格差是正31(給与補助金1)

職場が減れば需給の結果労働者の立場が弱くなるのは、新自由主義(ネオリベラリズム)かどうかではなく、昔からの経済の原理そのものです。
フリードマンの新自由主義、ケインズ主義、古典派経済学、◯◯経済学かの論理の違いによるものではないでしょう。
どの経済理論でも、すべての分野で需給が緩めば価格が下がる・・立場が弱くなるし、鉱物資源でも人材でも稀少化すれば価格が上がり地位・待遇が上がる原理は変わりません。
と言うよりか経済学者はこうした原理を公理のような前提として自分の理論の正しさを論じているのです。
西洋で女性の地位が向上し人権意識が高まったのもペストの大流行によって人口が激減したことに端を発しています。
アメリカでは建国当初から女性不足と人間不足社会でしたから移民受入れに積極的でしたし、裏返せば人手不足で機械化に熱心で人権意識や女性の社会進出に熱心だった基礎でもあったのです。
中国の人権問題をアメリカが問題にしていますが、いくらでも湧いて来るかのような多すぎる人口問題を抱える中国では人が貴重ではないので、人権を説いても意味がなかったことが数百年後に分ることでしょう。
賃金の国際格差問題に戻ります。
解放直後の中国では最初は近代的な工場で働く習慣がないなど労働の質や技術差が大きかったので当時で言えば20倍前後の賃金格差は妥当だったでしょうが、・・・日本人が現地指導した結果、野菜その他良いものを作らねばないという意識も育つし、一定期間経過でどこの国でも生産用機械さえ同じならば日本国内並みの生産性に上がって行きます。
中国の改革開放後既に約30年も経過していて似た機械で生産すれば生産性が殆ど変わらなくなっている以上は、日本人の賃金も裸の自由(市場)競争に曝されれば、中国等の人件費とほぼ同じ賃金水準になって行くべきでしょう。
(これが人類平等の基本原理の発露です)
ところが中国の解放後約30年経過してなお日本人労働者と約10倍の賃金差を維持しているのですが、今では日本人と中国人との能力差が10倍もない(同じ工業製品でも少しは日本よりは精度が悪いかも知れませんが、10倍も製品に値段差を付ける品質差がない筈です。)のにこの格差が残っているのは市場経済・人類平等の原理から見れば異常です。
未だにこんな大きな賃金差がまかり通っているのは、日本国内での所得再分配政策・補助金の結果によることになります。
国際相場よりも無茶高い米や麦が補助金・高関税の結果まだ生産出来ているのと同じ原理です。
補助金の出所ですが、海外進出企業の国内工場で働く人は、その企業の海外収益回収による再分配で成り立って(内部的に完結)いますが、海外進出していない企業の高賃金は税による再分配によらない限り成り立ちません。

給与振込1

男性が事務をやる江戸時代の歴史を引きずっているので、女性に向いている筈の事務部門、医療・教育その他まで全部男性が独占してきただけでしょう。
そこで、妻・・女性自身の収入源の確保が模索されるようになり、長い年月を経てようやく女性が結婚後も外で働き続けられるようになって来たのです。
夫婦の協力義務の法定・明文化や女性の社会進出についてはこれから書いて行きますが、ここで話が少し横道にそれますが、こうした弊害があるからと言う訳でもないでしょうが、ここ数十年来支払業務の合理化のために給与の銀行振込制度が発達して来ました。
給与が全額振り込まれて男性が自分でポケットに入れて持ち帰れなくなってくると、帰り道で(飲み屋などで)落としてしまうリスクがなくなっていいことですが、結果的に奥さんの全額管理となり男は子供同様に奥さんから一定額の小遣いをもらう関係になってしまい、江戸時代の男同様の地位になって来ます。
これが、現在の男女力学の到達と言うよりは江戸時代までの回帰点です。
女性の社会進出が進みダブルインカムの夫婦が増えて来ましたが、この場合にはそれぞれが自分の給与を管理していることが多いのでこれこそが新たな到達点と言えます。
この場合には離婚耐性は強まりますが、その代わり普段の懐は別勘定の夫婦が普通ですので、子供が生まれた場合の家計費分担修正がうまく行かないで、離婚に発展した事例を02/23/05「離婚の実態1(夫婦の家は誰のもの?1)」で紹介したことがあります。
ダブルインカムの場合、この方面の修正(と言っても根本的な変更ですので)が難しくなっている若者が多く、結果的に出産にブレーキがかかっている面もあります。
昨年秋から担当した薬剤師夫婦の事件も、妻の高収入を当てにしている・・と言うより夫婦双方の収入を前提に高額のローンを組んでいる・・夫の方が妻が子供を産むのを(妻の収入がなくなるとローン支払に窮します・・・)いやがったことが遠因でした。

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