中国の権力闘争激化2

政府とはなれた企業でさえ国有の場合、変化に適応出来ない非効率が問題にされていて、この打開のために日本でも諸外国でも公営事業の民営化に努力していますし、中国の場合にも・・改革開放→朱鎔基首相時代に思い切った国有企業の民営化断行したのが今の発展の基礎になっていると言うのが定説です。
このシリーズの基礎原稿は5月のサミットの頃に書いておいたものですが、タマタマ今朝の日経新聞朝刊にも朱鎔基の功績が出ています。
共産党幹部が企業トップに就任していて党の末端委員会が企業内に常駐していて、(常駐しているだけも事実上にらみが利いていたのですが法的に経営陣が常駐している委員会の意見を一々聞かねばならないとすれば、国有企業の非効率どころの話ではなくなります。
現在の中国経済の危機打開には一段の民営化が望まれるところなのに、やっていることは逆向です。
国有企業の債務超過=経営不振に困っているときに、事業経営判断に自由な経営を知らない共産党ゴリゴリの幹部が口出ししてどうなるの?
日本で言えば国鉄の赤字解決のために、政府から監督員を派遣してもっと厳しく監督しろと言うに等しい政策です。
現実妥協政治・・学問と違って現実政治は生身の人間相手ですから、妥協で成り立っています・・。
IMFでSDR昇格運動をして認められれば、人民元取引自由化を拡大するしかないからリスクが大きいのが分っていながら、国威発揚のためにSDR昇格運動を要求するしかない。
習近平は裏で・・内々大量失業を出すなと厳命しながら「ゾンビ企業の淘汰を進める」など言わせて権威筋意見として「ゾンビ企業延命をしているのはけしからんと」政権批判する・・現在の行政府は習近平の何を信じて動いていいのか立ち往生の状態に追い込まれているようにも見えます。
あるいは二人三脚で、ガス抜きしているのか高度な政治背景は不明ですが、兎も角政権中枢がL字型見通しを言わざるをなくなっている状態にあることは間違いないでしょう。
現在の中国の苦境は反日に始まり周辺国の領海侵犯の繰り返しなど無茶な政策決定に原因があるのですから、(領海拡張や、南京虐殺宣伝を大々的展開しながら裏で日本の協力を求めるなど)基本的矛盾を放置して政策変更だけ求めるのでは現実政治を預かる方はどうして良いか判断に困ります。
(今の経済状況では誰が何をやってもドンドン沈んで行くばかり・・モノゴトは一定のところまで行き着かせないと上昇気流に転換出来ません)
難しい政策決定に(責任をとりたくないので)敢えて自分の意向を入れず、傍らから「権威筋意見」としてアリバイ的に批判しておく・・結果うまく行かないのを待って李克強ら現政府当局者の責任追及準備にはいったと読めます。
権力闘争手段として正論を主張しておけば、後から李克強首相の政策失敗を追及して失脚させることが簡単です。
習近平氏は政権を握ると同時に汚職追放を打ち出してその論理で政敵を次々と葬ってきましたが、汚職では追及出来ないダンパ系に対して遂に牙を剥いたと解すべきでしょうか?
実務官僚(ダンパ)まで敵に回すようになると政権が持つのか?あるいは何をやってもどうせ持たないことを前提に最後には李克強らの責任だと言い逃れする破れかぶれ政策と言うことでしょうか?
今年始めの株価下落対応の対応不手際では、証券取引のトップが責任をとらされてクビになりましたが,(マスコミは、本質を書けないのであたり障りのない不手際程度を書いていたに過ぎません)本質は基礎構造の矛盾にあって個人能力が問題ではないのにその場凌ぎをするしかないのが中国政府です。
中国の統計はいい加減で信用がないのが定説と言えるでしょうが、日頃から不正をやらせておくと担当者の首を切りたければ統計数字を誤摩化したなどの責任追及をすれば、簡単に処分出来ます。
いずれにせよ国民のための政治ではなく、権力闘争に勝つことが主目的の政治ではその先も知れています。
もしも最後にハードランデングしたときに、自分は一刻も早く金融引き締めでバブル退治しろと言ってたのに、李克強・政府側が企業と癒着していてゾンビ企業の延命をしていたと言う大義名分にしたいのか?
そのためにV字型やU字型回復は無理・・L字型しかないと言う本音を書いているのかも知れません。

