憲法改正6(公明党の立場と報道)

https://dot.asahi.com/dot/2017121400032.html?page=1

9条改憲にブレーキかける公明党 そこにある創価学会・名誉会長の言葉とは
朝日新聞編集委員・藤生明さんの解説を紹介しよう。
安倍氏に近い憲法学者の八木秀次氏は「(戦力不保持や交戦権の否定を記した)9条2項の削除が正攻法だ」としながらも、国民投票の過半数を押さえるには、首相の提案は現実的な選択だと評価。「加憲は公明党が主張してきた考え方でもあり、公明党も受け入れやすいのではないか」と話す。ところが、その公明党側がここに来て、慎重姿勢に転じているように見える。
「多くの国民は自衛隊の活動を支持しており、憲法違反の存在とは考えていない」と明記し、首相案にやんわりと異議を唱えてみせた。
この先、「自衛隊を国軍に」という議論も出てくるに違いない。そうなれば、平和と福祉の党を掲げる公明党としては、絶対に譲れない。
「戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない。」

と池田大作氏の言を引用していますが、これこそが朝日新聞好み・左翼人権活動家が錦の御旗にしている主張に引き寄せた推測意見です。
自衛隊は憲法違反の存在でないと国民多くが認めていると主張するならば、それを憲法に明記するのに賛同すべきであって、明記に反対する倒錯した論理が理解不能でしたが、上記引用記事や上記立憲デモクラシーの会の意見を総合すると、憲法に明記すると、「自信を持って一人歩きしないかの心配」という「自衛隊に対する不信感とこれを阻止できない国民レベルの低さに対する心配がある」ということでしょう。
何十年も前から自衛隊違憲の裁判闘争ができなくなったからといって、憲法学者や革新系政党の言うように自衛隊が野放図になって日本で彼らの愛用する「軍靴の音が聞こえる」ような社会になったでしょうか?
彼ら(憲法学者や弁護士、左翼駅政党)が社会の前衛として意識の低い国民を守るという思い上がった意識こそが茶番なのです。
そんなことは政治家集団である公明党もとっくに分かっているでしょうが、メデイアによる小池新党への洪水的応援報道で怯んでしまった・・総選挙開始で日和ったと見るべきでしょうか?
選挙後の朝日からの引用です。
https://dot.asahi.com/dot/2017111700069.html?page=1

総選挙に圧勝し、悲願の憲法改正に向けて準備を進める安倍晋三首相。そこに強力なブレーキをかける政治家があらわれた。公明党の山口那津男代表だ。
山口氏は12日に放送されたラジオ番組で、憲法改正の発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要なことを踏まえ、「それ以上の国民の支持があるくらいの状況が望ましい」と述べた。過半数の賛成で改正が決まる国民投票でも、3分の2以上の賛成が見込めなければ改憲案に反対することを示唆したものだ。
同党で憲法調査会長を務める北側一雄衆院議員も歩調を合わせている。10日には、憲法改正の具体的な内容について「事前に与党協議をする類いの話ではない」と述べ、改憲案を事前に与党間で取りまとめることを否定した。
公明の現役幹部が安倍首相を次々にけん制したことに、驚きの声が広がっている。

上記記事は、客観報道というよりは、朝日新聞の改憲阻止への期待・願望が大きく出ています。
3分の2程度の支持があってやった方が安全という代表の意見を反対示唆したといい、自民党との協議はどうなっているかを聞かれた北川氏が「そんなことはしていない」とケムに巻かれたのでこのように解釈しているのであって、(それぞれの解釈があやまりとは言えない.北川氏の応答がずれている面からも誤りとは言えないまでも)質疑のやりとりをそのまま客観報道すべきでしょう。
日経の質疑記録によると以下の通りです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071000146/082200009/
2017年8月24日

