移民願望と受け入れ国減少(韓国9)

昨日引用した井出 弘毅論文紹介続きです。
2000年台に入って、韓国の国際的地位向上によって住みよくなったからか?移民排出が減ってきて逆に一旦移出した人の還流がふえてきているという紹介です。
ネット上飛び交っている「韓国は終わった」系の噂と違い、上記論文は国家統計データ(住民登録数など)を引用しているので正確でしょう。
韓国はもうダメだというネット記事が溢れていますが、ネットやメデイアの煽りだけで反応していると間違うかな?と心配です。
韓国では安倍政権が危機に瀕しているので、嫌韓感情を煽っているという報道があり、何を言ってるのだ!「盗人たけだけしい」と不快感を持つ人が多いでしょうが、お互い変な煽り報道が出回りすぎているのかもしれません。
ただし、上記論文は12年3月であり、引用できるデータは最新でも2年以上前でしょうから、この4〜5年の韓国経済の流れを反映していませんから、出回っているネット記事と矛盾するとも言い切れきれません。
(国勢調査は日本では5年に一回ですし、その集計結果が公表されるのはさらに2年ほど後です・・韓国の17年2月の大卒就職結果が18年末に公表されているのを見てもわかるでしょう)
ネットはこの4〜5年のアップツーデートなほぼリアル的データに基づいているし、研究者の論文は2010年頃までのデータでリーマンショック以降中国の台頭〜チャイナプラスワンの動きが始まってからの韓国経済低迷が視野に入っていない違いでしょうか?
いつも書く事ですが、学者は過去を学ぶ人であって、過去数十年の動きから将来を知るには有用ですが、発表〜半年前のデータを10日前に公表されたデータをもとにする意見はネットが最も早いのです。
この後で紹介する韓国の今年1〜3月のGDPマイナス統計を見てすぐ反応するのがネット報道です・・要は早いのです。
ただし、韓国人の国外脱出願望も韓国の統計あるいは世論調査によるものでしょうし、この実態はずっと前から出ていたものです。
この願望の強さと移民減少の矛盾関係を何故かこの論文は見ずして、韓国経済の好調による自信回復→移民減少という単線的結論を書くのでは、素人目にもおかしく思われます。
自信回復によって移民が減少したならば、そもそも移民願望・国外脱出熱が同率でしぼむのが普通で・現状維持〜増えるわけがないでしょう。
しかも内心の願望の強さだけではなく、実際の英語勉強熱の激しさ(夫を残して母子で留学する?雁家族問題を見ても)と移民出国の減少と移民願望の強さががなぜ同時的に起きているのかについて相応の検討をしないで、移民減少とUターン帰国する数の増加について自国経済に対する自信回復の結果という結論を導けるのでしょうか。
考え方によれば、移民願望・国外脱出熱の調査自体が捏造という論理もあり得ますが、その場合には、そのように検討したことを理由に書くべきでしょう。
移民願望の強さに全く触れないで、自信回復したので移民が減ったと断定するのは無理がないでしょうか?
https://www.excite.co.jp/news/article/Cyzo_201609_203080/

20~30代の「国外脱出願望」は80%超! 韓国の若者たちが海外を目指すワケ
2016年9月9日 22:00
「韓国が嫌で海外に渡る“移民”を計画する20~30代の青年たちが増えている。ウリナラ(韓国)を地獄にたとえた“ヘル朝鮮”と称し、(中略)青年たちが“脱出”を夢見て実行しようとしている」
まるで嫌韓記事のような文章だが、決してそうではない。韓国メディア「世界日報」が報じた内容を、そのまま翻訳したものだ。最近、韓国では若者の国外脱出が社会問題として取り上げられるケースが目立つが、同メディアは、その問題に真正面から切り込んだ形だ。
韓国では、多くの若者が就職活動に必死になっている。しかし、大企業に就職した先輩たちを見ると、40歳になる前に“名誉退職”やクビになることにおびえている。(中略)将来の展望が不透明な韓国より、もっと大きな世界に挑戦するほうがよっぽどいい」
一時期、日本でも注目を浴び、その後、あまり実情が報じられなくなった韓国の大企業だが、若者たちの間では“お先真っ暗”というのが共通認識のようだ。

