EUの中国離れ→親日化(ゴーン事件の背景1)

ゴーン逮捕は単なる刑事事件ではなく深い権力闘争・・ひいては日仏国益の絡んだ大きな政治闘争を背景にしたもの」と一般に言われています。
私個人的には政治的思惑など抜きに検察が法規違反を純粋司法的見地から立件したものと信じたいですが、捜査中で違法行為内容不明で合理的な論評不能なためもあってか?メデイア界ではこれだけの大事件になんの論評もしないわけにいかないからでしょうか?
政府首脳とすり合わせがあってもおかしくないという憶測中心のメデイア界の意見が広がっている印象です。
ただしニュースでは10日午後起訴と出ていますので、今後は憶測ではなく起訴状に対する専門的論評が可能になってくるでしょう。
ゴーン事件については、従来以下に紹介する記事のような憶測解説が一般的でしたので、NHK意見を代表として紹介しておきます。
全文引用では長くなりますので「はしょり」ながら紹介します。
NHKが報じている以上は、当たり障りのない大方の意見でしょうし、内容を見ると(筆者としては独自意見のつもりでしょうから、失礼かもしれませんが結果から見ると)いろんな単発的意見の集大成(まとめ)のような印象です。
全文NHKからの部分引用です。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/nissan_ghosn/
2018 11 20

ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」
井上 久男ジャーナリスト
ゴーン会長は、日産とルノーのトップとして、それぞれの会社の自主性を保ちながら、生産や調達などの面で連携の成果を出してきました。三菱自動車も事実上の傘下に収め「3社連合」を率いています。ゴーン会長が不在になれば、アライアンスにどのような影響が及ぶかが注目されます。
フランス政府は日産の製造をルノー工場に移行させる強引な戦略が今回の社内闘争の引き金になっていると噂されています。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58561?page=2
両社の提携に転機が訪れたのが2015年だ。ルノーの筆頭株主である仏政府が2年以上保有する株主の議決権を2倍にするフロランジュ法を適用して、ルノーへの経営の関与を高めようとした。日産は、仏政府がルノーへの関与を高めれば、間接的に自社にも影響が及ぶと判断、仏政府への対抗策を講じた。その一つが、ルノーと日産の提携契約の見直しだった。
見直したのは出資比率引き上げの際の手続きだった。現在、ルノーは日産に43・4%、日産はルノーに15%、それぞれ出資して株式を持ち合っている。日本の会社法上、日産がルノー株をさらに10%買い増して25%以上の出資比率にすれば、ルノーの日産に対する議決権が消滅する。
これまでの契約では日産がルノーへの出資比率を高める場合には、ルノー取締役会の承認も必要としていたのを、契約からその条項を消すことでルノーと合意。この契約変更によって、日産取締役会の決議のみでルノー株を買い増すことができるようになった。仏政府の影響が日産の経営に及んできた場合、株式買い増しを行なってルノーの議決権を消すことが狙いだった。
フランスが突きつけた「3つの条件」
2018年に入り、「ポスト・ゴーン」を巡って仏政府が動き始めた。日産は16年に三菱自動車を傘下に収め、日産・ルノー・三菱の3社アライアンスが誕生。その後17年にはゴーン氏は日産社長兼CEOの座を西川廣人氏に譲った。ゴーン氏は現在、日産、三菱両社の会長とルノーCEO兼会長を兼務している。
ゴーン氏のルノー会長兼CEOの任期は18年までだったことから、ルノーCEOを退任すれば、このBV会長職も手放さなければならなかった。
こうした状況下で、フランスのマクロン大統領は、ゴーン氏にルノーCEOの任期を2022年までに延長する代わりに次の3つの条件を突きつけた。
① ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにする
② 後継者を育てる
③ ルノーの現在の中期経営計画を達成させる
ゴーン氏はこの条件を呑んでルノーCEO職に再任された。
この条件①があることから、ルノーと日産が経営統合に近い形で関係をさらに深めるのではないか、といった見方が強まっていた。持ち株会社の下にルノー、日産、三菱をぶら下げるといった見方も出ていた。こうした関係強化策をゴーン氏は18年度中にもまとめる動きを見せていた。
仏政府が特にこだわっていたのは条件①だ。なぜなら、今のルノーは日産からの配当や最新技術を当てにしなければやっていけないほど経営体力も商品力も劣化している。日産なしではやっていない会社になってしまった。見方を変えれば、日産にとってルノーが「重荷」になりつつあった。
日産の西川CEOは、経営の独自性が維持できなくなるとして、これ以上ルノーの支配が強まることを嫌った。提携時にルノーから8000億円近い支援をもらったが、この20年近い関係の中で配当金としてルノーに「恩返し」しており、その額は優に8000億円を上回っている。
社員らの「反発」
仏政府やルノーが強引に日産への支配力を強めれば、西川CEOには、前述したようにルノー株を買い増して日産への議決権を消滅させる強硬策も視野に入っていたと見られる。この強硬策を実施するには、日産の取締役会での多数決で、「西川派」を過半数にしなければならない。
西川派は、坂本氏、井原氏、豊田氏と見られ、西川氏自身の票を入れて4票しかなく過半数を取れない。ゴーン氏はCEOを西川氏に譲ったとはいえ、取締役会メンバーは巧みに構成し、自分の意向が通る人選にしていた。
極めつけは、グレッグ・ケリー氏の存在だ。「ケリー氏は代表権を持つ取締役でありながら日産で勤務している形跡がなく、実際には海外で牧場経営をしている。ゴーン氏が公私混同で会社の金を使うための筋書きをアドバイスするなどの『悪知恵袋』」(同)と見られている。
今回の事件でも、ケリー氏が不正に深く関与したとされている。ゴーン氏とケリー氏を日産取締役会の中から追い払えば、西川氏は過半数を取れると踏んだ、と見られる。
昨年に発覚した完成車検査不正問題も、日産の社内不満分子が国土交通省に情報提供したことが発端と見られ、車検制度にもつながる時代遅れの古い制度を残したい国土交通省が、それに乗りかかって日産を叩いた。
社内の不満は、ゴーン氏ら一部の外国人が高給を取り、会社の金で贅沢三昧なのに、現場への投資は怠っていることへの反発であった。ゴーン氏自身が長期政権で権力の座に長くいて、腐り始めていたことは間違いない。
社内の不満を放置していれば、不満の矛先はいずれ西川氏自身に向かってくる……西川氏サイドはそう判断したのではないか。真相解明には時間がかかるだろうが、それが今回の事件の背景にあるというのが、筆者の見方である。