カギを握る公明党、憲法調査会長の北側一雄・衆院議員に聞く
北側:安倍政権、自公政権が一番評価されてきたのは、何より経済だと思うんですね。やっぱり経済を再生し、立て直すことをしっかりとやっていかねばならないと思うんですよね。成長と分配の好循環をつくること、これをしっかりと政権内では最優先で取り組んでいかないといけないと思いますね。
改憲については、スローダウンというようなことではないと考えています。
「山口代表の慎重姿勢」は拡大解釈
北側:山口代表の「政権が取り組む課題うんぬん」というのは、ちょっと意味が拡大解釈されているような気がします。
そもそも憲法改正というのは国会で発議するものです。制度的に。内閣が発議をするわけでも何でもない。両院の憲法審査会で論議をし、そして合意形成を図って発議するものです。その後に国民投票にかけるという流れなわけですよ。だから、そういう意味で山口さんは言っているだけです。
そもそも内閣のやるものじゃない、という制度的なことをおっしゃったということですか。
北側:そうです。「国会で論議をすることが大事なんですよ」ということを言いたかったんじゃないですか。私はそういうふうに理解しています。
与党という枠組みでできるかというと、それも違いますからね、これは。国会の3分の2の賛成が必要なわけですから。だからできるだけ多くの政党間で合意形成をしていく。または、それを追求していくことが大事じゃないでしょうかね。憲法改正しなくてもいいなんていうことはあり得ないですよね、そもそも。
公明党は憲法を改正しないという立場ではない
北側:我々は憲法を改正してはならないという立場ではありません。必要なところは改憲すべきだという立場です。先ほどの山口さんの「政権の課題うんぬん」も、同じような趣旨のことは、都議選前から言ってきましたから。
改憲の動きは、安倍首相が5月初めに「2020年に改憲を」と積極発言をして以後、加速しましたが、事前に公明党に相談はなかったのですか。
北側:ありません。そういうものじゃないでしょうか。事前にあっても困りますから。
自民党総裁として党内の議論を加速させようという意図だと思いますよ。実際に今、議論がされているわけだし、それを私たちは見守るという立場です。

以上の通りの質疑ですが、北側氏の質疑は選挙前の記録なので時間差があって、正確には比較できませんが、これを朝日新聞が、公明党は改憲反対方向〜ブレーキであるかのように報道していたことになります。
朝日新聞に独自解釈・編集権があるとしても、上記 個別応答と比較するとこれでは信用がなくなりませんか?