中国の権力闘争激化1

中国が、過剰生産力整理の痛みに堪え兼ねて潤沢な資金供給継続=補助金の積み増しでゾンビ企業の赤字輸出を拡大(赤字分を補助金で補填すればいくらでも輸出可能ですが補助金で本来のコストの半値で輸出される方の国内産業が破壊されてしまいます)する構図については今年5月ののサミット首脳宣言でも槍玉に挙がっています。
中国は外貨準備急減の穴埋めのためにダンピング輸出に頼るしかないのでしょうが、さすがに西欧諸国も中国市場進出メリットよりもダンピング輸出される損害の方が大きくなって来たようです。
中国の人民元防衛のために外貨準備の取り崩しが続くとマサに通貨危機が到来する滝壷が近づきます。
猛烈なダンピング輸出で外貨を稼いでいる筈なのに、5月の発表では中国の外貨準備は279億ドルの減少と日経新聞6月11日朝刊6pに書いています・・中国の発表自体正確ではありませんので本当はもっと減っている可能性が高いでしょう。
翌5月のデータは以下のとおりです。
http://jp.reuters.com/article/china-reserve-foreign-idJPKCN0YT0T7
「北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。」

赤字企業の整理を進めるために、チョっと引き締めて、企業が苦しくなれば金融緩和等を補助して債務拡大→出血輸出奨励策は一種の外貨準備穴埋め策とも言えますが、こう言う自転車操業的穴埋めを今後どこまでやって行けるかです。
中国共産党内部でもこのリスクを無視し切れなくなって来た様子が見えます。
日経新聞朝刊5月23日4ページには、共産党機関紙に政府発表・・現在の金融緩和政策と真っ向から反対する「権威筋の意見」が繰り返し掲載されるようになったと対照表付きで出ています。
私に言わせれば「権威筋批判」は正論ですが、正論であっても政権中枢の党機関誌が別の意見を公式に出すのは異常です。
中国特有の権力闘争が基底にあって、敵対勢力打倒のためにこうした反対論が表面化して来たものと推測されます。
正論が表面化せざるを得ないほど・・現政策矛盾が限界に来ている・・・経済的に追いつめられているとも読めます。
ちなみに現在の勢力関係は、共産党大幹部間権力抗争の結果、習政権による胡錦涛系追い落としが一段落したので中立を保って来たいわゆるダンパ(共産党青年団生え抜き幹部・・李克強首相などテクノクラート系?)が目障りになって来た?状態でしょうか?
中国経済は日に日に悪くなっていることは明らかで、いろんな苦し紛れの矛盾した手を打たざるを得ないものの、いつかはどうにもならなくなることも(私に言わせれば)明らかです。
私は日本としてはその現実を見るべき・・「賞讃ばかりすしていると危険だ!」と言うだけであって、現実政治を預かる者・・中国政策当局者がある程度の妥協政治・・厳し過ぎて倒産続出も困るので、時には手綱を緩めて、ほっと息をつかせてやるのも1つの政策です。
習近平氏への権力集中が進んで、今や政府部門まで共産党が直截口出しするようになっていると言われます。
日本で言えば、自民党と政府が区別されていて、与党からの注文はありますが具体的政治は内閣の仕事です。
中国の場合共産党の分身があらゆる行政府に支部的に存在している点は橋下市長が大阪市で問題化していた労組事務局が市庁舎一部を無償使用している仕組みと似ています。
大阪市の場合場所を無使用使用していた(京都で朝鮮人学校が公園を事実上占拠していたのと似ています)だけですが、中国の場合彼らの給与も税金で賄い(労組専従の場合労組員が給与天引きで負担していますが・・負担するのは労組員だけです)しかも市長よりも権限が強い関係です。
後記のように実際に企業のトップは共産党幹部がつく仕組みです。
このように元々共産党がお目付役的に存在していたのですが、政府と党の役割が次第に分離させて来たのがこの20年の歩みでしたが、習近平氏への権力集中化によって、政府が実務の分らない党指導に直接従属する逆行性が顕著になって来ました。
この記事は5月のサミットの頃に書いていたものですが、政府関与に留まらず個別企業運営にまで党の意見を直截反映させるようになってきたようです。
国有企業内に委員会があるのは元からですが、「国有企業の重要事項決定には共産党委員会の意見による」とする定款改訂が進んでいるとの情報が出ています。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160720.htmlからの引用です。
2016-07-20 03:27:03
中国、「共産党」国有企業の日常業務まで監督強化する理由は?
ブルームバーグ』(7月12日付)は、「中国共産党、国有企業の監督強化、日常業務にも介入強める 」と題して、次のように伝えた。
(1)「習近平国家主席は、『国有企業』の『国』の部分を一段と強めつつある。乗用車メーカーの一汽轎車(FAWカー)や化学繊維メーカーの中材科技、鉱業の西蔵鉱業発展は最近、経営上の決定に対する中国共産党の監督強化を認める方向に定款を変更した。例えば、これら企業の取締役会には今後、主要な決定前に社内の共産党委員会の意見を聞く義務が生じる。中国のほぼ全ての国有企業の社内には共産党委員会があり、多くの企業では会長が委員長を兼任している。国有企業の幹部の多くは中国共産党中央組織部によって選ばれている」

