欧米と日本の対応1(EU→大規模化)

石炭鉄鋼連盟. EC→EECに始まるEU結成は、元はと言えば戦後米国に対する劣勢挽回のために構想されたものですが、先ず資源から入った点が象徴的です。
第1次〜2次世界大戦は資源争奪戦争(日本はABCD包囲網に対して、「油の1滴、血の1滴」と言う状態で戦端を開くしかないところに追いつめられました)でもあったので、資源確保が第一条件だったのでしょう。
第二次世界大戦時には石油の時代に入ってましたが、西欧諸国は石油産出地である植民地を次第に失って行く過程・・たとえば中東での利権が次々とアメリカのゴリ押し・・植民地支配批判の名分の元に?アメリカに奪われ続ける時代が始まっていました。
この最終章で起きた事件が、ナセルのスエズ運河国有化騒動・・英仏進駐事件だったことになります。
現在で言えば、アメリカが裏で反日運動を中韓に唆しているのと同じ状態ですから、ソ連からの英仏に対する強迫に対して当然アメリカは英仏を応援しません・・怒った英仏が自前の核武装をすることになった切っ掛けです。
折よく北海油田が開発されてこれが軌道に乗った80年頃から資源的側面が解決された結果、イギリスは戦後耐乏生活から何とか抜け出せた原因です。
マスコミはサッチャーリズム成功と言いますが、実質は資源特需によるものです。
・・7月2日現在のウイキペデイアによると「サッチャリズム(英: Thatcherism)は、1980年代のイギリスでマーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策である。」と書いていますので時期的にあっています。
(この後に紹介するように北海油田による原油輸出代金収入が軌道に乗ったのは80年代からです)
サッチャリズムは金融ビッグバンもやりましたので、金融取引のウインブルドン現象と言われるようにその収入も増えました。
これまで書いているように製造業復活ではなく金融取引や資源収入による場合、多くの労働力が不要ですので自ずと格差が拡大します。
ナウール共和国の例を引いて、資源収入等が上がるとその分通貨が上がるので、製造業等従来型国内産業にとっては国際競争上不利になる結果却って衰退して行く・・日本が原発停止による原油輸入による大幅赤字が円安を導いて製造業等の競争力が挙がる例としてFebruary 26,2013「原発事故と天佑」で書いたことがあります。
西欧・・得に英国はこの逆に精出して来たトガメが格差拡大を広げ今回の離脱騒ぎの遠因になっていると見るべきです。
上記ウイキペデイアには以下の記述が続きます。
「サッチャーが政権についた時点では、平均所得の60%未満で生活する層は約13%であり、ジニ係数は約25であった[12] 。サッチャーが退任する頃には、平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇した。」

西欧はアメリカの資源力と大規模市場を背景にした19世紀以降の挑戦に対して、資源確保とEU結成による人口では負けないぞ!と大規模市場・・単一市場化で対抗して来たことが分ります。
折角多くの国々が事実上合併・・市場大規模化しても少子高齢化で人口が減って行くのではどうにもならないので移民を入れる・輸血するようになりました。
しかし人口さえ多ければ良いのならば、中国やインドは昔から人口が多かったのです。
EUに関する外務省発表のデータを紹介しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
欧州連合(EU)平成28年6月1日
総人口(2015年)
 5億820万人(Eurostat、暫定値)(日本の約4倍)
略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合 1968年 関税同盟完成 1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
 GDP (出典:IMF World Economic Outlook)
16兆2,204億ドル(2015年)
対するアメリカは以下のとおりです。
アメリカ合衆国(United States of America)
                平成28年4月20日
面積 371.8万平方マイル(962.8万平方キロメートル、50州・日本の約25倍)(内水面18.1万平方マイル)
3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
GDP 17兆4,189億ドル(名目、2014年)

