう。
その時に別れるのが、辛いほど好きになってしまっていれば・・・そこから先は物語の世界です。
一時的な関係と割り切れば、シェアーする相手は男女の組み合わせでなくとも良い人が多く出て来るでしょう。
転勤や移動時にどうにもならない関係に追い込まれないように、出来るだけ異性とルームシェーしないように警戒するヒトが逆に増えるのではないでしょうか?
最近高収入同士の離婚事件を扱ったことがありますが、双方の高収入を前提にして6000万円前後(東京都内の新築では平均よりちょっと高い程度です)のマンションを購入していたのですが、一人では払い続けられないとして、あっさりと離婚を機会に手放しました。
どうせ誰かと一緒に住むしかないならば、(しかも男女所得格差がなくなるならば)女性同士のグループ生活の方が家事分担その他で合理的ですから、女性だけの共同借家(ルームシェアー)や共有マンション・グループホームも増えるでしょうから、その方面での女性同士の助け合いが充実してくると男女で一緒に生活する必要性がなくなります。
女性のグループホームが増えると、ガードマン・外敵向けにはマンション一棟単位の警備で足りるので、まさにライオンの雄がグループに一頭だけ雇われているような男女比率で足ります。

オスの定着2と支配

男性が定着するようになったのは、言わばライオンがメス集団の狩りのおこぼれを貰うためにメス集団にくっついている・・言わば放浪をやめて定住・定着しているのと元は動機が同じだったことになります。
ただ、一時的滞在が徐々に長くなりその内定着して行きますと、人間のオスの場合、腕力にものを言わせてその集団の経営に対する発言力が高くなり、結果的に乗っ取ってしまい、我が国ではここ2〜3000年ばかりオスがメスを食わしてやるかのような擬制が成立して威張っていた点がライオンとは違います。
前回書いたように食料を狩りに頼るのは人間に限らず生産性が低いので多くを養えず、ライオンはメス多数に対して1頭しか養ってもらえないのと、メス自体狩りをする関係で獰猛性・闘争能力を持っているので、僅か1頭のオスライオンが集団内で腕力で威張る・制圧することは不可能です。
ライオンのオスは「居候は居候でしかない」状態で現在まで来たのですが、人間の場合、1対1の関係である上にメスの方はライオンのように戦う習性がありません。
オスは元々用心棒として入って来たものですから、初めっから武張っていたでしょう。
メスの方は、これに対しておだててオスを使う・・定着させる方向性で来ましたから、(我が国は男社会でもおだてて使う傾向です)外形上オスの言いなりになる形式が続き、(オスは家ではお店の客みたいな扱いでした)オスの方も千年単位でこんな生活をしているうちに本来メスの造って来た農地・生活手段が自分のもののような気がして来た(欲が出た)のでしょう。
対外的には「俺の(用心棒になっている)農地に勝手に入るな」と言っていたのでしょうが・・その内「俺のもの」になったのです。
平安中期以降武士の台頭によって、武士の集団・一族統率形式が、日本社会の標準型みたいな風潮になって行きます。
武士の社会では文字どおり家(農地・領地)を守り外から戦利品を獲得して来るのは男の仕事ですから、獲得した領地の支配権はオスに帰属するのは当然のことになります。
源平合戦直前ころから武士以上の階層では、領地を獲得しあるいは主君から知行を貰えるのはオスの戦功によるのですから、現在の給与所得が夫だけしかなくて、家族はその御陰で生きているのと同じ関係・・貨幣経済化した明治以降の庶民と同じ関係がそのころから始まっていたので女性の地位が低下したままになっていました。
ところで日本の農地の直接的支配権は武士やオスがいくら威張っても実は現に耕作し管理している女性の実質的管理権はびくともしないままだったのです。
(今は過去のことになりましたが、3〜40年前まで家庭内の大問題であった嫁姑の関係も同じで、実際に何時までおしゃもじ権を握っているかで地位の強弱が決まります)
西洋では領主=農地所有者で、このために革命後も「所有権の絶対」の保障が貴族の経済力維持・政治発言力温存に繋がっていることを
December 8, 2010「フランス大革命と所有権の絶対4」ココ・シャネルの映画の紹介コラムで書きました。
我が憲法は明治憲法も現憲法も西洋の憲法の思想を受け継いでいるので、所有権の絶対性が憲法の基本原理(第9条の平和主義よりも重視されている基本夏原理)です。
我が国では何故これ・私有権の絶対がそんなに重要な原理なのかピンと来ない人が多いと思いますが、西洋の貴族にとっては死活的重要性のある原理だから革命憲法の基本になったのですが、日本ではそういう歴史がないのに意味もなくしかも大原則として学校で習っているのです。
(ただし、所有権そのものではないですが「一所懸命」・・一カ所にしがみつく習性はありますので、フクシマ原発あるいは津波危険区域でも移転政策実施は困難です)

