アメリカ連銀による財政政策1(QE1〜3政策の意味)

安定成長時代になると資金需要の主役は投資用から消費用に切り変わりますから、無利息〜マイナス金利が中心になって行くべきでしょう。
まして金貨時代とは違って中央銀行が好きなだけ紙幣発行出来る時代では、紙幣需要があれば直ぐ供給出来るので、(国際収支が黒字である限り)資金不足によって金利が上がる理由がありません。
言わば資金過剰(印刷能力の範囲でいくらでも印刷出来る)時代が到来しているのです。
現在では金利政策の効用がなくなっていて中央銀行の役割が低下していると何回も書いてきましたが、過剰供給の(生産余力が大き過ぎて困っている)飽食時代には金利下げ程度では需要を喚起することはないし、仮にあっても微々たるものに過ぎません。
しかも先進国では画期的発明がない限り、改良投資しかない投資効率の悪い社会になっているので、いくら金利を下げても景気対策としては何の効果もない(本来マイナス金利時代に突入しているのではないかという意見を前回まで書いてきました)時代が来ています。
このため今やアメリカでも、金利政策の意味がなくなったので所謂Q1(量的的緩和)、QE2が行われ、ついには日本時間の昨日待望の?QE3が実施されたようです。
Q3の内容を見ると、QE2までと違って言わば無制限に住宅ローン債権等の買い取りが出来るようです。
従来の国債等の買い入れから住宅ローン債権の買い取り枠を無制限に広げたことで住宅市場の底入れを目指しているのでしょうが、政府公認の住宅バブルの再来を目指していると言えます。
サブプライムローン・・支払能力のない低所得層に対してもローンを供与してこれを世界中にバラまいていた咎めがついに出てサブプラムローン問題・2公社の破綻となり、ひいてはリーマンショックでとどめを刺されたのがアメリカ経済不振・・現在の欧州危機の根源ですが、これを今度は2公社というクッションを置かずに連銀自体が直接引き受ける荒療治になります。
紙幣発行権のある連銀が住宅ローン債権を買い取ってやることになれば(買い取り基準に該当する必要がるでしょうが・・・)銀行は支払能力に疑問符のつく低所得者に対しても安心して貸せますので、サブプライムローンによってドンドン家が建設されてアメリカが見せかけの活況を呈していたサブプライムローン全盛時代の再来を狙っていることになります。
2公社が世界中に向けて債券発行して住宅ローン向けの資金調達していた(2公社が破綻するとこれを買っていた中国や日本が大損する関係でした)のとは違い、紙幣発行権のある連銀自体が無制限に住宅ローン債権を買い取るとその資金は自分の刷った紙幣で賄うので、これを得るために世界に公社債を販売してバラまく必要がありません。
2公社のように債券を再販売しない代わりに紙幣をバラまく・・紙幣価値は日々帳尻を外為市場で合わして行くので、イキナリのショックにはなりませんから、2公社のようにデフォルトの心配がない点が違います。
(実はアメリカ国債の最大保有者は中国ではなく、今やアメリカ連銀になっているとの報道を見たこともあります・・今後新規発行(借換債が殆どです)分をアメリカ連銀が買い受けて外国人保有と入れ替えて行けば、外国人保有による外国の発言権を心配しなくて良いことになります。)
アメリカは従来ずっと貿易赤字国ですから、政府資金や住宅建設資金を賄うために国債や公社債を発行して回収・還流していました。
紙幣に変えて債権を海外に垂れ流して来たのです。
その引き受け資金が国内にないことから、そのファイナンスとして貿易黒字国に自国国債等を買って貰って資金還流させていました。
(我が国は黒字国だから財政赤字資金を国内民間資金で賄ってきましたし、ギリシャなどは国内で賄えなかったので外資に頼った結果ついに危機になっています)
今後ドル紙幣を回収・還流させないまま同額の紙幣を垂れ流すと、国際収支の赤字分だけドルの価値が下がってインフレになります。
今後国際収支赤字分と財政赤字分の過剰支出分を自国紙幣増刷で賄うのみならず、過去のマイナス分も借換債発行の都度自国紙幣発行で連銀が仮に全額購入して行くとすれば、過去何十年分の倍速で押し寄せて来ることになります。
(過去に仮に年に100億ドルずつの赤字であって今後も同じ額の赤字とすれば、全額連銀引き受けの場合、毎年100億ドルずつの償還があって新規赤字の100億ドルと合計すると200億ドルずつの紙幣垂れ流しになります。)
こんな極端なことは出来ないですから、既発行債の買い替えの一部を連銀が引き受ける形で徐々に海外に出回っている国債・公債残高を減らして行くことになるのかも知れません。

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