企業の政治離れ2

官僚出身政治家に頼って来た自民党政権の凋落は、官僚不信とセットでしたので、政権交代では、民主党は官僚排除(官僚答弁禁止など・・)を公約に掲げるほどになっていました。
昨年の原発事故が自民党政権下で発生していたら、これまでの安全だと言い張っていた官僚答弁は何だったのかという批判が噴出していたでしょう。
原発のような大事故が起きる前から、官僚に対する国民の信頼が地に墜ちていてその約1年半以上も前から官僚批判を中心にして政権交代になったのですから、国民の目は確かです。
原発事故当時の菅総理はまさにこうしたときの追及型政治家としてピッタリの資質ですから、彼が事故収束に骨を折リ、長かった自民党政権下で形成された安全基準や危機対応プロセスの整備がお粗末だったことに対して国民に陳謝するのはミスマッチの配役でした。
政権交代が一年半ほど早過ぎたことになるのでしょうか?
平成に入ってから、政治環境変化に対して企業の逃げ足が速くなって来て、個々人あるいは海外に逃げられない労組が国内政治の主要ステークホルダーになった以上は、以後の政治は彼らからの直接的支持なしには存立出来ません。
この受け皿としては、伝統的野党である民主党あるいは公明党や共産党・社民党くらいです。
企業利益目的の公共工事がひいてはその従業員・・個々人に恩恵が及んで行く間接効果を期待する時代から国民個々人への直接的バラマキが横行するようになってしまった原因でしょう。
国民から直接支持を受ける上記各政党は批判・・要求政党としては訓練を積んでいますが、いずれも業務遂行の主役になった・・実務経験のない点が最大の弱点です。
経営・・業務遂行の実務経験のない砂粒のような国民の支持で実務経験のない野党が政権を取ると、政権を鍛える実務家がいないので、政権党になって何をやってもつまずきが多くて危なっかしいのは当然です。
韓国はアジア危機以来海外展開を進め多国籍化を推進して来た結果、(自由貿易協定に世界一熱心です)サムスンなど多国籍化した企業が支配的ですから、日本より一足早く企業支持を受けない野党の弁護士出身のノムヒョン政権が誕生したのは偶然ではありません。
彼が大統領になってみると実務能力がないとの散々の評判でしたが、韓国に限らず多国籍企業の多い国々では、財界が国内政治に対する意欲をなくし勝ち・・ひいては自国民に対する福利・ウエルフェアの意欲が薄まるので、韓国等の個々人は悲惨です。
韓国では大企業が自国民を植民地の現地人扱い・収奪の対象にしているのじゃないか・・国内植民地という視点でJune 3, 2012に書きました。
韓国民の海外脱出熱が世界一高いのはその結果ですし、多国籍企業中心の時代が来れば(海外にも軸足をおく経済界の利害と国民の利害が一致しなくなって来るので)どこの国でも政治に対する不満が強くなります。