上記には後に触れる4〜50才台の自殺率が、韓国で最も高い要因も出ています。
30代後半〜40代でリストラに遭うと50代で危機が来ます。
日本で言えば、見たこともない割増退職金・大金を手にして舞い上がって家族揃ってハワイ旅行したり子供にパソコンを買ってやりデイズニーへ行ったりしているうちにお金がなくなった家族の相談に乗ったことがあります。
韓国では退職金元手に飲食業などの自営を始めるのが人生サイクルのようですから、退職金を使い果たして倒産・娘が売春婦にする危機・自殺ピークが50台に来るのでしょう。
(新装開店した居酒屋なども10年もすると時代遅れになり、次のリストラによる新規参入組に負けてしまう時期です)
ロス暴動に関する19年4月27日現在のウイキペデイアの記事からです。

ロサンゼルス暴動(ロサンゼルスぼうどう)とは、1992年4月末から5月頭にかけて、アメリカ合衆国・ロサンゼルスで起きた大規模な暴動。
・・・日本の報道によるロサンゼルス暴動はロドニー・キング事件に対する白人警察官への無罪評決をきっかけとして突如起こったかのような印象を与えることが多かったが、その潜在的要因として、ロサンゼルスにおける人種間の緊張の高まりが挙げられる
・・・韓国人商店街への襲撃
もうひとつの主たる襲撃目標となったのが韓国人商店である。襲撃による被害額の半分弱が韓国人商店のものであるともされる。韓国人商店主らが防衛のために拳銃を水平発射しているシーンも幾度となくテレビにおいて放映された。ちなみに彼ら韓国人店主らの多くはベトナム戦争の帰還兵だった。ベトナム戦争に参加した韓国人帰還兵に米国政府が移住許可を与えたため、70年代に韓国系移民が4倍も増えた。彼らは主に競合相手のいない黒人街で商売を始め、従業員には黒人でなくヒスパニック系を雇い、閉店すると店を厳重にガードし、そそくさと韓国人街へ帰るというスタイルで商売していた。黒人の間では「自分達を差別しながら商売する連中」というイメージが定着し、そうした黒人による日頃からの韓国系への鬱憤が、暴動時の韓国人商店襲撃へと結びついたといわれている[2]。

中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ

ところで、日本では中国スジ保有の日本社債や株式が16年も大幅買い越しになっているようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYDMR6KLVRD01
中国の対日債券投資、再び増える公算-16年の買越額は記録更新か      2017年1月18日 12:27 JS
「中国による日本の債券購入は2015年と16年1-6月(上期)に記録的規模に達したが、その後は一服していた。だが日米の金利差拡大が日本国債の魅力を再び高めることから、中国による買い入れがまた活発化しそうだ。」
中国が米国債を売り、韓国への投資を引き上げて利子配当利回りの低い日本企業へ投資する魅力・必要性は何でしょうか?
ちなみに10年もの国債の日米金利差はhttp://lets-gold.net/chart_gallery/chart_gb_yield_ja-us.phpによると以下のとおりです。
日米10年債金利の推移チャート