靖国参拝2と中韓の立場1

韓国は日韓正常化が遅れれば遅れるほど国内経済が疲弊する関係ですが、日本はいくら先になっても困らない関係です。
むしろ水面下で謝って来たり、今後反日運動を緩める程度では援助出来ない・・正面から二度と反日教育・反日宣伝しない世界中の慰安婦像は撤去すると謝って来るまで援助する必要がないと言う意見が強くなっている状態です。
世界中に日本の悪口を言いふらしていた挙げ句に、韓国が困って来たら仲良くしたい・・それもその前に日本が謝る姿勢を示せ・韓国の条件を履行すれば会ってやる(靖国参拝するならあってやらない・・)という無礼な注文では、最早日本の方が永久に口をききたくない状態です。
日本は韓国の横柄な注文を聞かねばならない立場ではありません・・「靖国参拝しますのでいくらでも首脳会談を先に延ばせば良いでしょう」と言う判断で安倍総理が参拝したのであって、この選択を国民が圧倒的に支持しています。
最早、中韓が偉そうに「何々をするなら会ってやらない」とか日本に前提条件をつけていてはどうにもならない・半永久的に日本と正常化出来ないと知るべきです。
手詰まりになった中韓は他所の総理が何しようと「会うべきときは会うしかない」普通の関係を韓国も中国も理解するしかない状態になりかけていました。
中国は日本企業進出が一定程度進んだ後はいくら日本を苛めてもどうにでもなると読んでレアアース禁輸や反日騒動を起こしましたが、公害問題その他時代の進展に追いついて行くためには更なる日本企業の進出・・技術移転が必要になって来たのに、今や日本企業は他の新興国へ関心が向いてしまいました。
日本企業の中国離れが進む一方で中国も困っている・・このままでは低賃金・ローエンド商品しか作れないのにも拘らず賃金高騰が続いているのでジリ貧ですので,安倍総理が靖国参拝してもこれ以上反日騒動・不買運動をけしかける余裕がありません。
中韓が内々謝って来るだけでは援助を受けて元気になったらまた反日運動を復活するつもりだろうから、「反日教育をやめる」・「世界中の慰安婦像撤去しないとあってやらない」くらい言わねば、日本の方が収まらない立場です。
しかし、そこまで言うのは大人げないので水面下で謝って来ると首脳会談に応じる・・何らかの援助申し入れに応じてやるしかないような状態に追い込まれていたのが、年末の日韓・・日中関係でした。
そんなことではまた過去の繰り返しになるので「厭だな困ったなあ」というのが多くの国民でしたから、安倍総理の靖国参拝に・・これで韓国や中国がすり寄って来るのが遠のくだろうと・・多くが喝采したのです。
国民みんなが右翼になったのではなく、あちこちで誹謗中傷しながらすり寄って来る中韓嫌悪感を抱いているムキが多いという本質の理解が必要です。
今では表向きの威勢の良さとは別に裏方では、中韓両国が日本の怒りを鎮めるにはどうしたら良いかの提案段階に入っています。
靖国参拝を公然とやられると中韓は日本に対して「どうでも良い・・拘りません」と水面下で言っていても、国内向けにどうにもならないので正常化が停滞するだろうと言う理解で、アメリカが(中韓のために?)失望したのは分ります。
流行のツイッター「つぶやき」なら分りますが、公式声明まで何故出すの?と言う疑問です。
日本は水面下の申し入れに対して公式参拝することによって言外に「靖国参拝についてこれから文句言わない」と態度で示せと踏み絵を迫ったのが安倍総理の回答だったのでしょう。
裏で謝っておきながら表でまた悪口雑言の繰り返しは今度こそ許せないと言う、国内世論を踏まえた行為だからこそ国民80%以上の支持があったのです。
この安倍総理の回答に中韓がどう対応するかは両国の勝手ですが、・・たぶん中韓とも、再度反日暴動など起こす体力がないから、少し冷却期間を置いてから頭を下げて正常化を模索するしか道がないと思われます。
アメリカは内心がっかりしても黙ってみていれば良いのに、何故余計な声明をして中韓に肩入れしたかが私の疑問です。
ココで余計な声明を出して喜んだのは日本のマスコミだけで,中韓ともに良い迷惑になっただけでした。
中韓は上記のとおりそこまで日本にやられてもグーのネも出せない状態に追い込まれているので、これが国内に知られてもなるべく小さな出来事に納めて(大騒ぎしないで)少しでも早くほとぼりが冷めるの待って正常化交渉を再開するしかないのが本音です。
ココでアメリカ大使に口先だけ応援(他人の喧嘩で無責任にけしかける人がいますが・・)されても、打つ手がないし引くに引けなくて困ります。

TPPと主権5(国民の需要)

