米中対決と世界経済への影1

昨日見た貿易比重でみれば、日本に関してはありがたいことに他国に比べて対中比重の上昇率が低いようですが、世界全体で見れば対中貿易の方が米国を上回っているように見えます。
米中対決すると中国への輸出が減り(世界で対中輸出が対米より大きいので)世界経済が大変なことになるという変な議論がメデイアで流布していますので今日はこれに対する私の素人的反論です。
中国の巨大な輸入は、対米貿易黒字によってファイナンスされている・対米貿易黒字がなくなる・・対米輸出が減ると中国が加工生産→対米輸出するための資源や部品輸入がなくなる・・中国の世界経済への影響力がその分縮小すると思うのが素人的道理です。
中国の輸出→輸入が減れば世界中が困るかのようなメデイアの論調ですが、それを手をこまねいて見ている企業はありえない・・・ベトナムその他東南アジア諸国に生産工場を移転してそこから対米輸出に切り替える・・米国の対中高関税を回避するように動くのは当然です。
米国の消費が減らない限り、消費に必要な分を米国内で生産するか、中国輸出分の肩代わりする国が出てくる(中国工場の米国向け輸出分の生産縮小して東南アジア等の生産を増やすので)結果的に世界生産量は変わらないはずです。
その生産地移転コストとタイムラグが問題になるだけのことであって、中長期的世界経済あるいは日本経済に対する負担にはなり得ない・・むしろ高関税回避のために生産基地の移転恩恵を受ける最貧国カンボジア等の生活水準が上がり世界が平準化してトータル消費が増えるはずです。
部品も同じで中国製部品を使うと高関税になるならば、競合する他国製部品に切り替えるようになるので切り替え能力のない企業,生産地移転できる産業構造でない国だけが中国と心中するしかないにすぎないというべきです。
どうにもならないのは欧米制裁で中国の資源輸入に頼るロシアやベネズエラやイラン等限定された国のことでしょう。
中国の輸出産業が打撃を受ければ、輸出製品生産用の資源,動力消費も激減します。
対中締め上げは、米国発の経済制裁の効力を高める狙いがあるようです。
逃げ場のない最たる国・企業が震源地の中国であり中国企業です。
中国企業がベトナム等に工場移転→ベトナム製として対米輸出できるかというと中国国有企業関連は、それだけで米国から忌避されるので工場移転も無理があります。
そのほかに中国資本企業の場合の網もかかります。
米国へ輸出目的による中国内での生産ではなく中国国内消費拡大を当て込んで先行投資したおむつ工場や店舗進出などの場合、中国経済減速による消費減退はもともと中国内需向けだった以上は、東南アジア諸国へ工場移転する余地がなく消費拡大予想が見込違いになったことになります。
中国国内自動車販売が減少に転じていることが外資が関与していて統計をごまかせないので信用性が高いですが、その他分野の生産や売り上げも車にほぼ比例して減っていると見るべきです。

https://www.msn.com/ja-jp/news/other/

12月中国貿易統計、輸出入ともに予想外の減少-世界経済リスク高まる
[北京 14日 ロイター] – 中国税関総署が発表した12月の貿易統計では、輸出が2年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、輸入も減少した。ともに予想外のマイナスで、中国経済が2019年に一段と減速し、世界的な需要が低下する可能性を示す内容となった
12月の輸出は前年同月比4.4%減。主要市場のほとんどで需要が鈍化した。

対米輸出基地としてあった中国での生産工場が新興国へ移れば、その分新興国の所得が上がり消費力が上がるので、中国で減った(おむつなどの)消費分が周辺諸国に拡散するので、世界全体での消費量は同じです。
中国企業の輸出向け生産が減り、その分原燃料輸入が減れば、(資源需要減少と言いますが)その分東南アジア諸国が生産に必要なので資源を買い、工場稼働アップによって電力等の必要性が増え燃料の輸入が増えます。
輸出入で見れば中国の対米黒字分が、周辺国の黒字に置き換わり周辺国の消費拡大に置き換わります。
早くから周辺国への進出準備をしていた・・用地取得・建屋まで完成していていつから操業しようかという企業にとっては追い風になるし、その予定がなかったか、予定していたが、これから数年かけて用地を探し、許認可交渉に入ろうとしていた企業にとっては遅れている分だけ競合他社の後塵を拝することになります。
http://www.tokyoーnp.co.jp/s/article/2019010501000986.html

事務機器大手リコーは5日、中国での複写機の生産をタイへ移管する準備を進めていると明らかにした。
中国の輸出環境が米国との貿易摩擦で悪化している影響を緩和する狙いだ。
現在、複写機を中国の上海や深センから米国へ輸出しており、生産の移管を決めれば、最速2カ月でタイから輸出できる体制を整えた。部品も中国以外で調達が可能だという。

