国債運用益1

この辺で国債の運用問題に入って行きます。
国債発行で市中から吸い上げた資金はすべて国内財政赤字のファイナンスに使われているとは限りません。
日本の国内金利はほぼ零%(銀行預金金利は0、00何%、国債長期物で数日前には0、91%あまりでした)と安いので、安い金利で国内調達して、国内・企業等へ投融資し、余った金で高い金利のアメリカ財務省証券購入で金利差を稼いでいるのが(特に為替介入資金の場合)日本の姿です。
今年1月末では外貨準備高1兆3000億ドルも持っているのですが、日本は国債発行によって、金利差の儲けを毎年莫大(1%の金利差で130億ドルになります)に得ているのですから、政府自身が円キャリー取引で大もうけしていることになります。
直接国債(政府短期証券等も含む政府債務)発行によって得た資金でアメリカの財務省証券等を買っているのは、為替介入によって得た資金が中心でしょうが、長い間に蓄積した貿易黒字分を対外債券等として投資して運用している分は、結局、国内低金利運用・・国内投資先が少ない・・に代えて海外運用していることと同じです。
いわゆる官民ファンドでの海外投資や輸出保険などが盛んですが、この場合官側の資金が国債発行による分になります。
(直接的には税を投入しているとしても税を投入出来るのはその他の出費を国債で賄っているからです)
低金利吸収資金を活用した海外投資の後押しを見れば、「国債発行の何が悪いの?」というのが経済の原理に即した理解でしょう。
国内に使い道がなくて余っている資金を有効利用するために、政府が吸い上げて有効利用するのは悪いことではありません。
中国の場合、昨年までは高度成長中でインフレ率も(公式には5%前後となっていますが、1説には年利15%以上もの高インフレです・・)高いので政策金利(わが国の従来の公定歩合相当)も5〜6%前後のまま(市中金利はこれに3%前後上乗せした相場)ですから大変です。
中国の最近の金利相場についてはApril 10, 2012「基軸通貨とは1で紹介しました。
中国では実質15%前後ものインフレですから、金利を本来もっと上げるべきですがそれが出来ない・・バブル失速が怖くて利上げ出来ないままインフレ率の公式発表を低く抑えていると思われます。
中国の統計は地方政府の報告の集計ですから、統計はいくらでも誤摩化せますが実際物価上昇で苦しんでいる国民は納得しないので、15%前後もの賃上げ要求が続いていてそれが認められつつあります。
こんなことから中国は低賃金を武器にした国際競争力を失いつつある・・新興国から停滞国に移りつつあるのが昨今の経済情勢です。
自国内に流入した外貨・・例えば日本が工場進出した場合その投資金として巨額外貨・主としてUSドルが流入します・・これを銀行に持ち込まれると中国国内銀行は中国人民元に両替するしかありません。
貿易黒字あるいは資本収支黒字分だけ両替した人民元が余計に国内で通貨が流通することになると、その分だけインフレ(流動性過剰)が進みますので、これを買いオペその他で吸い上げるしかないので、中央銀行には吸い上げた資金が滞留してしまいます。
あるいは人民元高阻止のために行っているドル買い介入によって得た資金も、不胎化するしかない点は同じです。

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