オスの定着1(不安定収入)

 
話を少し戻しますと、子育てによる労働からの阻害が何十年も続くと女性は子を産むと退職してしまうから、企業の方でも大金をかけて高度な生産技能を養成するのは無駄だと言う論調が幅を利かしてお茶汲みなど下働きばかりになり(女子大生亡国論以前の議論)、親もお金があっても実務教育よりは良妻賢母教育(女子大進学)をしてワンランク上の階層の(奥方としての生活を)との結婚を期待しがちです。
子を産まなくとも女性である限り経済的弱者として決めつけてしまう・・働きたくとも仕事場が用意されていない社会が出来上がると、成人しても結婚出来ないと(親の保護を離れると)自立出来なくなります。
子を産まないのに遊んでいる(3食昼寝付き)のはずるいと言う女性仲間からの批判も起きるので、結婚しても子供の生まれない女性は肩身が狭いし、他方で、何らかの事情で結婚出来なかった女性や意識的に結婚しないで生涯働き続けたい人がいても、そのための職業教育が社会的に用意されないので結婚しないで生涯働き続ける選択肢が狭くなります。
実学系に進学すると白い目で見られ・たとえばせっかく弁護士になっても女性では独立が難しい時代が続くなど、職業能力を苦労して身に付けても仕事がない事態になります。
こうした1種の迫害・女子大亡国論などにめげずに実学系高学歴に挑戦して自分で生き方を選択出来るようにする女性が増えて来た結果、女性の高学歴職場も開拓されて行きますので、先ず挑戦して来た先人の努力を多とするべきです。
女性弁護士が最近増えたことによって、女性の得意分野(少年事件や修復司法や離婚事件など・・7月12〜13日に紹介したハーグ条約・子供の連れ去りに取り組んでいるのも主として女性弁護士です)の職域開拓が急速に進んでいます。
古代以来明治まで国の基幹産業である農業収入(明治以降輸出産業として活躍したお蚕さんも同じです)を支える主役は女性でありながら、何千年単位で経済主権を男に乗っ取られていたとは言え、我が国では家庭内での実質的地位が強かったのは、実際に働いて家計を支えて来たのが女性だったし、家庭自体が女性のものであって家庭内の切り盛り運営が女性によって今でもなされていることによるでしょう。
夫はいくら頑張って、家庭ではお客様使いですし、今でも妻が家庭の主役で夫がこれをどの程度「手伝う」かで良い夫かどうかの評価(妻がお礼を言う関係)になるに過ぎません。
元は放浪していたオスが定着するようになり、定着先の家庭をどのようにして牛耳るようになったかを見て行きましょう。
オスから見れば、最初はドングリの実を拾って集めるなど(ミレーの「落ち穂拾い」の絵を見ても分るように、男の私ではとても落ち穂など拾う気持ちが理解出来ませんが・・)かったるい仕事には違いなかったでしょう。
稲の場合を考えても(何十何百回も重ねて来た品種改良後の今とは違い実のつき方も少しだったでしょう)あの小さなモミを少しずつ集めてこれを食べるなどの細かい作業はオスには気が遠くなるようなことです。
オスはまじめにドングリや稲モミの採集作業に参加せずに一攫千金・・ネズミでもウサギでもとって食べた方が早いとしてウロウロ放浪していたのですが、実際にはウロウロ放浪していると食いはぐれてしまうことが多かったのです。
今でも女性の仕事は1つ何銭というような安いものを大量に作り上げて行く作業が得意ですが、男の方は1000万円単位の不動産取引などに精を出したがります。
やらずぶったくりのヤクザ商法や小さなことに因縁を付けて法外な金を脅し取るヒトなどを見るとぼろ儲けのような気がしましたが、事件を担当してみるとそういうヒトには、滅多にヒトが寄り付かないので年に何回もウマい汁を吸えず結局は生活保護すれすれの生活です。
ヤクザはいつも恐喝などしているかと言うと滅多にチャンスがなくて食えないので、ミカジメ料や覚せい剤などその他フロント企業など事件になり難い安定収入に依存しているのです。
古代の学習漫画などでは鹿やイノシシ・・うっかりするとマンモス象の捕獲場面まで絵になって書かれますが、実際には大物を仕留めることが出来るのは稀なことで、普段はネズミなどの小動物をとって食べるのがやっとで何時も腹をすかしていたのが実態です。
バカにしていた細々した仕事でも徐々に生産性が上がって来て、安定食料になってくるとメスの採集・農耕集団の仲間入りさせてもらうようになったのが始まりだと思います。
戦後何十年ぶりでフィリッピンから帰った小野田元少尉だったか横井さんだったか忘れましたが、主に小さなトカゲやネズミを捕まえて食料にしていたと報道されていました。
偶然に委ねる狩りだけで生きるのは、今でも大変なことであることが分るでしょう。

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