アジア通貨危機(ドルペッグ・バスケット制)

アメリカだって実力以上のドル高政策は投機筋の売り浴びせを受けてもおかしくないのですが、その心配がないのは図体が大き過ぎて売り浴びせをやるほどの資金を投機家が用意出来ないからでしょう。
貿易赤字によって海外流出したドルの多くはアメリカ国債や公社債等購入資金としてアメリカ還流しているのですが、民間部門では海外にそれほど滞留していません。
日本や中国の例で分るように、対アメリカ貿易黒字国では各国の中央銀行や政府がアメリカの対外債務の殆どを保有していて、ジョージ・ソロス氏のような投機家の自由にならないドルが多いことから、投機筋の対象になり難いことによりアメリカ政府の方針変更以外にドルの急激な上下が生じないことになります。
(USドル=国債・公社債大量保有者の日本や中国政府自身が大量放出すると自国保有債権の暴落=大損害を引きおこして自滅行為になるので出来ません。)
この点では我が国の国債が各国の貿易決済に必要な程度の割合での日本円保有を越えて、投機目的の国債保有者が増えるようになると浴びせ売りリスククが生じます。
今円急落に合わせて慌てて外資による国債購入者が増えているようですが、投資家による保有比率の上昇はリスクが生じます。
ただし以前にも書きましたが、日本のばあいも円建て発行ですので日銀が円紙幣を印刷して買い支えれば際限なく出来るので、急落することはあり得ません。
(この点が自国紙幣を持たないユーロ諸国とは違いますし、この論理から言えば、いくら大量発行しても国債暴落の心配がないことも以前書きました。)
アメリカだけが政府方針どおりに(市場原理を無視して)ドル安にしたりドル高にしたり好き勝手に出来る仕組みはこう言うところにあります。
市場原理を強調するアメリカ政府が率先して市場原理を無視して行動している矛盾・パラドックスです。
東南アジア・韓国の場合、アメリカの要求によって資本自由化していた結果、民間短期資金が大量に流入していたので、売り浴びせと相乗効果のある急激な資金引き上げ(急激に下がり始めたら一刻も早く売り逃げしたい投資家心理を非難出来ません)に直面して大暴落・危機になったものです。
市場原理に反するドル高政策によってアメリカ国民が実力以上の豊かな生活を出来ていたのは、対外債務の積み上げを見ないことにして成り立っていたのですから、急激な売り浴びせを受けないとしてもアメリカ経済だって(巨大過ぎて先送り出来るだけですから)いつかは無理が来ます。
借金生活の咎めが出た点はギリシャ・南欧危機も同じです。
アメリカのサブプライムローン問題に端を発した2公社の破綻〜リーマンショック以降、さしものアメリカも対外債務の大きさを無視出来なくなって、ドル高政策をやめてドル安政策(輸入削減・家計出費削減・・一種の耐乏生活への転換です)に転換します。
アメリカの場合、市場の動きに100%委ねる・左右されるのではなく、まだ国力が巨大ですので、ドル売りの圧力によって大幅切り下げさせられるのではなく、自分の主体的判断でドル高政策やドル安政策を選択し、そのとおり市場を誘導操作出来るところがイギリスのポンド防衛との違いです。
しかし経済の世界は学者や政治家の意見で決めてうまく行くものではなく、市場に委ねた方がうまく行くことが多いのです。
なまじアメリカは国力が大きいので外見上市場と関係なく、(乱暴に)ドル高やドル安政策を決められるものの、長期的には市場に逆らえません。
後に市場の反撃を受けるまでに時間がかかります。
反撃を受けてからでは規模が大き過ぎて大変な混乱が生じます。