企業の政治離れ1

企業が海外に簡単に逃げられない時代には企業体が政治に対して必死(文字どおり存続・浮沈にかかわりますので)に注文を付け、政治もこれに呼応して政策立案能力が磨かれて行きました。
グローバル化が進み企業体としては海外展開の余力・・おまけとして政治に注文を付けるだけで足りる時代が来れば、苦労して政治に訴え理解のない官僚を教育し・鍛えて実現する必要性が弱くなります。
また、特定政策推進に肩入れし過ぎると、反対派から不買運動を起こされるリスクの方が大きくなりかねません。
原発再稼働であれ風力発電・太陽光発電であれ何であれ、中立で見守っていて結果が不都合ならば、そこから逃げ出して都合の良い政策採用している国・・例えば太陽光発電業者は太陽光発電に対する補助金の多い国で増産すれば足ります。
FTAであれTPPであれ業界は日本政府の尻を叩かなくとも、(日本国内の生産を縮小し)アメリカやメキシコで生産増して韓国中南米等へ輸出すれば良いのですから、必死になって推進する(農家の機嫌を損ねる)必要がありません。
法人税が高いと思えば、税の安い国で投資拡大すれば良いので政治活動までして(政治には反対派の存在がつきものです)嫌われる必要がありません。
実際には投資済みの生産能力削減は大きな損失を伴うので容易ではないのですが、国内でしか生きる場のない時代に比べて死活的重要性が減少していることを書いています。
また殆どの企業は現状維持ではなく、いつも増産するチャンスあるいはスクラップ&ビルド(大手コンビニその他で言えば新規出店と不採算店の閉鎖の繰り返しと同様に世界企業もいつも最適生産・出店を検討しています)をしているので、不都合な国での増産や更新投資を見合わせて都合の良い国で増産をする・・こうした繰り返しの結果国別の投資比率が徐々に変わって行くのが現状です。
このように政治から距離をおく企業が増えて来る・・海外比率が高まる一方になると企業・官僚の二人三脚による政策すりあわせが減り、官僚の政策立案能力が低下して行きます。
これが官僚に頼って来た自民党の政策遂行能力を徐々に弱体化させて、ついには下野する所まで追いつめられた基礎的構造変化だったと思われます。
それまで国民の大方は企業に属していることもあって、職場の代表である企業にお任せしておけば、国際問題も海外事情に詳しい企業と政府(官僚)が協議して何かとしてくれる・・間接的な立場でした。
(若手→中堅→古参と順次昇進して行く企業では企業首脳部や先輩の判断に委ねておけば自分が考えるよりいい結果になるだろうという信頼感が基礎にあります)
日本を取り巻く環境変化に対する切実感の最大利害関係者・・ステークホルダ−だった企業が今では国内政治の脇役になってしまった以上は、簡単に逃げられない国民個々人が直接政治を担うしかない時代が来ています。
個々人が国際政治の利害結果を直接受けるようになって懸案を自分で(どこか中間団体に任せておけず)解決するしかない・・その集合体である政治に直接訴えて解決して行くしかなくなったのが、グローバル化進行以降の政治状況です。
実務能力のない個々人の訴えによって政権が成立する時代が来ると、その政権(民主党など)には実務的すりあわせする相手がいないのですから足腰が鍛えられない・・能力不足になるのは仕方がない所です。
政策立案遂行能力は、政権支持者によって磨かれるからです。