日米10年債金利の推移

上記のとおりの金利差があって、今後米国金利上げが始まる・・更に差が開くのに、金利の安い日本の債券を何故中国が買うかです。
その理由は以下のとおりらしいです。
MIZUHO CHINA MONTHLYみずほチャイナマンスリー2017年3月号
中国アドバイザリーの現場から
「中国企業による『Made in Japan for Chinese』の動き」
みずほの解説記事引用を省略しますが、これを読むと、中国は中間品の自製・産業構造を高度化するためには単純な日本企業の中国進出・誘致策の限界が来ている状況が論じられています。
すなわち・・最終製品が日本企業名でも中国国内生産品では消費者が買わなくなっている・・どこで作ったかが重要・・消費レベルが上がって本当の品質重視になって来たことが窺われます。
日系企業名だけでは現地企業製と大差ないと言う認識・・日本企業進出による現地生産が限界に来ているようです。
これが訪日観光客の爆買いの基礎です。
それだけ中国民族企業のレベルが上がったと言うことでしょうし、日本人が食品や衣類等を国産でければイヤと言う意味・・見た目が同じでもちょっと違うど・・その違いが中国人にも分るようになったと言うことです。
そこで、・・単純な日本企業誘致や企業買収策から、中国資本によるOEMや業務提携など日本国内生産「made in jyapan for Chinese」のブランドをつけて逆輸入政策になって来ているとなっています。
消費材・・健康食品ベビー食品や医薬品・・肌に触れる衣類や漢方薬などでは顕著らしいですが、中国企業が日本で製造することによって中国(資本)企業でありながらメイドインジャパンを名乗れるメリットに傾斜していることが、日本への投資・・日本は資本完全自由化していますのでスキなように市場で株や債券を買えます・・株主や債権を入手して徐々に企業買収のチャンスを狙っている段階です。
そのためには日本人の嫌中意識・対中アレルギーを薄めるしかありません・これが対日強硬意見が減って来た背景でしょう。
親台湾国民感情に目を付けて?台湾資本であるものの、中国政府の息のかかったホンハイによるシャープ買収はこの流れの一環でしょう。
中国としては資本流出危機があるとは言え、環境技術その他まだまだ必要とされる高度技術部品だけではなく消費者の要望を汲み取ると、身体に直に触れる・・ソフト面に広がる日本の高度技術吸収に努めるしかない実態が見て取れます。
中国政府の国際政治上の意図は別としても政府がいくら反日教育をしても、人民の日本製品に対する信用が高い・・評価力・・消費者の目が上がっていることを表しています。
消費者の目次第で中国の企業製品も向上します。
こんなわけで、資本流出危機がありながらもここ数年中国資本の日本流入・・日本の不振企業に目を付けて企業買収の前段階である資本注入に熱心になっている原因らしいですが、日本とすれば、余計な資本が入って来る分円相場が上がってしまうデメリットがあります。
企業にとっては株が上がって嬉しいでしょうが、(裏返せば公然たる「いつでも回収出来る」賄賂みたいなもので保有比率が上がると反中的言動すると、売り浴びせられると怖いので親中的になって行かざるを得ません・・)金あまりの日本全体としては、事実上の賄賂の役割を果たす外資が入って来るメリットはありません。
ただ、ホンハイによるシャープの黒字化や日産傘下(ゴーン流経営革新)に入ることによって、三菱自動車の再生が軌道に乗って来たように、「現在流御雇外国人・・違った血を入れる)違った目での運営によって生き返る・・従業員が職場を失わないで済むメリットがあります。
中国向け輸出に特化する場合、日本資本のママであっても現地責任者を中国人にするだけではなく経営トップも日本人経営者よりは中国人にした方が合理的かもしません。
国内工場・・生産維持のためには、輸出先の資本・経営者の方がニーズをつかむのに長けているので、合理的でしょう。
日本企業が中国の解放後中国へ進出したときには、日本向け野菜・餃子あるいは縫製工場等でしたが、日本市場向けである以上日本の市場動向・嗜好に詳しい日本人が行って指導した方が売り易いに決まっています。
パリでファッション製品を売るならば、パリの事情に通じた人・・パリ人を現地人の目利きによる商品を送った方が普通は良いでしょう。
中国資本による支配?を不愉快に思う人がいるかも知れませんが、それの逆張り・・中国向けに特化するならば、中国向け製品を作るのに何百人の日本人がうまく中国人をトップに使って作ると思えば良いでしょう。
源氏や平氏の貴種を地元武士団が棟梁に担いだり、親王を総大将に担ぐのと同じことです。
サッカー等で外人を監督にし、フィギアースケート等で外人コーチを頼むのと同じです。
高校野球でも関係者全員が、甲子園に出たいのであって、地元出身監督で県内のリーグ戦で負けてしまうよりは、監督が県外から来ても地元チームが甲子園まで勝ち進めた方が良いに決まっています・・武士団としてもその合戦に勝って生き残ることが先決であって、団結して勝てる旗印になるならば、お飾りの総大将など見たこともない親王サマでもは誰でも?どこから来ても良いのです。
日産や三菱自動車の例を見ても、従業員を養ってくれるならば外資でも社長が外人でも良いのです。