この一般論をリコーの例を引いて10日ほど前に素人的に書いてきましたが、ついにプロの分析結果が見つかりましたので明日引用紹介します。
これによるとほとんどの国はマイナス影響よりプラス影響の方が大きいことがわかります。
ベトナムやマレーシアなどはマイナス分は殆どなく工場移転メリットをもろに受けるなど大幅なプラスになっています。
日本も若干のプラスです。
EUは日本、韓国台湾のように簡単に東南アジアに移転(する下地がない)できないので、大きなダメージを受けるように思っていましたが、以下のグラフによれば(私には原因不明ですが)かえって儲かるようです。
対中高関税をかけると米国が高い製品を買うしかなくて、米国自身が困るとメデイアが言いますが、米国自身も代替生産国から従来通りやすく買えるので、ほぼ中立になっています。
こうなると米中摩擦で困るのは、逃げ場のない中国だけのようです。
マスメデイアはなぜ困る困るというのでしょうか?

徴用工訴訟と国内法論理(米中対決相似形?)6

勝又氏のブログに出ている韓国事情です。https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20190518.html

2019-05-18 05:00:00
韓国は、ウォン相場の下落と反比例して、日本への評価が高まっている。この理由は、2つあるようだ。
その一。ウォン相場急落=通貨危機という切迫感である。日本にSOSを打ち、救援して欲しいという潜在意識。
その二。徴用工問題をめぐる日韓関係の悪化である。韓国で日本企業の資産を売却した場合に起こる日本の報復懸念に基づく。仮に、韓国で通貨危機が起こった上に日本の報復を受けたら、韓国経済は立ちゆかなくなる。その恐怖感が、「反日」から一転して「親日風」にさせているのだろう。現金なものだ。
『韓国経済新聞』(5月16日付け)は、「『メード・イン・ジャパン』なければ生産困難な製品多い」と題する記事を掲載した。

韓国、「日本様々!」メード・イン・ジャパンなければ、経済「保たない」
『韓国経済新聞』(5月16日付け)は、「『メード・イン・ジャパン』なければ生産困難な製品多い」と題する記事を掲載した。
世界最高の競争力を持つ韓国の半導体、スマートフォン、ディスプレー製造業者は依然として日本の装置と素材、部品メーカーの技術力に依存している。日本企業がなければ「メード・イン・コリア」製品をまともに生産するのが困難なほどだ。
(1)「 世界のメモリー半導体業界で1位と2位のサムスン電子とSKハイニックスは半導体工程に使う高純度フッ化水素をステラケミファ、森田化学工業など日本企業からほとんどを輸入する。フッ化水素は半導体製造核心工程であるウエハーの洗浄と蝕刻に使われる。ソルブレーンなど韓国企業がフッ化水素生産に乗り出しているが、歴史が100年を超える日本企業の技術力には追いついていないと評価される」
(2)「 スマートフォン用有機ELパネル生産に必須の蒸着装備も日本製が大部分だ。キヤノン子会社のキヤノントッキが世界市場の90%以上を掌握している。大型ガラス基板に薄い膜を均一に形成する技術力を保有しているためだ。機器1台当たりの価格が1000億ウォンを超えるのにサムスンディスプレー、LGディスプレーなど韓国の主要ディスプレーメーカーが装備を購入するため列を作って待つ」
(3)「昨年、韓国が日本との貿易で出した赤字は、240億ドルで世界1位だった。輸入半導体装備の34%、高張力鋼板の65%、プラスチックフィルムの43%を日本から輸入した。日本企業に対する過度な技術依存度が韓国看板企業のグローバル競争力を損ねるという懸念も出ている。

上記のような記事が韓国内報道で出ると嫌韓派には気持ち良いでしょうが、これに慢心していると足元をすくわれる危険があります。
対日依存度低下論は、韓国の対日批判の背景について日本側の推測記事・意見であって、韓国人が「もう日本には世話になりませんから言いたいことを言います」と主張しているわけではないのに、日本の勝手な憶測をもとに頭にきて?強硬態度に出るのは行き過ぎです。
法律相談で、自分の意見が通らないと、貧乏人は死ねというのか!とか、弱いものは泣き寝入りするしかないのか!などと感情的反応する人がいたり、企業の相談でも客が何を要求してもお店の方は何でも言う通りにするしかないのか!など、時々短絡反応する人がいますが、あなたのやり方はやり過ぎで許されないが、そこまでやらない中間に多様な方法があるという説明の前に、一足飛びの結論を出したがる人がいます。
デュープロセス・物事には手順があるという程度のことですが、相談事例やトラブル事例の多くでは、一足飛びの反応がトラブルになっていることが多いものです。

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