フラストレーション→英雄待望=弱い者苛め

新興国指導者の人気取り政策の共通項は、既成秩序を代表するアメリカに派手に楯突いて英雄っぽく演出するものの、具体面ではクルド族攻撃強化やテロを叩くと称して少数民族圧迫などしているのが共通項です。
ソモソモ古来からの英雄豪傑とは、圧倒的な力の差がある相手に豪快に勝ち進む・・それだけのことです。
ほんとの強い者とは、勝てる相手に無茶な勝ち方をしない・負ける相手の立場を考慮することではないでしょうか?
「武断派」とは自分より弱い者を容赦なく叩く・・「弱気をくじき強きにおもねるモノ」と言う意味かも知れません。
これが英雄っぽく振る舞うものの正体です。
日頃からフラストレーションの大きい国では、スター渇望・・弱者の見果てぬ夢を実現するかのような・・弱者をこてんぱんにやっつける大スターを求める矛盾願望があります。
マトモニ弱い庶民を虐げるだけでは庶民が喝采しないので、この矛盾を修正するために悪代官などスケープゴート役を作り上げるのが水戸黄門であり、いつもより大きな権力・あるいは剣(鞍馬天狗)や柔術の達人(姿三四郎)が痛快にやっつける仕組みです。
フィリッピンのドウテルテ大統領は、抵抗力の弱い犯罪者(水戸黄門でういえば悪代官)相手では、躊躇ない射殺を命じていますが、強い中国に対しては領海を侵害されていても一切の実力行使していません。
インドネシアは何も言いませんが、違法操業する中国漁船を爆破するなど黙ってきちんと対応していルト頃を見ると、内政がうまく行ってるからパフォーマンス不要なのでしょう。
トランプ氏も庶民受けするために支配階層を激しく攻撃しているように見えるもののイメ−ジ(自分は資金援助を受けていないと言うだけで)どまりで具体性がなく、他方で弱い移民批判ではバンバン実力行使する主張・・英雄っぽくパフォーマンスしている点では、同根です。
新興国がアメリカに対する言いたい放題をしても、本当の大国は余裕があるので、アメリカからはロシアやトルコや中国のように瞬間的報復をされる心配がありません。
大国はすぐに反撃しませんが、長期的にじんわりと仕返しをされるので長期的に国益を損なうようになるのが普通です。
中国に目の前で非礼なことをされてもその場で怒ったりしないのが大人の対応ですが、非礼行為をすれば相応の仕返し・マイナス効果を受けるから、世の中には礼儀と言うモノがあるのです。
この点では中国は日米に対して精一杯の非礼行為をして見せて、自分は相手よりどんなに偉くなったかを国民や世界に示しているつもりでしょうが、国益を考えない行動である点ではドウテルテその他と同じです。
主席になる前の習近平が日本訪問をしたときに天皇陛下面会を強硬実現してかれは「どうだ!」と言うつもりだったでしょうが、却って日本国民に大きなマイナス印象を残したし、昨年の英国訪問時のゴリ押しに英王室が公然と不快感を示したニュースが世界を駆け巡りました。
非礼ほど高くつくものはありませんから、古来からみんな礼儀作法に気をつけるのです。
常識に挑戦している点でその先の国益の喪失を知らない弱者から喝采を受けていますが、別の価値観・・ルールを提示出来る訳ではなく単に秩序破壊を主張しているだけです。
秩序破壊が進んで来て欧米の非道徳性の暴露が行われる面で日本非難に特化している戦後秩序破壊になり、将来的には日本的価値観による国際秩序が優勢になる切っ掛けになる点では、日本に好都合な面があります。
このことと、彼らの主張が正義であると言うコトとは関係がありません。
かれらは、自分の(正しいかどうかは別として)意見を言い出せる・・「何言ってるんだ!お前の方こそもっと悪いことをしているだろう」式に自己主張時代出来る時代がきた・・アメリカの作った戦後秩序が崩壊に向かっていると言うことだけを書いています。
フィリッピン大統領の主張は、自分が正しいと言う主張でなく、「お前の方がもっと悪いだろう」と言うだけです。
そこには正義の基準がありません。
しかも価値観は時代と共に変わるものですから、過去の制度を持ち出して「お前の国も元は王制だったろう」とか軍政・植民地支配だったろうといっても始まらない・・民族感情に訴える効果が大きいでしょうが、本来は今の価値観でどうかの議論をすべきです。
この辺は捕鯨問題も同じで、日本は個人的にはアメリカの身勝手な言い分と思う人がいても、これをそのまま言わずに今の基準「種の保存」の価値観で本当に禁止する必要があるかどうかの議論をしています。
公害問題も同じで元はどこでも公害を気にせずに煙を出し,川に流していましたが、今は許されないと言うだけです。
売春婦も当時の基準で議論しなければならないと言うことは、慰安婦騒動で日本人が良く知っているとおりです。
豊臣秀吉が天下人になった後に私戦禁止したのを伊達政宗が「お前だって今までやって来たじゃないか」と言いたかったでしょうが、それを言っても始まらなかったのと同じです。
いわゆる遅れて来た戦国大名の悲哀です。
  馬上少年過 世平白髪多
  残躯天所赦  不楽是如何

取締役の責任2(第3者に対する責任)

 

取締役の権限とその責任に関する会社法の条文を紹介しておきましょう。
以下のように取締役会には、2項1号で業務執行の決定権があるので、業務執行の当不当(違法でなくとも)の結果責任がすべて取締役会に帰するのは当然です。
ついで、2号で取締役の職務執行の監督権もあり、監督に従わない時には3号で代表取締役の解職権もあります。
ここで解任と言わずに解職と言うのは、取締役の選任と解任は株主総会の専権事項ですから、取締役互選による代表取締役の職務を解くだけだからです。
この監督・解職権限を適切に行使しないまま放置しておいて代表者の取引行為等で第三者に損害を与えると、429条で職務懈怠として損害賠償責任を負うことになっています。

会社法
(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

(取締役会の権限等)
第三百六十二条  取締役会は、すべての取締役で組織する。
2  取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一  取締役会設置会社の業務執行の決定
二  取締役の職務の執行の監督
三  代表取締役の選定及び解職
3  取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

第四百二十九条  役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2  次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一  取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
以下省略

上記のように取締役の責任は重大ですが、よほどの背任的行為がないと社長の暴走を実質的には部下に過ぎない取締役が止めるのは難しいことです。
取締役には、社長に対する監視責任ではなく、執行部の一員として一心同体で事業をして来た以上は代表者に過失があって第三者に迷惑をかけたとすれば個々の取締役に過失がなくとも無過失の連帯責任とする条文にして、代表取締役や取締役会を監視するには取締役制度をいじるよりは別の監督機関設置・・例えば監査役の強化を図る方が合理的な感じです。
ここ数十年かけて監査役制度の充実強化が図られてきました。
監査役も、選出母体が同じでは結局大した監督が出来ないことは外部取締役と似ていますので、選出母体の工夫が重要です。
株主総会での対立グループが選出出来るような工夫があればいいと思いますが如何でしょうか?
以下現行の監査制度の条文を紹介しておきます。

 第七節 監査役
(監査役の権限)
第三百八十一条  監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
2  監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3  監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
4  前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。

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