民度を上げる→外貨準備減少2

高度成長期以降の地価高騰で潤った千葉の近郊農家の結果を見ると(全部を知っているわけではありません知っている人だけのことです)多くの農家では一時的に羽振りが良かっただけで元の木阿弥になっている印象です・・。
地方に大手工場などが進出した場合、その中で技術を磨いて地元で創業出来る人がいるかと言うとなかなかそうは行きません。
とは言え、日本のゴールドラッシュ時代の安土桃山時代・・今考えると金の大流出・・貿易大赤字時代があってこそ、絢爛豪華な時代の幕が開いたのですが、みんながみんな等伯や永徳、宗達のような芸術家になったのではなく、裾野が広がった結果とすれば、傑物はひと握りで良いのです。
消費生活向上・・遊びの中から、工夫や新しい芸術や新製品が生まれる関連があることは確かでしょう。
日本の現在の世界的評価は、安土桃山の後を受けた江戸時代に庶民の消費生活が世界に先駆けて充実していた結果によると思われます。
消費経験が将来の民度にどう言う影響が出るかは別として、(私なりに最大限中国寄りの意見を書くとすれば)兎も角外貨準備が底をつくまで歯を食いしばってでも人民に消費経験させない限り前に進まないと覚悟を決めたのが中国ではないでしょうか?
雄安新区建設の新バブル構想が今朝の日経新聞にも出るようになりましたが、箱物や土木工事で貴重な資金を使い、人民も金儲け・投機的売買にうつつを抜かしていて健全な消費者が育つかの疑問がありますが、日本でも豪壮な城郭建築が豪華なふすま絵を誘発した例があります。
ところで北京に関しては私は元々北方民族・・女真族が南下したときに侵入した入口に当たる場所・北京を首都としたのは合理的だったでしょう。(北条氏が関東へ進出したときに入口の小田原を本拠地にしたのと同じ)
しかも清朝の支配は、遠くの異民族が服属意思表明していただけで直截支配していなかったので全体の端っこに首都があっても間に合っていました・・。
対外経済中心時代で且つ直截支配下に置く現在国家の首都としては、北京は地理的に偏り過ぎている外、国際交易にも不便・・このママでは無理があると言う意見を元々持っていました。
習近平は鄧小平の深圳特区・江沢民の上海特区の向こうを張って、これに負けないレガシーを残すために雄安親区を計画したもので、(ネット報道だけではなく日経新聞がが報道するようになった以上は)早速権力に媚びる多くの関係者が動き出した模様です。
深圳特区や上海開発は相応の地の利を踏まえて開放政策にマッチしたので成功したものですが、新首都?雄安親区は北京から更に内陸に入っていますから、経済原理からして・・今時可能なの?と言う第一印象を抱くのは私だけでしょうか?
この種の意見は、これまでネットでも出ていませんし、日経新聞にも出ていません・・当面世界的な関心は新バブル創出がうまく行くのか?そんなことばかりで中国経済の先行きがどうなるのか?ひいては世界経済に与える影響に関心であって、外野にとっては「地の利がどうの・・」と言う先のことまで心配してやる必要のないことはそのとおりです。
話題を外貨準備減少に戻しますと、日本のゴールドラッシュのような蓄積がないのが中国の苦しいところで、そのために気前よく使い切れない・・その間の人民元防衛策に必死ですが、内需拡大→貿易赤字ですから、人民元は下がるしかない・防衛するのは元々無理があります。
貿易黒字とは何か?ですが、難しい説明は専門家に御任せするとして、あっさり言えば、国内利用以上のもの生産している国と言うことでしょう。
これを売るのに忙しく折角作ったものを自分が充分に消費出来ていない社会とも言えます。
アメリカの場合巨額貿易赤字を続けて来た・・働くより消費優先だからこそアップルその他新しいものが生まれているとも言えるでしょう。
医者の不養生といいますが、他人の医療に忙しくて自分の健康管理する暇がない状態です。
植民地支配経済・・宗主国向け生産をさせるが植民地下の奴隷的労働階層は自分の作っている物を消費する権利がない・・解放当初の中国は日本の植民地ではないのに日本向け輸出製品専用工場を誘致していました。
多くの後進国政府が外資進出許可するときに、「先進国企業が国内市場を席巻してしまうと困る」と言う理由で国内販売を許可しないか、許可するときには外資の比率を半分以下の合弁しか認めないなどと制限して民族資本が学ぶ機会を与えろと言う条件付きで許可しています。
リーマンショック後の中国の内需拡大政策は、今後は自分が作っているものを自分も消費したいと言う意欲表明とすれば合理的です。
中国が内需拡大に舵を切った以上は、黒字が縮小し外貨準備・蓄えが減って行くのは仕方ないと言うか自分で選択したことです。
内需拡大をやめて経済パフォーマンスを良くしない限り奇策や規制では一時しのぎでしかない・・基礎にある人民元安の流れを止めない限り資本流出圧力をいつまでも塞き止めることは出来ません。
ところで以前出血輸出の構造を書いたとおり、出血輸出をるのは仕入れ資源輸入代金を払うしかないので、付加価値をつけた人民の労賃を減らすしかないので出血輸出などしていられません・・内需拡大=人民に豊かな消費をさせる以上は、貿易黒字が減るのは当然の帰結です。
外貨準備の続く間に消費生活を充実させて消費材を作れる民度に引き上げる・・民度レベルアップ・・これが間に合うかのテスト中と言うところでしょうか?
この覚悟をすれば中国の外貨準備急減を騒ぐことではありません。
転売目的のマンションや鉄道ばかり作っていて民度が上がるかの心配があるでしょうが、この後で書くようにこの数年で中国消費者の消費レベルが上がり・・日本国内製品でないと信用出来ない・・と言う選好が増えて来たことから見ると、短期間に民度アップ出来る可能性がないわけではありません。
この間の食いつなぎ・・外貨準備のうちで(ベネズエラ債?のように売るに売れないものが多いので)市場で売れるものから売って換金するしかないと言う姿勢ではないでしょうか?
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170107/Recordchina_20170107010.html
2017年1月4日、韓国金融監督院が発表した統計から、2016年1~11月末に中国人投資家が韓国の株式市場で売却した株式の総額が1兆5000万ウォン(約1500億円)に上ることが明らかになった。環球網が伝えた。」
表向き韓国のサード配備に対する嫌がらせっぽいですが、韓国には義理を欠いても失うものが少ない・・(韓国の中レベル技術移転はほぼマスターした・今後は韓国企業は競争相手でしかないと言うゲンキンな読みで)と言う切り捨て対象にしただけ・5月6日に書いた北朝鮮切り捨て政策と同じ文脈で見るべきでしょう。
中国は民度レベルアップ→内需拡大による貿易黒字減少は仕方がない・この間のつなぎとしては、換金可能で今後技術移転の旨味のない国の外貨から順に売れるものから売りたいだけではないでしょうか。