政府内に浸透するに留まらず企業経営にまで党の意見を聞かないと何も出来ないようにしていることが分ります。
金融・財政政策は政府の専権事項であって党が直截口出しするのはどうかと思われているのですが、個別民間事業の個別運営にまで党が直接口出しするとすれば文字どおり「世も末」です。

裁判闘争と合法的テロ?1

もしもある地裁・・40分の1の確率でも操業停止仮処分が出れば、判決と違ってすぐに操業が停止してしまいその効果が大きい割に、攻撃側には何のリスクもありません。
侵入テロの場合手引きしてくれる協力予定者が協力しないで失敗すれば、自分が検挙されるリスクがありますが、「裁判闘争」の場合仕掛けて失敗して却下されても罪に問われるリスクない・・合法的攻撃行為になります。
およそ全ての違法行為の防止には攻撃側の失敗リスクを大きくすることが一番の防御です。
何事も(絵画や音楽スポーツでもなんでも)1回で成功することはないので、チャレンジ精神を奪うには、1回でも失敗すれば致命的損害を受けるようにすれば挑戦意欲を阻害・抑止力になります。
自衛力を高めると戦争を誘発するか、自衛力が弱いから戦争を誘発するかは人によってちがいますが、核抑止力政策が採用されている現実を見れば、どちらが正しいかは明白です。
正業の場合には失敗してもやり直しの出来る社会が社会活性化のためには必要ですが、違法行為の場合に成功するまで何回でも挑戦出来るように活性化するのは困ります。
話題が飛びますが、刑余者の社会復帰を助ける運動が盛んですが、何をしてもすぐに社会復帰出来るのでは犯罪に走るものに対するマイナス効果によるブレーキをなくしてしまう運動にもなるので、この辺も「可哀相」の側面ばかりではなく慎重なバランスが重要です。
服役制度=社会からの隔離制度ですから、病気退院後直ぐに職場復帰しないで退院後一定期間自宅療養やリハビリが必要なように、刑務所から出所さえすれば直ぐに社会が許容するに足るのか?社会が許容するに足る相当な慣らし期間が必要と言うことではないでしょうか?
刑法では、刑期終了後5年間内の再犯の場合、再犯加重=刑期を2倍にする仕組みですし、各種公的資格・許可基準も刑期終了後3〜5年間は再取得出来ない仕組みを参考にすべきでしょう。
刑法
(再犯)
第56条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
2 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。
3 併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。
(再犯加重)
第57条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。

許可基準には、各種業界ごとに一杯ありますが、さしあたり以下の2法を紹介しておきます。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(昭和二十三年七月十日法律第百二十二号)

許可の基準)
第四条  公安委員会は、前条第一項の許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない。
一  成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二  一年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は次に掲げる罪を犯して一年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

公認会計士法
(昭和二十三年七月六日法律第百三号)

(欠格条項)
第四条  次の各号のいずれかに該当する者は、公認会計士となることができない。
一  未成年者、成年被後見人又は被保佐人
二  この法律若しくは金融商品取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第百九十七条 から第百九十八条 までの規定に違反し、又は投資信託及び投資法人に関する法律 (昭和二十六年法律第百九十八号)第二百三十三条第一項 (第三号に係る部分に限る。)の罪、保険業法 (平成七年法律第百五号)第三百二十八条第一項 (第三号に係る部分に限る。)の罪、資産の流動化に関する法律 (平成十年法律第百五号)第三百八条第一項 (第三号に係る部分に限る。)の罪若しくは会社法 (平成十七年法律第八十六号)第九百六十七条第一項 (第三号に係る部分に限る。)の罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから五年を経過しないもの
三  禁錮以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しないもの

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