上記によればGDP規模=市場規模はEUが中東欧諸国編入で拡大し続けた結果、年間約16兆ドル対アメリカが17兆ドル規模でほぼ拮抗していることが分ります。
これを背景にアメリカと対等に渡り合うための共通通貨ユーロも創設しましたが、寄り合い所帯の弱さでユーロは今なお、基軸通貨ドルを脅かすには至っていません。
以下ロイター記述によれば、最盛期でも28%しかなく(イギリス離脱騒ぎ前)の今年4月には、19、91%に下がっています。
以下http://jp.reuters.com/article/forex-reserve-usd-eur-imf-idJPKCN0WX2A5
からの引用です。Business | 2016年 04月 1日 01:45 JST
「第4・四半期のドルの比率は64.06%(4兆3600億ドル)となり、前四半期の63.98%から上昇。 一方、ユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下した。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%だった。 」

米欧のGDP規模と通貨構成率の相違は何に起因するのでしょうか?
このシリーズは元々消費市場の大きさが実際の国力を分ける・・今や生産力を競う時代ではないと言う関心で5月7日「資源+生産力から消費力アップへ1」以来書いている原点に戻ると分りよいでしょう。
EUが貧乏人の集合体・・とした場合、GDPの割に消費水準が低調・・内需比率の低さが通貨構成比に現れていると言えるかも知れません。
EU内で最大の経済力を誇るドイツの内需比率の低さが有名ですが、ドイツの外需と言っても実はEU域内の内部貿易中心で域外から殆ど購入しないのでは、結果的に経済のEU域外に対する対外的影響力は多寡が知れています。

フラット化対応4(日本の場合2)

幕末に来た欧米人の報告にもあるように末端庶民まで読み書きが出来、好奇心が高い国民性・・、基礎的能力の高い国であり、しかもみんなの力で研究して仕上げて行く(擦り合わせ)社会であることが今になると有利になっています.
みんながチーム参加する社会にするには、最底辺も一定以上のレベルが必要です。
外国人研究者が日本に来てみると、都心の一流大学の学生も地方の新設大学の学生もそんなに研究能力差がないことに驚いています。
極論すれば、言わば65点と70点の間にコンマ以下での差でひしめいているだけのことではないかと言うレベルであって、2〜30点の仕事しか出来ない人は実は少ないのです。
日本では現場力が高いので、戦後農協の指導でアメリカ方式に規模拡大・粗放農業(個々人の技術劣化推進)を真似しましたが、今では農協など当てにしていない・・個々人の工夫努力でおいしい果物や野菜を作るなどして新しい農業のあり方を提案しています。
学位もない田中氏がノーベル賞受賞したことに世界は驚きましたが、地方大学→地方企業での青色発光ダイオード発明の中村氏もそうですが・・こう言う人材はいくらでも現場・地方にゴロゴロいるのが日本です。
15〜25点の人がゴロゴロいてベルトコンベエア−式工場で漸く1人前に働けるようになったに過ぎない他所の世界とは大分景色が違っています。
ヨドバシカメラやコンビニ等に行けば分りますが、今や日本の末端店員レベルはものすごく高くなっています。
昭和50年前後の光景を思い出すと,電気屋さんはメーカー品を並べておいているだけで、その構造性能など詳しく説明する気持ちや能力が全くない状態でした。
その頃から見ると末端店員の基礎レベル向上は著しいものがあります。
農業もアメリカの真似をして粗放農業・・粗雑化に進んだものは失敗していますが、与えられた環境下でもこつこつとおいしいもの作る努力して来た農家は国民から支持されています。
社会の平均をどこに置くかですが、単純労務ばかりにして平均点15〜20点の人でもできる仕事ばかりにしてしまい、5〜6〜70点の人をそこに縛り付ける社会よりは、社会の基礎レベルを上げて、底辺層でも30点くらいの仕事を出来る社会にすることが第1に必要です。
その上で個々人の努力を尊重する社会・・35点の人が努力して36点の仕事をすれば、少しでも報われる社会にすれば、生き甲斐を感じてみんなが切磋琢磨して行きます。
日本では古代から微妙な差でもあれば、それを認めて報われるようにして来たから最末端・アルバイトのコンビニ店員でさえも商品知識を磨く習慣があってドンドン進化して行くのです。
ガラパゴス化とバカにする意見が幅を利かしますが、これは欧米の画一基準、工夫することを知らない社会をモデルとする軽薄な意見に過ぎません。
日本人は殺傷武器でさえ種子島や日本刀を工芸品に変えてしまうし、庭木を盆栽に仕上げるなど独自の世界を作り上げて行く天才集団です。
日本人の基礎レベルの高さは、縄文の昔から母親による丁寧な哺育教育力によるところが大きいと思われるので、保育所・他人任せで子育てするように誘導するのは、長期的にはニッポン民族の劣化政策にならないかの立場から反対してきました。
国際正義・国際的に同一労働同一賃金が実現した場合・・日本社会の能力平均が、30点台を基礎にしていて他国のレベルが20点平均であれば、汎用品でも日本の製品競争力があり、ひいては日本の労働者者が10ポイントよい生活が出来ることになります。
Eu離脱論以来グローバル化、反グローバル化の論争が起きると思われますが、仮に反グローバル化が優勢になって行くとしても長期的にみれば、同一労働同一賃金化の流れは進む一方であると思われます。
人間の移民の自由と流通の拡大とは必ずしも同じではありません。