消費経験が民度を上げる→外貨準備減少

世界的に資源国や新興国通貨下落が進行している状況下で、ローエンド生産に頼る中国経済の限界を見た世界が、資本流出を始めたのですから、資本取引の規制さえ強化すればどうなるものではなく、ハイテク製品に挑戦する力があるかを世界は見ています。
スマホで言えば、中国企業がアップルに負けない新製品を仮に作って世界を席巻しても、その製品工場として最低賃金で働く工場しか中国に作れないのでは、ベトナム等に工場立地を奪われてしまいます。
このシリーズの関心である・・結局は民度次第と言うことです。
一握りのエリ−ト研究者や資本家だけが潤う社会では、豊富な労働力が売り物の中国の金看板がどうなるか?と言う疑問です。
多くの国民がローエンドからセカンド〜ハイエンド製品生産に従事・参画出来ないと平均を引き上げられません。
13〜14億人と言われる巨大人口を皆ハイテクレベルに引き上げるのは無理でしょうから、これまで「売りもの」であった巨大人口・低賃金労働者が逆に足かせになって行きます。
巨大人口はこれからの時代には足手まといになるだけで、シンガポールのように100万前後のコンパクト人口で優秀人材を集めた方が有利な時代が来ます。
アメリカもニューヨークをシンガポールのような都市国家にして独立した方が有利・・アメリカの格差問題の本質は個々人間の格差に矮小化した砂粒の問題ではなく地域格差・・ニューヨ−クその他の大規模都市国家とその他ローカルの格差でしょう。
これを正面のテーマにすると、もともと民族国家の歴史のないアメリカ合衆国の分裂に結びつくので、メデイアその他文化人が個人問題に誤摩化しているのではないでしょうか?
19世紀から第二次政界大戦までの正義より武力中心の大鑑巨砲主義の時代には、国家組織・GDPは大きいほど有利でしたが、平和=正義が守られる時代になると小回りの利く組織が有利で、今のところシンガポール程度の規模が一番合理的な感じがします。
19世紀型思想に特化したアメリカやロシア中国は、人口を増やし過ぎたので時代遅れの規模の大きさを持て余している・・実は困っているのを格差と称しているように見えます。
この数十年で見てもロシア、中国、アメリカは19世紀型腕力時代の名残にこだわっていて失敗を繰り返しています。
例えばいくらイノベーションを活発化しても・・アップルのように大ホームラン級の新製品開発に成功しても、あるいは金融で大儲けしても、生産の方は賃金の安い中国等の工場でつくるしかないので大量の国民を養うのは無理・利子配当所得しかないから、資本保有しない国民はそのおこぼれに頼るしかない・・寄付や社会保障等の善意に頼る階層が増える一方です・・。
この辺は日本の国際収支の紹介で10年ほど前から書いてきましたが、国際収支の黒字内容が貿易黒字から所得収支に移って来る・・所得収支黒字が基本になると資本蓄積の格差に比例して(利子配当収入のない階層には国際収支黒字は関係がありません)格差が生じて来るのは必然です。
02/11/09 「バブル崩壊後の自己資本比率規制2 05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」前後の連載で、当時の過去10年間の国際収支表を紹介して、この間に貿易黒字の比重が下がり、所得収支黒字が経常収支・約20兆円の黒字の約半分を占めるようになっていること・・海外現地生産拡大で労働による生産収入比率が徐々に下がって行く一方・・利子配当収入比率が上がって来ていると書きました。
当時は約20兆円黒字の半分を所得収支・利子配当送金が占めていることを前提に意見を書いたのですが、18年5月11日(2日前)のコラムに久しぶりに日本の国際収支を紹介しましたが、これを見ると同じく約20兆の総合黒字の内、実に18兆もの、利子配当等の(不労?)所得になっていることが分ります。