国際標準化の進行に関しては大企業のごり押し・要請によるのではなく、国民の便宜に応える形で発展して来た側面があり、大企業が規模拡大・海外展開出来たのはニーズに適応してきた結果ではないでしょうか?
人の移動が活発化したことによって広域化・世界標準化が進んで来た結果、これに適応出来た企業が大規模化出来たと見るべきかも知れません。
商人は自己利益のために共通化を期待して来た面もあるでしょうが、それよりは消費者の広域移動のニーズに適応して来た結果の方が大きいように思います。
(製造業が出て行くと、関連下請けや金融・サービス業も現地進出するのは出て行った企業のニーズに応じるためです)
法律家も海外進出企業の需要に応じられる人だけが国際化出来るのであって、国際化したいから国際化した人がいたとしてもそれは例外です。
世界中で国民の移動拡大が常態化している現在では、製品に限らずいろんな分野で世界標準化が要請されています。
海外でも使える携帯や各種カード類の利用・・スポーツのルール、観光施設も世界標準でないと困りますし、(タオルくらいは最低あると思って行くでしょう)工業製品でも医薬品や食品あるいは公害規制・会計基準や税制その他いろんな分野で規制が画一化する=国際標準化が期待されています。
(日常的に服薬・所持している医薬品が入国先の許可薬品でないという理由で空港で没収されるのでは困ります)
商人は域内で成功すると域外に進出したい欲望が強いことも事実ですが、それだけではなく、消費者のニーズに報いたい欲求もまた本質的にもっていて、この本能こそがが商売成功の秘訣です。
農家基準で言えば、「自分たちは田舎者でお人好しだが、都会の人は信用出来ない」という言い方を子どもの頃に耳にタコが出来るほど聞かされましたが、実は逆です。
商人・・商工業の基礎をなす職人・特に我が国の職人は人のためになること・・良いもの物を作るのを生き甲斐・誇りにしている人が多いことを、日米半導体協定によって腕の振るい場がなくなって優秀な職人が韓国台湾へ逃げてしまった事例を2013/03/06「円安効果の限界3(アメリカの場合1)」で紹介しました。
職人に基礎を置く商工業者はいつも消費者の便利を考えて役立ちたいと思って、日夜商品開発努力をしています。
その努力の結果、海外に行っても使える携帯や金融商品カード類の開発に繋がっています。
ニーズのあるところに新商品やサービスが生まれるのですから、これを国ごとに違う規制を主権の名の下に墨守して国際商品化するのを妨害するのは感心しません。
明治維新・日本列島統一によって300諸候の領域内の警察権や統治権が失われましたが、これによって国民は移動の自由その他すごく便利になりました。
300諸侯時代には各地の方言や固有文化が今よりも色濃く残っていましたが、国語として次第に統一化され、各地の芸能などは保存対象になっていて、現役色がなくなっています。
主権維持・固有文化の維持の主張は尤もな主張のようですが、今でも300諸候ごとに別の法律や交通法規で生きて行く方がよかったとは、殆ど誰も思っていないでしょう。
各藩が、廃藩置県で県となり、更に統廃合されて今の地方自治体になったのですが、地方自治体に格下げされてもどこも文句を言いませんでした。
各大名家でどのような政治をしようとも自由であったとは言っても、事実上徳川家の決めた基準に準じて政治をしていたので、幕末ころには今の地方自治体程度の裁量行政しかしていなかったことによります。
吉宗が命じて大岡越前守が編纂した判例集積集である「御定書」については12/16/03「公事方御定書1(刑法4)(江戸時代の裁判機構1)」以下で連載をしたことがありますが、これは元々徳川家の内規で外部秘だったのですが、いつの間にか各藩に写しが出回るようになってこれを参考に各地で裁判していたことをどこかで書いたと思います。
この実績があったので、明治新政府が各地に裁判所を設けても直ぐにきちんと運用出来たのです。
人の移動・交流が交通・通信機関の発達もあって広域化・頻繁化する一方ですし、(民族混在を望みませんが)交流や広域移動・海外の商品が簡単に手に入ること自体は人が豊かに生きるには良いことです。
主権維持・固有文化を守れという超保守の情緒的訴えや観念的要求で、あるいは強者の論理は許せないという進歩的知識人の好きなスローガンで、広域化に伴う世界標準化の進展をぶちこわそうとするのは、産業革命時に起きたラッダイト(機械ブチこわし)運動同様に時代錯誤の恐れはないでしょうか?
新自由主義反対や超保守行動は、根を同じくする左翼右翼共通の行動形態のように見ます。

TPPと主権4(商人の立場1)