フラット化対応3(日本の場合1)

EU離脱論に逸れましたが、所得収支大幅黒字下にある日本のフラット化に戻ります。
世界一潤沢な資金を投じて介護や保育所その他の予算を増やす→市場コストより安く利用出来る人が増える=利用者にとっては10万払うべきところを5〜6万円ですめば4〜5万円余計収入があったのと結果同じです。
日本では、社会保障の充実によって所得修正がおこわなれている外、高額所得率も低い・・ソフトバンク社長と副社長の巨額報酬に驚いた人が多いですが、孫氏自身は在日系と言われていますし・生え抜き日本企業ではトヨタ社長でも社長報酬は大したことがありません。
成功者出現を排除しないどころか期待する格差反対論は、論理の行き着くところ従来からの分配率の修正・・成功者の取り分を減らせ→社会保障強化論の焼き直しだったのでしょうか?
日本ではアメリカの真似をして「格差反対」スロ−ガンでは反応する人が殆どいないので民進党の「保育所落ちた、日本死ね!」の主張に落ち着いたのかも知れません。
日本企業の場合事業成功しても、「国民の皆様の応援の御陰さまで・・」と言う精神・・自分一人の働きではないと言う意識ですから報酬取得も程々にとどめますが、(発光ダイオードの中村氏の訴訟が国民支持を受入れられていない原因・・母校に寄付したりいろいろ修正していますが・・)アメリカでは、国民のための企業ではないので経営者は儲ければ儲けの範囲内でいくら報酬をとろうと儲けた人の勝手と言う意識です。
賃金も国際相場との差額を企業が利益を削ってまで支給する発想・・25日まで書いて来た本来の働き以上に上乗せして(例えば10〜20ポイント上乗せ給与を払う気持ち)がありません。
こう言う社会では移民をドンドン入れて結果的に国内賃金水準低下・・国民総体生活水準低下を図って、企業利益最大を図れば経営者報酬が最大化する仕組みですから、従業員や国民全般の生活水準が下がろうともあまり気になりません・・これに対する不満が昨日まで書いて来たEu離脱論の基礎です。
昨年あたりからアメリカが中国工場と国内工場とでは賃金競争力が変わらないと自慢出来るようになった基礎状況ですが、低賃金を自慢されるようでは国民には溜まりません。
アメリカの場合成功も失敗も自己責任を強調する社会のために、いまだに全国民対象とする日本の国民健康保険制度のようなものを作れない状態・・オバマケアーで揉めていることから分るように基本的に社会保障政策は低調です。
自己責任主義の結果、儲けた方はいくら巨額報酬を得ても良いし企業経営者も国際相場以上の上乗せ賃金支給する動機もない結果、格差拡大が半端でなくなりました。
アップルのように大成功する企業あるいは、金融・資源メジャーで大儲けする企業がなければ、格差も生じない普通の低賃金国・・等しく貧しいのですが、なまじ成功者が出る社会だからこそ格差が気になります。
イギリスの場合世界の資本市場として成功したので却って金融関係者との格差が目について不満が噴き出したと言えます。
※イギリスでも金融取引関係者の多いロンドンでは残留派が多かった所以です。
さすがのアメリカも、格差拡大不満・反ウオール街意識の高まりに危機感を抱いた結果、国際相場に合わせた低賃金化進行による生活水準の急低下を修正するために、フードタンプの配給になっていることになります。