こうなると高成長期を経験している間に資本収入層に脱皮出来た階層と資本所得層に参加出来なかった階層との格差が広がるのは当然です。
個人の一生で言えば、バリバリ働ける若い間に資金を蓄えて労働による収入が激減して来る老後には自宅にローンも割り住居費ただで利子配当(民間年金や家賃)収入で悠々自適出来ている人と蓄積して来なかった・アパートの家賃払わねばならない上に預貯金も少ない階層との格差が次世代に及んで来たのです。
この10年ほどでまさに親世代の格差が次世代に及んで来たと言うことでしょう。
この辺は親の家に同居出来る(家賃不要の)恩恵や保有アパートなどを相続出来る都市住民2〜3世と自分で新規取得しなければならない都市住民1世の格差・・その他いろんな角度から喩えば、February 5, 2011,「都市住民内格差7」等で連載して来ました・・。
赤字国債を次世代に負担させるのか?と言うスローガンも「国債保有者から相続する人」と負債を相続するだけの人との格差であって世代間対立の問題ではありません。
各種社会保険赤字問題も同じで、世代間対立の問題ではなく富裕高齢者と貧困高齢者の格差を緩和するためにどれだけ社会的負担するか→結局は富裕層の負担問題です。
これがアメリカでその他先進国で格差問題になっている元凶でしょう。
中国はチャイナプラスワンの挑戦を受けるようになって、民度の引き揚げが急務になって来ました。
ローエンド製品の場合、外資の指示どおり作れば良いだけですが、製品開発となると消費者経験がないと、消費者目線での開発が出来ません。
そこで先ずは内需拡大・・消費経験させるのは正しい選択ですが、それは必然的に貿易黒字の縮小赤字体質に変わって行きます。
国民をレベルアップするには営々と積み立てた外貨準備を取り崩してでも、外貨準備のあるうちに何とかなるのでしょうか?
国民が豊かな生活をしないと質の高い商品を工夫出来ないのですから、先ずは良い生活をさせることから始める・・内需拡大の方向は正しい選択です。
ただ土地成金がイキナリ文化的生活を出来ないように、マネーサプライを増やすとバブル・・不動産転がしに走ってしまうのは順序としては仕方がないのかも知れません。
もしも、外貨準備を食い尽くしてバブルで終わってしまうと何も残らない・・少しは文化受容の方に行く人もいるでしょうが、(そう言う人は文化の成熟した国へ逃げ出し)多くの国民には何も残らない可能性があります。
億単位の人が海外旅行出来ただけでも、何か残ったことになるのかな?
安土桃山文化は世界有数の金産出によるバブル景気によるものだったと言い得るでしょうが、この金の輸出による贅沢が、絢爛豪華な文化を生み出したのです。
この担い手は国民全部ではなくホンの一握りであったとしても、後の時代に大きな影響を与えるのですから、それでも良いのかも知れませんが・・。
中国の場合、一握りの影響を受けた折角の人材が海外に逃げてしまう可能性が高いのでそこが心配です。
当面の国力底上げには結びつかないで終わると、バングラデシュやベトナムミャンマーなどと低賃金競争を繰り広げるしかない・・解放前の14億の貧民が残る・元の木阿弥になる可能性があります。
一方で苦し紛れに国威発揚に励む・・軍事力強化・・周辺威嚇にエネルギーを注いでししまうのは長期的にマイナスにこそなれ何の価値もありません。
ローエンド製品レベル〜セカンドエンド〜ハイエンド製品へと経済底上げの必要なときに権謀術数や軍事力に人材投入が偏ると将来性が限られてしまいます。
兎も角今の外貨準備減少は、将来のために貯金を崩しても息子を大学にやるのと同じで雌伏のときとして頑張るしかないでしょう。
これはこれで正しいのですが、ナケナシの貯金をはたいて都会へ遊学させたのに息子娘らが勉強するか、遊びほうけるかの瀬戸際です。
それを決めるのは数千年単位の基礎レベルの問題です。