結婚離れ2

母親は何かと夫をおだてて子育てに参加させようとして来たのですが、まだ父親の責任感は当てにならないので母親としては、母子一体感をおいそれとは捨てられません。
他方で男性の方は、コンビニや中食(ケータリング)の発達あるいは電子レンジを始めとする家庭調理機器のめざましい発達で、自炊生活が苦にならなくなって来たので、あえてリスキーな結婚して苦労する気にならなくなって来ています。
とりわけ最近出現している草食系男子は、この傾向が顕著でしょう。
家庭のない心細さ・孤独感をどうするかは別問題ですが、婚姻制度を重たくしすぎると婚姻を回避しようとする男性が増え独り立ち出来るように進化して行くでしょうし、女性も一人で生きて行けるように回避する方向(中性化傾向)に変化し始めています。
セックス需要が直ぐにはなくならないとしても男女関係は婚姻しなくとも成り立つし、経済面や食事の準備等で相棒が要らなくなれば生涯独身(で必要な限度で付き合うパターン)を選択するのを非合理とは言えません。
子を産むための男女・雌雄関係から発生した筈の異性関係ですが、種の継承に関係ない関係(セックスだけ・あるいは寂しいから心が通え合えるだけ)に転化して行くことになりそうです。
種の保存維持・子を産むための関係で始まった異性関係を前提にしたカトリックでは伝統的に避妊や中絶に否定的ですが、子育ての長期化の結果子孫をもうけるためのセックスから、子供は充分に生まれた後も子を育てるためのセックスとなり、中高年からはセックススレスも珍しくなくなくなり、老後の助け合い期間になれば100%セックスレスです。
子供の成長後も大学院を出てしっかりするまでの夫婦関係は、子を産み育てる一連の行為としてなお理解可能です。
子供が一人前になって出て行った後の定年後の夫婦関係(更には75〜80代になってお互い介護が必要)になると、古代から連綿と続いて来た「子孫」を造るためのカップルとは最早言えません。
高齢者夫婦関係が社会の大きな部分を占めるようになって来ると、子を産むことを予定しない男女関係を若者も真似して形成するようになっても違和感がなくなって行きます。
(異性の若者が子を産む気もなく一緒になっていいのならば、同性愛者・あるいは女性同士のグループホームもこの範疇に入るでしょう)
社会のあり方として子を産む予定のない男女関係・・共同生活を受け入れて行くとすれば、それでも女性は(女性が自分で一生食って行ける時代が来れば・・)男性を必要とする時代が続くのでしょうか?
男子の変化・・・いわゆる草食系化と女性自身も職業意識の高まりで子供さえ生まなければ自分で生きて行ける経済力を付け、更に治安その他のシステムの進化(特にマンション暮らしの場合)で、女性一人あるいは女性同士だけで生活するのにさして困らない社会になって来ました。
男女双方から結婚への意欲が弱まって来たのが最近の風潮で、これがここ10〜20年以上の結婚率や出産率の低下に大きな影響を与えている筈です。
給与が安いから子を産めないと言う俗論が支配的ですが、厚労省の賃金統計(好不況の波)と出生率比較によると実際には給与所得の向上と出生率は反比例関係にあるのは厳然たる事実です。
韓国台湾その他のアジア諸国でも、豊かになる(高学歴化の影響もありますが・・)と出生率が下がる傾向があるのはどこの国でも同じです。
(フランスなど西洋先進国で出生率持ち直しに成功しているように見えるのは、低賃金外国人労働者の大量流入にあることは明らかですし、アメリカも平均寿命が低いことや肥満など後進国性があるのは絶えざる底辺労働者の流入によるものです)
我が国の統計(どこの国でも同じでしょうが・・)では不景気で給与所得が落ち込むと出生率が上がる傾向ですから、出生率を上げるには国民の多くを貧困層にしてしまい、その上で子供手当の増額をすれば、最低賃金層の子沢山を下支えする意味があります。
我が国では貧富の格差が少なく殆が中流意識ですから、結果的に出生率が下がっているのは当然の結果で、目出たい・・国家運営が長期間成功している証(あかし)です。