食糧券の配給に深夜12時に並ばせられるのではあまりにも国民が惨めですし、それとなく給与水準を上げて行く日本の優しさに比べて政策的に拙劣です。
ところでフラット化の追求・・従来60の技術者しか出来なかった仕事をロボットの補助等で20点の人でも出来る時代・・結果平等を模索するのは良いことですが、他方で努力する楽しみを持てる社会が必要です。
フラット化・平等化達成に反対するよりは、達成されれば達成された平等化の中で少しでも周囲に差をつける努力や意欲の能力差(制服着用下でもアクセサリーなどちょっとした工夫でオシャレする能力)がその社会での格差反対論の強弱に比例します。
江戸時代に奢侈禁止令が出るとそれで美術・文化が衰退するのではなく、着物の裏地で勝負したり言論の自由がないと落首で挑戦したようにその範囲内での挑戦能力の有無によります。
命じられた以上の仕事をしたら損だと言う意識の民族では、50点の人が25点の努力でできる仕事を与えられると楽出来るのは良いが、収入が減るのが不満でしょうが、日本人の場合、5〜60点の人が25点の仕事を与えられると能力が余るので、余った時間で与えられた仕事の改良などに努力工夫する人が多く出てきます。
身分格差の激しかった古代に於いて、地下人から自己実現努力によって武士団が抜け出て来たし、その内武士自身が信長など見ても分るように高度な文化の担い手になって行く・・・・江戸時代には町人やムラの名主階層まで俳諧等の高度な文化をたしなむ・・江戸時代初期から市民が文化の担い手になっています。
生き方として仕事させられていると考えるか仕事をしたいからしているかの違いですが、捲まず撓まず努力するのがスキでない社会では格差反対論で騒ぐしかないのでしょうが、格差反対論が支持される社会かどうかは、時間が余って工夫する時間が取れて嬉しいと感じる社会か否かの違いです。
日本で欧米の流行を取り入れて「格差反対」と文化人(欧米の真似すれば良いと思っていて日本の実態を知らない人が多いように見えますが・・)が叫んでも同調する人が少ないのはこの違いです。
日本は古代から一握りのエリートの指示に従って盲目的に動く社会ではなく、一人一人の納得で動く社会ボトムアップ社会であることを繰り返し書いてきました。
その前提としてどの分野の人の仕事にも神が宿っている・・便所掃除でも皿洗いでも何でも自分の職分には誇りを持って行なう精神が強固です。
大量生産社会到来後も各分野の仕事をしている人は自分自分の持ち場に愛着を持っていて、流れ作業に身を任せていれば良いと言う怠け者は例外で、同じ流れ作業でもこれを如何に良い物にするかの工夫に精進している人が普通です。
その中から多能工が生まれていて、最近ではその方が効率がいいと言われています。
零細規模の現場系でも20年くらい前ではちょっとした機械(例えば自販機)を数十センチ動かすのに、これは電気工の免許がないと出来ないとか水道の許可業者でないと出来ないとかタイルはタイル工が来ないと出来ないとか、いろんな職人が来て頼んだ方はびっくりする・・巨額請求に対するもめ事がありました。
最近ではこんなことでは客が納得しないので、窓枠のちょっとした交換その他リフォーム工事では、多能工独りで大方こなすのが普通になっているようです。
幕末の外国使節の日記などでも、下働きの女性でも諸外国では一々指示しないと働かないが日本人は指示しないことまで気を利かせてやって来ると驚く記述があります。