産業界では、主権・・沽券にこだわっているよりは市場が大きく広がる方が利益ですから、どこの国が主導して作ったルールでも構わないから商業ルールを統一してくれた方が商売し易いから歓迎となります。
(千葉県や埼玉県で作ったルールであっても東京が作ったルールでも両方の都県で共通ルールで商売出来た方が便利です)
商人はルールが第一ですから、統一ルール適用範囲が大きければ大きいほど活躍し易いことになります。
100キロメートルごとに違うルールの地域があるよりは、200km〜300km〜1000km〜5000km先まで同じルールの方が商売し易いに決まっています。
(100k走るごとに右側通行から左側に変わったり、そこまで乗って来た車が隣の国では無許可だから走れないとなったら戸惑うでしょう)
中国が現在社会で異端視されるのは、長年世界中で暗黙裏に培って来た商道徳を守る習慣がなくてみんな戸惑うからです。
農業社会から商業社会化への変化に連れて、世界的にルールの共通化が進んで来たこと・商人はルール統一=権威を必要とすることを、03/09/06「商人と規制の親和性2(左翼と極右の発達の土壌2)」前後の連載や09/11/05「商業社会(王権)から農本主義へ2(権力不要社会へ1)」〜09/18/05「唯一神信仰の土壌(商業の発達と画一化・・・信教の自由2)」前後で連載してきました。
他民族間の共通ルールの必要性がイスラム教の発展につながった・・ダウ船の発達に連動していたことや、商業社会化との関連で佛教にも戒律がない訳ではないものの、個人の悟りに重心を置いているので、商業社会向き他民族間ルールになり得ないこともその頃に書いています。
愛国心旺盛な企業家でも、企業の発展のためには市場が大きな範囲で画一ルールになる方が便利に決まっています。
トヨタで言えばいくら経営陣に愛国心が強くとも、日本とアメリカで排ガス規制や認証を受ける基準が違うよりは、統一してくれた方がコストがかからないでしょう。
医薬品・食品でも国ごとに要求する実験を新規に繰り返すのでは、2重3重手間です。
いま流行の企業買収・合併でも、世界中の国で認証を受けないと日本国内での合併すら出来ないで何年もかかるのでは困ります。
(新日鉄・住金の合併に限らずパナソニック/サンヨーでもオリンパスとソニーの買収・・などの合併では、日本企業同士なのに進出先の中国でも許可が必要・・嫌がらせされるといつ実際に合併出来るか分らないリスクが以前報道されていたことがあります)
行く先々で、納品する車の規格が違ったり、ある国で許可を受けた薬品や食品が隣の国では手直しして再実験しないと売れないのでは不便・コスト増です。
商人は元々国ごとの違いに合わせて製造販売しているし、法的対応しているのですから、どこの国が主導して決めたルールであっても、商品の許可基準、物の単位(メートルかヤードポンドなど)や会計基準・係争ルール(どこまでの接待・・研修費用負担が汚職になるかなど)が統一されている方が商売し易いことになります。
海外進出しようとすると行く先の国ごとに新規許可基準を研究して新たに膨大な許可を取らねばならない・・・海外進出企業にとってはコスト増加要因ですし、参入障壁が高ければ高いほど、地場産業にとっては下駄を履かせてもらって競争できる恩恵を受けます。
海外展開するには言葉の壁、商習慣の壁、その国の会計基準や判例・運用でどの程度まで許されるか、汚職になるかなどなど、その土地の法制度理解の壁・現地法律家・税務・会計関係者との提携が必要になるなど事前仕入れ項目が多くなって、進出自体に多くのハードルがありますので、その分地場産業が保護されていたことになります。
言語や法律制度、商品規格・許可基準等の共通化が進むことによって共通化が進んだ限度で、参入コストが縮小します。
国ごとに法制度が違う部分を多く残すか否かの選択は、大企業よりか中小企業寄りかの視点で見れば、結局は大企業優位か地場産業保護かの二項対立問題に行き着きます。
グローバル化・関税撤廃の思想は、より強い企業がより自由に広域行動出来るように便宜を図ろうとする思想となってしまいます。
この種の理解の仕方はこれまで共産主義者や進歩的文化人の得意とする思考方式でしたが、右翼も同じ発想になっています。
右翼というのは根本的立場は左翼の反射であって、元同根だと03/09/06
「商人と規制の親和性2(左翼と極右の発達の土壌2)」その他で書いたことがあります。