中国購買力持続性6(外貨準備減少)

中国の外貨準備と言っても日本等からの外資の投資が多いから膨らんでいるのであって、真水の外貨準備金は少ないとMay 5, 2015「中韓の外貨準備1(真水)」その他で繰り返し書いてきました。
孫正義氏が世界的大富豪と言ってもこれに匹敵する巨額負債を抱えてM&Aを繰り返していることも知られています。
日本の財政赤字報道はプラス財産を見ない不思議なものですが、孫氏の富豪度報道になると逆に巨額債務を見ないで買収した相手の株式評価額だけを計算して世界何位と言うのですが、中国関連報道も中国に都合の良い面ばかり報道している傾向があります。
(本当の事実を知らないと中国も方向性を誤るので虚偽報道が中国自身にとって良いかどうかは別問題です・・政権中枢だけが本当のことを知っていても、国民がねつ造の歴史を信じていたり強国になったと誤解して強気になってしまうと、政権がこれまでの教育は全て噓でしたとは言えず引きずられてしまうので、結果的に国民全体が誤解しているかどうかが重要です・・個人で言えば、本当の健康状態を知っている方が良いのと同じです)
中国は見かけだけの外貨準備で威張っていたのですが、外資の引き上げが始まり先行き人民元下落のリスクが高まって来た昨年末に掛けて月に千億ドル規模の外貨準備減少が続いていました。 
以下は、日経新聞ネット配信記事です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H1R_X00C16A2FF8000
北京=大越匡洋】中国の外貨準備高が過去最大規模の減少を続けている。中国人民銀行(中央銀行)は7日、1月末の外貨準備高が3兆2309億ドル(約 378兆円)で、前月に比べ995億ドル減ったと発表した。
減少幅は過去最大だった2015年12月の1079億ドルに次ぐ大きさだ。中国の通貨人民元への下落圧力が強まり、人民銀がドルを売って元を買う為替介入を繰り返していることが大きな要因だ。」
上記は政府発表の外貨準備ですから本当の流出はもっと大きいかも知れませんが、中国政府は人民元防衛に必死で、実際の輸入決済以外には両替を認めないとか個人の年間の外貨持ち出し限度額を規制強化するなどあの手この手の為替規制をしていることが報じられています。
それでも減少を食い止めることが出来ず2月にも300億ドル近い外貨準備減少です。
以下はhttp://jp.reuters.com/article/china-reserve-feb-idJPKCN0W90QH
Business | 2016年 03月 7日 18:48 JSTの引用です。