フラット化対応1(差額補填1)

元々技術革新の目標は、誰でも労働に参加出来る社会化を目標とするものですから弱者補助道具・・社会のバリアーフリー化拡大→(ジョブズ氏など特別成功するのを否定しないで)結果平等社会化の動きを認めるとした場合、・・格差反対論は大成功者の果実をある程度みんなに分配して20点の仕事している人も60〜80点の仕事をしている人と同じ賃金にせよと言うに等しいことになります。
大成功者の果実収取割合が大き過ぎると言う批判かも知れません。
(例えばジョブズ氏の大成功による莫大な収益を税で強制徴収するかどうかは別としてその成功の果実が対外収益入金によってアメリカに莫大な還流があった場合、税収入として予算化されてから流通しようが、税率が低い結果、大部分が民間に出回った場合、預貯金や株式購入資金あるいはホテル宿泊費・レジャーであれ、国内還流していれば経済の回転資金になる点は同じです。
この考え方を利用して貿易赤字を気にしないで中国や日本の儲けであれ何であれ、アメリカに還流する限り誰の資金でも同じと言うのが、アメリカの貿易赤字のファイナンス思想です。
2016-6-21「過大消費と消費者破綻(資金還流策)」にパナマ文書関連で書きましたが、仮に中国の利にさとい国民の逃避資金として人民元とドルへの両替が増加していてこれに応じるために人民銀行がアメリカに積んだ外貨準備を取り崩していると紹介しましたが、中国政府が公的資金をアメリカから引き上げてもそれと同額の裏金・・裸官等の逃避資金がアメリカに入って来ればアメリカ国内で回転する資金量は同じです。
上記のとおりぼろ儲けの九割を税でとろうが3割しかとらなかろうが、裏金で入って来ようがその国に儲けた金が入ってさえ来れば(ジョブズ氏がタンス預金していない限り国内で回る資金になる点に変わりないので、税率は本当は関係がないことです。
国家として重要なのは国内消費持続能力・・国際収支の内容実質の問題です。
日本の場合税で取れていないので国家財政上は赤字ですが、国家全体では世界ダントツの純債権国である所得収支黒字として巨額資金が入って来ていますので、国内で資金がダブついている結果金利を払ってまで借りる必要がない・・超低金利になっている・・だからこそ「有事の円」になっているのです・・。
支払原資が、税収か国際売却収入によるかは別として払い能力・・日本の支払持続性を世界が認めているので「有事の円買い」になるのです。
国際経済では税収によるかどうかよりは国際収支の中身が重要です。
日本の国際収支を見ると資本収支は海外投資が多くて赤字になっていますが、これが時間経過で海外からの(投資した金の配当が始まり)収益送金原資になるのですから前向きの支出・この赤字は価値のある赤字です。
(中国や新興国の場合日本等からの投資資金の流入超の結果増えた外貨準備が多いことを自慢していると書いてきましたが、これは毎年収益送金しなければならない一種の債務ですし、送金利益が出なくなればいつでも逃げられます・・新興国通貨が有事・・景況感悪化に弱いのはこのせいです)
所得収支は文字どおり現時点での海外での儲けの国内送金の数字ですが、日本の場合これが何十年も大幅黒字が続いています。
この所得収支黒字を使って、国内社会保障やインフラ投資が潤沢に行なえているので実質格差解消になっているのですから税で賄っているか国債で賄っているかは大した違いがありません。