TPPと主権3

03/29/06「法の支配と被支配2(ローマ法支配の意味)」で法の支配について書いたことがありますが、ある国の法の精神枠組みが別の国で適用されると国民はその法を学び且つ行動規範をそこに求めるしかなくなります。
その国の法を学びその法で規制する・・行動様式を決めて行くようになればその国の思考方式を生活の基礎にする・・その国の思想や道徳律を受入れることです。
支配とは自分の意思を他人に強制することですが、腕力による強制はなく法で強制するのが現在国家ですから、アメリカの法の殆どがTPP参加国で共通法化するようになれば、アメリカ支配・・アメリカ議会の決議を自国の法として受入れるのと同じです。
属国の場合は間接支配ですが、TPPの場合かなりの分野で直接支配になります。
TPP参加表明するか否かはアメリカによる囲い込み・・現在版植民地支配に入るかどうかの踏み絵を迫られていることになります。
私がJanuary 7, 2013前後のコラムで、TPPに参加しない限りアメリカは尖閣諸島問題で良い顔をしないだろうと書いていたのは、この意味になります。
自分の版図に囲い込めるなら一緒に防衛もするし、参加しないでアメリカ支配領域外に出て行くのなら防衛する必要がなくなるのは当然です。
EU条約は英独仏3カ国の大国グループとベネルックス、北欧諸国などの中間の国々と南欧や中東欧の周辺諸国からなる同心円的関係ですが、それでもドイツの支配力が強まってることが最近問題になっています。
TPPの場合、ダントツのアメリカを牽制する対等者のいない組織ですから、アメリカ唯一支配を貫徹する道具立てになる可能性が高いでしょう。
EC→EU成立時にイギリスの参加が拒否された事例を想起するべきです。
当時ドゴール大統領はイギリスはアメリカの手先だから内部に入れるとトロイの馬の役割になると言って拒否していたのでした。
TPPはトロイの馬どころか、アメリカそのもが内部で直接支配するのですから、民主的運営をするには、アメリカ以外の諸国の団結・協議機関設置が必要です。
我々弁護士の世界で言えば、関東弁護士連合会というのがありますが、マトモに一対一で議論していると巨大組織である東京3会に叶わないので、東京3会を除く10県会という内部親睦組織が別に造られています。
弱小10県の単位会が集団で東京3会に対してもの申すことになっていますが、こうした運営方法も参考になるのではないでしょうか?
組織面の工夫がないまま、自国の主張を遠慮なくすべきだと言っても、絵に描いた餅になります。
(・・労働者は遠慮なく意見を主張すれば良いというよりは、団結権・団体交渉権保障の方が意味があります・・・)
主権問題に敏感な右翼系が概ねTPP反対論を展開している根源的理由は、主権が損なわれる恐怖にあるのでしょう。
ところで商品規格の画一化・・許可基準は(車等の規格・食品衛生・排ガス規制や公害基準その他)すべて法律で決まるのですから、欧州議会のようにアメリカが主催する会議でいろんな基準をドンドン決めて行くと、文字どおり日本の国会で独自に決める国内法・・はこれに整合するように手直しする仕事しかなくなって行く・・主権制限になるのは当然です。
ハーグ条約を3月8日に紹介しましたが、条約で決めても已むなく受入れるしかない以上は同じことになりますが、個別の問題ごとに条約を結ぶかどうかが国会で議論になって、分り良い点が違うと言えるでしょうか?
包括的なTPPの場合、参加後は個別品目別基準造りは政府の恒常的な交渉になって国民には見え難い点が難点です。
これまでの国内的分類で言えば、国会で作る法律よりは官僚の作成する政令、省令あるいはガイドラインみたいな細かいレベルの交渉になって来ます。
建築基準や防火基準、レストランの保健衛生基準などのガイドラインの作成等は優秀な官僚にお任せで、関心を持たない・・マスコミは詳しく報道しないし政治家も関与しないのがこれまでの国民の習慣でした。
この結果TPPは密室的交渉になっているので、これだけの大問題になっているのにマスコミは詳しく報道しないし、何が問題で何を揉めているのか国民には未だに訳が分らない印象になっています。

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