[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した2月末時点の外貨準備高は前月比285億7000万ドル減の3兆2000億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。
減少幅はロイターがまとめたエコノミスト予想の300億ドルをやや下回った。1月は995億ドル減だった。
12月は1079億ドル減少し、過去最大の減少を記録した。
外貨準備は、2015年通年では5130億ドル減少し、年間の減少としては過去最大となった。」

この間貿易収支が黒字発表(政府発表自体が当てにならないことは周知のとおり)ですが、それでも減少を続けている状態です。
言わば、張り子の虎の「紙」が破れ始めた状態で輸入・自己消費だけ増やすことになる内需拡大が出来るかの疑問です。
充分な年金積み立て金+個人預貯金等蓄積がないのに高齢化が先に進む・・支出だけする人が増えると(未富先老)個人も国家も借金地獄になって大変ですが、これを国際的に拡大して行こうとする・・外貨準備を越えて内需拡大出来るかのテーマです。
国家的モラルハザード期待論・・債務を国外に付け替え(て踏み倒す)運動でないかの危惧で書いています。
健全社会日本では、高度成長期にも爆買いせずに環境保護や子育てを含めて将来のために投資してきましたし、現在金利を下げても更にはマイナス金利にしても合理的な投資予定がないかぎり「タダだから借りよう」と言う人(モラルハザード)がそれほど増えません。
中国の場合金利を下げると人民元がさらに下がるのでこれが出来ませんので、預金準備率を下げて紙幣供給量を増やす政策になったのですが、そうするとゾンビ企業や消費金融利用者の延命を助けるだけ・・負債が増える一方になっていると言われています。
この結果、中国が決めた6、5%成長論を実行するための金融緩和をすれば、過剰投資の整理どころか逆に投資再開されて破綻を先送りし、破綻時の規模を大きくする政策だと言う批判が普通です。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12135478183.html
勝又壽良の経済時評
2016-03-10 04:03:52
中国、「預金準備率引下げ」人民元相場より経済成長を優先
③「長期的には、債務拡大という形での刺激策導入で状況がさらに悪化する恐れもある。ゴールドマン・サックス・グループの投資管理部門は、中国債務の国内総生産(GDP)比の増加が近年で目立つと警告してきた。2月に公表されたブルームバーグ調査のエコノミスト8人の予想中央値によると、今後数年以内に同国債務はGDP比283%でピークとなる見通しだ」。
以下は韓国の場合です
http://biz.searchina.net/id/1598022
まずい!韓国企業の債務比率が主要新興国で最悪の水準に、債務拡大が加速 2015-12-24 13:58
韓国メディアの亜洲経済の中国語電子版は18日、米財務省はこのほど国際通貨基金(IMF)の統計データに基づいた報告書を発表し、2014年第4四半期までの国内総生産(GDP)に対する韓国企業の債務比率は主要新興国のなかで最悪の水準となったことを伝えた。(イメージ写真提供:123RF)

実際にこの3〜4月頃に1線都市での不動産バブルが再燃し、今春G20で公約していた過剰生産力整理どころか、休止設備再開の動きすら出て来ている様子が報道されています。

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