日本では、潤沢な資金を利用して資源収入や知財・金融収入等も税収に反映し、その資金が高度なインフラ新設や維持資金になって殆ど税金を払わない階層もその利用を出来て恩恵を受けていますが、(これも消費面でのフラット化の1面です)格差是正論はそれに留まらない・直接底辺層に対する現金給付を増やせと言う要求になります。
国費補助によって無償あるいは市場価格以下で施設などを利用出来るだけでは落ち着かないから直截現金給付・・市場価格よりも賃金を上げろと言う意見は妥当でしょうか?
同一労働同一賃金・・同じ仕事をしていても日本人であると言う理由だけで20ポイントの仕事で60〜80ポイント貰う権利があると言うのは背理ですし、働き以上の賃金では国際競争から脱落し結果的に日本経済が破綻してしまいます。
世界的賃金水準平準化・同一労働同一賃金の原理に近づくのは人類平等の精神から見て正しいことですし、日本人だけ高給化を要求することに正義はありません。
市場原理に反した高賃金を強制すれば企業は海外に逃げてしまいます。
正義の形あるいは国際競争の観点から言えば、「20の仕事には20の賃金しか払えないが、資本収入(海外からの送金)があるからこの資金で別途国民に40〜60ポイント配給(一種の生活保護)せよ」と言うことになるのでしょうか?
これは賃金ではなく社会保障の分野ですから、現在既に結果的に似た状況・・社会保障費が国家予算の半分近くになっている現実がこれを表しています。
イギリスは戦後【揺り籠から墓場まで」と言われる高福祉政策をとりましたが、これは新興のアメリカに負けて行く産業界・・労働者の賃金低下に対する穴埋め政策であったと理解出来ます。
この穴埋め資金に苦しみいわゆる「イギリス病」に悩まされていましたが、北海油田収入によって息を吹き返したものの油田が枯渇して来て又苦しくなったことを大分前に書きました。
中国の開放政策以来、先進国はおしなべて新興国の生産活動参入によりどこも賃金下落に悩まされその補填に苦しんでいますが、補填するべき企業利益を上げるのに成功している国(多分日本だけでしょう・・アメリカはいわゆる資金環流策によってファイナンスして来ただけと言うのが私の意見です)では・・海外からの収益送金やアップルやユニクロや孫正義などの巨額収入者が生じるので格差問題となり、格差補填出来ない国→海外展開事業成功の少ない国→もしかして海外送金の方が多い国)では、補填もしてくれないので自暴自棄的いらつきの対象に弱い移民反対論・・スケープゴート探しが盛り上がる状況になっています。
アメリカは基軸通貨国の地位を利用して資金環流でファイナンスし、イギリスは金融市場・シテイの場所貸しで何とか凌ぐ構図でしたが、場所貸しでは大した資金が入りません。
ホテルやレストラン林立する街よりは、高級ホテル・レストラン利用者の住む街の方が一人当たり税収が多く入ります。
いつも書いていますが観光で成り立っている街はホテルなどの経営者以外ベッドメイキングや掃除など(スターバックスが大繁盛していても従業員の大多数は最低生活者になるでしょう)の末端底辺労働者の街になってしまいます。
いわゆるウインブルドン現象の本質です。
アップルの成功と言っても99%?は中国の工場や日本台湾などの部品業者が潤っているのであってアメリカの恩恵は株式配当益でしかない点が、国内部品産業等で健闘している日本との大きな違いです。
米英共に結果的に金融資本的利益に頼る点は同じですから、反ウオール街騒動やとランプ現象・・EU離脱論の昂揚になったようです。