アジアの団結は不可能か?1

日本はアジアの植民地解放・欧米からの隷属脱却が悲願でしたので、敗戦後もずっと同じスタンスでやって来た結果、東南アジアでのいわゆる雁行的発展の道筋を付けてきました。
漸く悲願であった日本の対米経済依存率が下がり始めて、アジアが力をつけるようになってきたのが20世紀末の状況でした。
ところがせっかく良い所まで来たと言うのに、少し元気になった中韓が日本を出し抜こうとしてアジアで団結するよりは、日本批判に舵を切り始めたのは(心が狭くて)残念なことです。
前回明治維新以降の朝鮮の対応を書いたように、元来朝鮮族は民族の幸福のためよりは、強い所に早く隷属して自己の安泰を求める精神構造(当時は事大党・事大主義とも言われていましたが)が顕著です。
戦後欧米が強いとなれば、儒教や佛教など簡単にかなぐり捨てて瞬く間に国民の多くがキリスト教徒に変身しているのもその一例でしょう。
欧米の植民地支配の方法で説明したように、地元有力者を地元王族等に仕立てて彼らの子弟ロンドン・パリ等に招いて優雅な生活をさせて、懐柔するのが一般的ですが、これに寄りかかれば李氏朝鮮の王族や有力者は安泰という願望で、日本と組んで欧米に刃向かうなど危険なことをする必要がないという立場でした。
中韓による日本批判・・慰安婦・南京虐殺・尖閣諸島問題その他全て・・はアジアが漸く離陸出来るようになったころから始まったことからも、中韓の意図・・流れが理解出来ます。
中韓の反日行動が激しくなったのは、日露戦争に勝ってから欧米の対日態度が(日本叩きに)変わった構図・歴史の繰り返し(背後に欧米の意図があることは同じ)ですが、これに中韓が協力しているのは残念です。
何故アジアが団結出来ないのか不思議ですが、ともに行動するには中韓の国民レベルが低(狭量)すぎると諦めるしかないでしょう。
・・韓国は上記のとおりもともと明・清朝の支配下で長期間満足して来たので、清が駄目になったなら、もっと強いロシアの保護下で良いと言う・・今で言えば欧米の支配下に入る方が得だという傾向で明治期に日本と対立してしまった歴史のある国ですから仕方がないところがあります。
朝鮮族にとっては、対等以下と勝手(今でも根拠なく見下したがる傾向が有ります)に思っていた(植民地支配でなく紳士的付き合いでも技術その他で負けているので)日本の下風に立つくらいならば、欧米の支配下で奴隷的搾取されてもその方が良いという選択肢になっていると思われます。
ホワイトカラーが降格されるくらいならば、会社をやめてルンペンした方がましと言う心理と同じでしょうか?
今でもロシア製のロケットを購入して打ち上げ失敗ばかりで困っていますが、韓国国民感情はそう言う変な意地がある民族です。
このような欧米崇拝結果がアジア危機以降の欧米資本受入れ・・(昔のロシア保護下=植民地支配の現在版の結果)欧米資本に支配される大手企業だけが儲かって、欧米に利益の大半を持って行かれて国民の多くが非正規雇用で塗炭の苦しみ状態に陥っています。
その矛盾を糊塗するために、韓国政府はいやが上にも反日批判を繰り返すしかなくなっています。
現在の中国地域では属国になった歴史がないので、(実際には南宋の最後のころは後金に服していたと記憶していますし、異民族支配が交互にあった地域ですがこうした歴史は隠蔽したいものです)韓国のように欧米の支配下の方が良いとは思っていないでしょうが、その分日本を兄貴分とする関係が少しの間でもに我慢がならないのが反日教育・運動に舵を切った動機でしょう。
ホンの僅かの期間でも日本を本当に追い越すまで(・・あるいは後10年20年30年で追い越す自信がなくなったのか?)雌伏する能力がないレベルの低さ・器の小ささでは韓国とどっこいどっこいです。
中国は統計を操作していて政権幹部でさえ信用出来ない状態であることは今回の人事でNo.2になった李克強自身公開の場で明言して来た所です。
こうした虚偽上乗せ統計の実態を知りながら、水増し統計を基準に経済力で日本を抜いて世界第二位になったと言う自信を示して、イキナリ周辺に対する威嚇・膨張政策を始めています。
中国が本当に自信があれば急ぐことはない・・自然に周囲が尊敬してくれるのを待てば良いのですが、それを待てない状況にあるのです。
今のような強引・腕力で威張るようなことでは日本だけではなく周辺諸国も納得出来ませんが、日本も中国が穏当な方法で次第に文化力も付けてアジアの盟主になって行くとしたら、歴史的にも馴れた関係ですので、多分歓迎するし中国をもり立てて行く心の準備が有ります。
アジアが力を合わせて欧米の野蛮な流儀を駆逐して行けたら良いとは思っていますが、(近代以前のアジア的秩序の復活)何故中国は焦るのでしょうか?
怪しいと自ら認める統計数字に基づいて、中国が慌てて威張り出して膨張を始めるには裏に何か余程の必要性がある(ゆっくりやってもこれ以上進歩出来ない限界が見えたのか?)と見るしかないでしょう。
韓国同様に内政の行き詰まりを糊塗する必要という見方も正しいでしょうが、それだけではなくこうした大きな流れを見ると、中国が真に台頭・・中国が周辺から尊敬され信頼を得る前にアジア分裂を策するアメリカの使嗾があるだろうと私が何回も書いて来た根拠でもあります。

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