次世代の生き方1

戦前あるいは戦後昭和40〜50年代ころまでに亡くなった世代と今の中高齢者を比べれば、現在の中高齢者の残してくれる公的・私的遺産(次世代への学歴付与を含めて)の大きさは誰の目にも明らかでしょう。
どう言う根拠で今の若者が前の世代に比べて損をしているとの風説をマスコミがまき散らし宣伝しているのか、理解に苦しむ妄言です。
(増税したい官僚の御機嫌取りをしているのでしょうか)
我々世代は焼け野が原あるいはその直後のバラっクから始まったので自分の住むところから道路港湾すべてを作るために膨大なエネルギーを取られてきました。
一般サラリーマンでも、収入の中からかなりの貯蓄をする必要がありましたがそれはすべて将来のマイホーム取得のための貯蓄でしたし、一定額まで溜まってからマイホームを取得すると今度は住宅ローン支払におわれ、子供の教育費(戦後世代の育った頃に比べて中卒が高卒になり、高卒が大卒〜院卒になるなどワンランク以上アップしています)に追われている生活でした。
言わば我々世代は自分の消費する分はホンの僅かで、自宅取得資金や次世代教育費に大方使って来たのです。
国や自治体にとっても同様で、予算の大部分は道路整備・美術館博物館その他の公的資産の充実や教育予算に使ってきました。
先進国の若者は親世代の残してくれた膨大なインフラの御陰で、自分の日々消費する衣料と食費・サービス受益分だけ稼げば(自宅やインフラ新規形成分の稼ぎがなくとも補修費程度の負担さえすれば)ハイレベルの生活が出来る恵まれた状態になっています。
若者はこの恵まれた状態・遺産の承継・無償使用が原因で、就職難に遭遇しているパラドックスになっているのでは気の毒・可哀想という外ありません。
現在やるべき公共工事もあらかた終わっているし、自宅も大方の人は持っている・・しかも戦後直ぐのように安普請でなく恒久的な(100年住宅)建物を多くの人が取得していて次世代はそのまま住める家が多くなっています。
新しく作らねばならない道路や団地もなければ、高校、大学の教室も住家も足りていますから当然そのための建築土木工事・・これらに供給すべき原材料の生産その他の仕事も激減です。
この大きなプラス遺産が皮肉にも彼らのするべき仕事をなくしているので、その分だけ仕事場が減っている・・就職難になるのは当然です。
次世代が損しているから苦しいのではなく生まれつき得しているから、するべき仕事がなくて苦しいというパラドックスに陥っているのです。
海外進出パターンでも同じで、草創期にはいろんな人が出張して足場固めに奔走しますが、海外進出に成功している会社でも安定期になると現地スタッフに徐々に権限委譲して行くしかありません。
草創期の人が
「俺たちはペットボトルもなくて現地の水で腹を壊しながら歩き回って顧客開拓に汗を流して頑張ったのに比べて、今の社員はちょっと出張してくれば良いだけで楽だよなあ」
という図式ですが、楽していて仕事が間に合うのに比例して若手社員の仕事場・・するべきことは減って行きます。
アメリカ軍の空襲で全国殆どで住む家さえ燃えてしまって、何もかも再建・復興しなければならなかった時代と違って来たのですから、今の若者が何もかもなくなってしまった復興時代の人生モデルを踏襲しようとして仕事がないと困っていること自体、智恵の足りない話です。
同時代であっても大震災の復興需要・・主として土木建築・その骨材建材等需要・その方面の労働需要)のある東北地方と、震災の災害を受けていないその他地方とでは需要が違い、これに合わせてやるべきことも違って来ることから見ても明らかでしょう。

次世代同居のメリット

娘や息子が独身のまま同居している場合だけではなく、結婚しても娘が実家にいたままで自分の両親と同居したまま・・夫は通い婚あるいは娘が時々夫のアパートを訪問するくらいが、娘の親にとっては便利です。
自分の都合だけを考えれば(自己中心に考えられれば苦労がないのですが・・・)親にとってはこんな良いことがないのでしょう。
結婚した娘が結婚後もずっと家にいて時々夫に逢いに行くパターン(勿論何日か泊まっては来ますが・・)の場合、従来の一般的習慣から言えば変な夫婦関係と言えますが、夫婦お互い忙しければ、これもありです。
若手弁護士で女性裁判官と結婚している場合、妻の転勤中夫の弁護士は実家に戻って生活しているパターンもあります。
妻が弁護士で夫が裁判官や検事のパターンではこの逆になります。
昔はこんなパターンは成り立たなかったでしょうが、今ではこうした逆転関係も結構あります。
法律家に限らず専門職で忙しい夫婦の場合、たとえば医師の妻でも夫の夜勤(若手医師に夜勤等が集中しています)が多いのでこうしたことが結構起こっています。
この場合、夫婦間の懐具合はどうなっているの分りませんが、一人や二人家でよけい食べていても生活には困らない家庭では、(普通のサラリーマン家庭でも、娘から食費程度を入れてもらえば文句ないでしょう)親としては娘が普段家にいるのは何かと便利には違いありません。
ここまで進んでいるのは専門職で忙しい夫婦だけでしょうが、一般家庭でも2〜30年前から妻の実家近くに新居を構えていて、妻は実家に入り浸りで、夫は仕事の帰りに妻の実家に立ち寄って妻や子と一緒に自宅に帰る習慣の夫婦が結構いました。
専門職系の通い婚的夫婦の事例は、2〜30年前から多くなっていた実家入り浸り妻の発展系と言えるかも知れません。
こうなると男の親は割が悪いと思うでしょうが、男の子も家にいれば高いところの電球取り替えなどちょっといじったりするのに少しは役立ちますし、(今の時代、男の役に立つ分野が少ないことが明らかとなり、男が何のために家にいるのかの疑問が起きます)損だと思うなら(乱暴な意見かも知れませんが・・・)今後男の子を産まなきゃ良いのです。
独身のままで大丈夫か、こんな夫婦関係で大丈夫かなどと色々心配したくなるのが親のサガですが、それはそれぞれの世代の考え方に委ねれば良いことです。
これからの夫婦・あるいは男女関係のあり方は、我々がおせっかいに心配しなくとも(この秋から連載していますが)次世代自身が一番良く知っているのです。
ともあれ、我が家の今年のクリスマスは娘が二人いて(長年海外にいた娘が帰国しているので)賑やかで楽しいので、それだけで満足です。

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