中国の西欧接近策2(定着した日本標準1)

インドネシア大統領は就任直後にそれまで着実に進んでいた日本の新幹線受注予定をいきなり外して中国に発注してしまいましたが、工事着工の見通しが立たないままと言われています。
その後始末(対日修復)に困り、今になって(25日夕刊の報道では)別のジャワ島縦断鉄道工事の日本発注を匂わせるなど、日本の御機嫌取りに苦労していますが、(信頼関係破壊の代償を理解したと思われます)国内的にも政治リスクを抱えたでしょう。
習近平の英国訪問時に架空の経済力・購買力を背景に傲慢無礼な態度に終始しても、英国は最大級の歓迎をするしかない屈辱を味わったのが昨年末であり、屈辱外交が今になって蒸し返されているのは、中国市場の魅力がないし、英国への投資が期待出来ない・・何のために非礼な習近平を大歓迎したのだ?となって来たからでしょう。
僅か数ヶ月後に中国経済が底割れに転じていると分って中国批判を始めるなんて、・・007で知られる情報大国の先を読む能力の浅さに驚くばかり・・何か裏にあったのかな?と勘ぐりたくなるのが人情でしょう。
韓国の場合既に中国にのめり込み過ぎているので、(5月19日に紹介したように韓国の対中貿易比率は25%に達していて、しかも13年には628億ドルもの黒字を稼いでいます)今後中国に邪魔扱いされると困ってしまう弱みがあって、卑屈とも言えるほど迎合せざるを得なかったと見ればパク大統領の選択は表面上合理的でした。
中国は歴史上勝者になれば何をしても良い・敗者を辱められるだけ辱めるのを得意とする文化?ですから、今回もその実践で相手が迎合して来れば、相手がいかなる屈辱も受ける程屈服しているかを世界に自慢されて恥をかかされるだけです。
軍事パレードに出席して却って恥をかかされた・・西側諸国で自分一人が臣下のように並んでいた、あのこわばった表情をみれば明らかです・・逆効果に漸く気が付いて軌道修正を始めて、年末に日韓合意に至った・・パク大統領とすれば、見事に軌道修正に成功した・・(日本なんかチョロイものと言う国内評価?)敏腕と言う評価なのでしょう。
中国の反日→西欧企業誘致策の得失に戻ります。
西欧諸国によるアジア・アフリカでの植民地支配のやり方を見ても分るように、西欧人は基本的にアジア人との差別化・・西洋人の優越性強調意識が根強く技術移転に親和性がない特徴があります。
中国は日本の代わりに韓国技術導入・おだてるまではうまく行きましたが、西欧諸国からの技術導入となると現場職人が重要ですから、トップだけ懐柔しても勝手が違う筈です。
たまに日本で普及しているドイツ製品家庭用品を見ても分るようにゴツイままで日本人向けに優しく改良するサービス意識が皆無・・日本のように顧客に親切ではありません。
長年日本に輸出する外車は左ハンドルのママでしたし、(やっと右ハンドルに変えたようですが)日本に輸出している洋服を見ても日本人の身の丈に合わせて改良しないで、そのまま輸出しています。
似たような部品導入は出来るでしょうが、現地に合わせる基本姿勢の乏しい西洋企業との協力では、中韓の発展にブレーキがかかってしまいます。
そのうえ、全体的に日本仕様になっている(韓国製品も元はと言えば日本技術)中国産業構造の中で一部部品や、機械だけドイツやフランスに頼るのは無理があります。
松下電気その他先行企業が技術をうまく騙し取られたかどうかは別として、アジア諸国には日本式技術・工場・店舗などの運営スタンダードが定着してしまっているのが強みです。
今トヨタの場合で言えば、一部特許解放してでも自社方式の世界スタンダード化競争が始まっていますが、日本人が草の根まで惜しみなく技術移転して来た成果・・無意識の善行をして来た効果が出ています。
日本人が古代から続けて来た自分だけではなく周辺のために尽くす習慣に従って個々人が誰に言われなくとも・・世界中で習慣に従って誠心誠意やって来たことが後で実を結ぶ好循環の1つです。
戦後アメリカが中韓を利用して日本を道徳的に貶め続けて来ましたが、いつの間にか世界の生活標準・価値観が日本的になって来たのは、このように草根の日本人一人一人が世界のどこへ行ってもこつこつと誠実に周辺の人のために生きて来たからです。

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