結婚離れ1

アジアは後進国が多いからこの条約加盟をみんな渋っていると言うのが一般的理解ですが、親子のあり方に関する深層的な意識の差が大きい面があるからではないでしょうか?
西欧人でも、男女比で考えれば当然女性の方が子供に対する愛情が深いでしょうが、アジアと違って西洋の上流・有産階級では子供の頃から子供を手元で可愛がって育てる習慣がないなど、(我が国でも乳母の制度がありますが、ちょっとした金持ちがするものではなくこれはよほど高貴な家柄に限られます)大分違う印象です。
この伝統の上に寄宿舎制度が発達したものでしょう。
この母子一体感の意識が薄い御陰で西洋の女性は早くから子育てから解放されますので、母親が自分で育てるアジアに比べて女性の自由時間が増える・・男女平等への動きが速くなったような印象です。
オーストラリアからスイス人母が子供を連れ出して、この条約で強制返還になったのですが、オーストラリアの夫が子育てをする気がなくて、子供が児童施設に保護される事態が起きて、(母親がいるのに無理に引きはがして孤児扱いです)どういう手段か知りませんが、もう一度スイスに連れ戻せた事例があるそうです。
先進国同士であるスイス&オーストラリアの事例を見ると、先進国と後進国の争いと言うよりは、欧米では母子関係の意識がアジアとはかなり違う可能性があります。
昔から、アジアでは「この子はあなたの子です」と生まれたばかりの子を父親に抱かせるのは、母子一体を前提とした上で、その外側にいる夫に対して嫡子として確認させる・・父親の権力・地位世襲の権利確保のために必要な儀式でしかなかったのです。
この時代には、父親は生みっぱなしでも親の威光にすがりたい子供の方から天一坊のように「御落胤です」とすり寄ってくるものでした。
天一坊事件の場合、親子の対面にまで進みませんでしたが、仮に御対面まで行った場合、嬉し涙を流しても、長年打ち捨てられていたこと対する恨み言を一切言わないルールです。
子がすり寄ってくる程の資産を残せない時代には、こんなうまい具合には行きませんので離婚後せっかく苦労して仕送りしていても、年老いてから子に逢っても子から母親の仇のような目を向けられるのが落ちのようです。
(資産の大小と言うよりは、農業時代の農地や領地の継承は大は大なり、小は小なりに農地を継承すれば耕作して食って行けるメリットがあったのですが、今のように使えば減って行くばかりの資産と違います・・この辺は、2010-9-12「(1)・・能力社会の遺産価値、(2)・・農業社会の遺産価値」で書きました。)
そもそも子が親の遺産を当てにしてすり寄って来るのは普通のこととして、父親・オスの方は子にすり寄って来てもらうことにこれと言った必要性を感じません。
仮に老後を子供に頼りたいと言う気持ちのある男がいたとしても、離婚後無理な仕送りをして病気になったり無資産で老後を迎えるよりは、無理して仕送りした貧しい親よりはある程度資産を残している親の方が子から大事にされる・・あるいは一定の資金を残してヘルパーなどに頼んだ方が良いと考える男が増えてくるかも知れません。
養育料不払いに対する歯止めとしては、November 10, 2010「養育料3と民事執行法11」で強制執行制度の改正強化を紹介しましたが、この方面で対応して行くと男は自衛のために子供の出産自体に反対する傾向が強まってきます。
昨年春先に解決した離婚事件では、女性にはいろいろ不満がありましたが、何よりも「夫が子供を生むのに反対している」ことが離婚決断の大きな理由でしたから、静かにオスの反撃が始まっている様子が分かります。
雄にとって、子供を持つことは雌のサービスが悪くなるだけだった(精神面でも妻の関心が子に集中して行く)のに加えて、今では離婚後も長期に及ぶ子育てコスト負担のリスクまで負うようになると、結婚・同居生活に左程メリットを感じなくなる傾向が強まるのは否定出来ません。
母子一体感は子育てを命がけで行うために遺伝子に仕組まれた智恵でしょうが、親族共同体が崩壊し、近隣の助け合いもない一方で、まだ社会資本の充実がイマイチの現在では、母子一体感だけでは子育てを完成させられません。
そこで身近な資源である夫の協力が最後のよりどころになりますが、母子一体感が強すぎて男親がその枠組みから阻害されるままにして置いて、子育てに協力だけさせようとしても無理があります。

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